誤字の指摘などもよければ。
部分部分に独自解釈があります。
今回は閑話です!短めですが……閑話の方が書きやすく感じるんですよねぇ(笑)
うなぎパイさん、お気に入り登録ありがとうございます!
2024年6月某日。
ギルドメンバーが迷宮区攻略へ向かっている中、男は装飾の類の少ない、豪奢だが、簡素な部屋に独り佇む。
第55層主街区《グランザム》。そこへ置かれた最強ギルド《血盟騎士団》本部。その建物の最上部に置かれた団長室。
男は椅子に座り、ウィンドウを開き見詰めた。
――男の名はヒースクリフ。ユニークスキル《神聖剣》を振るう、SAO最強のプレイヤーと謳われる男。
だが、彼が今開いているウィンドウはプレイヤーのものではなく、《システム管理者用》のものだった。
《システム外スキル》と呼ばれるものがある。
その名の通り、システムに規定された技ではなく、プレイヤーが独自に編み出した《技》だ。
例を挙げるなら、解りやすいのは《スイッチ》と《武器破壊》だろうか。
《スイッチ》は、モンスターの攻撃をソードスキルで相殺することによって、モンスターのアルゴリズムに強大な負荷を与え、動きを抑制し、攻撃を控えのプレイヤーと交代する技術だ。交代した後は、回復ポーションを使ってHP回復を行ったりすることが出来る。
《武器破壊》は、対人戦であるデュエルに於いて、相手の武器の脆弱部分にソードスキルを当てることで、意図的に武器を破壊する技術だ。
そんな《システム外スキル》の中で、最も習得困難と言われ、1部ではオカルト扱いされている《気配を察知》する技――《超感覚》。
《超感覚》は、《索敵》スキルを用いてさえ見破ることが困難な、高熟練度の《隠蔽》スキルを使用している相手を《見る》のではなく、《感じる》技術だ。
――それは、《前兆の感知》、或いは……そう、《勘》だ。
荒野に独り、仮面を付けた黒いコートを着た男が佇む。いや、既に男は臨戦態勢だった。
周囲からは、研ぎ澄まされた刃の如く、殺気を放たれている。これがゲームではなければ、相対した相手が震え上がる程に。
――コートの男が動く。
男は何も無い空間に蹴りを入れる。只の蹴りではない。男の左足は、ネイビーのライトエフェクトに包まれていた。
《体術》重単発技《暗月》。
――男の靴底が何かを捉え……そのまま貫く。
「――な、何で……?」
その攻撃で《隠蔽》が解けたのか、《オレンジカーソル》のプレイヤーが現われた。
現われた男の顔は、恐怖と愕然で凍りついていた。
「嫌、嫌だ!死にたくな――」
男の言葉は最後まで続くことはなく、幾つものポリゴン片となって飛散した。
「こ、この野郎ァ!!」
仲間が殺され激昂したのか、コートの男を取り囲むようにして、6人のプレイヤーが現われた。
6人はそれぞれ武器を持ち、全てが《オレンジカーソル》だった。
つまり、彼らは全員犯罪者《オレンジプレイヤー》なのだ。
その中で、緑のバンダナを巻いている《両手剣》使いの男が、コートの男に斬りかかる。必殺の、ソードスキルで。
「死ねやァ!!」
この距離では、《体術》は届かない。そして、コートの男の手には、何も握られてはいなかった。
「――なっ!?」
――握られては、いなかったはずだ。だが、男の手には1振りの《長槍》。
コートの男は只、槍を構え待つだけ。
だが、バンダナの男は止まらない。いや、止まれない。ソードスキルは、発動してからは途中キャンセルが不可だからだ。
「うわぁ!!?」
バンダナの男の腹に、槍が突き刺さり、悲鳴を上げる。
だが、コートの男は容赦しない。する義理もない。
「……死ぬのは、お前だ」
コートの男が始めて口を開いた。その声は底冷えするような、鈍く冷たいものだった。
男は左拳を握り、脇に構えた。
その動作でソードスキルが発動したのか、拳にレッドのライトエフェクトが灯る。
拳は真っ直ぐ、バンダナの男の顔面に吸い込まれた。
「ぐわぁ!!」
《体術》基本単発技《閃打》
それによって男のHPゲージは吹き飛び、爆散。
その光景を呆気に取られて呆然と見ていた男達は、バンダナの男の死で正気に戻ったのか、一斉にコートの男に斬りかかる。口々に何か喚き散らしながら……。
――だが、コートの男の持つ《長槍》が、陽炎のように揺らめき、消え、《大鎌》が現われたのは、まさにその瞬間だった。
男は《大鎌》の柄の縁ギリギリを右手で持つと、大きく振り回した。刀身が、ミッドナイトブルーに染まる。
《大鎌》重範囲技《ダークネス・モウ》
その1劇によって、全ての《オレンジカーソル》が消え、荒野には……今度こそ、コートの男独りとなった。
「……まさか、こんなにも早く収得者が現われようとはな……」
夕闇に染まりつつある室内で、先ほどの光景を映像としてウィンドウで見ていたヒースクリフ――いや、茅場晶彦は感嘆し、溜め息を吐いた。
「……《二刀流》が最強の矛、《神聖剣》が最強の盾であるなら……《復讐者》はなんてことはない、ソードスキルすら設定されていない、最弱のユニークスキルだ」
男の独白が、広い室内に溶けて消える。だが、独白は続く。
「だが、《復讐者》は対人最強のスキルとなり得る。なにせ、ウィンドウを開かずに、ストレージ内の装備を自分の意思だけで自由に換装できるのだからな」
茅場はフッと、子供のような笑みを一瞬浮かべる。
「まさに《変幻自在》。ソードスキルをデザインしたのはこの私だが……絶対に《神聖剣》を持ってしても、その攻撃を全て防ぐことはできないだろう」
だが、表情が一転、険しいものへと変わる。
「……しかし、《復讐者》の収得条件は只1つ――《オレンジプレイヤー》……PKを一定数キルすることだけだ」
それはつまり、このデスゲームにおいて、このプレイヤーが、犯罪者に対して私刑を続けたということを示す。
「……君は一体、この《世界》に何をもたらすのかな……?――君」
茅場の問いかけが、コートの男に届くことはなかった。
今回の主役は《黒の死神》です!ダーティーな戦闘シーンになるように頑張りましたがどうだったしょうか?
《復讐者》の能力というかスキル効果は《クイックチェンジ》の上位互換的なものになっています。
ソードスキルは《二刀流》のように《ジ・イクリプス》みたいな専用のものは設定されていませんが、対人戦闘では最強です。逆にモンスター相手だと特になにもありません。ただの《長槍》スキルだったり、《大鎌》スキルですから。
そんなことより……エグいです。収得条件がエグいです。あの茅場さんすら表情が険しくなるレベルです。
これが通常のMMOなら武器色々付け替えて楽しく……でも、スキルが各個単体なので器用貧乏になりそうですね。
では、そんなところで。
次回は2層に上がります!