ソードアート・オンライン 漆黒の復讐者   作:eldest

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 誤字の指摘などもよければ。

 部分部分に独自解釈があります。

 今回は前後に分けたので短めですね。戦闘シーンもなしです。

 銃陀ー爐武さん、バルサさん、お気に入り登録ありがとうございます!


第6話 開かれる扉・後編

 2022年12月2日

 

 《トールバーナ》の噴水広場に、高らかに鐘の音が響き渡る。

 時刻は16時丁度。遂に、1回目の《第1層ボス攻略会議》が行われようとしていた。

 

 

 

 青い髪の片手剣士、自称《騎士》ディアベルの呼びかけによって、集まったプレイヤーは44人。

 この状況でよく集まった方ではあるが、決して多くはない。そもそもレイドの最大人数である48人にすら達していないのだが。

 まあ、遠目に見ている俺に言えた義理ではないか。

 

「――わたし、ああいう頑張ってる《爽やか》系苦手なんですよね……」

 

 右隣に立つクラリスが、そんな無慈悲なことを言う。

 

「そ、そうか」

 

 1層には髪色をカスタマイズする為のアイテムは売っていないので、恐らくこの日の為にモンスターからレアドロップするなり、プレイヤーから買うなりしたのだろう。……なのに、集まったプレイヤーに女性は無し。同じく遠目に見ているクラリスからはこの評価だ。

 ……ディアベルさん、俺はあんたに同情を禁じ得ないよ。

 

『――ボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリア出来るんだってことを、《はじまりの街》で待ってる皆に伝えなきゃならない。それが、今この場所に居るオレ達トッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、皆!』

 

 拍手や口笛を伴う喝采が湧く。

 ――義務を放棄してすまないな、《騎士》さん。

 俺は、心の中で謝罪する。口に出してまでする気はないが。

 ――ん?

 

『ちょお待ってんか、ナイトはん』

 

 そんな声が低く流れ、歓声がぴたりと止み、前の方の人垣が割れる。

 その声は、ディアベルの美声と言ってもよさそうな声とは正反対な、低い濁声だった。

 

「……何だ?」

「さあ?」

 

 クラリスを挟んで反対側に立つアランと顔を見合わせる。

 

『そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな』

 

 あのサボテン頭、折角の《空気》を破壊しやがった。

 にも関わらず、ディアベルはサボテン頭を手招きしながら言った。

 

『こいつっていうのは何かな?……まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するなら一応名乗ってもらいたいな』

 

 そう言われて、サボテン頭は1歩、2歩進み出て、噴水前まで行ったところで振り返った。

 ――遠目だからよく解らないが、身長は低めだが、がっしりとした体型だった。

 

『わいはキバオウってもんや』

 

 サボテン頭改め、キバオウの主張はこうだった。

 ①プレイヤー2000人が死んだのは、元テスターのせいだ。

 ②その責任を取って謝罪、賠償しろ。

 ――……ほほう。

 

「……オニキス、頼むから殴り込みに行くとか止めてくれよ?」

「――アランが俺のことどう思ってるのか、何と無く今ので理解した」

 

 流石に殴り込むまではしないさ……怒鳴り込むつもりではいるが。

 

『発言、いいか』

 

 歩き出そうとした寸前、豊な張りのあるバリトンが、夕闇に染まりつつある噴水広場に響き、ここまでも問題なく聞こえてきた。

 声を発したと思われるプレイヤーが前へと進み出る。

 ――デカい。黒い。

 それが俺の率直な感想だった。

 

『俺の名前はエギルだ。キバオウさん――』

 

 エギル。それがあの巨漢のプレイヤーネームらしい。

 俺も身長は高い方だが、俺より更に10センチ近く大きく、肩幅もあり、背中に吊った《両手斧》が小さく見えるほどだ。

 そして、あの風貌。アランという前例がいるので外国人というだけではそれほど驚くことでもないが――あの肌の色はアフリカ系か……。留学生って歳にも見えないが、もしかしたらハーフか帰化人なのかもしれない。

 

 エギルの働きもあって、その後は揉め事も起こらず、パーティーが組まれた後、その日の《会議》はお開きとなった。

 

 

「エギルっていうヒト、格好良かったですね~」

「クラリスってああいうのが好みなのか?」

「違いますよ!?そういう意味で言ったんじゃありませんから!!」

 

 リビングで紅茶っぽい謎の液体を啜りつつ、先ほどの会議が話題にあがると、クラリスさんのそんな感想にオニキスが茶々を入れていた。

 ――レイドは最大人数よりも4人も少なく、1パーティーが2人だけでコンビを組まされていた。

 今からでも遅くないから、自分も参加した方が良いんじゃないか、という思いに囚われる。

 ディアベルも言っていた《トッププレイヤーの義務》という言葉……。

 でも、僕はそれを振り払わなければならない。

 僕の《誓い》は《義務》より重い。たとえそれで後ろ指を差されようと、僕はもう迷わないし、忘れない。

 

 

 2022年12月4日

 

 1回目の《第1層ボス攻略会議》が行われた2日後である今日、遂にボス攻略レイドがフロアボス《イルファング・ザ・コボルトロード》を倒すため、迷宮区へ突入した。

 

 

 

「――そろそろですかね?」

 

 そわそわしてしまっている自覚はあるが、つい尋ねてしまう。

 

「……ん~……そろそろじゃないかな?」

 

 わたし達は、第1層主街区である《はじまりの街》へと来ていた。理由は、第2層へと通じるはずの――いわゆるテレポート場所――《転移門》が、各層ともに主街区にしか無いからだ。

 ディアベル率いるレイドが見事ボスを倒せば、2層への扉が開かれ、レイドの誰かがそのままフィールドを進み、2層の主街区に同じくある転移門を《有効化》させれば、ここからワープして2層まで行ける、というわけだ。

 ――そう言っているうちに、穴が開いただけのアーチ状のオブジェだった転移門が、光輝き、アーチの中央の空間が、シャボン玉のような色彩を放った。

 ……誰か2層の転移門を《有効化》させたのだ。それはつまり、1ヶ月も倒されなかったフロアボスに、レイドが勝利したという証だ。

 

「やったんですね!!」

 

 思わず笑顔が零れる。

 

「うん!」

 

 アランさんも笑顔だ――だが、オニキスさんだけは微妙な顔をしている。

 

「ど、どうしたんですか?」

「……変だと思わないか?あのディアベルのことだ。転移門を《有効化》させてそのままってことはないだろ。あいつなら、レイドと一緒に門を使ってワープして来て、待っている俺達に顔を見せるはずだ」

「……オニキスの言う通りだ。まさか、何かあったんじゃ……」

「ふ、2人とも変なこと言わないでくださいよ」

 

 笑顔が一転、不安に支配される。

 

「――あっ」

 

 わたし達が見ている眼の前で、フードを被った女性プレイヤーが走って門の中へと消え、その人を追ってだろう、男性プレイヤー2人が同じく消えた。

 

「転移門が不具合起こしてるわけでもなさそうだ……俺達もさっさと行こう」

「――順番になってからね」

 

 わたし達が立っているのは、転移門から少し離れた位置。10人ほど前に並んでいた。こんな時でも列になって並ぶのは、日本人の性分だろう。さっきの3人は何か理由がありそうなので除外だ。

 

「……何もないといいですね」

 

 わたしは、心の底からそう思った。

 

 

 

 しかし、わたしの気持ちは裏切られる。

 その少し後、レイドの指揮官であったディアベルが戦死したことを、わたし達は知った。




 今回で第1層終了です。

 1ヶ月経ったこともあって、オニキスはクラリスを完全に敬称略で呼ぶようになっています。

 次回は閑話入れるか、そのまま2層いくか迷ってます。
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