物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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英雄候補と炎上汚染都市
第二話


 

「何? これ何か起こったの?」

 

 人生を何度も繰り返しているせいか緊急事態でも焦らなくなった俺は重い腰を上げ部屋から出る。

 

「よかった、君は無事だったんだね!」

 

 部屋を出るとロマンと見たことが無い男子、高校生ぐらいだろうか?が走ってきた。

 

「ロマン、これ何があった?」

 

「分からない、けれど管制室で異常があったらしい! ほら、君も一緒に来てくれ!」

 

「え? 俺は力ないから自室で待機したいのだけど」

 

「冗談言うな、君も普通に魔術が使えるだろう!」

 

「ここに来てちょっと教えてもらっただけだけどな」

 

 そこから、行きたくないのが正直なところだが仕方ないので着いて行く。道中、少年──名前を藤丸立香君──と軽く自己紹介しながら管制室につく。

 

「管制室が炎上してる」

 

 ロマンの呟きが聞こえる中全員が呆然と立ち尽くした。部屋は炎に包まれ瓦礫が落ちていた。ここでは、マスター候補生たちが過去に向かうためにレイシフトをする予定だったのだ。なのにこの現状では生存は絶望的だ。

 

 すると、警告音が聞こえる。異常事態だからこの部屋を閉鎖するらしい。

 

「人類の未来を消させる訳にはいかない。君たちも速く避難するんだ!」

 

 いち早く正気に戻ったロマンは来たところを戻っていった。

 

「おい、藤丸君、君も速く避難するぞ!」

 

 隣に声をかけ避難させようとしたところどこにも彼はいなかった。

 

 あれ、さっきまでここにいたよね?

 

「マシューーーー!」

 

 いないと思ったら瓦礫の中へと彼が進んでるところだった。

 

「馬鹿野郎! 速く戻らないとここは閉鎖されるんだぞ!」

 

「けど、マシュが!」

 

 マシュとは確かカルデアの職員の一人だったはず。

 

 その間にも藤丸君はどんどんと奥に進んでいく。もう間に合わないだろう。

 

 ちくしょう、もう知らないぞ!

 

 仕方ないと心の中で呟きながら来た道を戻ろうとしたところ、身体が動かなくなった。

 

 !? この現象は、まさか!?

 

 俺は何度も人生を体験していく中で何度もこの経験をした。そして決まってこの現象が発生したのは英雄が運命の分岐点に差し掛かる時だ。例えば、アルトリアが聖剣を抜いた時など。これはあの神なる存在がやったことだと確信している。この状態になったら俺は必ず出会う。

 

 では、この場で英雄へとなる可能性があるのは、彼、藤丸立香だろう。

 

 ならば、俺はここから逃げ出すことは出来ないのだろう。俺は諦めながら座る。唯一の出口であった扉も閉まった。すると何かアナウンスの様なものが聞こえてきた。内容はうまく聞こえなかったが俺の名前と藤丸君の名前が聞こえた。どうなることやら、と考えていると意識を失った。

 

 

 

 そして、目を覚ますと炎上していた部屋から炎上している町へとジョブチェンジを果たした風景があった。

 

 ここどこ? 周りを見渡しながら歩いていると身体が何か黒い人がいた。

 

「すみませーん、ここどこですか?」

 

「フハハハハハハハ、マダココニモ獲物ガイタトハナ」

 

「......すみません、人違いでした」

 

 あかん、この人話し通じない人や。一瞬で悟った俺は走り出した。

 

「逃ガス筈ナカロウ!」

 

 何か薙刀の様な物を振り回しながら追いかけてくる謎の男。追いつかれたら死ぬだろう。

 

「ちくしょう! 誰でもいいから助けてくれ~」

 

 叫びながら走っていると前にローブを深く被った男が急に表れた。

 

「そのまま、走れ―」

 

 やる気のなさそうな声を出した男は昔見た覚えがある杖を出して炎を出した。

 

 あれはルーン文字か! 俺を追いかけるのに夢中だった謎の男は炎が直撃して、そのままさらさらと砂のようになって消えた。それをどこか別世界のように思いながら見ているとフードを被った男が話しかけてきた。

 

「普通なら男なんて助けないが今回はサービスだ、運が良かったな兄ちゃん」

 

「ああ、助けてくれて感謝する。命拾いしたよ」

 

 感謝を述べながら手を出す。向こうも応じるように手を出してきて握手する。その時顔が見えた。その顔は俺が知っている者だった。

 

「セタンタ……」

 

「あん、お前に名乗った覚えはないが……」

 

 セタンタ、またの名をクー・フーリン。彼はケルト神話に出てくる英雄である。なかなかはちゃめちゃな人生を送った。彼の人生を本にしたのも俺でありその関係で彼とは結構な馬鹿をやった関係である。

 

 そして彼の隠してほしそうな物語も書いてしまったのだ。もちろん彼からは了承をもらった。酔っ払ってる時にだけど。

 

 だから、バレたら殴られるかもしれん。よって知らん顔をしておこう。

 

「いや、その杖見たらピンと来た感じかな。それと俺の名前は夏目春樹だ」

 

「……まあ、いいか。ここではその名を呼んでくれるな。キャスターと呼んでくれ」

 

「オーケー」

 

「で、なんで生きてる人間であるお前がここにいるんだ?」

 

 俺自身が不思議だが、自分に起こったことを軽く話した。

 

「なるほどねぇ、じゃあ、あっちでドンパチしてるのもお前さんの仲間か?」

 

「さぁ? 見てないから分からない」

 

「それもそうだな。俺は気になるから今から行くがお前さんはどうする?」

 

「野暮なことを聞くな、付いて行くに決まってるだろキャスター」

 

「……ふはははは、こいつはいいや。よし行くぞ!」

 

「あいよ! どうやって俺を連れていくの?」

 

「あん、そんなもんこうやってに決まってるだろう!!」

 

 クー・フーリンは俺を担ぐと思いっきりジャンプして移動した。その移動方法は戦闘力がほとんどなかった俺を面倒事に連れていくときにクー・フーリンが俺によくやってきた行為だった。

 

 

 


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