『Fate/contract』   作:ナイジェッル

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第40話 『狼男の若き好敵手』

 見渡す限り砂漠で覆われた無人の管理外世界。そんな辺鄙な場所をヴァイス・グランセニックは常人では出せないスピードで疾走していた。しかも背中には棺桶のような巨大な鉄の箱を引っ提げている。

 

 「チックショウ! なんでったってこんな大切な日に………!」

 

 今日は待ちに待った新作ゲームの発売日であった。

 数日前に新型デバイスを買ってしまい、残金も残り少ないという資金難の中で、有り金全部財布の中に突っ込んでいざ出陣、といったところでまさかのヴォルケンリッター様の出現である。しかも頼れる上司エミヤとクロノは時空管理局本局に出向いている。最高責任者のリンディもサポート万能のユーノもだ。

 つまり第97管理外世界にいて動ける魔導師はヴァイス、フェイト、なのはの三名のみ。あとつい先日修行帰りしてきた使い魔アルフ一匹。

 唯でさえ人手不足に悩んでいたというのに、主戦力さえも今日は欠番だ。これを不運と言わずしてなんと言う。

 

 「あれか!」

 

 ヴァイスは二㎞先で派手にどんちゃん騒ぎを起こしている騎士を双眼鏡越しで発見した。この距離からであっても見間違えるわけがない。あれは烈火の将シグナム。もう見慣れた凛とした顔と立派な巨乳である。そして相変わらずのナイスバディだ。

 彼女はただいま気持ち悪い巨大な魔物と戦闘中。激しい攻防が行われていた。

 

 「なんかエロゲで出てきそうな魔物と戦ってんなぁ、おい」

 

 幾つもの触手を操り、器用に猛攻を続けるワーム系の魔物。あのシグナムが苦戦しているところから、恐らくAAAランク級だろう。

 上等なリンカーコアを欲するのであれば当然その持ち主は強大であることを意味する。その危険度は言わずもがな。彼らも難儀な役目を請け負っているものだ。

 

 「―――あ」

 

 とうとうシグナムはワームの触手に捕えられた。

 触手に身体全体を強く締め付けられるシグナムは苦悶の表情を露わにする。

 あれは拙いな。強固な防御力を有するはずの騎士甲冑が徐々に形を歪まされていく。

 

 「おいおい、何やってんだよ烈火の将」

 

 ワームはその気持ち悪い口をクパァ、と大きく広げ、今にもシグナムを飲み込まんとしている。このままではシグナムが捕食されてしまうだろう。

 

 〝勝負あったな………しかし”

 

 ヴァイスはアレを唯眺めているだけでいいのか。

 今自分の視界で女性が喰われようとしている。無残な死を迎えようとしている。

 例えシグナムが犯罪者と言えどこのまま見過ごすことは大義なのか。男として、人として、局員として、それが正しい選択だと胸を張って言えるのか? 

 ――――ああ、分かっている。分かっているとも。

 

 「見捨てる選択肢なんて、ありゃしねぇな」

 

 お人好しのヴァイスがそんな状況を目にして放っておくわけがない。ピンチになっているのが女性なら尚更だ。

 恐らく自分は彼女を見捨てたら後悔する。男として腐ったも同然だ。

 例えこの判断が時空管理局全体の正義に反するものでも構わない。今は組織の正義ではなく、己の正義を信じて行動に移すのみ。

 

 「おらよっと」

 

 すぐに彼は引っ提げてきた鉄箱の蓋を思いっきり蹴り飛ばした。そしてその鉄箱の中から折り畳まれていた全長2mの巨大な対艦対物ライフル“砲”ヘルシングを引っ張り出し、すぐさま元来の姿に戻す。

 ぶっちゃけコレは、人の使える代物ではない。重さなんて40キロを軽く超えている。重量軽減術式の札を張っていなければ、ヴァイスはロクに動かせもしない。

 魔導の英知に感謝しつつ、ヴァイスは五発しか入っていないカートリッジを殴るように荒く装填する。ゴガンッ、と重々しい音を奏でて取り付けられたカートリッジ。セーフティを解除し、砲口をワームのド頭に狙いを定める。

 ガゴンッ! とヘルシングから一個の空薬莢が排出された。ベルカ式のカートリッジシステムは暴走しやすいのがネックだが、まぁなんだ、確固たる根拠はないが何とかなるだろう。それにリスクがある強力な兵器ってのもなかなか良いじゃないか。全くもって男の浪漫を体現したかのような武装である。

 

 六重の魔方陣が砲口の前に展開する。その一つ一つが細かい術式が込められた強力なもの。円型の魔方陣は六つ全て急速な回転を始める。

 

 ―――カチッ

 

 ヴァイスは迷いなくそのゴツイ引き金を引いた。

 砲口に充填されていた魔弾は、魔方陣を通過するごとに過激な回転を起こし、スパークを発生させ、強力な衝撃波を周囲に及ぼしながら一直線に跳んで行く。

 

 「コレの最初の犠牲者が化け物で丁度良かったぜ」

 

 二㎞先のワームの顔面に見事に直撃。なんとたったの一撃でシグナムを手こずらせていたワームを轟沈させた。

 素晴らしい威力だ。なんという弾速だ。どれをとっても申し分ない。欠点を述べるとするのなら、燃費の悪さとあまりに派手な威力故隠密には向かないことくらいだろう。

 絶体絶命のなか、いきなり助けられたシグナムは砲撃の飛んできた方向を睨んできた。どうやら自分が射たことに気付いたようだ。シグナムの表情は手に取るようにわかる。『なぜ敵である私を助けたのか』とでも言いたいのだろう。

 

 「ハッ………無粋なこと言ってんじゃねぇよ」

 

 ヴァイスは、ヴォルケンリッターを魔法プログラムなどという目では見ていない。

 彼らには意志がある。信念がある。この二つが存在している時点で、ヴォルケンリッターは人間の枠に入っている。ならば、その人間が命を落とそうとしている場面に出くわせば、助けないわけにもいかないだろう。

 

 「さて、そんじゃこっからは情の入る余地はねぇな。宜しく頼むぜ、フェイト嬢ちゃん」

 

 ヴァイスの呟きと同時に、シグナムの遥か頭上に黄金色の魔方陣が展開された。

 現在、エミヤとクロノという主力はいない。だが、彼らの代行を務められる猛者はいるのだ。

 

 

 ◆

 

 

 「助けたり襲ったりと、忙しい奴らだな」

 

 シグナムは溜息を吐く。

 敵であるはずのヴァイス・グランセニックに窮地を救われた後は、闘う気満々のフェイト・テスタロッサが現れた。

 

 「やれやれ……」

 

 彼らはどうやら、感情で動く類いの輩らしい。

 それはあまりにも未熟。そして戦士としても未完成。

 だが、その人としての在りようは好ましく想えた。

 

 「フェイト・テスタロッサよ。念話であの狙撃手に言っておけ。

  ―――その甘さは何時か命取りになるぞ……とな」

 

 フェイトはシグナムの言葉に少し間を置いて頷いた。

 

 「今、念話でその言葉を送りました………………あの、ヴァイスさんから返信が来たんですけど、その、聞きますか?」

 「聞こう」

 「分かりました―――――“余計なお世話だ騎士シグナム。次はお前を容赦なく狙う。今度は情を挟まねぇぞ。あと俺の名前はヴァイス・グランセニックって言うんでしっかりと脳髄に刻んどけ”……だそうです」

 「………ふふっ。やはりあの男は面白いな」

 「ええ、なんたってアースラ隊のムードメイカーですから」

 

 二人は苦笑し合うが、次の瞬間二人は爆発的な速度で互いに武器を振りかざした。

 バルディッシュとレヴァンティンが激しくせめぎ合う。

 三度目の戦いを迎えた今、もはや話し合うことなど何もない。

 己を止めたくばその大鎌で止めて見せろ。言葉で止まれるほど、自分達の覚悟は脆くはない。それを分かっているからこそ、フェイトもまっすぐな眼差しでシグナムを見ている。ここで倒す。その意思を籠めて。

 

 「貴様のリンカ―コア、今日こそ貰い受ける」

 「私こそ―――今日、此処で、貴女を捕まえる!」

 

 

 ◆

 

 

 フェイトとシグナムの戦闘が始まった。

 今まで通り技量はシグナム。スピードはフェイトの方が優れている。武装はお互いにカートリッジシステム搭載型。どちらに軍配が転んでもおかしくはない。

 両名戦況を一気に傾けられる切り札があるのだから、扱うタイミングで決定的な差が生まれるものだ。それを見極めながらの戦いなれば、より高度な戦術が必要とされるだろう。

 

 「いやー派手だねぇ」

 

 いやはや、これだから高ランク魔導師同士の戦いは見て飽きないのだ。

 大量の魔力を惜しみなく使い、派手な魔法を披露し合う。己のような狙撃手には、一生出来ない熱い戦闘だ。

 

 「…………ちっ、やっぱ只者じゃあねぇな。巧くフェイト嬢ちゃんを盾にしてやがる」

 

 倍率スコープを覗きながら、ヴァイスは舌打ちする。

 シグナムは自分の射線上にフェイトを常に置きながら戦闘をしているのだ。これではとても撃つことはできない。

 もし誤射などすれば、ヘルシングから放たれる高威力な魔弾がフェイトに直撃してしまう。防御力の薄い彼女では、例え非殺傷設定を施されていても無事で済む保証はない。

 

 「やってくれるねぇ―――上等だよ。こちとら年季の入った狙撃手だ。根気強く、隙が出来るのを待つとしますか」

 

 いつまでも器用にフェイトを盾にしながら戦闘を続けられるとは思えない。いつかは必ず隙が出来る。その瞬間こそが、騎士シグナムが敗北する時だ。

 

 

 ◆

 

 

 

 

 とある次元世界の森林が生い茂る場所で、ザフィーラは五体目の魔獣を白銀の軛で磔にしていた。

 あの黒焦げ&脇腹に風穴空いた重症を負ってはや二日。まだ傷が完治できていないといっても、もう十分蒐集作業に出られるほど回復した。仲間からの復帰の許しも得れている。唯一シャマルとはひと悶着あったがもう済んだことだ。

 

 「この先から魔獣の匂いが濃くなっているな。数は………50程度か」

 

 人を遥かに上回る嗅覚が得物の居場所を示す。

 ザフィーラは身体に魔法による強化を施していないというのに、魔導師並みの速度で大地を駆ける。身体能力において、彼ほど高いスペックを持つ使い魔は少ない。

 

 「―――先手必殺ッ」

 

 発見したゴリラ型の魔獣の頭部をその一際でかい掌で鷲掴みにし、そのまま馬鹿力を用いて一気にそのゴツイ顔面を地面に埋め込ませる。

 奇襲に気付いた五頭が怒りを露わにし、その屈強な太い腕をザフィーラに振り上げる。

 

 「貴様らは確かに腕力が強い。私よりもな――――だが、所詮はそれだけだ。本能に任せて振るわれる力など、脅威にも値せん」

 

 ザフィーラは三頭の魔獣の頭を連続して蹴りあげる。

 残り二頭はその振るわれた拳を難なく避け、すれ違いざまに拳と溝に叩き込む。

 さらに鋼の軛で五体の魔獣を滅多刺してトドメを決めた。

 

 「「「「「「「オォォォォォォォォォォ!!!」」」」」」」

 

 自分達の領土を無法に立ち入り、仲間が次々と狩られていくことに怒りが頂点に達した魔獣達。彼らの平穏を壊し、尚且つ仲間を傷づけているザフィーラは悪そのものだろう。

 数多の憎悪を一身に浴びせられるザフィーラだが、彼は退こうとはしなかった。ただただ鋭い眼光がさらに強さを増していく。溢れる魔力が拳に集まってきている。

 怯えはない。ただ前を向き、数十を超える敵を見据える。

 

 「………………」

 

 騎士としてこの行為がどれだけ恥じるべきことなのかは理解している。主が知ればさぞ悲しまれるだろうことも承知の上だ。されど、それでも己は八神はやての命を救いたい。小さき主の苦しみを取り除きたい。その為なら自分は、自分達はどのような悪行、愚行、所業を行って見せよう。

 

 「この蒐集活動は主の為、などととは言うまいよ。それはあの無垢な少女に責任を転嫁させるだけの言い訳になる。そう、私は主やはての笑顔と幸福を見たいが為に貴様らを討つ。全ては、己の願望の為に」

 

 何十もの群れを為し、襲い掛かってくる魔獣をザフィーラは一人で迎え撃つ。

 顔面を潰す。手足を折る。溝に深く拳を捩じり込む。鋭い打撃を一撃一撃、確実に決めていく。物量を跳ね除け、己が力のみを頼りとする。

 籠手は敵の返り血によって瞬く間に濡れていく。騎士甲冑に傷が刻まれていく。気を抜けば死ぬ戦場の中を、蒼い獣は野生の戦闘本能を存分に震え上がらせた。

 

 

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 激戦が始まり30分以上が経過した。計50体以上いた屈強な魔獣達は全員地に倒れ伏し、動く気配がない。死んではいないが、どの魔獣も重傷を負っている。どれだけ頑丈でも、ザフィーラの拳と鋼の軛の殲滅能力の前では何の障害にもならないのだ。

 

 「………終わったか」

 

 ザフィーラはおもむろに頬にこびり付いていた赤黒い返り血を拭う。

 体力の消耗こそは激しいが、深い傷は負っていない。リンカ―コアもちゃんとくり抜いて簡易収納端末に収めた。まだまだ戦闘の続行は可能である。

 

 「よし、次の得物を探しに」

 

 足を歩ませようとしたザフィーラであったが、彼は自分に近づいてきているある者の気配に気付き、動きを止めた。

 

 「………どうやら、探す手間が省けたようだな」

 

 接近してくる者の匂いは以前嗅いだことがある。

 ザフィーラは、一度嗅いだものの匂いは決して忘れない。

 空中から飛来してきた物体は、ザフィーラの目の前にある地面に荒い勢いで突っ込んできた。凄まじい砂埃が辺りを覆う。なかなか元気のよいご登場だ。彼女の性格を体現しているかのようである。

 

 「いやー、ひっさしぶりだねェ。元気にしてたかい、おっさん」

 

 出会い頭早々に、生意気な口を叩く女性。

 長く淡い橙色の髪を腰まで下ろし、自分と同じ籠手を身に付けている。

 

 「おっさんではない。まぁ確かに、ヴォルケンリッターの中では最年長に設定されているがな。だいたいそういう貴様は身体だけが大きいだけの小娘だろうに」

 「ハッ、若々しいといいな。こちとら体は大人。中身は幼女だ。中身も外見もおっさん臭いアンタとは価値度が違うよ」

 

 かつて己が叩き潰した女、アルフは勝ち誇った顔で長身の自分を見上げる。

 雰囲気は以前と全く変わっていないようだが、隙はかなり減っている。相当腕を上げてきたようだ。

 

 「ふ………」

 

 ザフィーラは期待の籠った笑みを浮かべ、拳を握る。

 二人の距離はもはや密着しているに等しい。腕のリーチ内など完全に入っている。

 

 「あたしを散々痛めつけてくれたお礼をたっぷりと返さなきゃねぇ」

 「やれるものなら、やって見せろ」

 「ああ。やってやろうじゃないか」

 

 睨み合いながら、暫く沈黙が続く。風が収まり、木々の囀りも止んだ。重苦しい空気が辺りを充満し、そこに立ち入ろうとする愚か者は一人としていない。

 

 「―――ッラァ!」

 

 アルフは暫く続いた沈黙を崩し、己の拳をザフィーラの顔面に放った。

 見事なフォームを描きながら放たれた拳は彼の頬を捉え、抉るように捻じ込まれる。

 

 “…………ほぅ。随分と重い打撃を出せるようになったな”

 

 拳を受けたザフィーラの口からは紅い液体が零れ出る。以前の拳であれば痣すらつかなかったであろうあの打撃が確かに体の芯まで届いる。若いだけあって成長も人一倍か。

 

 「悪くない。悪くないぞ、小娘。では――――今度は私の番だ」

 

 魔獣の血に濡れた籠手を堅く握り締め、彼女の脇腹に向けて放つ。

 容赦などない。慈悲などない。己が認めた敵に、情けなど掛ける気は毛頭ない。

 

 「ぐゥッ!?」

 「………ふむ」

 

 彼女の脇腹を穿つ感覚が手に伝わった――――なかなかよく鍛えられた肉体だ。初めて戦った時のようなヤワなものじゃないと分かる。それにザフィーラは安心した。これなら、自分が本気で相手をしても壊れることはない。

 

 「気を失ってくれるなよ」

 

 全筋力を用いて、アルフを容赦なく殴り切る。

 女としては、かなり大柄であるはずのアルフは弾丸のように吹っ飛んで行った。

 

 「う、オォォォォォ―――――…………!」

 

 太い木々を薙ぎ倒しながらも飛ばされていく身体を、彼女は地面に手を突っ込んで何とか勢いを止めた。以前のアルフなら、この一撃で沈んでいただろう。

 拳の威力も、タフさもそれなりに鍛えてきたとみて間違いない。

 

 「いっ痛ゥ~~~。本当にきっくねェ…………アンタの拳は………………!」

 

 膝を折り、脇腹を抑えながら、アルフは懐かしそうに言う。

 そしてすぐに傷を癒して何ともなかったように彼女は立ち上がった。

 まさか―――自己再生か?

 

 「驚いたな。これほど強力な治癒魔法を扱えるようになっていたとは」

 「へへっ。今のあたしはゾンビよりしつこいかもよ? いや冗談抜きで」

 「ならば回復が間に合わぬほど徹底的に痛めつけるのみ」

 

 無表情な顔で無情なことを言う男である。

 

 「うお!?」

 

 もちろん、ザフィーラは戦闘時に冗談など言わない。

 馬鹿みたいな加速力をもってアルフに接近し、頭に横蹴りを見舞おうとする。

 アルフは鍛え直した身体能力と反射神経をフル活動として、これを回避する。あと少しでも判断が間に合わなかったら頭と胴体がお別れしていたんじゃないだろうか。

 

 「っのやろォ!」

 

 アルフは拳に魔力を籠め、ザフィーラにもう一発喰らわせようとするが生憎と彼は護りのプロ。いくら拳速が速くなろうと対応できないわけがない。

 ザフィーラはアルフの拳の軌道に合わせて己の拳を放った。

 ガキィンッ、と籠手同士がぶつかり合う音が辺りに響き渡る。

 

 「ぬ――――ぐ……………!」

 「、ッ――――――――」

 

 二撃三撃四撃と速度を上げて拳をぶつけ合う。

 お互いに退く様子は全く見えない。

 

 「吹き飛ばす…………!」

 

 ザフィーラは計50ほど拳をぶつけ合わせたところで、己の拳に莫大な魔力を内包させる。

 

 「舐めんじゃないよ!」

 

 アルフも負けじと先ほどとは比べものにならない魔力を拳に纏わせた。

 

 「「くたばれッ!!」」

 

 上級使い魔二匹の全力全壊の力が激突し合う。

 拳と拳の打ち合いから生まれた衝撃波は森を揺さぶり大地を砕く。

 ここ一帯に住む魔獣なぞは巻き添えを喰わないよう遠くに避難していた。

 

 「そら、拳ばかりに集中していては足元がお留守になるぞ?」

 

 ザフィーラの足蹴りがアルフの太ももを蹴り砕く。

 声にならない苦痛がアルフを襲うが、彼女は痛がるよりも反撃することに意識を向けた。

 蹴り砕かれた太ももの骨をすぐに自己回復の魔法で癒し、足でしっかりと地面を踏ん張り、デコに魔力を集中させる。

 

 「…………ぬ!?」

 

 ガッチリと両手でザフィーラの頭を押さえる。

 そして、アルフは身体をエビぞりにし―――――

 

 「あんたは、頭がお留守になってんよ!」

 

 弓から放たれる矢のような勢いを付けた頭突き(ヘッドバット)をザフィーラの面に叩きつけた………!!

 

 「ゴハッ!!」

 

 見事な頭突きを喰らったザフィーラは鼻から大量の血が吹き出す。

 今こそ打撃を叩き込める絶好のチャンスだ。この機会を逃すわけにはいかない。

 

 「この石頭が………!」

 「そらもういっちょ!」

 「グォッ!?」

 

 よろめき立つザフィーラの顔面に回し蹴りを決める。

 メキョッという嫌な音が響くが、それでも攻撃を止めようとは一欠けらも思わない。

 

 「ここで調子に乗らせてもらうよ!」

 

 アルフはさらにバインドをザフィーラの肢体に引っ掛け、身動きを封じさせる。

 そして―――――

 

 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ――――――ッ!!」

 

 強化された肢体をフルに活用し、尋常ではないラッシュをザフィーラの身体全体に叩き込む。全身全霊を持って、目の前の巨漢を打ち倒すために。サンドバッグを全力で殴りつけるように。

 

 しかし、相手は盾の守護獣の異名を持つ使い魔。その頑丈さは並の魔導師、使い魔を優に超えている。アルフのラッシュを喰らいながらも、彼は立っている。倒れようとしない。

 

 「………調子に……乗るなよ……………小娘」

 

 千を超える打撃を与えられている状態で、ザフィーラはバインドを力のみで捻じ伏せ破壊し、アルフの腕を掴んだ。

 血をだらだらと流しながら充血した眼を光らせ、白い息を吐くザフィーラはまるで魔物のようである。いや、魔物の方がまだ可愛いのかもしれない。

 

 「歯ァ食いしばれ!」

 

 掌でアルフの頭を鷲掴みにし、そのまま彼女の顔面を地面に叩きつけた。

 一際大きいクレーターが地面に出来る。

 

 「…………ガ、ァ」

 「気絶するにはまだまだ早いぞ」

 

 ザフィーラは強化された脚でアルフの胴体をサッカーボールを本気で蹴るように蹴り飛ばす。

 

 「ッ――――――」

 

 アルフの肺から大量の空気が強制排出される。

 それでも彼女は何とか空中で体勢を立て直し、距離を取った。

 

 「……は…ぁ…………は……あ…………ゼぇっ、はぁ…………」

 

 とてつもない疲労感とダメージがアルフを襲う。地獄よりも尚恐ろしい修行を経て得た自己回復能力が、アルフの負ったダメージ量に追いついておらず、傷の修復が鈍くなってきている。

 

 「確かにお前は強くなった。修練もさぞ厳しいものだったのだろう」

 

 首を回し、ゴキンッ、ゴキンッと音を鳴らすザフィーラ。

 彼の疲労もアルフと同等、もしくはそれ以上。

 しかし明らかにアルフよりも余裕があるように見える。

 

 「だがしかし。我が100年以上培ってきた修練と比べれば未だに練度不足だ」

 「…………へっ、へへ………イイねェ……そうでなきゃ………面白くないってもんさね」

 

 空中に展開された魔方陣の上で、彼女は獰猛の笑みを浮かべる。

 まだ勝負は終わっていない。勝機は幾らでもあるといった自信のある顔だ。

 それにザフィーラも笑みを浮かべた。

 

 「………やはり私の目に狂いはなかったな。期待以上の奴だよ。お前は」

 「その上から目線で言えるのも、今だけさ…………さて、そんじゃ第二ラウンドと行こうか。盾の守護獣ザフィーラ!」

 「望むところだ小娘…………いや、使い魔アルフ!」

 

 地上での戦いから空中戦に変わり、肉弾戦のみならず魔法弾や鋼の軛も入り乱れるようになり、尚もその戦闘の激しさは増していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 「テメェ………本当にしつけぇな。いい加減にしろよ」

 「にゃはは。ごめんね、ヴィータちゃん」

 「………………(イラァ)」

 

 ヴィータは空中に身を置き、不機嫌極まりない顔をして怨敵、白の魔導師高町なのはを見下す。これで三度目の相対だ。

 元々短気なヴィータは、この異様なしつこさに我慢できるほど出来た者ではない。本音を言えばいますぐぶっ潰したい。しかし、約二割ほどの理性が冷静になれと自分に訴えかけている。

 

 “一度蒐集した者のリンカ―コアを二度蒐集することはできない。それはつまり、今奴と闘って勝ったところで得るものは何もねぇってことだ。それどころかただ悪戯にカートリッジの消費するだけの無駄働きになっちまう”

 

 しかも高町なのはは小癪かつ生意気にも、カートリッジシステムをデバイスに組み込んできている。どんな状況でも一発逆転を狙えるのがカートリッジシステムだ。何も得ない戦いをするにしては、リスクが高すぎる。

 

 今自分が為すべきことは無意味な戦いをすることではない。少しでも多くのリンカ―コアを蒐集することだ。ならば、ここは苛立ちを抑え、ぶっ潰したい衝動を我慢して離脱することが得策だろう。

 

 「………ヴィータちゃん。やっぱり、お話聞かせてもらうことはできない? もしかしたら、手伝えることがあるかもしれないでしょ?」

 

 ここにきて尚もまだ話し合いを迫るか。

 よほど自分を懐柔したいのか。それとも筋金入りのお人好しなのか。

 

 「あんたと話し合うことは何一つとして存在しねぇんだ」

 

 ヴィータの意志に揺るぎはない。第一に、揺らいでいいものではない。

 

 「本当はぶっ潰したいところだが、無駄な戦闘ができるほどあたしも暇じゃねぇんでな――――――グラーフアイゼン! 」

 『Eisengeheul.』

 

 ヴィータは鉄球を取り出し、小槌でこれを叩く。

 一瞬にして激しい衝撃波と光が辺りを覆い、さらには大音量の雑音を響かせた。

 

 「きゃっ!?」

 

 いきなりの衝撃と音、光になのはは思わず目を瞑り耳を塞ぐ。

 

 「…………あ!」

 

 その隙にヴィータは自分に出せる最高速度を出してなのはから距離を取っていた。そしてベルカ式転移魔方陣を展開し、この場の離脱を試みる。

 一㎞も離れていれば安全だとタカをくくっていたヴィータだが、その考えは甘いとすぐに思い知らされることとなる。

 

 「逃がさない!」

 

 高町なのははそこいらの魔導師とは違う。常識では測れない才能を持っている少女だ。

 更にはレイジングハートという最高レベルのインテリデェントデバイスまで所有している。しかもパワーアップした状態の。

 そんな彼女に、たかが一㎞程度離れたところで、安全を確保したなんてお世辞でも言えたものではない。クロノならもっと距離を取らなければいけないと判断するだろう。

 

 「―――いける」

 

 彼女はレイジングハートを砲撃形態に移行し、照準をヴィータに合せる。

 クロノとエミヤ、ユーノの厳しい魔導訓練も少なからず積んでいるなのはは、もはや長距離射撃なぞお手の物なのだ。

 

 「おい、おいおい嘘だろ!? まさか撃つつもりなのか!? あんな遠くから!!」

 

 今のヴィータは転移魔法を発動させる準備に取り掛かっている最中のために身動きが取れない。障壁すらも張れない状態なのだ。

 堅牢なザフィーラならともかく、ヴィータでは砲撃一つの直撃で呆気なく墜とされる可能性がある。

 

 「クソッ、こうなりゃ!」

 

 もはや転移魔法をキャンセルすることは出来ない。ならば、なのはの砲撃が自分に届くよりも早く、転移魔法を発動させることに力を注ぐことしかない。

 ヴィータは必至になって魔方陣の構築を急ぐ。

 

 「ディバイン―――――…………バスタァァァァァァァァァァ!!」

 『Divine Buster Extension』

 

 レイジングハートから放たれた桃色の閃光は、一筋の線となってヴィータに迫る。

 それを見た彼女はげんなりした声でこう言った。

 

 「間に合わねェわ………くそったれ」

 

 その言葉が口から出た瞬間、ヴィータのいた場所にディバインバスターが到達し、小さな爆発が起きた。

 

 「…………え?」

 

 タイミングは完璧だった。なのはの砲撃は確実にヴィータを墜とすことが出来ていた。

 しかし、ヴィータは未だに空を飛んでいる。彼女に防がれたのではない。突如として現れた、仮面の男によって防がれたのだ。

 

 「大した砲撃だ。しかし、クロノと比べたらまだまだ魔力配分に雑さがあるな」

 

 ディバインバスターをあっさりと防ぎ切った仮面の男は、余裕を持ってなのはの砲撃の未熟さを指摘する。助けられたヴィータは、もはや言葉を出すこともできなかった。

 あの砲撃は恐らくAAA+レベルのものだ。それをこうも容易に防げるとは、恐ろしく強い。底が全く見えやしない。

 

 「この騎士に捕まってもらうわけにはいかないのでね。また逃がさせてもらうよ」

 

 仮面の男は太ももに付けられたホルダーから一枚のカードを抜き取り、魔力を吹き込んだ。

 

 「――――――!?」

 

 なのはの肢体にバインドが仕掛けられる。これにはなのはだけでなくヴィータも驚愕する。あれだけの距離を一瞬にして一発でバインドを引っかけられるものなのだろうか。なのはでさえレイジングハートの補助がなければ到底成し遂げれないというのに。

 

 「貴様ははやく転移しろ。手間を掛けさせるな」

 「………礼は言わねぇ。ザフィーラにしつこくアンタらを信用するなって言われてる。いや、ザフィーラの忠告が有ろうが無かろうがアンタらを信用するなんてのは在りえねぇがな」

 

 だが、助かるのなら別に何でもいい。そう言ってヴィータは転移魔法を用いてこの場から姿を消した。それに続いていく形で仮面の騎士も姿を消す。

 やっとのことでバインドを解いたなのはだが、彼女を追うことは出来なかった。

 

 

 

 ◆

 

 

 シグナムとフェイトの戦闘は未だに続いていた。どちらも一歩も譲らない素晴らしい戦いなのだが、やはり尤も目を惹く要素というべきはフェイト・テスタロッサの天井知らずの才能だろう。百戦錬磨の騎士を相手にして食い下がるその技量、その魔力は賞賛する以外にあり得ない。

 

 “女騎士シグナムも負けず劣らず規格外っぷりがスゲェな。俺の狙撃を警戒しながら、尚且つヘルシングの射線上に常にフェイト嬢ちゃんを置くようにして戦ってんだもの。脳筋ぽいくせに器用なことをしてくれる。しかもそれを持続してやってんだから困ったもんだ”

 

 戦闘が行われて十分ほど経ったが、シグナムは全く自分に隙を見せない。

 実質2体1でここまで戦えるとは流石は歴戦の将と言ったところか。

 ヴァイスは目まぐるしく飛び、派手な魔法を撃ちあう彼女達をただ傍観しているだけだ。

 最前線で戦うフェイトの援護もできていない。そんな自分を情けなく思いながらも、シグナムをマークすることは止めない。いつかチャンスが来る。そう信じてスコープの中を覗き続けるのだ。

 

 「………お」

 

 ヴァイスはシグナムの顔に苦悶の表情が現れ始めていることに気付いた。動きも少しずつガタが着始めている。

 彼女はフェイトと戦う前に、何匹もの高ランクの魔物と戦っていた。その疲労が徐々にシグナムを蝕んでいるのだろう。

 これはチャンスだ。あと少しで、シグナムは己に隙を見せる。ヘルシングの魔弾をぶち込める時が来る。ヴァイスは引き金を引く指に少しずつ力が入ってきた。

 

 「――――――ッ!!」

 

 力の籠ったフェイトの渾身の斬撃に、シグナムは受けきれず体勢を崩した。

 今こそ、引き金を引き時だ。

 

 『退け、フェイト嬢ちゃん!』

 『了解!』

 

 念話でフェイトを離れさせ、魔弾の通る射線上を確保する。

 狙いはもうすでに定められている。後は――――――

 

 「やらせはせんよ」

 

 引き金を引くまさにその瞬間、己の胸に何かが貫く痛みを感じた。

 

 「な…………」

 

 自分の胸から、手が生えてきている。そしてその手が堂々と握っているのは――――ヴァイス・グランセニックのリンカ―コアだった。

 所有者の自分でも見たことはなかった己のリンカ―コアの輝きが、今目の前にある。そしてようやくヴァイスは悟った。

 

 「………ち、き……しょう……………がぁ………………」

 

 ヴァイスは、奇襲を受け敗北したのだ。誰とも知らない、仮面をつけた男に。

 気配がまるで感じなかった。ここまで近づかれていたというのに気付かなかった。

 己の未熟さを噛み締めさせられながら、ヴァイスの瞼はゆっくりと閉じていき、意識を暗転させられた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「そんな………!?」

 

 ヴァイスの魔力反応が消失したことにフェイトは悲鳴めいた声を上げる。

 まさかやられたというのか。あのヴァイス・グランセニックが。

 

 「うっ!?」

 

 混乱したフェイトは、言うまでもなく隙だらけだった。

 いくら戦闘力が高かろうと元を正せば唯の小学生。しかも9歳児だ。イレギュラーな事態にそう迅速に対応できない。

 そんな彼女の胸に、一本の腕が容赦なく貫いていた。

 

 「あ…あ…………」

 

 

 とてつもない激痛がフェイトを襲い、そのまま彼女は力無く倒れ伏した。

 ヴァイスとフェイトを打倒した仮面の男の両手には、リンカ―コアが握られている。

 シグナムは警戒を強め、愛剣レヴァンティンを構える。

 

 「貴様………私の戦いを穢したな?」

 

 己が敵を不意打ちで倒した仮面の男をシグナムは許すことが出来なかった。

 シグナムの殺気を受けて尚、仮面の男は飄々としている。

 否、少しばかり怒りを滲ませていた。

 

 「戦いを穢した? ハッ、笑わせないでくれよ。貴様の目的は何だ。闘いを楽しむことか?」

 「断じて違う!!」

 「そうだ、違うだろう。貴様が為すべきことは闇の書の復活だ。ならば、四の五の言わずリンカ―コアを受け取れ。真正面から討ち果たすなどという綺麗事を言えるほど、貴様らに余裕はないだろうに」

 「…………くそ」

 

 悔しいが、確かに仮面の男の言う通りだ。主はやての病を治すためにも、今は己の欲望を優先させている場合ではない。どんな不本意な結末であったとしても、それを受け入れなければならないのだ。

 シグナムは光り輝くリンカ―コアを仮面の男から受け取り、懐に仕舞う。

 

 「分かって貰えて何よりだ。それではな、将よ。次なる健闘を期待している」

 

 仮面の男は蜃気楼のように消えていった。

 

 「―――すまない」

 

 シグナムは後味の悪い気分を味わいながらも、フェイトとヴァイスに一礼をして、激闘を繰り広げた次元世界を去って行った。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「フェイト!?」

 

 己が主から送られてくる筈の魔力のラインが弱まったのを感じたアルフは動きを止めた……それが、アルフの最大にして最悪の隙。

 

 「馬鹿者が。戦いの最中に気を逸らしたな」

 「しまっ――――」

 

 気付けばザフィーラがアルフの懐に潜り込んでいた。

 今のアルフは無意味に動きを止め、しかも隙だらけな状態を晒している。

 それをザフィーラが許すはずがない。

 彼の腕は容赦なくアルフの胸を穿った―――――リンカ―コアの摘出だ。

 

 「ゴフッ……………」

 「どうやら貴様の主はリンカ―コアを摘出されたようだな。その身体から魔力が徐々に弱まっているのが何よりの証拠だ」

 

 気絶したアルフを抱き支えながらも、ザフィーラは残念だと呟いた。

 

 「まさかこのようなつまらぬ決着になろうとは。もし貴様の主にトラブルが無ければ、もう少し戦えただろうに」

 

 リンカ―コアを収納デバイスに納め、一息つくザフィーラ。

 彼女の成長ぶりをもっと多く魅せてもらいたかったが、こうなってしまっては仕方がない。

 現実とは、いつも残酷なものである。思い通りになることは少ない。

 ザフィーラは地上に降り、彼女を地面に寝かせる。ついでに強固な結界を周りに敷いた。

 これで此処一帯の魔獣共が気絶している彼女に集ることはない。じきに現れる時空管理局員が訪れるまで安全は確保されるだろう。

 

 「お前は本当に強くなった。よほど有能な師に恵まれたのだろうな。だがしかし、ここまで腕を上げられたのは、他でもないお前の意志によるものだ。私は嬉しく思うぞ。言峰に次ぐ好敵手よ」

 

 己の期待を遥かに超える成長を魅せてくれた彼女に感謝し、ザフィーラはこの場を去る。

 そして彼はまた彼女に大きな期待を寄せた。次はどれほどの業を魅せてくれるのか。次はどれほど自分を驚かせてくれるのだろうか。全く持って楽しみで仕方がない。

 闇の書の完成が差し迫っているというのに、呑気で愚かな考えだと自覚しながらも、若き狼アルフの成長は、ザフィーラの数少ない楽しみとなっていた。


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