―これは、μ'sが解散した後の物語...
去年も一昨年も見たはずの桜並木が、今年はどこか違って見える。本来ならば失われるはずであったであろうこの景色は、九人の女子高生によって守られた。ごくありふれた、当たり前の日常の崩壊、廃校という危機を、何でもない普通の女子高生が救う。そんな非現実的で矛盾だらけのサクセスストーリーは、スクールアイドルグループ「μ's」を生み出した。
「…新入生かぁ」
高坂穂乃果は、このμ'sのリーダーであった。「みんなで叶える物語」は、彼女から始まった。そして、「この物語」も彼女がすべての始まりとなる。
「穂乃果、もうすぐ入学式です。講堂に行きますよ」
「穂乃果ちゃん、今日はちゃんと挨拶考えてきた?」
穂乃果とともに3年生に進級し、μ's、そして生徒会の一員として穂乃果を支え続けた、
園田海未、南ことりの二人が不安そうに穂乃果を見つめる。
「大丈夫だよ。海未ちゃん、ことりちゃん」
「私からは、その、あまり勝手なことは言えないのですが…」
「ちょっとー!海未ちゃんがそんな調子だと穂乃果まで落ち込んじゃうよー!!」
入学式の3日前、穂乃果の父が怪我で入院した。全治3か月の重傷と診断され、手術は成功したが、未だに意識は戻っていない。そのため穂乃果の実家の和菓子屋「穂むら」は休業を余儀なくされ、穂乃果自身もあまり眠れない夜が続いていた。
「で、ですが…」
「海未ちゃん、今ことりたちが穂乃果ちゃんにしてあげるべきことは、少しでもいつも通りになるように、不安を感じさせないようにしてあげることだと思うよ?」
「ことり…、確かにそうですね」
今までもずっとそうであった。時には衝突しあうこともあったが、それも全て彼女らが彼女らを何よりも想っていることの証拠であった。この3人、そして6人を含めたこの誰が欠けていても成しえなかったあの栄光が、この自信と誇りに繋がっている。
「さあ行きましょう穂乃果!生徒会長らしく、しっかりと決めてきてください」
「やっといつもの海未ちゃんになった!」
「わ、私は最初からいつも通りです」
よく「○○ちゃんはうちの家族みたいなものだから」と言われ、それを鵜呑みにすることはない。だが今だけは鵜呑みにさせてもらおう、大切な、「家族」の笑顔を見たいから、そう思える瞬間であった。しかしその瞬間にも、再び日常が崩壊を始めていることを、彼女たちはまだ知らない。
とりあえず9人揃うまで頑張ります。