ソードアート・オンライン 漆黒の復讐者   作:eldest

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 部分部分に独自解釈があります。

 今回は《ふつのみたまのつるぎ》奪還クエストその2です!


第12話 抜刀

 合流したアランとクラリスを見やると、如月が口を開いた。

 

「……お侍様のお仲間の方は南蛮人の方だったのですね」

「南蛮人って……どういうことだよ?オニキス」

「何つーか……かくかくしかじかで……」

「いや、それじゃ伝わりませんからね……?」

 

 クラリスに突っ込まれ、仕方なく1から説明する。

 

「――というわけで、《ふつのみたまのつるぎ》ってのを城主から奪い返すことになったんだ」

「……まあ、良いけどさ、クエストやるならやるで……。でも、そういうの1人で決めるなよ」

「そうですよー!ホントはクエスト受けないで、わたし達が追いつくのを待っていてほしかったです」

「わ、悪かったよ」

「お侍様?」

 

 如月が俺の袖を引く。

 

「な、何だ?どうした?」

「《ふつのみたまのつるぎ》は宝刀なのです。……お侍様のお仲間の方を信用しないわけではありませんが、やはり、南蛮のお方にご同行願うのは憚られます」

「……え~と……つまり?」

「僕らはお呼びじゃないってことかな?」

「申し訳ございませんが――そういうことです」

「え?わたしも南蛮人?……何ですか?」

「あなたは違うのですか?……服装をお見受けする限り、南蛮の方だと思ったのですが」

「……そうか。オニキス、このクエスト《着物》を着てないと参加できない仕様なんだよ」

「な、なるほどな」

 

 如月は多くのNPC同様、顔立ちは西洋人だ。髪もピンクと明らかに《日本人》ではない。

 つまり、この層での《日本人》の基準とは、《着物》を着ているか否か……つまり、服装しだいなのだ。

 そこまで理解して、改めて俺は自分の姿を見下ろす。

 恐らくこのクエストのフラグを立てる為の前提条件も、あの服屋で買える《着物》を着ていること……なのだろう。

 更に、クエストを続行する上でも、《着物》を着ていることは必須。

 

「アラン、クラリス……着替えてくれ」

「まあ、そうなるよね」

「こっち見ないでくださいよ!!」

 

 俺は努めてクラリスの方は向かず、如月の方に眼を向ける。

 

「……終わったよ」

「わたしも、着替え終わりました」

 

 2人が着替え終わると、如月の反応が変わった。

 

「――お二人とも、先ほどのは変装だったのですね?この如月には見抜けませんでした……それでは、改めて宜しくお願い申し上げます、お侍様方」

「……当たり、だったみたいだね」

 

 どうやら2人のクエスト参加も認められたみたいだな。

 

「でも……ポーション足りますかね?わたし今12個しか持ってないですよ?」

「僕は8個だね……」

「俺さっき使っちまって残り6個。……買い足しとくんだったな」

 

 全部足しても残数26個。……思ったより多い。

 ――だが。

 

「この着物の防御力がなぁ……」

「装甲紙ですよね……」

「逆に考えよう。……この《着物》を着ていてもクリアできる難易度だって」

「でも普通に考えたら高難易度クエストですよね」

「だよね~」

 

 クラリスの指摘に、アランが気の抜けた返事をする。

 

「さあ、お侍様方!参りましょう!!」

 

 如月がそう言うと、如月の頭上に今まで存在しなかったブルーのカーソルとHPバーが現われた。

 

「……まさか、《護衛クエスト》?」

 

 《護衛クエスト》とは、その名の通り、NPCをモンスターから守りつつ、所定の位置まで護送するクエストのことだ。

 自分のHPだけではなく、NPCのHPにも気を使う必要があるので、このアイテムを何個持ってきてくださいという《お使いクエスト》やこのモンスターを何体倒してきてくださいという《討伐クエスト》に比べ難易度が高い。

 今回の場合、ボスであろう城主を倒す《ボス討伐クエスト》だけではなく、如月の護衛までこなさなければならないとは……。

 

「これ、かなり難易度高めなんじゃ……」

 

 そんな不安に苛まれつつ、俺達は如月を囲むようにして歩き出す。

 

「はぁ……わたしも、嫌な予感したんですよね……」

「今更言わないでくれよ」

「オニキスさんが勝手にクエスト受けちゃったんじゃないですか!」

「そうだった……悪い」

「……でもさ、なんか時代劇みたいで楽しいよね」

「アランさん……」

 

 クラリスが梅雨並みにジトーッとした眼をしている。

 

「クラリスさん!?僕、何か不味いこと言った!?」

「いえ……楽しんでますねぇ~!って思っただけですから、気にしないでください」

「気になるからね?思い切り気になるからね!?」

「そうですかー」

 

 反応冷てぇ……。

 

「――お侍様方!!注意して下さい!敵の気配です!!」

「敵?」

「来るぞ!!僕の《索敵》にも反応がきた……2体だ!!」

 

 如月も《索敵》スキルでも持ってるのか?

 いや、メタなことを言えば、敵の出る場所が最初から解ってるのか?

 ――まあ、そんなことはいい。

 

「いくぞ!!」

 

 俺は叫び、帯に差した鞘からマチェーテを抜き放つ。

 

「お侍様方だけに任せるわけには参りません。私も戦います」

「「「え?」」」

 

 俺達は同時に疑問符を浮かべるが、次の瞬間驚きに変わる。

 なんと、如月が袖から刀を取り出したのだ。

 如月が右手に持つ鞘は赤く、柄に巻いてある紐も赤い。

 ――どうやって出した?

 刀は全長80センチはある。

 今まで袖の中に隠していたとは思えない。

 如月――とんだ奇術師だぜ。

 

「さあ!行きますよ、お侍様方!!」

 

 そう言うと如月は、鞘から刀を抜き放った。

 コボルトが使っていた鈍く光る直刀ではなく、反りのある……一般的に日本刀と言われるのはこのタイプだろう。

 刃も鋭く光り、一目で業物と解る見事な差し料だった。

 

「……如月も戦うのか?」

 

 もう1度確認する。

 

「もちろんです!!」

 

 どうやら《護衛クエスト》ではなく、《共闘クエスト》だったみたいだ。

 

「よし!アランは如月に合わせてくれ。俺とクラリスはもう1体のMobを倒すぞ!!」

「解りました!」

「……それではアラン殿は、私と共に左側の敵兵を!」

「え?わ、解った!!」

 

 SAOのNPCの学習能力は他のゲームと比べ、並外れて高い。

 それは解っていたつもりだが……まさか名前まで覚えて、こちらの作戦に乗ってくれるほどとは思わなかった。

 ――現われたのは牛の頭をもつ怪物。トーラス族の《カタナ》使いだった。手には、コボルトの物とは違い、反りのある……150センチを超える長さの刀……確か、コボルト王が使ったという野太刀。

 しかし、それに怯むことなく如月がトーラスの懐に飛び込む。

 

「はぁッ!!」

 

 気合いを込め、一閃。

 

「ブモォォォォォ!!」

 

 1撃で2割りほどのHPを削った如月は、切り替えし、2撃目を放つ。

 

「せぁッ!!」

「ブモォォォォ!?」

 

 如月が予想以上の働きを見せ、どんどんトーラスのHPを削っていく。

 俺達だって負けてはいられない。

 

「凄いですね……」

「感心してる場合じゃないぞ!!」

 

 トーラスの放った斜め斬りを大きく右に反れることで躱し、反撃の1撃を叩き込む。

 

「せいっ!!」

「ブモォォォォォッ!!」

 

 カウンターが決まり、硬直する獣人。

 隙を逃さず、ソードスキルを発動させる。

 

「らぁぁぁぁっ!!」

 

 刀身がレッドに煌き、踊るように斬りつけていく。

 左、跳び上がり右斜め、くるりと回りながら左斜め――

 

「ブモォォォォォッ!?」

「ラストっ!!」

 

 ――最後の縦斬りで、トーラスは爆散。

 《短剣》4連撃技《ダンシング・エッジ》。

 少し遅れて左側からも破砕音が鳴り響き、戦闘が終了したことを告げる。

 

「ふぅ……」

 

 一息吐き、マチェーテを鞘に収める。

 

「グッチョブ!!如月。……働かない2人は少しは見習え」

「……女の人が刀を振り回すのに圧倒されちゃってさ」

 

 アランが言い訳めいたことを口にする。

 

「オニキスさんが1人で片付けちゃったんじゃないですか」

 

 クラリスの言っていることは正論だった。

 

『ブンッ』

 

 バットの素振りのような音が聞こえ見てみると、その方向には刃を納める如月の姿が。

 血を払う仕草だったわけか、と考え至る。

 

「お侍様もグッチョブ……?です。流石ですね。……私も刃が立たなかったあの牢人を倒したのですから、これぐらいお侍様にとっては朝飯前なのでしょう。心強いです」

「…………え?あのMobそんなに強いの?」

 

 何せ如月は通常攻撃のみでトーラスを屠ってみせたのだ。にも関わらず、力関係は牢人>如月……。

 

「このクエスト、フラグ立てる段階が難しいのかもね……オニキスはあのMobどうやって倒したんだい?」

「……事故」

 

 簡潔かつ適当に答える。

 牢人の死因は遠くから飛んで来た俺とぶつかり、運悪く頭にマチェーテが突き刺さった……というものだ。

 本来は倒すのに相当苦労するモンスターだったのかもしれない。人型だったし。

 

「運も実力の内って言いますしね」

 

 クラリスがフォローしてくれた。

 

「……先を急ぎましょう、お侍様方。城主はこの城の最上階に居るのですから」

 

 確か、この城は3階建てだったはず。

 

「よし、頑張ろう」

「そうだね……こうなってくると、クエストクリアの報酬が何なのか気になるところだけど」

「……そうですね。お侍様には《ふつのみたまのつるぎ》を差し上げられれば良かったのですが、家宝ですので……。失礼ながら、私が使っている物と同じ刀を差し上げようと考えております」

 

 予期せぬ反応が返ってきた。

 クリア報酬は刀……。

 これは、《カタナ》スキルが存在するという裏付けにならないだろうか。

 ……キリト。どうやらお前の想像通り、《カタナ》スキルはあるっぽいぜ。

 

「クリアできたら試しに装備してみたらどうですか?スキルがないから補正もないし《ソードスキル》も使えませんけど」

「そうだな」

 

 クラリスの提案に頷く。

 武器は対応しているスキルをセットしていなくても、装備するだけなら装備できる。ただし、スキルによる各種補正などの恩恵は受けられないから、実戦では使えないが。

 

「……僕も持ってみたいな」

「……使わせてやるから、その物欲しそうな顔止めろよ」

「え?僕そんな顔してたかい?」

「してたよ」「してましたね」

 

 俺とクラリスが同時に言う。

 

「ふふふっ」

 

 見れば、如月が笑っている。

 

「アラン殿は面白い方ですね……そんなにほしいのなら、もう1振り差し上げましょうか?」

「え!?良いんですか!?」

 

 NPC相手に下手に出るアラン。

 180センチの長身の金髪イケメンが女性(NPC)にへりくだる……非常に情けない姿だった。

 

「ええ。……と、言いたいところですが、私が今持っている刀は2振りだけなので……すみませんが、これまでお渡しするわけには参りません」

 

 そう言うと、右手に持つ刀を振ってみせ、してやったり、という顔をする如月。

 

「上げて落とした!?」

 

 クラリスが驚くのも無理はない。ユーモアのセンスまであるとは……恐るべし。

 

「オニキス、僕が貰ってもいいかな?」

「めげないな!!良いけどタンクできなくなるぞ!!」

「くそっ!!やっぱり個人の趣向は許されないのか!?」

「……何でアランさんはそんなに刀が好きなんですか?」

 

 クラリスが根本的なことを訊く。

 確かに、俺もそれは気になっていた。

 

「刀は……日本製RPGにおいて、外すことのできない武器じゃないか!!ソニックブームとか、火炎斬りとか!僕がやったゲームには大抵出てたよ。……それもあって、日本に来てから時代劇をレンタルショップで借りて見てさ……結構面白くてね。特に3匹の侍は良かったね。2人も1度見てみるべきだよ」

 

 お、おう。

 こいつがゲーマーなのをすっかり忘れていた。

 

「アランさんって、見た目は良いのに結構残念ですよね。だから彼女いないんですよ」

「……言ってやるな」

 

 ボソッとクラリスが酷いことを言う。

 結構辛辣だよな、クラリスって。……ホント、初対面の時とはえらい違――いや、俺胸倉掴まれたんだっけ?

 

「……2階へ上がる為の階段が見えてきました!!お侍様方!急ぎましょう!!」

 

 更に速度を上げる如月。

 敏捷値優先で上げてる俺は大丈夫だが、筋力値優先のアランは結構キツそうだ。……それでも、いつものプレートアーマーではない分、なんとかそれにも付いて行く。

 

「あれって……?」

 

 視界の先に、人影が映る。

 牢人だ。

 先ほどの非業の死を遂げた人型Mobとそっくりの。

 しかし、着物の色が違う。先ほどのは白だったが、今度のは青だ。

 

「お侍様!!先ほどの技をお願いします!!」

 

 如月が叫ぶ。

 ――え?また俺に事故れと?

 

「オニキスさん、頑張って!!」

「――こうなりゃ自棄だ!!」

 

 マチェーテを抜き放ち、《エアリアル・スターブ》を発動させる。

 すると身体が浮き上がり、一直線に前に向かって飛び立つ。

 

「なっ――!?」

 

 Mobの顔が青ざめるが、知ったことではない。

 

『ド――――ンッ!!』

 

 爆音が鳴り響き衝撃が走るが、今度はマチェーテを離すことはなかった。

 俺と牢人はぶつかった後も勢い殺せず階段の段差に激突する。……主に、牢人の背中が。

 しかし、階段は《破壊不能オブジェクト》だったのだろう。掠り傷1つ付くことなく、そのままの形を保っていた。

 

「はぁ……恐かった」

 

 やはりこの技は、前に向けて放つものではない。ロケット花火を前に発射してはいけないのと同じことだ。

 因みに、俺の下敷きになっている牢人はHP全損。マチェーテの切っ先が牢人の腹を捉え、深々と貫いているという……中々にグロテスクな状況だった。

 

「……すまん」

 

 思わず謝り、白目を剥いた牢人の腹から、マチェーテを引き抜く。

 牢人がクッション代わりになってくれたおかげで、俺のHPは1ドットも減っていなかった。

 

「流石です、お侍様」

 

 追いついた如月が、にっこり笑ってそう言った。

 ――この状況で笑うのは、単に学習不足なのか、設定ミスなのか……。そうじゃないなら、如月こそプレイヤーにとって敵なんじゃないか?と一瞬考えてしまう。

 

「うわっ……このMobって倒しても消えないんですね」

「酷いことするね、オニキス」

「俺のせいじゃないだろ!!」

「では、お侍様方……上に参りましょう」

 

 如月が牢人の腹を心なしか強めに踏みつけ、階段を上がっていく。

 ――如月さん怖ぇ……。

 その行動は、俺に如月がNPCだと一瞬でも忘れさせるには十分だった。




 如月、抜刀。

 NPCと共闘するというのは、黒白のコンチェルトを参考にしました。

 次回は《ふつのみたまのつるぎ》奪還クエストその3です。
 次回で取り敢えずクエストクリアになる予定です。
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