物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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ネタが思いつかなかったので、思いついたら書きます。少しお待ちください。


第二十五話

 部屋に置いてあった椅子に座って一息ついていると、ふと逃げ出せる気がしてきた。見張りの人も来ないし。早速行動に移すことにした。外に出てみるとやはり見張りはおらず、簡単に抜け出すことができそうだ。

 

 隣の部屋ですやすや寝ていたブーディカを見つけた。敵に捕まっているのにどうどうと寝るなんて凄いな。

 

 感心しながらも近づいて揺すってみたが起きない。おそらく魔術で眠らされているのだろう。起こすのを諦めて俺は背負って彼女を外に連れ出すことにした。

 

 背中にあたる彼女の胸が少し嬉しいです。

 

 邪な感想を抱きながら外に出ると、既に戦闘は終わっていたらしくアレキサンダーが消えるところだった。すると背中のブーディカが目を覚ましたので下ろした。やはり魔術を使われていたのだろう。

 

 そして俺を見つけたネロは泣きながら抱き着いてきた。俺はネロに対して捕まったことを謝った。そしてマルタ達には‘捕まりすぎじゃね?’と言われたので‘これも神の思し召しです’と言ったら頭を叩かれた。嘘は言ってないのに。

 

 落ち着いたネロは軍を整えて再び敵本拠地に向けて出発した。兵士の配置を決める際にネロが俺を隣に配置した。目の届かないところに置きたくないらしい。

 

 

 何度か戦闘が起こる中、敵の首都に到着。やはり、本拠地ということで敵が大勢襲い掛かってきた。兵士は全員が洗脳でもされているのか恐怖心を捨てたかのように特攻してくる。このままではいくら倒してもきりがなく、時間が掛かりすぎるということで敵皇帝を討つメンバーとこの場で敵兵士と戦うメンバーで分けることにした。敵皇帝襲撃チームはカルデアとネロ、荊軻で決まった。

 

 そして荊軻の案内の元、無事に敵城に忍び込んだ。道中にローマとはかけ離れた化け物と戦闘を行いながら進んでいくと広い部屋に出た。そこで俺たちを迎えたのはローマの建国の祖ロムルスであった。

 

「勇ましい、それでこそローマ当代を統べるものである」

「あなたは、まさか……神祖ロムルスなのか?」

「そうだ、私こそはロムルス、ローマである!」

「あなたがいるかもしれないと考えていた、いて欲しくないと願っていた」

「ローマが私であるのだ。ならば私が連合軍の首魁としているのは必然である。ネロよお前も連なるがよい。私はそなたを許してみせよう」

 

 藤丸君は何を言っているのか理解できないという顔をしていた。ロムルスは単語を‘ローマ’に置き換えて話すことが多いのだ。ちなみに俺は全て翻訳できます。

 

 藤丸君が驚いている前ではネロはロムルスを睨み返した。

 

「断る。そなたは確かに偉大な人物だ。しかし、あなたが指揮している民はどうだ。笑顔がなくただ生きているだけだ。あんなものはローマとは呼べぬ。今、この時代に民を笑顔にできるのはローマ帝国第五皇帝、ネロ・クラウディウスのみ! 故にこそ、神祖ロムルスよ! 余はそなたと敵対する!」

 

 その返答に嬉しそうに笑うとロムルスは言った。

 

「許す、お前の力を見せてみろ」

 

 頷くと今度は俺の方を見た。

 

「久しいな我が友よ」

「久しぶり。お前さんをローマを滅ぼす側に呼ぶなんて随分と良い趣味のやつがいるな」

 

 俺が嫌そうな顔でいるとロムルスは真剣な顔をして尋ねてきた。

 

「お前は何故そこにいる?」

「人類を滅ぼされないようにするため、それと仕事のためかな」

「否、お前はそこにいなくてもいいはずだ」

「?」

「お前の仕事は英雄の物語を書くことである。それはお前から聞いた。しかし、それだけなら近くで共に過ごす必要はない。英雄が活躍するのを遠くから眺めるだけでもいいはずだ。それなのに何故、再び英雄と共にここにいる?」

 

 彼には俺が英雄たちの物語を書くために転生したことを話した。だってロムルスは勘がいいとかいうレベルではないぐらいにたくさんのことに気付く奴だったからだ。グイグイ尋ねられていろいろしゃべってしまった。 

 

 ……そしてそんな話を聞いたせいだろう、彼は死ぬ時にいった。‘お前はたくさんの英雄の死を看取ったのだな。そのたびにそんな悲しそうな顔で壊れそうになるのだな。すまない。そんな顔をさせて’と。

 

 確かに俺は英雄たちと居ても辛いことばかりの人生だった。彼らはどんなことがあっても俺より先に死んでしまう。必ず俺が看取る側になる。

 

 それでも俺には彼らと共にいたい理由がある。

 

「……言われたんだ」

「何を?」

「‘お前がいてくれて良かった、ありがとう’って」

「それだけか」

「それだけさ。それだけで十分だ」

 

 ギルガメッシュに言われた。‘本来ならお前は存在しない’と。そんなことで興味をもったあいつと友人になった。

 

 あいつは歳をとってから俺に言ってきた‘本来なら、我もエルキドゥもこんな充実した人生にはならなかった。お前がいてくれて良かった、ありがとう’と。それがあいつが俺に感謝を述べた最初で最後だった。

 

「何人もの英雄と出会った。そいつらは辛いときには誰にも相談できないような奴らばかりのただの人間だった。お前も含めてな。なのに希望やらなんやら背負わされて苦しそうな顔をしていた。そんなの見たらさ、こいつらが笑って生きるために俺ができることをしてやりたいって思った」

「自分が苦しむと分かっていてもか?」

「俺が苦しむことが辞める理由にはならない」

 

 笑顔で言うとロムルスは寂しそうな顔をした。

 

「お前が苦しむのを見たくない者もいることを考えて欲しいものだ」

「知っているよ。それでもこの生き方を変えないと決めただけだ」

 

 後ろでサーヴァント達が俺を見守る中。部屋の奥から声がした。

 

「いつまで話をしている、さっさと片付けろ!」

「レフ!」

 

 レフ教授を睨みつける藤丸君とマシュちゃん。

 

「分かった。では、見るがいい我が槍、私が此処にあることを!」

「来るぞ、春樹!」

「ああ! 藤丸君! レフを頼む」

 

 後ろで余裕そうな顔をしているレフに、ロムルスにこんな役割を押し付けたレフが憎くなった。

 

「分かりました。やるぞマシュ、みんな!」

「はい!」

 

 レフの方に走っていく藤丸君を見送って俺とネロはロムルスに対峙する。

 

「安心しろロムルス。お前だけにはローマを破壊させたりはしないよ。なぁネロ!」

「当たり前だ!」

 




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