Fate/hollow order   作:神凪颯

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第3話です。
一応世界観を説明しますと、特異点ということもあり、ホロウ時空とはいえ、時間軸は多少バラバラになっています。
ですので、序盤ですでに凛がいるということになっています。

今回は少し短いですが、多少流血もありますので、承知の上ご覧ください。


第3話「夜」

 聖杯戦争

 どんな願いも叶えるといわれる聖杯を求め、7騎のサーヴァントと、それを使役する7人のマスターによるバトルロワイヤルである。

 

 ()()()()()()()()

 

 ことカルデアに記録されている過去の聖杯戦争は、1度しか行われておらず、その勝者ははっきりとしている。

 その者らが望んだ願望も叶えられ、聖杯は伝承通り願望機として役割を果たしている。

 

 では、()()聖杯戦争はどうだろうか。

 ある聖杯戦争では、マスターが全員倒されたどころか、街一つが滅んだ。

 ある聖杯戦争では、サーヴァントがサーヴァントを召喚し争った。

 ある聖杯戦争では、サーヴァントの殆どが倒れ、マスターのみの争いになった。

 ある聖杯戦争では、7騎対7騎によるサーヴァントの大戦が行われた。

 

 それらの記録はどこにも存在しない。だが、どこかに1人、誰か1人でも、それを知っているのであれば…聖杯戦争を体験しているのであれば、それは誰の記憶にも何の記録にも残らないが、確かに存在していたと言える。

 

 そう、例えば……

 誰も知らないところで息絶えた/生き続ける マスターの、たったひとりの戦いもーーー。

 

 

 色々バタバタしていると時間が経つのは早いもので、気がついたら日が沈んでいた。

 衛宮邸で居候という名の軟禁状態である。立香は一人部屋。マシュは凛に連れていかれてしまった。おそらく同じ部屋なのだろうが、不安というか、妙に落ち着かない。この気持ちはなんなのだろうか。

 だけど、特異点調査というこちらの目的がある以上、何もせず動かないわけにもいかない。

 少なくとも今は夜。手がかりが特に見つからない以上、街に出て探索に出るしかない。

 まずはマシュと合流して夜の冬木を探索しよう、そう思った。

 和室の引き戸を開けて周りを確認する。人の気配はない。

 マシュがどの部屋に連れていかれたかもわからないので無闇に動くことも出来ない。いっそのこと1人で探索に行ったほうが、まだ効率がいいのかもしれない。最悪令呪による強制召喚もやむなしなのかもしれないが、後でものすごく怒られそうだ。

 簡単に外に出て、何か異常が見つかったらすぐに戻ってこよう。夜になってからダ・ヴィンチちゃんと連絡もとれなくなっている。向こうで障害かなにかが起きているのかもしれない。

 だが、じっとしているわけにもいかないので、立香はこっそりと部屋を抜け出し屋敷の外に出る。

 

 「すごく、静かだ…」

 

 思わず言葉が漏れた。夜の深山町はとても静かで、風の音が少し聞こえるくらいだ。少し靄のような霞がかってはいるが、何も見えないほどではないので衛宮邸を後にする。

 少し、肌寒いと感じた。

 気温のせいだろうか。そう考えたが、違う。

 街の雰囲気がなにかおかしい。

 静かなのは夜のせいだけではないと、直感で思った。

 では、何が違う?

 

  目の前の坂の下で黒い影が通り過ぎた

 

  異常はない(ここはだめだ)

 

 坂を降りたところで辺りを見回す。

 昼に通った道と同じ/違う 道であるが、まっすぐに歩く。そこで、ふと気がついた。人の気配どころから、人が生活している気配すら見当たらなかった。

 それはまるで、文明が過ぎた後の遺跡にいるような、誰も存在しないという、孤独感に似たなにかである。

 

  曲がり角から黒い影が現れ民家に入っていく

 

  異常はない(すぐ戻らないと)

 

 体に走る悪寒が強くなる。

 

 ここは安全だ(嫌な予感がする)

 

 大丈夫、まだいける(だめだ、帰ろう)

 

 

 

 街の中を歩いていくと大橋の近くに来た。

 昼にも通ったところだが、なにかがおかしい気がした。

 街灯が灯っているが、人気のないこの空間では不気味とさえ感じる。

 

  自分ダケーー

 

 「今日は…このあたりにしようかな」

 

 住宅街に異常はなかった。あまり遠くに行くには1人では危ないかもしれない。次に探索に出る時なマシュも連れていこう。

 

  マタ、自分ダケーー

 

 帰ろうとして振り返ると、目の前が眩んだ。

 

 次に気がついた時に、立香は黒い影に覆われていた。

 

 

 「なっ…!」

 

 声にならない情けない声をあげたのかもしれない。

 黒い影はシャドウサーヴァントとも違い、まるで獣のようだった。

 

  ジブンダケ、助カルツモリカーーー

 

 「これは一体…!!」

 

 本能が逃げろと叫んでいる。

 怖くない(恐ろしい)

 なんとか体を動かし、黒い影からの襲撃を躱しながら走り抜ける。動きはそんなに早くはない。

 

 だがそれはーー()()()1()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 衛宮士郎は魔術師である。

 冬木の大火災と言われる大惨事を生き延びた人間であり、瓦礫の中で息絶えそうになったところを、後の養父となる衛宮切嗣に助けられた。

 士郎は、自分を助けてくれた切嗣を正義の味方と信じ、彼の死後も、自分は正義の味方(切嗣の呪い)であるという目標を持っている。士郎はその目標を持ち、己が死ぬまで/死んだ後も 正義の味方でいようと思っている。

 基本的に使える魔術は大きくわけて2つ。「強化」と「投影」である。それ以外の魔術は使えず、使い方すらわからない。

 そんな彼が、この冬木の地で起きた聖杯戦争の勝者、というのはどれほどの奇跡であっただろうか。

 

 士郎は今、冬木で感じている異変を探していた。なんとなく、気味が悪いからである。

 今は夜。簡単に支度を整え、初めての/何度目かの 夜を探索する。こうして夜の街を探索するのが、今の彼の日課になってきている。

 今日はどこを探索しようかと薄暗い夜道を歩き、慣れた足取りで住宅地を歩いていく。すれ違う人はなく、人の明かりも存在しない。

 

 これは異常だ(いつものことだ)

 

 大橋公園に出た。冬木大橋が深山町から新都へと繋がっている。

 ノイズ混じりの記憶がふと蘇る。

 

『貴方はまだ、ここに来るのは早かったようですね』

 

 気に入らない。その声を思い出すだけで無性に腹が立つ。理由はわからない。きっと、気に入らないとか、気が合わないとか、そういうものだろう。

 その声を聞くのも、日付さえ間違わなければ()()()1()()()()だからだ。

 この公園に用はない。この公園に踏み入っても、()()()()()()()()()()()()()

 

 まだ大橋と、その向こうの新都を調べていない。

 公園を素通りし、大橋を渡ろうとする。目障りな獣の声は、今日は聞こえない。ここに来るまで遭遇もしなかった。避けているのか、それとも毎日出現するわけではないのか。それはわからない。

 だが、いないなら都合はいい。

 

 「暗いな…やっぱり夜だから…ってのもあるんだろうな」

 

 大橋の中間くらいまで来た。もう少しで新都だ。

 そう思ったときーーー

 

 新都のビルの屋上でなにかが光った。

 

 「な……に……っ…!」

 

 気づいた時には、体の胴の半分が消えていた。

 一瞬で身体が熱くなる。身体が危機を感じているのと、無くなった胴から溢れる自らの血液でだ。

 

 衛宮士郎はここに来るにはまだ早かった。

 普段出来ることが出来ていないと思った。

 なにかが足りていないと思った。

 それを見つけられなければ、衛宮士郎はこの橋を渡ることは出来ない。

 何が足りないのか、そう考えを巡らせる間もなく、再び発せられた光とともに、彼の首から上は吹き飛ばされ、衛宮士郎は命を落とした。

 

 

 

 

 そして世界(虚構)はーーーまた廻る

 

 

 

 

 それはいつだっただろう。

 いつの間に起きてしまったのだろう。

 黒い影は、立香の周りを取り囲んでいた。獣のように呻きながら、立香をじっと見ながら、獲物を捉える獣のようにこちらを伺っている。

 どこから出てきたのか。いつからそこにいたのか。

 考えてもわからなかったが、直感でそう思った。

 

 この黒い影は、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「すぐに…戻らないと…!」

 

 

 辺りを見回してなんとか突破しようとした瞬間、目眩がした。立ちくらみなんてものではない。世界そのものが目の前で揺れているかのような錯覚。

 まるで世界がぐるっと廻っているかのようだ。実際の時を刻むということではなく、それはまるでローテーションする世界の修正力や抑止力を無視して、そこだけ切り離されて廻り続けるかのように……

 立香その目眩とともに動けなくなり、やがて黒い影に飲みこまれた。

 身を引き裂かれながらも、痛くは感じなかった。なぜなのかはわからない。だが、もしかしたらこの影は、自分と同じなのではないのだろうかーーー。

 手足が切られ、喉が裂かれ、頭と身体が別離したとき、立香の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 Re:turn to 1st Day...

 




読んでいただきありがとうございます。
今回は夜のお話ということで、昼と夜を交互にやっていこうと思います。
また、設定と致しまして、この特異点に存在する限り、立香もホロウの冬木の人間という扱いになりますので、他のキャラとともに同じ時間を共に過ごすことになります。

次回は昼の話です。
感想、誤字脱字などがあれば、遠慮なくお願いします。
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