物語の執筆者 作:カボチャッキ―
「……頭がいてぇ」
酷い頭痛に悩まされながら目を覚ます。周りを見てみるとどうやらカルデアの医療室のようだ。無事に帰ってこれたということだろう。
本当に良かった。それより他の人たちが気になるな。
ベッドから立ち上がり部屋を出る。ここは吹雪が吹いているせいか朝なのか夜なのかわからない。
そのままぼーっと歩いていると第一村人発見。
「おっす、ロマン。元気?」
「ああ、元気だよ、って春樹! 目を覚ましたんだね! よかった。今から見に行こうとしてたんだよ」
「おかげさんでな。それでみんなは無事か?」
「ああ、みんな無事に帰還したよ。それに所長もちゃんと生き返ったよ! 本当に信じられないよ。まさしく奇跡だね」
「そりゃ、本当によかった。生き返ってなかったらレフに無駄に恨まれることになるからな」
軽口を叩きながらマリーが生きているという事実に涙が出そうになった。
「レフ教授かぁ」
ロマンが悲しそうに呟いた。俺自身は彼とはあまり関わらなかったがロマンは共に研鑽した仲だ。いろいろ思う所があるのだろう。そしてマリーも。
「あっ、君に伝えることがあるから今すぐ管制室に来てくれないか?」
「あいよ」
返答して、共に移動する。そこには藤丸君やマシュちゃん。そしてマリーがいた。ついでに新人類ダヴィンチさんもいた。
「夏目さん、目を覚ましたんですね!」
「おはようございます先生。無事でよかったです」
「ああ、みんなも無事でよかった」
みんなに声をかける中でマリーが泣きそうな顔をしながら俺の胸元に飛び込んできた。
「春樹、無事でよかった! 目を覚まさないから死ぬほど心配したじゃない!」
「そりゃ、悪かった。ただこうして目を覚ましたんだ許してくれ」
「いいわよ。ただし、お礼を言わせなさい」
「言うなら笑顔でな。小説家は笑顔のハッピーエンドが好きなんだ」
マリーは泣き笑いしながら言った。
「ありがとう!」
「おう!」
この笑顔なら命をかけた価値はあったと思うな。
「さて、感動の再会をしているところすまないが、少しいいかい」
「それは無粋すぎるでしょ、ダヴィンチさん」
「もちろん分かっているさ。しかし、事態は思った以上に切羽つまっている状態だからね。すまないが話させてもらうよ。ということでロマンよろしく」
「ええ!? ここで僕に振るのかい? まあ説明していくよ」
おそらくだが、泣いているマリーに代わりロマンが任されたのだろう。
そして、説明された内容をロマンの説明が長かったのでまとめると、人類はマジで滅ぶ5秒前レベル。
今このカルデアの周りは何も存在していない。つまり、外部とは連絡が取れないということ。
よってこのままだと人類は滅びるが、その運命を変えるために過去に存在する人類のターニングポイントで起こった異常を七つ修復しなければならない。
これができるのは俺たちだけだということ。
「マスター適性者48番、藤丸立香。そして特別顧問、夏目春樹。両名に告げる、僕たちが人類を救うのなら、2016年より先の未来を取り戻すなら、君たちはこれから、七つの人類史と戦わなければならない。その覚悟はあるか? 君たちにカルデアの人類の未来を背負う力があるか?」
「自分にできることなら」
「俺も出来ることはするさ」
覚悟を決めた俺たちの顔を見て満足するロマンとマリー。そして落ち着いたマリーが言った。
「では、人類の未来を守る戦いの作戦名を伝えます。カルデアが行う作戦名を春樹の宣言を借りてこう名付けます。人理守護指定・グランドオーダーと。私たちは必ず人類の未来を取り戻します!」
「はい!」
全員が同意して気合いを入れた。これは藤丸君が英雄になる物語。そして俺が歴史を紡ぐ物語になるだろう。
でも勢いで同意したけど、俺は冒険に出ないでここでずっと藤丸君の物語を見ときたいな。雰囲気的に何も言えないけど。
「それじゃあ、次の特異点の対策のために英霊を召喚しようじゃないか」
そして、ダヴィンチさんの提案により召喚することになった。
「召喚できる回数は三回! 春樹は二回。藤丸君は一回召喚しよう」
「分かりました」
「分かった」
そして召喚専用の部屋で召喚を開始。まずは藤丸君からだ。
「特異点で回収したこのきれいな石を使えば召喚できるよ」
「はい!!」
藤丸君が意気揚々と石を使った。すると、出て来たのは浅黒い人物。前の特異点で見たアーチャーだった。
「ア―チャ―、召喚に応じ参上した。これからよろしくな」
「こちらこそ、よろしく」
仲良く握手する二人。いきなり狙われたトラウマがよみがえる俺。
「さぁ、次は君だよ。春樹」
すると、俺の背筋に寒気が走る。
「……やりたくないっていうのは」
「なしだよ」
「ういす」
嫌な予感がする。お願いだから普通なのきて。
願いながら石を三個使う。そして出てくるサーヴァント。
「問おう、殴られる準備は出来てるか?」
出て来たのは最後に物騒な発言をして消えたアーサー王ことアルトリアだった。
「ごめん、ダヴィンチさん。部屋に忘れ物したから帰ります」
「残念、逃がしません!」
「ぐは!」
気持ちのいいボディーブローが直撃した。だから召喚は嫌だったんだよ。俺が倒れている横でマリーがアルトリアにいろいろ質問している。主に前の特異点で記憶があるとか何とか。
それよりも俺の心配してくれよ。泣いていると、誰かが背中を擦ってくれた。誰!?
「大丈夫か?」
心配してくれたのはさっき召喚されたアーチャーだった。やだ、かっこいいぃ。
「藤丸君がいいなら、この青いアホ毛とアーチャーを交換しないか。いやして下さいお願いします」
「それは……ちょっと」
「お願いだからよ~。してくれよ~」
「兄さん?」
「すまん、今の話は無かったことにしてくれ。俺は最高のパートナーを当ててしまったなー。はははははは」
妹が怖い。
「さて落ち着いてきた所で次もいってみよう」
促されて再び入れると出て来たのは前と違い青タイツを履いたクーフーリンだった。
「召喚に応じてやってきたぜ相棒!」
「……イメチェンした?」
「馬鹿野郎、これはランサーの格好だよ」
「攻撃当たらないの引いちゃったなぁ」
「そのネタはもうしつけーよ」
笑いながらハイタッチする俺たち。こうして再び会えるのは嬉しいものだ。
しかし、前に出会ったこいつらを召喚するとは思っていなかったなと考えていたらダヴィンチちゃんが補足してきた。
「おそらくだけど、前に出会ったことによって縁が出来たんだろう」とのこと。
縁なら他にもあるかもしれんが、まあ時間が近い縁が優先されるのだろう。
そういうことなら、これから先の特異点で新たな出会いをしていったら召喚に応じてくれるかもしれないな。
「さて、こうして戦力の強化も出来たんだし、次の特異点を観測したらすぐにでも行ってもらうわよ」
「はい!!」
こうして俺たちの戦う準備は特に何も無く(俺は殴られたが)終わったのだった。