ソードアート・オンライン 漆黒の復讐者   作:eldest

10 / 18
 感想や評価など、よかったら送ってください。
 誤字の指摘などもよければ。

 部分部分に独自解釈があります。

 プログレッシブでネズハが10レベル時点でスキルスロット3つだったんですが、以前書いた通り、独自設定でいきます。

 太一さん、オーフィスさん、アル@.lriaさん、ログジエルさん、お気に入り登録ありがとうございます!


第7話 夕暮れに染まる街

 2022年12月8日。

 

 第1層フロアボスが倒されてから4日経った今日、わたし達はNPCが経営する牧場に建つ民家の2階部分を貸し切り、午後のティータイムに浸っていた。

 

「これ、色はピンクですけど……味は緑茶ですね」

 

 相変わらず、変なお茶だが。

 固有名《ウルバス茶》。ネーミング的にミネラルウォーターの《東京水》を思い出す。

 

「そうだね。僕としては紅茶が飲みたかったけど……この前飲んだ渋いのじゃなくてね」

「アフタヌーンティーかぁ……優雅ですねぇ~」

「まあ、僕の家は茶葉じゃなくてティーパック使ってたからそんなに大したものじゃないけどね」

 

 アランさんはそう言うと苦笑した。

 

「――駄目だ。ピンクの色彩が俺の脳にこいつは毒だと認識させる!!」

「何言ってんですか」

 

 思わず棘のある言い方になる。だけど、オニキスさんがアホなこと言うのに一々付き合ってはいられない。

 

「クラリスの反応が冷たい!?アラン!クラリスが遂に反抗期だ!お兄ちゃん悲しいぞ……」

「だ~れがお兄ちゃんですか。わたしは一人っ子ですよ」

 

 まったく。

 わたしはお茶を啜る。

 

『ズズズズ』

「はぁ~」

「おばあちゃんかお前は!」

「失礼ですね!!」

「まあまあ、2人とも落ち着いて――」

「アランさんはどっちの味方なんですか!?」

「そこで僕に振る!?」

 

 ふと、アランさんの茶色混じりの金髪を見ていて思い出した。

 

「そういえば、アルゴさんって……何でフェイスペイント付けてるんですかね?アイテム?確か、アバター作る時にタトゥーみたいなの付けたり出来ませんでしたよね?というか、わたし達みんな現実の顔になってますし」

 

 アルゴさんとは1回目のボス攻略会議の時にもチラリと顔を合わせている。思えば、あの日プレイヤー2人に追いかけられていたのはアルゴさんだったのかもしれない。

 

「随分話題が飛躍したね……」

「女子高生の話題の飛躍に一々戸惑うな。慣れろ、アラン」

 

 なんかオニキスさんがまた失礼なことを言ったような……会話の前後が繋がってないのは自覚してますけど。

 

「さあ?ベータテスト時代から《鼠》のアルゴって呼ばれて有名だったからなぁ……解らないよ」

 

 アランさんは首を捻る。

 

「――あれ、装備の類だぞ。……RPGで言うところの《呪われた装備》みたいなもんだ」

「「え?」」

 

 オニキスさんの呟きに、わたしとアランさんの声が重なる。

 

「な、何でオニキスさんが知ってるんですか!?《おヒゲの理由》を!!」

 

 初めて会ったときに気になって訊いたのだけれど、『教えられなイ』と断固拒否されたのだ。

 

「それは僕も気になるな」

 

 興味津々のわたし達に、オニキスさんは簡潔に答えた。

 

「俺もベータ時代に1日だけ同じの顔に塗りつけてあったからだよ」

 

 1日だけ同じの顔に塗りつけてあった?

 

「でも、たぶん形状は俺のとあの人のじゃ違ったんだろうな。鏡なんて当時も持ってなかったから確認しようがなかったし」

「え、え~と……それで、何故そんなものを塗りつけることに?」

「エクストラスキル《体術》の修行過程でNPCに付けられるんだよ。見事習得できればペイントは剥がせて、無理だとそのまま。たぶんアルゴは修行途中でリタイアしたんだろうな」

 

 エクストラスキル?《体術》?

 

「エキストラスキルって……!!え~とっエキストラスキルっていうのは習得条件が解らない《隠しスキル》ことなんだけど!――ベータ時代は《瞑想》以外発見されてなかったはずなんだ。つまり、オニキスはベータ時代唯一の《体術》習得者ってことだよ!!びっくりだよ!!」

 

 ゲーマーの血が騒いだのか、何時に無く興奮しているアランさん。

 わたしだって人並みにはゲームしてきたし、それがどれだけ凄いことなのかは解っているつもりだ。

 でも。

 

「ホントですか~?デマなんじゃないですか?」

「嘘言ってどうすんだよ?……俺が唯一の習得者なのかどうかは知らないけど、俺が《体術》習得したのは事実だよ」

「な、何で習得条件公開しなかったんだよ!?」

「いや……そういうの公開した方が良いって知らなくてさ。ネタばれって嫌われるだろ?MMOもそうなんだとばっかり……」

「ああ……オニキスはゲームド素人なんだったっけ……」

 

 アランさんが頭を抱える。

 

「いや、でもアランとクラリスには必要ないスキルだぞ?あれ両手塞がってると殆ど意味ないんだ。それに、戦闘スタイルが2人ともタンクだったり中距離攻撃だったりだろ?《体術》とは合わないよ」

「……確かに。それに僕のスキルスロットもう全部埋まってるけどさ……そういえば、オニキスは確か5つあるスキルスロットの内1つ残してるよね?まさか……」

「まあな。今日にでも覚えにNPCの所まで行こうと――どうしたんだよ?2人とも」

「付いて行っていいかな?」「付いて行っていいですか?」

 

 わたしとアランさんの声が見事に重なる。

 

「……良いけど……俺の顔見て笑うなよ?」

 

 

 オニキスさんはどうやってNPCまで辿り着いたのか?

 そんな疑問が頭の中でぐるぐる渦巻くくらい、《体術》を教えてくれるNPCの所まで行く道のりは困難を極めた。

 広大な2層に乱立するテーブルマウンテンの岩壁をよじ登り、小さな洞窟に潜り込み、ウォータースライダーを彷彿とさせる地下水流を滑る。

 これ、ちゃんと《ウルバス》まで帰れるんでしょうか……?

 凄く不安になる。

 

「――せい!!」

「せあっ!!」

 

 オニキスさんとアランさんがポップしたコウモリ型モンスターを倒す。

 そんな感じで4度ほど戦闘もこなし、たっぷり30分ほどかけて、わたし達は目的地に到着した。

 全体マップを確認すると、ここは2層の東の端。ひときわ高くそびえる岩山の頂上付近だった。

 そして、眼の前には一健の小屋。

 

「……オニキス。どうやってこの場所を……?」

 

 アランさんがわたしも訊きたかったことを訊いてくれた。

 

「RPGってさ、全マップ制覇したくなるじゃんか。……1層は既に他の奴らがマッピングしちまってたから、2層こそは!ってな。そんな感じで探検してたら、見つけた。そのせいで俺、3層以上殆ど行ったことなかったけど」

「「…………」」

 

 絶句した。

 2層は1層よりも僅かに小さいとはいえ、直径約10キロだ。

 

「アホですね」

「おいクラリス!最初のしおらしさは何処へいった!?」

「まあまあ……ここに突っ立ってても仕方ないし、さっさと入っちゃおうよ」

「そうですねー」

「まだ話は終わってないぞ!!」

 

 

 

「「…………」」

 

 再び絶句。

 NPCはこの岩を素手で割れと言うが、この硬さは……《破壊不能オブジェクト》一歩手前だ。

 

「これを割るんですか?……というか以前割ったんですか?」

「まあな」

 

 そんな風に軽く言うが、並大抵の努力でどうにかなるレベルではないだろう。

 しかも、オニキスさんは《敏捷値》優先でポイントを振っているのだ。

 

「や、止めておいた方が良いんじゃ――」

「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。汝には、その証を立ててもらうぞ」

 

 わたしが言い終わる前にNPCはそう言って、道着の懐から筆を取り出すと『ビュビュビュッ!』とオニキスさんの顔に墨を塗りたくった。

 

「……ま、これが《おヒゲの理由》ってことだな。どうだ?やっぱ変か?」

 

 わたしとアランさんはオニキスさんの顔をまじまじと見詰める。

 別に面白くない。少し変わったタトゥーみたいだ。

 

「まあ、いいや。――さて、アラン君……は知らないとして、クラリス。瓦割りのコツって知ってるか?」

「え?」

 

 何故ここで瓦割りの話になるのだろう。

 

「力が強いと多く割れると思う奴が大半だと思うけど、実はそうじゃないんだ。……俺がまだ小学生の頃、あるバラエティー番組で瓦を何枚割れるか?っていう企画があってさ。元ボクシングチャンピオンが予想に反して3枚しか割れなかったのに対して、インドネシア元大統領夫人が9枚割ったんだ」

「す、凄いですね……」

 

 女性でもそれほど割れるものなんだなぁ……と月並みな感想しか出てこないが。

 

「そんなわけで、瓦割りは力任せにやるもんじゃない。どれだけ上手く《圧》をかけるか、ってことにコツがあるんだ――つまり」

 

 そこまで言うと、巨大な岩をぺたぺた触り、手を止め、思い切り1点に向かって拳を振るった。

 

「せいっ!!」

 

 『ドン!!』と言う効果音と共に、岩に小さいが、確かな亀裂が走った。

 

「うっそぉ!?」

「……僕は何と無く予想してたよ」

「――と、まあ……SAOってクリティカルポイントとか妙に現実的に設定されてるからさ、こういう一見クソ硬い《破壊不能オブジェクト》一歩手前の岩にも、《脆弱部分》が存在するんだよ。だから、そこへ思い切り圧を加えてやれば、瓦割りと同じ原理で割れるってことさ」

 

 その数時間後、見事オニキスさんは岩を割り、《体術》を習得したのだった。

 

 

 夕暮れの街を3人で歩く。真ん中にはクラリスが。彼女を挟む形で左に俺、右にアラン。

 クラリスを見ていると、顔は全然似てないのに、妹の杏を思い出す。

 あいつに、反抗期って感じのものはなかったけど、あったらこんな感じだったのかなぁ?とか、只俺がからかい過ぎてるのかなぁ?とか、思う。

 ――第2層主街区《ウルバス》。

 《体術》習得の帰りがてら、俺達は今晩の夕食の買出しに来ていた。

 擦れ違う人々は皆明るく、街は活気付いていた。

 俺達はNPC経営の商店の前で立ち止まっている。

 

「やっぱり醤油ってないですよねぇ……味噌もないですし。やっぱり基本洋食になっちゃいますよねぇ~」

 

 ウィンドウを開いて食材を見ながら、クラリスが呟く。

 俺は、最近ずっと思っていたことを訊いてみることにした。

 

「なあ……クラリスってさ、現実でも料理ってしてたのか?」

「……お母さんが検察官で、単身赴任してるんで、家にはお父さんとわたしだけしか居なかったんです。お父さんも仕事してますから、ご飯はわたしが作らないと。……だから、現実でも料理はしてましたよ。というか、自分で言うのもなんですけど、得意です」

「へぇ!」

 

 アランが感嘆の声を上げる。

 イギリスからの留学生で、寮暮らしだと言っていたアランとしては、料理上手というのは素直に凄いと思っているのだろう。

 だけど、俺としては別の驚きがあった。

 

「お母さん検察官なのか。……俺、法学部だからさ、素直に尊敬するよ」

 

 因みに俺の志望は《敵》である弁護士なのだが。

 

「……オニキスに弁護してもらうのは何か恐いね」

 

 笑いながら言われると、カチンとくる。

 

「お前……もしお前の裁判になったとき、絶対有罪にしてやるからな」

「前科持ちはごめんだなぁ……」

 

 苦笑するアラン。

 こいつめ。

 黙っていたクラリスが、こちらに振り返った。

 

「なんだか、親近感が湧いてきますね」

 

 ふふっ、と微笑する。

 思わず見惚れそうになるが、俺は彼女持ちなのだ。

 明日香ごめん。……今後は戒めよう。

 

「さて、買い物も終わりましたし、帰りましょうか」

「そうだね」

「腹減ったなぁ~」

 

 こうしてまた、1日が終わる。

 俺達はこんな平和な日々を、どれだけ繰り返せるのだろう。

 本当は、1日でも早く終わればいい。現実に1日でも早く帰りたい。

 でも、こんな日が続くなら、と思ってしまう。

 だけど……この平和に見える日々も、危険と隣り合わせだ。フロアボス攻略も、レイドリーダーが死亡するような状況なのだ。

 それに、俺達の現実の肉体は、徐々にではあるが、確実に死へと向かっている。

 

 それでも、願わずにはいられない。

 明日も、明後日も、今日のような平和な日でありますように、と。




 平和な日々が続くと良いですね。

 キリトが12月4日から2泊3日で山篭りして、その2日後にオニキスが訪れます。
 数時間でクリアされちゃキリト涙目ですね(笑)

 次回は…決めかねてます。とりあえず2層ボス戦に参加したりしません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。