悪役(?)†無双   作:いたかぜ

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話の途中のが途切れておりました。大変申し訳ございません。


第3話

袁術(えんじゅつ)サイド〜

 

 

美羽(みう)さま美羽さま。今回も多くの資金が集まりましたよ〜」

「にょっほっほっ! そうであろうそうであろう!」

 

うむ! やはり妾の威光に民も理解しておるのじゃ! 七乃(ななの)も嬉しそうで何よりじゃ!

 

「さてさて美羽さま。今後の方針についてなんですけど……」

「七乃に任せる!」

「わかりました~」

 

七乃は有能じゃから何も心配いらん! それに……

 

「お主も七乃に手を貸すのじゃ。これは命令ぞ!」

「仰せのままに、袁術さま」

 

新しく雇ったこやつもまた使えるしの! 存分に働いて妾を幸せにするのじゃ!

 

「それでは紀霊(きれい)さん。この後は別室で話しましょうか」

「はっ!」

 

うむ! 苦しゅうない苦しゅうない。さて……

 

「コーユー、おやつを頼むぞえ」

「はい、こちらに」

 

おお! これはまた一段と輝いてる蜂蜜水じゃ! ゴクっ……ん~~~~~! 美味なのじゃ美味なのじゃ!!

 

「袁術さま。こちらは異国の御菓子、曲奇餅(クッキー)でございます」

「おお……!! 美味しそうなのじゃ!」

 

コーユーもたくさんの御菓子を持ってきてくれる有能なヤツなのじゃ! これからも妾に尽くすように!

 

「にょっほっほっ!!」

 

 

~紀霊(?)サイド~

 

 

いや、(?)ってつけなくても俺が臧覇だってわかってると思うよ。見ての通り俺は今、袁術さんの配下となっている。何故かって? これも作戦の一部なのだ。

過去の失態をしてきた俺は考えた。孫堅さんと孫策さん。あの一族に無様な撤退を余儀なくされた。ならば次は孫権さんを狙おうとしたが、このままでいけば同じ過ちを繰り返す。ならどうすればいい?

しばらく考えていると、俺はあることを思い出す。

 

「そういえば呉のルートって、袁術いなかったっけ? ……美花はいるか!」

「此処に」

「今すぐ袁術の情報を集めてほしい」

「こちらになります」

「早くない!?」

 

ということがあって、俺の力だけじゃなく、袁術を利用して作戦を成功させようとしていた。

領地が広く、兵もたくさんいる。これを利用すれば必ず孫呉は俺の手に落ちる! それて孫一族や名だたる将のくっころ劇場が完成するのだ! たまんねぇぜガハハ!

 

「ちょっと紀霊さん? 聞いてましたか?」

「はっ失礼しました。少し考えごとをしておりまして……」

 

おっと。今は張勲(ちょうくん)さんの知恵とならねば。

というより少し手を加えた蜂蜜をたくさん献上しただけで軍に入れるだけじゃなく、かなりの地位をくれるのはどうかと思いませんか張勲さん?

ま、そんな非常識だからこそ助かったんだがな。これからは俺の駒として利用してやる。

 

「もう。次はありませんよ?」

「心得ております」

「よろしい。では次に美羽さまとの可愛い、可愛い散歩話を致しましょう。その時は美羽さまがですね……」

 

……この話、いる?

 

 

~美花サイド~

 

 

私の名前は孫乾。どこにでもいる村娘でしたが、ある日に賊が、私の村を襲い、攫われの身となりました。わずかな時間ですら絶望に感じていました。このままどこかに売られるのか、それとも賊の玩具になるのか……。そんなことを考えていた矢先です。

 

「「「ヒャッハーーーー!!!」」」

 

謎の軍団が賊を退治したのです。けれど彼らもまた荒れた格好をしており、捕まっていた女性らも不安でいっぱいでした。しかし、彼らの長である……私の御主人様は皆を解放してくれたのです。

皆は涙し、感謝の言葉も飛び交う状態。けれど、私の心は全く違いました。

 

(素敵……)

 

こうして私は御主人様のお役に立てるように努力しました。

そして今回の作戦で私に任された任務は……

 

「はむはむ……ん~~~! たまらんのじゃあ!」

 

目の前にいる袁術様の教育係です。私は最初こそ戸惑いましたが、袁術様と過ごす中で御主人様の言っている意味がわかったのです。

このお方は……何も知らないのだ。自分が歩けば道がある。自分が欲しければ出てくる。他人が見れば我が儘な人と言ってしまうでしょう。でも、何も知らないまま君主となり、言えばなんでも出てくる立場になってしまったらそれが当たり前になってしまう。なれば私が出来ることは一つ……

 

「袁術さま」

「ん? どうしたのじゃコーユー?」

「もし、よろしければ……少しお話を聞いてくれないでしょうか?」

 

このお方のために、精一杯の教育をする。それが御主人様のためならば……

 

 

~数ヶ月後・臧覇サイド~

 

 

「美羽さま。どうやら紀霊さんが話したいことがあるそうですよ」

「おお! お主の働きは妾にも届いておるぞ! してなんじゃ? 何か褒美が欲しいのか?」

 

な、長かった……まさか此処まで財政難だったとは思わなかった。というよりこんな状況でよく我が儘三昧を送れたな。いや、我が儘三昧だったからこうなったのか。

ともかく、このままではすぐにやられてしまうので景気回復、建物の補強作業、軍の強化、民への信頼回復……そして美花には袁術さんへの多少なりの教育。出来ることは手を尽くした。全ては孫呉のくっころのため。あとはそれとなく、袁術さんを誘導すればいける。いけるはずだ。

 

「実はですね……千年に一度と言われる蜂蜜を見つけることが出来ました」

「なんじゃと!? 蜂蜜とな!」

「はい。それはもう……濃厚さ、味、品質。どれをとっても普通の蜂蜜とは比べ物にならず、食べた者は幸福のあまりに翼が生えるとまで言われているようです」

「そ、それほどのものなのか……ゴクリ」

「ですが見つかった場所が問題なのです」

「場所……ですか?」

「孫呉の首都、建業なのです」

「なんじゃと!?」

 

ククク……これで袁術さんは蜂蜜欲しさに攻め込むはず。もし、孫堅さんが怖いならば俺の話術で上手く誘導して

 

「うむ。それならば仕方ない。今回は諦めるのじゃ」

 

や………………る………………?

 

「え、袁術さま?」

「なんじゃ?」

「えと……蜂蜜ですよ?」

「それは先も聞いたぞよ」

「それを諦めになると? いえ、もちろん孫堅は強敵ですが我が軍はそれすら凌駕する強さを持っております。ですから……」

 

いや、これは何かの間違いだ。きっと孫堅さんへの恐怖が袁術さんの思考を停止させたのだろう。恐るべし孫堅の覇気。

 

「違うぞ紀霊。妾の我が儘で戦を起こすのが嫌なのじゃ。それならば妾が我慢すれば問題なかろう」

 

………………………………はい?

 

「美羽さま……!!」

「袁術さま……」

 

そんな袁術さんに感動する2人。いや美花? 何で君まで感動してるんですか? いや、ともかくこれ以上は得策ではない。とりあえずは一歩退こう。

 

「そう、ですか。わかりました。では、私はこれで……」

「うむ。妾のためにわざわざご苦労であった。その働きを民にも頼むぞえ。にょっほっほっ」

 

袁術さんが……民の為に?

おかしい、何かがおかしいぞ!?

 

 

~廊下~

 

 

「どういうことだ……何が起きてるんだ?」

 

俺は夢を見てるのか? あんな袁術さんどのルートでも見たことないぞ? まさか隠しルートでもあったというのか?

 

「御主人様」

「ん? 美花か?」

「はい」

 

本当に君って気配なく背後にいるよね。もしかしてニンジャだったりとかしない?

 

「何か顔色が悪い様子でしたので……何か問題がありましたか?」

「いや、問題があるというかなんというか……ん?」

 

あれ? そういえば美花には……

 

「美花。お前には袁術の教育を任せたよな?」

「はい。私なりに全力で教育を行わせていただきました」

「全力で?」

「全力で」

「……ちなみにどういうことを?」

「国のあり方。民への配慮。王に求められること……書物で学んだ私ですが、袁術さまは大変優秀でしたのですぐに覚えて頂けました」

 

お前かい!!!

たしかに教育は任せたけど誰があそこまでやれといった! どうすんだよあれ! 本当に袁術様みたいな感じだぞ!

ええい。こうなっては仕方ない。一旦孫呉は諦める。

 

「美花。俺の部隊に連絡を」

「孫呉に仕掛けるのですか?」

「いや……この国だ」

 

 

~王座・七乃サイド~

 

 

「はい美羽さま。蜂蜜水ですよー」

「おお! 待っておったのじゃ!!」

 

はぁ~ん。やっぱり美羽さまは可愛いですね。先の凛々しい美羽さまもいいですけど、やっぱりこのトロ~ンとした顔がいいですね!

 

「それにしてもさっきはビックリしましたよ。まさか美羽さまからあんな言葉が出てくるなんて」

「うむ! 実はコーユーが妾のためにいろんな話をしてくれるのじゃ! その話が面白くての……つい、頭に残るのじゃ!」

 

ほぇ~。あの侍女さんやりますね。ということは侍女を連れてきた紀霊さんが有能となりますね……むむむ。何か面白くないですね。

 

「やっぱり七乃は一番の配下なのじゃ! 妾は大好きじゃ!」

 

あ~~ん! 美羽さま!

ま、彼は本当に優秀ですので腐らない程度には飼いならしましょうか。

 

「それじゃ美羽さま。この後は……ッ!?」

 

その時である。謎の武装集団が部屋に入ってきたのだ。

 

「な、なんなんですか貴方達は!?」

「袁公路だな……その命、貰い受ける」

「………………」

 

はぁ!? 何馬鹿なこと言ってるんですか! 美羽さまも黙り込むほど怖がってしまったじゃないですか!

 

「だ、誰かいませんか! 曲者です!」

「無駄ですよ。張勲さん」

 

………………え? 紀霊さん? それに侍女さんまで?

 

「皆は疲れて寝ております。起こすのは無粋ではありませんか」

「こ、これはどういうことですか! まるで謀反みたいに」

「みたいに……ではありません。謀反なのです」

「ッ!!!」

 

 

~臧覇サイド~

 

 

これですよ! どうですかこの悪役っぷりは! 今までで一番輝いてる気がする!

 

「私……いやもういいか。俺はある理由で孫呉を討たなければいかん。だからこの国を利用し、孫呉と戦を起こそうと思っていたのだ」

「個人的な事情で私たちを巻き込んだということですか。中々のクズっぷりですね」

「この世は弱肉強食。弱いものは喰われるのが世の理。お前が一番理解してると思うが」

「………………」

 

その屈しない目……大変好物でございます。

さぁ! このまま袁術さんと張勲さんの絶望顔を拝見しましょうか!

 

「やはりそうであったか。理解したぞよ」

 

………………ん? 袁術さん?

 

「ほう……何を理解したというのだ?」

「妾は暗愚なのじゃ。しかも、最近まで気付かないほどじゃ。しかし、お主とコーユーが来てからこの国が変わったのじゃ。そんなお主が妾の下にいるのが謎であった。じゃが、今回の謀反で理解出来たぞよ」

「………………」

「妾なんかよりお主が国の長ならば民も納得出来よう。それならば妾は喜んで首を差し出そうぞ!」

 

いや、あの、袁術さん?

 

「すまんな七乃。このようなことになってしまって」

「……この張勲。どこまでも美羽さまの傍でいる覚悟です」

「七乃……」

 

あれれ? この流れって……

 

「紀霊……いや、名も知らぬ英雄よ。主にお願いがある」

 

あれれ? この流れって……

 

「な、何だ?」

「この国の民を安心させてほしいのじゃ。それと……妾の真名は美羽。主に覚えて欲しいのじゃ」

 

そして袁術さんは満面の笑みを浮かべ……

 

「さぁ! 来るがよい!」

 

堂々たる姿で前に出てきた。

 

「………………いや………………あの」

 

おい! どうなってんだよこれ! 発注したヤツと違うのがきたぞ! 返品させろゴルァ!!

 

「(な、何か話が違う気がするんすけど……)」

「(お、俺たちはどうすれば?)」

「(女子供は趣味じゃないけど……兄貴がヤルなら!)」

 

部下たちも焦りが見えてきた。そうだろうな。俺も焦るよ!

 

「………………ク」

「? どうしたのじゃ?」

「クソーーーー!!!」

 

そう叫んで俺は懐に入れておいた煙玉を地面に叩き付、あたり一面を煙が包んだ。

 

「なんじゃ!?」

「美羽さま!」

 

驚く2人を置き、俺たちは撤退をしていく。そして煙が晴れるとその姿はなかった。

 

「……いないのじゃ」

「ですね。それよりも美羽さま! お怪我はありませんか!?」

「………………」

「美羽さま?」

「びぇ~~~ん!! 怖かったのじゃ~~~!!!」

「あらあら、大丈夫ですよ美羽さま」

「七乃~~!!」

 

 

~荒野~

 

 

「クソ! 途中まで上手くいっていたのに! 何故だ!!」

 

何か自滅の気もするが……次だ! 次こそはくっころ展開に持っていく!! 

 

「覚えてろよーーー!!」

 

 

こうして俺たちは夜の闇へと消えていった……




前回、200のお気に入りから2000以上になっていたことに恐れております。
感想も多く頂き、歓喜して足首を捻挫するというのもありました(汗)
皆様の期待に応えられるように頑張ります!

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