物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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英雄と二人の聖女
第八話


 

 ある日、第一の特異点が発見された。よってさっそくレイシフトを行うことになった。

 

 特異点でやることは主に三つ。聖杯の探索、特異点の修正、召喚サークルの設置だ。まあマシュちゃんがやってくれるので俺は藤丸君のサポートさえすればいいだろう。

 

「では、さっそくレイシフトに取りかかるよ。ちなみに藤丸君達はしっかりと僕たちがサポートするよ」

 

「私も共にサポートするから安心してね」

 

 サポートにマリーがいると安心できる。ロマンよりかはしっかりしてそうだし。しかし、初めてのレイシフトだ。どこの時代に行くのだろうか。不謹慎だが違う時代に行くというSF体験にわくわくしている俺がいる。

 

 胸の高鳴りを抑えながら俺たちはレイシフトした。

 

 

 

 目を覚まして辺りを見回すとアルトリアやクー・フーリン、藤丸君たちも無事にいた。ちゃんと成功したようだ。

 

 安心していると藤丸君とロマンの会話が聞こえてきた、そして空を見るとでっかい光の輪があった。あれが異常の原因ぽいとのこと。

 

 そんなもん見たら分かるわ! 心の中で突っ込みながら歩いていると歩兵を発見。

 

「あれは倒すべきエネミーでは?」

 

「いや、俺には前にやらせてもらったゲームに出てきた‘ここは○○の村だよ’っていうやつにしか見えないぜ」

 

「私の考えでは初めに主人公の前でやられる脇役かと」

 

 三人で悩んでいるとマシュちゃんが言ってきた。

 

「とりあえず殴って捕まえましょう。峰打ちなら可能なはずです」

 

 そう言って走り出すマシュちゃんとその後ろで呆れたように溜息をつくエミヤ(アーチャーの名前を教えてもらった)の二人に任せて俺たちは傍観する。

 

「盾に峰ってあったっけ?」

 

「あんなもん全部峰だろ。でも、あんなもんで殴られたなら死ぬよな」

 

「だよな。マシュちゃんの理論ってどっかの侍の逆刃刀で殴ったから死にませんぐらい無茶あるよな」

 

 見ていると上手いこと峰打ちしたらしく兵はびびりながらどこかへと走って行った。

 

「……あの兵士、すごく丈夫だな」

 

「……ああ。痛がりながら全力疾走してるもんな」

 

「二人とも何をぼうっと見てるのですか! 早く彼らを追いますよ」

 

 アルトリアに促されて、兵を追いかける藤丸君たちを追いかけたのだった。

 

 

 そして到着したぼろぼろの町と負傷した兵たち。戦争は今休戦中のはずなのに不思議である。

 

「ほれみろ、やっぱり町に案内してくれる奴だっただろ」

 

「いえ、まだ諦めません。ここから敵が出てきてあの兵士が襲われるはずです!」

 

「お前らうるさい。藤丸君が話聞いてるだろ。それとアルトリアの予想は当たりそうだから、そんな物騒なこと言うの止めて」

 

 話を聞いていると火刑に処されたはずのジャンヌ・ダルクが蘇り、魔女となって王様を殺してそのままフランスを滅ぼそうとしているらしい。

 

 記憶が曖昧だから確証はないが、聖女から魔女にジョブチェンジって変わりすぎでしょジャンヌ。まあ、あんなことされれば誰だってそうするだろう。

 

 ぼんやりと考えていると骸骨兵士が現れた。

 

「ほら、敵が現れて襲われたでしょう?」

 

 そのドヤ顔腹立つな。それよりも。

 

「今回も手を出さないのか?」

 

「ああ、あれぐらいなら嬢ちゃんでも余裕だしな」

 

「ええ、彼女には成長してもらわなければなりませんし。何しろあの盾を持っているのですから」

 

 最後にぼそっと呟いた声が俺に聞こえた。そういえば俺もあの盾見たことがあるような、ないような?

 

 そう思っていると骸骨を軽くあしらったマシュちゃんが戻って来た。無事でなによりです。

 

 その後さらに話を聞いてみると再び何かが襲ってきた。

 

「なぁ?」

 

「何だ?」

 

「あれって何?」

 

「そりゃドラゴンだろ」

 

「そうか。なあ俺たちに向かって口を向けてね?」

 

「ああ、ありゃ火炎放射を出す前だな」

 

 それを聞いた瞬間俺はダッシュで街のなかに走り出す。

 

「ドラゴンとかあほだろ! 誰だよあんなもの呼んできた奴は?」

 

 逃げる俺を背に会話が聞こえてきた。

 

「彼は何に怯えているのでしょう?」

 

「あいつ、俺といた時に髪の毛をドラゴンに燃やされたんだ。それ以来ドラゴンが苦手なんだよ」

 

「どうりで、私が竜の因子を持っていると聞いた時に顔をひくつかせていたわけですか」

 

「まぁ、今はそんなことどうでもいい。おら! アーチャーちゃんと働け!」

 

「言われなくとも分かっている!」

 

「お前も働けよクー・フーリン」

 

 後ろを向いて叫んでいると誰かにぶつかった。

 

「いたっ!」

 

「ああ、すまん前を見てなかった……」

 

「こちらこそ、ぶつかってしまい申し訳ありませんでした。それよりも兵士たちよ、共に武器を持って戦って下さい!」

 

 呆然と見ている俺を置いて勇敢にも前へ出て戦いに行った彼女は、俺がぶつかった相手は、死んで魔女になったとされていたジャンヌ・ダルク、本人であった。


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