ソードアート・オンライン 漆黒の復讐者   作:eldest

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 部分部分に独自解釈があります。
 少々本編と矛盾が発生してる部分がありますが、そこは目を瞑っていただければ。

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第3話 Nessun dorma

 2022年11月7日

 

「いやぁー疲れたぁ」

 

 そう言いながらオニキスが、腕を上げて大きく伸びをした。

 まあ、その気持ちは解る。というか2人に対して、それ相応の罪悪感を抱いているところだ。

 時刻は既に日が変わり、0:09。実に、クエストクリアまで3時間もかかってしまった。

 

「……ふぁ……眠いです」

 

 クラリスさんが、口元を押さえつつ、可愛らしく欠伸をした。

 

「ご、ごめんてば……2人とも」

 

 僕の左腰には、先ほど《森の秘薬》クエストのクリア報酬としてNPCから貰った《アニールブレード》がぶら下がっている。

 

「んじゃ、謝罪の誠意を見せてもらおうかな、アラン君」

 

 見れば、ニヤリ、と見慣れつつある悪ガキのような笑みを浮かべている。

 一体、オニキスは僕に何をさせるつもりなのだろうか。

 『……ごくり』と、思わず生唾を呑み込む。

 

「さて。アラン君に何をしてもらおうか、クラリス」

 

 『また呼び捨て……』と小さく抗議しつつも、こちらも少し意地の悪そうな顔をつくると、言った。

 

「そうですねぇ~……宿屋の食事、全メニュー頼んでみますか?」

「なっ!?」

 

 僕は耳を疑う。クラリスさんがそんなことを言うなんて……。これは幻聴だ。きっとナーブギアの調子が悪いのだ、きっとそうだ。僕は疲れてるんだ。

 

「クラリス、お主も悪よのう……」

「いえいえ、オニキスさんほどでは」

「「ふっふっふっふっ」」

 

 何だ、この2人。息ぴったりじゃないか……。それに、何だその笑い方。

 

「2人がっ……2人が僕を虐める!!」

 

 何だろ、このおかしなテンション。オニキスに当てられたのかもしれない。

 

「――まあ、漫才はこれぐらいにしてだ」

「オニキスさんが始めたんじゃないですか」

 

 クラリスさんが抗議するが、オニキスはそれを無視して、真面目な口調で話し始めた。

 

「……アラン。こんなこと一々気にしてたら、精神的に持たないぞ。流石に全く気にするなとは言わないけど、そこは持ちつ持たれつだ。俺だってこれから2人に迷惑かけるかもしんねぇ~し、それはクラリスさんだって同じだ。小さい事は気にするな。俺達は、パーティー組んでる仲間なんだからさ」

「オニキスさん、クッサいですね」

「説教は往々にして臭くなるものなんだよ、高校生」

 

 全く……。

 

「……ふふふ」

「アラン、笑うことないだろ!真面目に話してんだから」

「いや、ごめんごめん」

 

 持ちつ持たれつか……。

 

「じゃあ――」

「で?実際アランに何してもらおうか、クラリスさん」

「そうですねぇ~……服でも買ってもらいましょうか。確か《はじまりの街》に服屋さんありましたよね?初めからストレージに入っていた替えの服だけじゃ心もとないので」

「ちょっ――」

「女の子はやっぱり気になるよなぁ……下着とかも買ってないんだろ?」

「若干セクハラくさいですが、女の子に対するデリカシーはあるので、それで今回はチャラにしましょう。……買ってないです」

「下着なんて耐久値減るわけじゃないし、このセカイじゃ汚れるわけでもないけど、やっぱり替えたいよな?」

「当然です」

「あのさ2人とも――」

「じゃあ明日にでも買いに……そうか、もう日付変わってるのか。じゃあ、今日の昼にでも買いに行こうぜ」

「店内にまで付いて来ないでくださいよ?」

「当たり前だ。そもそも君の下着に興味ない」

「ひっど!!」

 

 2人は僕の介入を許さず、勝手に話を進める。でも僕も黙ってはいられない。

 

「2人とも!!持ちつ持たれつなんじゃなかったの!?」

「「それはそれ、これはこれ」」

 

 日本語って怖いなぁ……。

 僕が俯いていると、オニキスが肩をバシバシ叩いてきた。

 

「何暗い顔してんだよ、アラン。これから宿屋でクエスト達成の祝杯挙げるぞ!」

「わたし、眠いんですけど」

「良いぞ、先に寝ても。その代わり、さっきドロップしたリキュールは君には当たらない」

「え~!?」

 

 まあ、いいか。武器代は暫く掛からないわけだし。

 

「……解ったよ。じゃあ、クラリスさんは下着で、オニキスは?」

「いや……あの、アランさん違いますからね?ボケてるんですか?それともマジなんですか!?」

「ん~……武器は自分で作るし、服なんかいらないし……そうだなぁ」

「今から10秒以内に決めないと、オニキスは無しね」

「ちょっと聴いてますかアランさん!?」

「1、2、3――」

「今晩の宿代払え」

「了解」

「ちっさ!?それじゃぁ~わたしだけ悪者みたいじゃないですかぁ~!」

 

 

 広場で馬鹿騒ぎした後俺達は、宿屋で遅すぎる夕食を食べつつ、リキュールで祝杯を挙げた。《リトルネペント》からドロップしたことは、飲む際は記憶から抹消した。

 SAOの酒では酔えないので、まさかリキュールのせいではなかろうが、クラリスがその場で寝入ってしまったので、アランと2人がかりで部屋まで運んだ。……きっと疲れてたんだろう。

 その後は、アランと別れて部屋に入ってベッドに転がったのだが、神経が張り詰めているせいか、なかなか寝付けない。

 仕方がないので、星でも観ようと宿を出てみると――そこには……。

 

「――何してんだよ、アラン」

「……オニキス。君も眠れないのかい?」

 

 宿屋の前でアランが1人、空を眺めて佇んでいた。

 

「まあな……。ゲームで死んだら現実でも死ぬなんて、やっぱり脳がちゃんと認識しないんだよ。でも、本当は解ってるはずなんだ。ここまでやっておいて、冗談なわけがないって」

「うん。――まるで、それこそアニメの話みたいだ。現実だって、脳が受け入れてくれない」

 

 現実。

 茅場晶彦はチュートリアルで、『諸君にとってこの世界が唯一の現実である』と言っていた。アバターを現実そっくりの外見にしたのも、この《現実》を現実として認識させるため……。

 

「……この《世界》に適合できた者だけが、生き残れるのかもな」

「そうかもね……因みにだけど」

 

 アランが空に向かって指差すので、つられて俺は空を見上げた。

 空には、只1つの星も無かった。

 

「この世界では星は観られないよ。ベータからの変更もなかったみたいだ」

 

 アインクラッドの天蓋は、上の階層の底で覆われている。

 朝が来れば明るくなるし、夜になれば暗くもなるが……朝と夕方に太陽が外周から覗くだけで、夜になったからといって、月や星々が頭上で輝くわけではない。したがって、天体観測など不可能だ。

 もしかしたら、ベータ時代から変更されてないかと思い観に来てみたが……アランの言う通り、特段変更されなかったようだ。

 ――何も無い空。そんな空を眺めていると、恐れが心に忍び寄る。

 

「この星の無い夜空が、プレイヤーの……俺達の、この先を暗示しているようで嫌だな」

 

 つまりは、ゲームクリアは不可能。誰も生き残れない。

 

「……そうだね」

「――え?」

 

 不吉なことを考えていたので、思わず聞き返してしまった。

 

「おお夜よ、去れ!星よ、沈め!星よ、沈め!夜明けとともに私は勝つ!私は勝つ!私は勝つ!」

 

 よく解らないことを言い出したアランを俺は凝視する。

 

「な、何だよ?いきなり」

「……知らないかい?ジャコモ・プッチーニ作曲の歌劇《トゥーランドット》のアリア、《誰も寝てはならぬ》の歌詞だよ」

「アリア?」

 

 ――アリア。確か、オペラなどの劇音楽で歌われる、独唱歌……だったはず。

 

「そう。イギリスでは有名な曲でね。クラシックでは異例のシングルチャートのトップを数週に渡って保持し続け、全英だけで400万枚以上売れたんだ」

「……その曲がどうしたってんだよ?」

 

 アランが何を言いたいのか、俺には解らない。

 

「……《トゥーランドット》のあらすじを大雑把に言うとね。主人公のカラフは、美しいトゥーランドット姫に恋をするんだ。でも、姫と結婚するためには、姫が出した3つの謎を解き明かさないと駄目なんだ。解き明かせないと斬首される」

 

 なんとなく、かぐや姫を連想させる。

 

「カラフは見事3つの謎を解き明かすんだけど……それでも姫は、結婚を拒むんだ。そしてカラフは、『それでは私もたった一つの謎を出そう。私の名は誰も知らないはず。明日の夜明けまでに私の名を知れば、私は潔く死のう』とね」

 

 その姫は約束を破ったのか。カラフはその姫のどこが良いんだ。

 

「その提案に乗り、姫は街に命令を下す。『今夜は誰も寝てはならぬ。求婚者の名を解き明かすことができなかったら住民は皆死刑とする』と」

「……マジか」

 

 随分と冷酷な姫がいたものだ。

 

「で、その姫の出したお触れを聞いたカラフが、《誰も寝てはならぬ》を歌うんだよ」

「で、結局それが何なんだよ?」

 

 俺がそう尋ねると、アランは再び空を見上げて言った。

 

「沈む星がそもそも無いなら……僕達が勝つことは、もう決まっているのかもしれない」

「…………」

 

 それはこじつけだと、俺には切って捨てることはできなかった。

 

「……だったら、良いな」

「うん。それに、明けない夜は、決して無いよ」

 

 アランはそう言って、頷き少し笑うと、再び話し始めた。

 

「そして、その話の続きだけどね――」

 

 アランは、このまま夜明けまで付き合わせるつもりだろうか……。

 でも、起きてることで、この《世界》に勝てるなら――それも悪くはないと、俺は思った。




 男の子は女の子の前では弱いところを見せたくないものです。それが年下ならば尚のこと。

 タイトルのNessun dormaはイタリア語で誰も寝てはならぬです。
 今回の話では、プログレッシブの星なき夜のアリアで、アスナが言った「このゲーム、この世界には負けたくない」を自分なりにアレンジしてみました。
 誰も寝てはならぬを絡めたのも、タイトルのアリアから考えてのことです。アランがイギリス人という設定も、後押ししてくれました。
 また、今夜は自棄酒の複線回収もできましたね(笑)

 誰も寝てはならぬの歌詞はWikipediaから引用させてもらいました。
 著作権は切れてるので大丈夫です。

 次回は、はじまりの街へ戻ります。
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