『Fate/contract』   作:ナイジェッル

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 宝具・武具紹介№19~25追記



第11話 『少女の決意』

 第97管理外世界でロストロギアと関わりがあると思える魔導師三名、使い魔一匹と接触したエミヤは、クロノと共に事情聴取への協力を求めた。しかしフェイト・テスタロッサとその使い魔アルフは抵抗し、逃亡。追跡する間もなくその場を離脱した。

 そこで最後までその場に残っていた魔導師二名を確保。一悶着があったものの、協力的な姿勢は強く、アースラまで同行してもらうことになった。

 

 「ついたぞ。ゲート酔いは大丈夫かね、二人とも」

 「だ、大丈夫です」

 「僕も平気です」

 

 アースラの転移室に四つの光の柱が立ち、その中からクロノ・エミヤ・なのは・ユーノが姿を現した。転移初体験のなのはは慣れない移動法に少しフラついていたが、すぐに体調が回復した。

 

 「よし、ならついてきてくれ」

 「あの……わたし達はこれから何処に連れていかれるんですか?」

 「取調室だ。まぁ、お話を聞くだけだから安心するといい」

 

 エミヤとクロノはなのはの質問に答えながら、先行して案内を務める。それでも見知らぬ場所に連行されたなのはは若干警戒をしており、腰を低くして、レイジングハートを両手で持ってエミヤ達の後についていく。

 

 《ユーノ君、いったいここは………?》

 《………次元航行艦の艦内だね》

 《え~と、つまり?》

 《簡単に説明すると多くの次元世界を渡る―――――》

 

 ユーノの説明を念話で受けているなのはだが、あまり解らないという顔をする。小学生にそういった話をいきなり理解させるというのは難しいのだろう。

 

 「……ところで、君達」

 

 エミヤは転移室の出口である大きなスライド式の扉を通った際に、魔導師二人に振り返って話しかけた。

 

 「そろそろ気を楽にしてもらいたい。艦内で局員以外の人間がデバイスとバイアジャケットを展開したまま動き回られると、多少なりとも此方も警戒せねばならないからな」

 「え、あ、はい。そうですね。じゃあ――――」

 

 地球で初めて出会った際、エミヤから強い圧力(プレッシャー)を受けたなのは達は少し彼を恐れていたが、その優しい口調に安心して素直に従った。

 

 「レイジングハート……おつかれさま」

 

 主の労いの言葉を聞いたレイジングハートは、純白のバリアジャケットは解除し、その杖の形態から赤い宝石の形態に移行した。

 

 「これでいいですか?」

 「ああ、問題ない。では、そこの君も頼むよ」

 「え? 僕ですか?」

 「なんでフェレットの姿に化けているかは知らんが、君にも戻ってもらわなければ示しがつかんだろう」

 「ああ! それもそうですね。ずっとこの姿でいたので忘れてました」

 「―――――?」

 

 続けてエミヤはユーノにも変装を解くよう進め、彼もそれに賛成した。

 なのはは何の話をしているか解らないらしく頭に?マークを付けている。そして次の事態に彼女は石化することになる。

 

 「変身解除っと」

 

 そうユーノが呟いた瞬間、フェレットの体は真緑色の光に包まれ、その中から一人の金髪の少年が現れたのだ。

 

 「ふぇええええええええええええええええ!?!?」

 

 少女の叫び声がアースラ艦内に響き渡る。

 

 「ど、どうしたの なのは?」

 

 何故なのはが絶叫したのか分からないユーノは困惑する。

 

 「でも、だってユーノ君、フェレットで、人間―――ふぇぇぇぇぇ!?」

 「え、僕達が最初に出会った時ってこの姿じゃぁ」

 「最初っからフェレットだったよ~!」

 「……………あああああああああああああ!!」

 

 

 ☆――――見解の相違があったようなので話が纏まるまで暫くお待ちください――――☆

 

 

 

 「彼女はユーノ君を人間、しかも男の子と知らず同居していたようだな」

 「ああ。それにどうやら風呂にも一緒に入ったことがあるみたいだ」

 

 エミヤとクロノは彼女らの赤面しながらのやり取りを少し離れた場所から見守る。

 なんというか、若いっていいなぁと素直に思う。特にエミヤは。

 

 「まぁユーノ・スクライアはまだ9歳の子供で高町なのはも小学生。別に罰を受けるほどのことではないだろう」

 「だな。淫らな考えも無かったようだし、彼女もユーノ・スクライアを咎める気がないようだ」

 

 大人ならまだしも9歳の子供同士の事故なら問題ない。変に咎めることもないだろう。

 むしろ今の内でしかあんな間違いは犯せない。子供の時に多くのラッキースケベを楽しんでおくのも若さの特権だとエミヤは思う。口には出さないが。

 

 「しかし、生前を思い返せば他人事とは思えんな……」

 「どうかしたのか?」

 「いや何でもない…………あちらはどうやら話に決着がついたようだな。リンディ艦長も待たせてある。そろそろ向かうか」

 

 両名とも顔を羞恥の色に染まりながらエミヤ達のいる場所まで歩いてきた。

 クロノもそうだが最近の子供は精神の発達が異様に速い気がする。エミヤは元が享年二十代後半の男性なので例外である。

 

 「よし、話は済んだな」

 「「は、はい」」

 「なら行くぞ」

 

 

 

 

 ………

 ……

 …

 

 

 リンディ・ハラオウンお気に入りの部屋である和風式の部屋に到着したなのはとユーノは畳みの上で正座する。それに相対するように絶妙な位置に座るリンディ艦長。そしてその隣にクロノとエミヤが座って控えていた。

 何故時空管理局の次元航行艦にこのような日本文化が詰め込まれた部屋があるのか……それを聞きたそうななのはとユーノの反応は、至極尤もである。

 何を隠そう、このアースラの艦長リンディは日本文化に染まりに染まっている。これも数十年前、爆発的なジャパニーズブームがミッドチルダを襲い、その際、丁度イケイケだったリンディの青春に大きなインパクトを残した為……と、息子クロノは語っている。次元世界の情報が集まりやすいミッドチルダは、例え管理外世界の文化も節操なしに取り込んでしまう辺り手に負えない。

 

 「ではユーノくん。色々と困惑しているようだが、この独特な部屋についてはスルーしてくれ。詳細は知りたければ後で説明する」

 「は、はい」

 

 エミヤはまずユーノ・スクライアから話を聞くことにした。なんにしてもこのまま呆けられては何も進展しない。まぁ気になる気持ちは分からんでもないが、今は心の片隅にでも置いてもらうしかないだろう。

 

 「まずどういった経緯で、どのような過程を通してきたかを説明してくれ。そこの地球出身の少女が魔導師となったことも込みでな」

 「分かりました……全て、お話致します」

 

 彼はゆっくりと口を動かし、分かりやすいようにこれまで自分達の身に起こったことをアースラの面々に説明し始めた。

 何故ユーノ・スクライアがこの管理外世界にいるのか。どうして地球の小学生がデバイスを所有しているのか。次々とそれらの疑問の答えが出されていった。

 

 「つまり君はジュエルシードの発掘者であり、それ故に今回の事件にかなりの責任を感じ、自らロストロギアを単独で回収に来たというのだな」

 「………はい」

 

 その心意気は9歳の少年にしては確かに見事なものだ。

 だが……考えが浅はか過ぎる。

 

 ロクな装備もせずに主力武装はデバイス一つ。そのデバイス、レイジングハートもユーノ本人との魔導師適性があまりにも低く、上手く使いこなせず暴走状態にあったジュエルシードに返り撃ちに遭い負傷を負った。魔力素質の高い高町なのはが運よく彼の念話をキャッチしていなければ、ユーノは地球でその短い人生に幕を下ろしていただろう。

 それに静かな苛立ちを覚えたのは、クロノ・ハラオウンだ。少なからずユーノの行いは蛮勇に等しい。その志も、行動力も、かつての自分を見ているようで、なおのこと腹が立ったのかもしれない。

 

 「分かっているのか? 一歩間違えれば君は死んでいたんだぞ」

 「………」

 

 ロストロギア級の代物にはそれなりの体勢を整えて処理しなければならない。また艦隊を襲撃した犯罪者もジュエルシードを狙っているのだから尚更だ。

 

 「さらに魔導師の素質があるとはいえまだ幼い一般人の少女に魔法を教え、命の危険性があるロストロギアの回収を手伝わせた。唯でさえ無断で魔法文化0の地球で魔法を使用しただけでも罪になるというのに、一人の少女をこの事件に巻き込んだ……これだけの罪が君にはある」

 

 エミヤは淡々とした口調でユーノの罪を口にする。

 なのははそれに少なからず反発しようとしたが、エミヤの圧力がそれを許さない。

 しかし、ユーノは怯まなかった。開き直っているのではなく、まっすぐその事実を受け止めていた。

 

 「僕が犯してしまった罪の数は多く、またそれに対して言い逃れする気はありません。然るべき刑罰は受けます」

 

 ユーノはエミヤの目線から逃げずにハッキリと言った。言い訳はしない、と。

 普通の子供なら自身の行いに悔いて泣き喚くだろうに、この少年はどこまでも真っすぐで、堂々としている。これはまたなかなかの逸材であるとエミヤも、クロノも、心の中で呟いた。

 

 「………そうか。自身の過ちを自覚しているのならいい」

 

 エミヤは心臓を握りしめるような圧力を消して、穏やかな口調に戻る。

 

 「確かにユーノ君には罪がある。だが、君達のおかげで地球の被害を最小限に食い止められたのもまた事実だ。それらを考えるとイーブンといったところだな」

 

 この地球に世界の安全装置(アラヤ)が存在すれば海鳴市という小さな街など一夜も掛からず消し飛ぶ。世界を死滅へと導く原因であるジュエルシードの除去に多くの人命が共に抹殺されるのだ。

 仮にアラヤが存在しなくとも、ジュエルシードの暴走でどちらにせよこの世界は消滅する。それらの最悪な結果に為らなかったのも、彼らのおかげだ。

 到着に遅くれた時空管理局に代わり、ジュエルシードを事前に回収に回ってくれていたユーノとなのはの功績を考慮すれば十分罪を軽減できる。遅れて駆けつけてきた時空管理局にも非があるのだし。

 

 「君の行動は、軽率なものではあったが無駄なものではなかった、ということだ」

 

 

 

 

 ◆

 

 

 ユーノの処罰はこの事件が解決した後に言い渡されることとなった。

 民間人である高町なのはにはロストロギアの危険性、そしてその例として歴史に残る悲劇を彼女に聞かせた。

 自分達が相対してきたロストロギアという代物は、決して安易なものでないということを理解させるために。これ以上、巻き込まない為に。

 

 「ふぅ………」

 

 リンディは角砂糖数十個分が投入されたお茶、誰が名づけたのかは定かではないがリンディ茶というものを優雅に味わい、そして今までふわふわとしていた雰囲気を引き締め、艦長としての顔になり、なのは達を見据える。

 

 ““いや、そんなモノで意識を切り替えられても困るのだが””

 

 口に出してツッコミたかった二人の少年はこの場の空気を読み、心の中でツッコミを入れた。

 それを知らずにリンディは威厳のある表情で静かに口を開く。

 

 「ここからが本題です」

 

 凛とした口調でリンディは――――

 

 「この件は私達、時空管理局が全権受け持ちます」

 

 ――――と、彼女達に言い渡した。

 

 「君たちは今回のことはきっちり忘れてそれぞれの世界に戻り、元通りの生活に戻るといい。何も自分から危険な事件に飛び込む必要はないだろう」

 

 クロノは畳みかけるように言葉を紡ぐ。全ては彼らの身を案じているが故の言葉だ。

 そもそも彼らに今回の件に介入する権利はない。命を晒してまで関わることもないだろう。

 

 「「………」」

 

 なのはとユーノはそれに納得できない反応を示す。

 確かに今日まで彼らは必死になってロストロギアを回収し、街を、地球を守る為に尽力した。ここまで来て、今更「関わるな」と言われても簡単には納得できないだろう。

 それでも、理不尽だと、不快感を持たれても、彼らを突き放す義務があるとクロノは思っている。しかし、母の考えは―――息子と違っていた。

 

 「まあ急に言われても気持ちの整理も着かないでしょうし、今夜一晩ゆっくり考えて二人で話し合ってそれから改めて話をしましょ」

 「―――ッな!」

 「………」

 

 リンディの提案にクロノが反応する。エミヤも眉を顰めた。

 

 『今夜一晩ゆっくり考えて二人で話し合ってそれから改めて話をしましょ』

 

 この言葉の意味は――――誘導だ。

 何故、今ここで高町なのはの魔力封印の実施と違法所有しているデバイスを今取り上げない。何故、一晩も考える時間をやる必要がある。

 目の前の二人が馬鹿がつくほどお人好しだということは素人が見ても嫌でも分かる。そんな子供達にそのような提案を出せば、どのような答えが返って来るかは想像するに難しくない。本当に関わらせたくないのなら、強制的にでも、今すぐ行動に移さなければならないというのに。

 

 ”まさか、母は………!!”

 

 デバイスを使わず飛行・結界などの魔法を難なく使い熟す少年ユーノ・スクライア。僅か8~9歳で膨大な魔力を所有する一般人の少女高町なのは。

 上手くことが運べばこの強力な人材を二人も確保することができるこの上ないチャンスとリンディ・ハラオウンは見ているのだ。そう、クロノは確信した。

 

 第一に元々第97管理外世界は何故か優秀な人材を多く選出されている。

 

 自分の師であり歴戦の勇士と謳われたギル・グレアム。

 陸の有能な指揮官として有名なゲンヤ・ナカジマ。

 元聖王教会の一線級の騎士であり泰山店主の言峰綺礼。

 友人でありアースラの主力戦力の一人エミヤシロウ。

 

 クロノの知っている人物だけでも有能な人間の名がすらすら出てくる。高町なのはも管理局に入局すれば瞬く間に名が広がるだろう。『稀代の天才』『半年も経たずに魔導師ランクAAA』『単独戦闘可能な砲撃魔導師』と。間違いなくだ。

 

 リンディの思惑は一人の管理局員としては非情ではあるが正しい判断だ。彼女達の力があれば、また多くの人々を助けれることに繋がる。アースラの隊員達の殉職率も抑えることが可能だ。

 だが代わりに―――――高町なのは。ユーノ・スクライア。二人の幼い子たちの平穏な人生を蔑ろにすることになる。なにより利用しようというのだ、この子供達を。

 

 “冗談じゃない!”

 

 クロノはそんなことを許容できるほど大人ではない。

 そう、自分は子供だ。青臭い考えや思想を持って何が悪い。

 

 《なぁエミヤ。今、僕が艦長の意志にそぐわないことを考えているんだが、やっぱり執務官失格かな?》

 《だいたいの予想はついている。本当にお前は甘い考えを持っているな。執務官とは思えないほどの馬鹿者だ。だが―――》

 《………だが?》

 《たまには底無しの大馬鹿者になるのもいいんじゃないか、とオレは思っている》

 《―――そうか》

 

 念話でエミヤの言葉を聞いたクロノは決心がついた。

 

 「僕が送っていこう。元の場所でいいね」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 海鳴公園と名付けられた場所まで二人を送ったクロノは、辺りにアースラのサーチャーが飛んでいないかを確認する。

 

 ”監視の目がない。恐らくエミヤが手回しをしてくれているのだろう”

 

 自分の我が儘に付き合ってくれた友に、今は感謝するしかない。帰還したら何か奢ってやろうと思えるほど、今助かっている。最高の援護だ。

 

 「君達はこれからどうするつもりだ。艦長は一晩じっくり考えろと言っていたが、僕としては今ここで聞きたい」

 

 沈む夕日を背後にクロノはなのはとユーノに問いかける。

 

 「私は、大切な友達と始めたことを最後までやり通したい」

 「僕も……なのはと同じ気持ちです」

 

 やはり思っていた通りこの二人は心が強い。何事も最後までやり遂げる熱意を持っている。まだ9歳の子供とは到底思えない強さだ。

 本来なら喜ぶべきことなのだろう。彼らの勇敢さを称えて然るべきなのだろう。しかし今この瞬間だけは、その強さが邪魔なものにしか感じなかった。

 

 「………はぁ」

 

 魔法の恐ろしさを知っているユーノはともかく、少し前まで平和な生活を成就していたなのはにロストロギアの危険性を伝え、さらにもう危険な現場に来ることが無いように配慮もしたというのにまだ此方の世界と関わりを持とうとしている。それどころか協力したいときた。

 

 「いいかい高町なのは、ユーノ・スクライア。これは遊びじゃないんだ。君達だって何度も死にそうな目に遭っただろう。痛い目に何度もあっただろう。それを理解した上でまだ僕達に協力したいというのか?」

 

 「「はい」」

 

 即答するなのはとユーノ。

 

 ああ分かっていた。分かっていたとも。

 彼らの瞳の奥に力強く猛っている勇敢さ。

 幼子とは思えぬ責任感の強さ。

 考えを変えることなど、無いだろうことも。

 

 それにクロノは――――――、

 

 「………いい加減にしろよ。君達には大切な人達がいるんだろうが!」

 

 今までにないほど剣幕な表情を露わにし彼女達に向かって吠えた。

 先ほどまで溜まっていた感情が噴き出るように口から出てくる。

 もう、ここまでくれば止まらない。

 

 「平穏な生活、家族との関係、友達との友情という大切な日常を君達は蔑ろにしようとしているんだぞ! なによりそれらを差し置いてこれ以上危険な事件に君達を巻き込みたくはない!!」

 

 子供が戦場に出るなど管理局に入局を志願した自分達だけで十分だ。まだ歳が二桁にもなっていない一般市民の少女と少年をこれ以上此方の都合で危険な目に遭わせたくない。遭わせていいはずがない。

 

 それに――――

 

 「もし君達の身に何かあったら家族はどうするんだ!? 残された人達はどんな気持ちになると思う!!」

 

 クロノは幼いころに父、クライド・ハラオウンを亡くした。その原因はあるロストロギアによるものだった。

 そして父の遺体も何もない葬式に赴いた自分はあの時何を思ったのか。母のリンディは夫に先立たれてどんな思いをしてきたのか。

 

 だからクロノは己に誓った。

 ―――これ以上、自分のような犠牲者を増やしたくない、と。

 

 世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだ。だからこそ、自分は時空管理局に入った。

 少しでも被害を少なくしようと思い、その行為が極微弱なものであっても、意味があるのだと信じて。そして目の前にいる二人の子供もまた、自分が守るべき人間だ。戦わせるべき人間じゃない。

 

 「もういいから、君達は今まで通りの生活に戻んだ………!」

 

 懇願するような声でクロノは言う。

 

 いくら才能があろうと、いくら能力が高かろうと、これ以上協力してもらうわけにはいかない。何かあってからでは遅いのだ。

 

 「私は―――」

 

 クロノの思いが込められた言葉をなのはは正面から受け止め、そして―――

 

 「それでも、やり通したい。お母さんとも今晩話をして、絶対帰って来るって約束するの! 無事やり遂げて、帰ってくるって!!」

 

 彼女は堂々と自分の気持ちを言った。

 

 その言葉に軽さなどない。重い決意が込められていた。

 そして彼女の目には決意を具現化されたような、強い光がある。

 友達の為、やり遂げたいこと以外にも、まだ理由がある目だ。

 

 「私は、大切なことを投げ出すことなんてできない。絶対に」

 「………馬鹿馬鹿しい。呆れ返る」

 

 もう溜息すらでない。

 これほどの頑固者だと今更言葉を曲げることなどあり得ないだろう。

 

 「………なら、家族に今までのことを話して了解を得たのならレイジングハートを通して連絡を入れてくれ。勿論その会話の中に魔法の存在を含まないように」

 

 疲れた。ただただ疲れた。あれだけ言っても止まらない頑固さに眩しいものを感じたといえば感じたが、ここまで強いと目に毒だ。直視できたもんじゃない。帰還したらヴァイスと酒でも飲もう。未成年だ何だと煩いエミヤには内緒で。

 

 「あ、ありがとうございます!!」

 「家族が断りを入れたら協力させないからね。絶対にだ」

 「「はい!」」

 

 今のなのはの気概と決意があれば彼女の親も了承するだろう。もう高町なのはとユーノ・スクライアがこの事件に協力することは確定されたようなものだ。

 ならばせめて、この事件が解決するまで全力をもってその命を守る。そして無事家に帰してやることが自分にできる精一杯のことだ。

 家に向かって遠ざかっていく二人の後ろ姿を見送ったクロノはアースラに転移魔法の準備を頼んだ。少々苛立ちを込めた口調で。

 

 「………この結末を変えられなかった自分の非力さに涙が出るな」

 

 結局、あの二人の子供の手を借りなければならないことになる。

 物事とはそうそう都合よく運ばないものだとクロノは改めて実感した。

 

 




 心境描写が上手く書けない………!!

 ユーノはまだ9歳の子供だから流石に淫獣とは書けないですね。アレは事故だったし。
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