ソードアート・オンライン 漆黒の復讐者   作:eldest

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 誤字の指摘などもよければ。

 部分部分に独自解釈があります。

 今回も挿絵あったりします。着物上手く書けへん(´・ω・`)


第11話 予期せぬクエスト

 2023年2月11日

 

 俺達はそれまで寝泊りに使っていたNPC宅2階部分を引き払い、遂に10層へと足を踏み出した。

 

 

 

「何だこれ!?」

 

 転移門を使って降り立ったのだから、もちろん主街区なのだが……その街並みが異質だ。

 有体に言えば《和》だった。

 日本の街並みである。ただし、数百年昔の。

 

「何でや!!」

 

 錯乱し、もう1度叫んだ。

 

「何で関西弁になってるんですか?」

「――凄い!城下町だ!!」

「何故アランさんは眼を輝かせてるんですか!?」

「だって!クラリスさん!!城下町だよ城下町!!お城だよお城!!」

「そうですね、凄いですねぇ」

 

 うわっ……クラリスがすげぇ~冷めた眼してるんですけど。

 

「……デザイナーの趣味全開だよな、この層」

 

 先ほどから行きかう人々……NPCだが……は、従来の西洋系の顔だ。しかし、格好が着物だ。完全に侍ではなくSAMURAIの世界である。

 噂に聞くと、10層はテスターの不評を買ったらしく……本サービス移行前に大幅変更されたらしい。

 その結果がこれか!?という感想を抱かざるを得ない。

 

「これ、僕が着物着てても違和感ないよね?」

「アランさん着たいんですか?」

「なら3人そろって着物買うか?武器の修繕費かからないから結構コル余ってるしな」

 

 因みに現在の俺達の装備は……俺が黒のレザージャケットを羽織った布装備。

 クラリスは短い赤のプリッツスカートにチュニック、その上に曲線を描いた金属防具を付けてる。

 アランは冑無しの全身プレートメイルだ。顔も相まって凄く似合っている。

 

「えー?」

「良いね!」

 自分で言っておいてなんだが、反応が両極端で非常に困る。

「というか、そもそも着物なんて売ってるんですか?」

「――あそこに服屋あるっぽいし、行ってみようぜ」

 

 

 

 ――結果を簡潔に言えば、あった、買った、である。

 

「……さっそく着てみるか」

 

 そういうわけで、試着室でそのまま着替える……とは言っても、ただ装備画面を操作するだけだが。

 俺が選んだのは《着物(男性)・黒》というやつだ。デザイン自体はどれも殆ど変わらず、色と柄が違うだけだった。

 

「着替えたかー?」

「うん、僕は大丈夫だよ」

「わたしも着替えました」

「じゃあ、せーので出るぞ」

「「「せーの」」」

『ザッ』

「「「おお!」」」

 

 中々2人とも似合っていた。

 アランは緑の竹柄、クラリスは紫の花柄の着物を着ている。

 アランは海外からの観光客、クラリスは和装美人といった印象を受ける。

 

【挿絵表示】

 

 特にクラリスは髪を横に束ねていて、いつものストレートヘアーと違い新鮮だった。

 

「ど、どうですかね?」

 

 クラリスが若干不安げに見上げてくるが……その仕草が結構、いや、かなり可愛い。

 待て、俺には明日香がいるだろ。……圭介、精神を強く持て。

 ……でも、可愛いって思うくらいは有りか?……それとも無しか?

 明日香本人がいないので、永遠に答えの出ない問いだった。

 

「ごほん!!――いや、良いと思うぞ。……ファンクラブ会員が増えそうだな」

「――……え?ファンクラブ会員?」

「いや、何でもない。世の中には知らなくていいことも多い」

 

 余計なことを口走った。

 5層のフロアボス戦以来、クラリスの隠れファンが急増したらしい。

 今や、以前から既にあったアスナのファンクラブと拮抗するほどに、クラリスの非公式ファンクラブ会員も増えている。

 因みに、アスナのファンが若干多いのが現状らしい。

 ……全て、アルゴから聞いた情報だ。本人に言わないのは、彼女なりの優しさだろう。

 

「まあ、それはともかく……折角だし、お城行ってみようよ!」

 

 アランは完全に観光客のノリである。

 

「でも、あのお城ってダンジョンだったりしません?」

「……有り得るな」

 

 クラリスの指摘に、俺は頷く。

 古来よりRPGの城はモンスターの巣窟だ。

 ――しかし、《浮遊城アインクラッド》の中にも城があるとはどういうことなのか?……この層に関しては疑問が絶えない。

 

 

「やっぱりな!ある意味予想通り!!」

「はしゃいで悪かったよ!!」

 

 俺とアランはそれぞれ武器を抜き放つ。

 限界まで鍛えた《ロックマチェーテ+8》。長期クエストのクリア報酬である《クイーンズ・ナイトソード》。

 ――江戸城のような概観のこの城……《ヤマト城》はやはりダンジョンだったのだ。しかも、迷宮区にいるような亜人型が徘徊している。

 そして、眼の前には1層以来となるコボルト……鎧の代わりに甲冑を纏い、直刀を携えている。――つまり、この層の主役である《カタナ》使いのMobだ。

 名称は、《スマートコボルト・ソードマン》。キリトの話では《サムライ》を冠していたはずなので、どうやら名前もベータ時代から変更されたようだ。

 

「攻撃は絶対避けろよ!この着物防御力殆ど無いんだからな!!」

「解ってるよ!!」

 

 アランが盾を構え、タゲを取る準備をする。

 

「まだかクラリス!!」

「――着替えました!!」

 

 この状況で、たとえアバターの身体だろうと下着姿を晒したくないという女心に応え、俺とアランは正面を向き、コボルトの動向を注視していた。

 装備の変更を終えたクラリスに、指示を飛ばす。

 

「よし、《スタン・ドライブ》ゴー!!」

「やあ!!」

 

 イエローのライトエフェクトが迸り、スタン状態になる《武者》。

 俺も、脇構えの状態から前へ大きく飛び出す。その動作でソードスキルが発動。刀身がレッドに染まる。

 

「はぁ!!」

 

 切っ先がΔの軌跡を描き、《武者》を甲冑ごと斬りつける。

 《短剣》3連撃技《デルタ・スラッシュ》。

 

「――グルァッ!?」

 

 《武者》のHPがレッドゾーンに突入する。が、同時にスタンも解けた。

 《武者》が攻撃態勢に入り、ライトエフェクトを纏った直刀が閃く。

 

「せぁ!!」

 

 アランが《バーチカル》によって《武者》のソードスキルを相殺する。

 ――両者が激しくノックバックするが、俺は走り、アランの前に滑り込む。

 

「スイッチ!!」

 

 逆手に持ち替えたマチェーテを《武者》の顔面に深々と突き立てる。

 

「グラァッ……」

 

 視界の端に【CRITICAL】と表示され、《武者》は残りHPが吹き飛び、爆散。

 

「ふぅ……」

「僕らも着替えよう。……というか、急いで出口まで戻ろ――」

『キャー!!』

「――悲鳴!?」

「走るぞ!2人とも!!」

 

 足に力を込め、全力で悲鳴の聞こえた方角へダッシュする。

 だが、またもや行く手に《スマートコボルト・ソードマン》が立ちはだかる。

 

「邪魔だ!!」

 

 マチェーテの刀身がビリジアンに染まり、身体が浮き、ジェット噴射の如く前へと加速する。

 《短剣》空中突進技《エアリアル・スターブ》。

 

「グラッ――」

 

 切っ先が《武者》の左眼を捉え、貫通。再び視界の端に【CRITICAL】の表示。

 だが、《武者》の悲鳴が最後まで耳に届くことはなかった。

 なにせ、《エアリアル・スターブ》の飛翔距離はボス部屋の天井まで届くほどあるのだ。――しかも、自分の意思では止まれない。

 

「ああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 城の中に絶叫と落下音、次いでスリップ音が木霊した。

 

 

『――ああああああああああああああ――ッ!!』

「オニキスさん!?」

「僕らも急ごう!!」

 

 オニキスさんは1撃でコボルトを倒しても尚止まらず、勢いそのまま遠く彼方へ吹き飛んでいった。

 そして、遠くから『ズドン!!』という爆音と、『ズザザ――ッ!!』という地面に擦れる音が聞こえる。

 まるで飛行機が着陸に失敗し、事故ったような音だった。

 

「……落ちましたね」

「……落ちたね」

 

 2人して同じことを言い、頷き合うわたし達。

 

「大丈夫ですか~!?」

 

 走りながら、オニキスさんが落ちたと思われる方向に向かって叫ぶ。

 しかし、返事はない。

 ――ふと横を見ると、アランさんが消えている。

 

「アランさん?」

 

 え?わたし独り?

 

「アランさん!?」

「――ご、ごめん。装備変えてた」

 

 今度は返事が返ってくる。……背後から。

 見れば、見慣れたプレートメイルに着替えたアランさんが再び追いついて来ていた。

 

「びっくりしましたよぉ」

「ごめん。……オニキスが落ちたのと悲鳴が聞こえた方向は同じだ。――嫌な予感がする。急ごう」

「はい!!」

 

 

『ズザザ――ッ!!』

 

 砂埃を舞い上げ、ようやく止まる俺の身体。

 

「痛てて……ああ、痛くはないのか」

 

 動揺しすぎて一瞬、仮想空間であることを忘れてしまった。

 ――少し離れた位置には、俺とぶつかり、マチェーテが頭に突き刺さって死んだ……いや、HPを全損させたレッドカーソルの牢人姿の人型Mob。その隣には、【!】アイコンが点等している着物姿のNPC。

 どうやら、意図せずクエストフラグを立ててしまったらしい。

 ……ぶつかったのがプレイヤーじゃなくて良かった、と今更ながらに思う。

 

「はぁ……心臓に悪いな」

 

 飛行機に乗れなくなるんじゃないかと不安になるような着陸の仕方だった。自身のHPも半分以上もっていかれ、イエローゾーンに突入している。……受身を取らなかったらヤバかったかもしれない。

 俺は取り合えずHPを回復するため、ストレージからポーションを実体化させ液体を口に含む。

 

「あんまり美味くないよな、これ――よいしょっと」

 

 立ち上がり、NPCの所まで歩く。

 

「……ん~……」

 

 何て声をかけようか。

 基本的にクエスト受諾はお決まりの台詞があるものだが……。

 取り合えず、安否確認だろうか。

 

「あんた、大丈夫か?」

「――お侍様?……私を助けに来て下さったのですか?」

「……侍?」

 

 俺は自分の格好を見下ろす。

 確かに、見えなくもない。流石に髪形を丁髷などにはしていないが。

 ……ここはイエスと答えるべきだろう。

 

「そうだ。俺は、あんたを助けに来た」

「本当ですか!?ありがとうございます。……私は如月と申します」

 

 ちゃんと意味が通じたのか、頭上のマークが【?】に変わり点滅する。

 そして、着物姿のNPC改め如月は、恭しく頭を下げた。

 

「えーと……これから、どうすれば良いんだ?あんたをこの城から逃がせば良いのか?」

「……私は、ここで逃げるわけには参りません。我が家に代々伝わる宝刀、《ふつのみたまのつるぎ》をこの城の城主から取り返さねばならぬのです。……お侍様には、そのお力添えをして頂きたく存じます」

「《ふつのみたまのつるぎ》?」

 

 どこかで聞いたことがあるような……。

 

「……はい。1振りすれば、国中が平穏になると言われる霊剣です。3日前、城主の使いの者だと名乗る男が、我が家から持ち去ったのです。父上は病に臥せっていて、私と母上だけでは止めること叶わず。……なんとか男を追ってこの城まで辿り着いたのですが、道に迷い、そこに倒れている男に見つかり、捕まりそうになっているところだったのです。そこへお侍様がやって来て下さった、というわけです。……お侍様には、何とお礼を申せば良いのか……」

 

 ……何かキナ臭くなってきたな。

 つまり、城主を倒して《ふつのみたまのつるぎ》とやらを奪い返せば良いのか?

 この城……圏内に建ってるだけあって、出てくるMobはそこまで強くない。たぶん、Mobのレベルは8層の迷宮区相当だ。

 しかし、流石に単独制覇できるとは思えない。

 

「え~と……仲間がいるんだけど、もう少し待っててもらっても良いか?」

「お仲間の方ですか?……ええ。お侍様のお仲間の方なら、心強いです」

「じゃあ、少しの間待っててくれ」

「はい。……これから、宜しくお願い申し上げます、お侍様」

 

 クエスト受注に成功したのか、視界左に表示されたクエストログのタスクが更新された。

 

 思わぬ形で始まった《ふつのみたまのつるぎ》奪還クエスト。

 ポーション足りるかな?などと今更不安になるが、恐らくクエストクリアまで町には戻れないだろう。

 

 マチェーテを牢人の頭から引き抜いた後、俺は2人が追いつくのを黙って待っているしかなかった。




 《ふつのみたまのつるぎ》奪還クエスト開始です!!

 原作ではクエストの描写ってあまりないので苦労しそうです(^_^;)

 今回も合わせて3話構成になる予定です。
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