誤字、脱字の指摘などもあったらお願いします。
部分部分に独自解釈があります。
今回は《ふつのみたまのつるぎ》奪還クエストその2です!
合流したアランとクラリスを見やると、如月が口を開いた。
「……お侍様のお仲間の方は南蛮人の方だったのですね」
「南蛮人って……どういうことだよ?オニキス」
「何つーか……かくかくしかじかで……」
「いや、それじゃ伝わりませんからね……?」
クラリスに突っ込まれ、仕方なく1から説明する。
「――というわけで、《ふつのみたまのつるぎ》ってのを城主から奪い返すことになったんだ」
「……まあ、良いけどさ、クエストやるならやるで……。でも、そういうの1人で決めるなよ」
「そうですよー!ホントはクエスト受けないで、わたし達が追いつくのを待っていてほしかったです」
「わ、悪かったよ」
「お侍様?」
如月が俺の袖を引く。
「な、何だ?どうした?」
「《ふつのみたまのつるぎ》は宝刀なのです。……お侍様のお仲間の方を信用しないわけではありませんが、やはり、南蛮のお方にご同行願うのは憚られます」
「……え~と……つまり?」
「僕らはお呼びじゃないってことかな?」
「申し訳ございませんが――そういうことです」
「え?わたしも南蛮人?……何ですか?」
「あなたは違うのですか?……服装をお見受けする限り、南蛮の方だと思ったのですが」
「……そうか。オニキス、このクエスト《着物》を着てないと参加できない仕様なんだよ」
「な、なるほどな」
如月は多くのNPC同様、顔立ちは西洋人だ。髪もピンクと明らかに《日本人》ではない。
つまり、この層での《日本人》の基準とは、《着物》を着ているか否か……つまり、服装しだいなのだ。
そこまで理解して、改めて俺は自分の姿を見下ろす。
恐らくこのクエストのフラグを立てる為の前提条件も、あの服屋で買える《着物》を着ていること……なのだろう。
更に、クエストを続行する上でも、《着物》を着ていることは必須。
「アラン、クラリス……着替えてくれ」
「まあ、そうなるよね」
「こっち見ないでくださいよ!!」
俺は努めてクラリスの方は向かず、如月の方に眼を向ける。
「……終わったよ」
「わたしも、着替え終わりました」
2人が着替え終わると、如月の反応が変わった。
「――お二人とも、先ほどのは変装だったのですね?この如月には見抜けませんでした……それでは、改めて宜しくお願い申し上げます、お侍様方」
「……当たり、だったみたいだね」
どうやら2人のクエスト参加も認められたみたいだな。
「でも……ポーション足りますかね?わたし今12個しか持ってないですよ?」
「僕は8個だね……」
「俺さっき使っちまって残り6個。……買い足しとくんだったな」
全部足しても残数26個。……思ったより多い。
――だが。
「この着物の防御力がなぁ……」
「装甲紙ですよね……」
「逆に考えよう。……この《着物》を着ていてもクリアできる難易度だって」
「でも普通に考えたら高難易度クエストですよね」
「だよね~」
クラリスの指摘に、アランが気の抜けた返事をする。
「さあ、お侍様方!参りましょう!!」
如月がそう言うと、如月の頭上に今まで存在しなかったブルーのカーソルとHPバーが現われた。
「……まさか、《護衛クエスト》?」
《護衛クエスト》とは、その名の通り、NPCをモンスターから守りつつ、所定の位置まで護送するクエストのことだ。
自分のHPだけではなく、NPCのHPにも気を使う必要があるので、このアイテムを何個持ってきてくださいという《お使いクエスト》やこのモンスターを何体倒してきてくださいという《討伐クエスト》に比べ難易度が高い。
今回の場合、ボスであろう城主を倒す《ボス討伐クエスト》だけではなく、如月の護衛までこなさなければならないとは……。
「これ、かなり難易度高めなんじゃ……」
そんな不安に苛まれつつ、俺達は如月を囲むようにして歩き出す。
「はぁ……わたしも、嫌な予感したんですよね……」
「今更言わないでくれよ」
「オニキスさんが勝手にクエスト受けちゃったんじゃないですか!」
「そうだった……悪い」
「……でもさ、なんか時代劇みたいで楽しいよね」
「アランさん……」
クラリスが梅雨並みにジトーッとした眼をしている。
「クラリスさん!?僕、何か不味いこと言った!?」
「いえ……楽しんでますねぇ~!って思っただけですから、気にしないでください」
「気になるからね?思い切り気になるからね!?」
「そうですかー」
反応冷てぇ……。
「――お侍様方!!注意して下さい!敵の気配です!!」
「敵?」
「来るぞ!!僕の《索敵》にも反応がきた……2体だ!!」
如月も《索敵》スキルでも持ってるのか?
いや、メタなことを言えば、敵の出る場所が最初から解ってるのか?
――まあ、そんなことはいい。
「いくぞ!!」
俺は叫び、帯に差した鞘からマチェーテを抜き放つ。
「お侍様方だけに任せるわけには参りません。私も戦います」
「「「え?」」」
俺達は同時に疑問符を浮かべるが、次の瞬間驚きに変わる。
なんと、如月が袖から刀を取り出したのだ。
如月が右手に持つ鞘は赤く、柄に巻いてある紐も赤い。
――どうやって出した?
刀は全長80センチはある。
今まで袖の中に隠していたとは思えない。
如月――とんだ奇術師だぜ。
「さあ!行きますよ、お侍様方!!」
そう言うと如月は、鞘から刀を抜き放った。
コボルトが使っていた鈍く光る直刀ではなく、反りのある……一般的に日本刀と言われるのはこのタイプだろう。
刃も鋭く光り、一目で業物と解る見事な差し料だった。
「……如月も戦うのか?」
もう1度確認する。
「もちろんです!!」
どうやら《護衛クエスト》ではなく、《共闘クエスト》だったみたいだ。
「よし!アランは如月に合わせてくれ。俺とクラリスはもう1体のMobを倒すぞ!!」
「解りました!」
「……それではアラン殿は、私と共に左側の敵兵を!」
「え?わ、解った!!」
SAOのNPCの学習能力は他のゲームと比べ、並外れて高い。
それは解っていたつもりだが……まさか名前まで覚えて、こちらの作戦に乗ってくれるほどとは思わなかった。
――現われたのは牛の頭をもつ怪物。トーラス族の《カタナ》使いだった。手には、コボルトの物とは違い、反りのある……150センチを超える長さの刀……確か、コボルト王が使ったという野太刀。
しかし、それに怯むことなく如月がトーラスの懐に飛び込む。
「はぁッ!!」
気合いを込め、一閃。
「ブモォォォォォ!!」
1撃で2割りほどのHPを削った如月は、切り替えし、2撃目を放つ。
「せぁッ!!」
「ブモォォォォ!?」
如月が予想以上の働きを見せ、どんどんトーラスのHPを削っていく。
俺達だって負けてはいられない。
「凄いですね……」
「感心してる場合じゃないぞ!!」
トーラスの放った斜め斬りを大きく右に反れることで躱し、反撃の1撃を叩き込む。
「せいっ!!」
「ブモォォォォォッ!!」
カウンターが決まり、硬直する獣人。
隙を逃さず、ソードスキルを発動させる。
「らぁぁぁぁっ!!」
刀身がレッドに煌き、踊るように斬りつけていく。
左、跳び上がり右斜め、くるりと回りながら左斜め――
「ブモォォォォォッ!?」
「ラストっ!!」
――最後の縦斬りで、トーラスは爆散。
《短剣》4連撃技《ダンシング・エッジ》。
少し遅れて左側からも破砕音が鳴り響き、戦闘が終了したことを告げる。
「ふぅ……」
一息吐き、マチェーテを鞘に収める。
「グッチョブ!!如月。……働かない2人は少しは見習え」
「……女の人が刀を振り回すのに圧倒されちゃってさ」
アランが言い訳めいたことを口にする。
「オニキスさんが1人で片付けちゃったんじゃないですか」
クラリスの言っていることは正論だった。
『ブンッ』
バットの素振りのような音が聞こえ見てみると、その方向には刃を納める如月の姿が。
血を払う仕草だったわけか、と考え至る。
「お侍様もグッチョブ……?です。流石ですね。……私も刃が立たなかったあの牢人を倒したのですから、これぐらいお侍様にとっては朝飯前なのでしょう。心強いです」
「…………え?あのMobそんなに強いの?」
何せ如月は通常攻撃のみでトーラスを屠ってみせたのだ。にも関わらず、力関係は牢人>如月……。
「このクエスト、フラグ立てる段階が難しいのかもね……オニキスはあのMobどうやって倒したんだい?」
「……事故」
簡潔かつ適当に答える。
牢人の死因は遠くから飛んで来た俺とぶつかり、運悪く頭にマチェーテが突き刺さった……というものだ。
本来は倒すのに相当苦労するモンスターだったのかもしれない。人型だったし。
「運も実力の内って言いますしね」
クラリスがフォローしてくれた。
「……先を急ぎましょう、お侍様方。城主はこの城の最上階に居るのですから」
確か、この城は3階建てだったはず。
「よし、頑張ろう」
「そうだね……こうなってくると、クエストクリアの報酬が何なのか気になるところだけど」
「……そうですね。お侍様には《ふつのみたまのつるぎ》を差し上げられれば良かったのですが、家宝ですので……。失礼ながら、私が使っている物と同じ刀を差し上げようと考えております」
予期せぬ反応が返ってきた。
クリア報酬は刀……。
これは、《カタナ》スキルが存在するという裏付けにならないだろうか。
……キリト。どうやらお前の想像通り、《カタナ》スキルはあるっぽいぜ。
「クリアできたら試しに装備してみたらどうですか?スキルがないから補正もないし《ソードスキル》も使えませんけど」
「そうだな」
クラリスの提案に頷く。
武器は対応しているスキルをセットしていなくても、装備するだけなら装備できる。ただし、スキルによる各種補正などの恩恵は受けられないから、実戦では使えないが。
「……僕も持ってみたいな」
「……使わせてやるから、その物欲しそうな顔止めろよ」
「え?僕そんな顔してたかい?」
「してたよ」「してましたね」
俺とクラリスが同時に言う。
「ふふふっ」
見れば、如月が笑っている。
「アラン殿は面白い方ですね……そんなにほしいのなら、もう1振り差し上げましょうか?」
「え!?良いんですか!?」
NPC相手に下手に出るアラン。
180センチの長身の金髪イケメンが女性(NPC)にへりくだる……非常に情けない姿だった。
「ええ。……と、言いたいところですが、私が今持っている刀は2振りだけなので……すみませんが、これまでお渡しするわけには参りません」
そう言うと、右手に持つ刀を振ってみせ、してやったり、という顔をする如月。
「上げて落とした!?」
クラリスが驚くのも無理はない。ユーモアのセンスまであるとは……恐るべし。
「オニキス、僕が貰ってもいいかな?」
「めげないな!!良いけどタンクできなくなるぞ!!」
「くそっ!!やっぱり個人の趣向は許されないのか!?」
「……何でアランさんはそんなに刀が好きなんですか?」
クラリスが根本的なことを訊く。
確かに、俺もそれは気になっていた。
「刀は……日本製RPGにおいて、外すことのできない武器じゃないか!!ソニックブームとか、火炎斬りとか!僕がやったゲームには大抵出てたよ。……それもあって、日本に来てから時代劇をレンタルショップで借りて見てさ……結構面白くてね。特に3匹の侍は良かったね。2人も1度見てみるべきだよ」
お、おう。
こいつがゲーマーなのをすっかり忘れていた。
「アランさんって、見た目は良いのに結構残念ですよね。だから彼女いないんですよ」
「……言ってやるな」
ボソッとクラリスが酷いことを言う。
結構辛辣だよな、クラリスって。……ホント、初対面の時とはえらい違――いや、俺胸倉掴まれたんだっけ?
「……2階へ上がる為の階段が見えてきました!!お侍様方!急ぎましょう!!」
更に速度を上げる如月。
敏捷値優先で上げてる俺は大丈夫だが、筋力値優先のアランは結構キツそうだ。……それでも、いつものプレートアーマーではない分、なんとかそれにも付いて行く。
「あれって……?」
視界の先に、人影が映る。
牢人だ。
先ほどの非業の死を遂げた人型Mobとそっくりの。
しかし、着物の色が違う。先ほどのは白だったが、今度のは青だ。
「お侍様!!先ほどの技をお願いします!!」
如月が叫ぶ。
――え?また俺に事故れと?
「オニキスさん、頑張って!!」
「――こうなりゃ自棄だ!!」
マチェーテを抜き放ち、《エアリアル・スターブ》を発動させる。
すると身体が浮き上がり、一直線に前に向かって飛び立つ。
「なっ――!?」
Mobの顔が青ざめるが、知ったことではない。
『ド――――ンッ!!』
爆音が鳴り響き衝撃が走るが、今度はマチェーテを離すことはなかった。
俺と牢人はぶつかった後も勢い殺せず階段の段差に激突する。……主に、牢人の背中が。
しかし、階段は《破壊不能オブジェクト》だったのだろう。掠り傷1つ付くことなく、そのままの形を保っていた。
「はぁ……恐かった」
やはりこの技は、前に向けて放つものではない。ロケット花火を前に発射してはいけないのと同じことだ。
因みに、俺の下敷きになっている牢人はHP全損。マチェーテの切っ先が牢人の腹を捉え、深々と貫いているという……中々にグロテスクな状況だった。
「……すまん」
思わず謝り、白目を剥いた牢人の腹から、マチェーテを引き抜く。
牢人がクッション代わりになってくれたおかげで、俺のHPは1ドットも減っていなかった。
「流石です、お侍様」
追いついた如月が、にっこり笑ってそう言った。
――この状況で笑うのは、単に学習不足なのか、設定ミスなのか……。そうじゃないなら、如月こそプレイヤーにとって敵なんじゃないか?と一瞬考えてしまう。
「うわっ……このMobって倒しても消えないんですね」
「酷いことするね、オニキス」
「俺のせいじゃないだろ!!」
「では、お侍様方……上に参りましょう」
如月が牢人の腹を心なしか強めに踏みつけ、階段を上がっていく。
――如月さん怖ぇ……。
その行動は、俺に如月がNPCだと一瞬でも忘れさせるには十分だった。
如月、抜刀。
NPCと共闘するというのは、黒白のコンチェルトを参考にしました。
次回は《ふつのみたまのつるぎ》奪還クエストその3です。
次回で取り敢えずクエストクリアになる予定です。