物語の執筆者 作:カボチャッキ―
決着がついた。それはあまりにもあっさりとした終わりだったが戦いとはこういうものなのだろう。
クー・フーリンが放火した場所の火は段々と消えていきアルトリアの姿が現れる。ところどころ焼けているがまだ生きているらしい。
勝負ってあっさり終わらない時もあるよな。
「こういう風にやられるとは思いもしなかったぞ光の御子よ」
「人生、何が起こるか分からない事の方が多いだろうよ」
「そうだな」
二人の話しが終わったのかこちらへと顔を向けるアルトリア。一瞬俺を睨みつけてきたがすぐにマリーや藤丸君たち方へ向く。
俺は何もやってないよ。今回は。
「お前たちの勝ちだ、マスターたちよ。しかし、グランドオーダー、聖杯を巡る戦いはまだ始まったばかりだ」
うそん、まだ続くのこの戦い。
「しかし、私に勝った褒美だ受け取れこの聖杯を」
そしてどんどんと何故か俺に近づいてくるアルトリア。いや、来ないで! 藤丸君たちと離れどんどん後退する俺の手を掴み何か不思議な水晶体を俺に渡してきた。
これには厄介事の匂いがする。速く藤丸君に押しつけよう。そう思い移動しようとしたがアルトリアが手を離してくれない。すると、顔を俺の耳元に近づけてぼそっと言った。
「覚えておいて下さいね兄さん。あなたが女装癖の変態と言ったこと後悔させてあげます。これが最初の仕返しです。気を付けて下さいね」
「お前は相変わらず物騒だな。それと何に気を付けるの?」
尋ねたがアルトリアの身体が粒子のようになって消えて行った。最後まで教えてよ。軽く次に何が起こるのか恐怖していると今度は藤丸君たちと話していたクー・フーリンが来た。
「お前と会えて本当によかった。それにあの坊主たちともだ。もし呼びだすことがあったらランサーで呼んでくれよ相棒」
「ランサーで呼んだらお前の攻撃当たらんでしょ?」
「んなことねぇよ。じゃあ、またな」
「ああ、またな相棒」
俺の相棒と言う言葉に少し嬉しそうにしながらアルトリアと同じように消えていった。
ふぅ、疲れた。こんなことがこれからも続くと思うと鬱になるな。そう思いながら白い獣、名前はフォウだったかなを撫でているマシュたちのところに行く。
「お疲れ様、藤丸君、マシュちゃん、マリー」
「はい、お疲れさまでした先生」
「お疲れ様です」
みんなが俺に返事をする中マリ―だけはぶつぶつと考え事をしていた。
「おい、マリー」
「あっ、ごめんなさい。少し考え事をしていたわ」
「所長、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
藤丸君が心配する中で俺は暗い顔をしていた。ここでの修復とやらは終わったということはマリーと別れるということだ。これから待っている残酷な未来に悲しくなっていると上の方から声が聞こえてきた。
「いやはや、まさか君たちがここまでやるとは想像もしていなかった。まったくもって想定外だよ」
「レフ教授!?」
「何、レフ教授だって!? そこにいるのかい?」
驚いた声を出すマシュちゃんとロマン。俺だって驚いている。だって、彼はマリーの近くにいたはず。つまり巻き込まれ死んでいるはずだ。なのにこんなところにいるはずがない。
そう思っているとマリーが嬉しそうに前へ進み始めた。
「レフ、生きてたのね! みんなが死んでカルデアもあんなことになってどうすればよかったのか分からなかったの!」
「所長待って下さい!」
「マリー! 許せ!」
やばいと感じた俺はマリ―に追いつきそして飛びこむように彼女の足を掴んだ。
「ぶへぇ!!」
いきなり足を掴まれたことにより顔からダイブするマリー、かなり痛そうである。
「何するのよ春樹!!」
「怒るのは当然だが落ち着け。いきなりこんなところから出てくる奴はおかしいに決まってるだろ」
「レフは、レフはそんなことない!」
「いいや、オルガ。彼が言っていることは正しいよ」
「レフ?」
「全くもって腹立たしい。ロマニも殺したつもりだったのに生きている。そして残りカスだと思って見逃していた最後のマスターがここまで活躍した。そして何よりもただの物書きであるお前がここにいることが不愉快だよ」
目をぎょろつかせこちらを睨むレフ。俺だってここにいたくていたんじゃないよ。言いたいけどもう少し黙っておこう。
「さらに、オルガ、死んでいるはずの君がここにいることも許しがたいことだ」
レフ教授のマリーが死んでいるという発言に驚くマシュちゃんたち。
「さて、すでに死んでいるオルガに見せたいものがあるんだ。それにはお前が持っている物が必要なんだ。だからそれを返してくれないか物書き」
「それって何だ?」
「君がアーサー王からもらった物だよ。それはね俺にとってとても大切な物なんだ」
「これはそんなにいいものなのか?」
アルトリア、嫌がらせで渡してきた水晶のことかな。こんなものを渡してきた辺り後世に変態と伝わったことを根に持っているのだろう。
「ああ、それは聖杯と言って願い事が叶うものさ」
え? マジで? そんな便利な物だったのこれ。じゃあ今使えばいいんじゃね。
一瞬で閃いた俺はすぐに声に出した。
「マリーを生き返らせてくれ!!」
俺が言ったとたん聖杯が輝き、そしてマリ―の姿が消えた。失敗したか? そしてそれを見ていたレフ教授が震えだした。
「……き、き、貴様よくも、よくも、そんな下らないことに聖杯を使ってくれたな!!」
さきほどの穏やかな話し方を止め荒ぶる口調へと変えた。先ほどから言いたいことを言ってくるこいつに少しでも言い返そう。
「やかましいわ! 目の前に願い事が叶うものがあったら誰でも願い事を言うだろうが! ドラゴ○ボールでもギャルのパンティを欲しいって言ってただろ。誰かが願いをかなえる前に回収しなかったお前が間抜けなんだよ!」
「き…さ…ま」
「もう一つお前のミスを教えてやるよ。それはな藤丸君を残したことだ。俺には分かる。こいつは英雄になる!」
「ふははは、英雄になるだと? すでに人類に未来が無いのにか?」
「だからなんだ。人類ってのは未来があるから生きてるんじゃない。生きてきたから未来があるんだ」
「なるほど、物書きらしい言葉使いだな。だが宣言してやろう。人類は滅びの運命にあるとな」
「なら、物書きらしく俺も言ってやろう。今から始まる物語。この物語は必ずハッピーエンドで終わる。そうだな物語の名は滅びの運命に抗う物語。先ほどのアルトリアの言葉を借りてこう名付けよう」
藤丸君がマシュがレフ教授が見てる中で俺は叫んだ。
「『Fate/Grand Order』とな!」
「そんな物語今すぐ終わらせてやる!」
レフが何かしようとした瞬間洞窟が崩れ始めた。なんだこれは?
「ちっ、この特異点も限界か。次にきさまに会った時は殺してやるぞ物書き。ここで死ななければな」
そして消えていくレフ。
「洞窟が崩れます。いえそれよりも空間が!? ドクター! 速くレイシフトをして下さい!」
「ごめん、頑張ってるけども間に合わないかも。その時は意識を失わないように気合いで耐えて。ほら宇宙空間でも少しは生きれるだろう?」
「もう黙って下さいドクター。怒りで殴りたくなります」
何か二人が漫才みたいなことをしている間にどんどんと崩れていく洞窟。そして俺の足元が崩れてきた所で意識を失った。