物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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第七話

 

 カルデアの深夜、とある一室で三人の男女が集まっていた。

 

「やはり、所長のレイシフト適性は無いままですね」

 

 コンピューターを触りながら言ったロマンに対してオルガマリーはさして残念そうな顔をせずに頷く。

 

「まあ、予想通りだわ。もともと無かったのに死んだら適性が出来るなんてありえない話だもの」

 

「しかし、君が生きているなんて信じられないよ。あのレフが持っていた聖杯という代物はすごいな。まったく研究したくなるよ」

 

 聖杯に対して興味を示しているダヴィンチを無視して二人は話を続ける。

 

「ところで春樹に聞いてくれましたか、あのこと?」

 

「ええ、聞いたわよ。でもはぐらかして何も答えてくれないのよ」

 

「やはりですか」

 

 どこか納得したように頷くロマン。

 

「何が‘前世からの知り合い'よ馬鹿にして」

 

「しかし、話してくれない理由も謎ですが、春樹がアーサー王の名前を知っていた点も謎ですよね」

 

「そうそう、アーサー王の方も‘兄さん’って呼んでたのも気になるのよね」

 

「召喚の時にぼそっと言ってたやつですよね。他にもレイシフト中の映像を見直していたのですがクーフーリンとの仲も初めてにしては仲が良すぎるんですよね」

 

「そうそう。本当に謎よね。いつかは話してくれると思うのだけど」

 

「その時を待つしかないですね」

 

 二人が残念そうにしていると聖杯から二人の話しに興味を持ったダヴィンチが微笑みながら言った。

 

「いやいや、実は本当のことを言ってるかもしれないよ、お二人さん」

 

「? それはどういうことよ?」

 

「だから、前世から知り合いってやつさ。意外に過去から現代に生まれ変わっている者もいるかもしれないってことさ。ねぇロマニ」

 

 その言葉にびくりとロマンは身体を反応させる。

 

「う、うん。その可能性も無きにしも非ずかな」

 

「どうしたのよ、焦った顔をして」

 

「何でもないですよ所長!」

 

 不思議に思いながらもどうでもいいかと思考を切り替えるオルガマリー。結局この日は夏目春樹に対する疑問は解けないのであった。

 

 

 ところ変わって、ある個室でアーサー王とクーフーリンが話していた。

 

「しっかしあの時殺しあっていた俺たちがこうして協力して世界を救うなんて驚きだねぇ」

 

「全くです。しかし世界が滅ぶのなら何とかしなければならないのも事実です」

 

「分かってるよ。まぁ今回は良いマスターに出会ったんだ。存分に暴れさしてもらうとするわ」

 

 感慨深そうに頷く二人。するとアーサー王、アルトリアが思いだしたように尋ねた。

 

「そういえば、あなたは兄さんと知り合いのようですね?」

 

「そういうお前さんもな。どうやって知り合った?」

 

「私の場合は生まれた村が同じで共に育ったのですよ。血は繋がってませんがよく世話をしてくれました。そういうあなたは?」

 

「俺の場合も似たようなもんだ。生まれた所が同じでよく一緒に馬鹿やった仲だ。と言っても何かしようとしたらあいつ変な察知能力を発動して逃げるもんだから同行させるのに苦労したもんだぜ」

 

「私の時もよくケイ兄さんと遊びに誘ったら逃げ出していましたね。口癖のように‘お前らといたら痛い目に合う’と言ってましたよ」

 

「奇遇だな。俺の時も言ってたよ」

 

 二人でおかしそうに笑う。

 

「そうですか。そういえば兄さんはよくあなたのことを話してましたよ」

 

「おっ、なんて言ってた?」

 

「無謀と言う字を人の形にしたらあんなやつになるって」

 

「あははははは、そりゃあ適切だな。さすがは小説家だ」

 

「あなたの時もですか?」

 

「あん? あんたの時もか?」

 

「ええ、私が王になった時に‘お前の物語書いたら売れそう’って言って書いてましたね。もちろんいらないことまで書いてましたが」

 

「俺の時もだよ。槍は絶対に当てるって言って外した時からよくお前の槍は当たらないって笑われたもんだ」

 

「相変わらず、どこでも話を書いているんですね」

 

「だろうな。案外俺たち以外の英雄とも知りあいだったりしてな」

 

「ありえそうだから兄さんは恐い」

 

「あいつは面倒事の神様に好かれてるんだろ」

 

「そうでしょうね」

 

 そうやって昔話に花を咲かせていくのだった。

 

 

「ぶえっくしょん! ぶえっくしょん! くしゃみが二回……誰か俺の噂してるな」

 

 一方、噂をされていた男、夏目春樹は無駄に高い察知能力を発揮していた。


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