ハリーポッターと聖杯戦争 作:無職者
貴方は魔法というものを信じるだろうか。これは、我々の住む世界と平行して存在するーーー魔法のある世界のお話
階段下の物置で、1人の子供が手鏡を見ていた。手鏡と言っても、道端に落ちていたのを拾ってきたものであるが。
「......消えるわけないか」
額の傷をさすりながら子供は呟いた。
この小さな物置で、生活している子供は、乞食のような見るに堪えない格好をしていた。
洗ってはいるのだろうが切ることもなく伸ばしっぱなしにされた黒髪。
ろくに食べていないのが丸わかりなガリガリの体。
10歳よりも年が低く見える低い背丈。
セロハンテープで補強して使っているボロボロの丸メガネ。
光を失い、濁った碧眼。
そして額の稲妻のような形をした傷である。
小さい頃の事故でできた傷だと聞かされているが、ハリーはこの傷が大嫌いだった。この傷が不幸の元凶だと思う程には。
伸びた髪の毛で隠そうとするが、どうやっても動けば見えてしまう。
溜息をつくとハリーは部屋を出た。
今日は学校もあり、ハリーにとっては地獄のような1日だからだ。
まず1日の始まりは大嫌いな同居人達への朝食作りから始まる。それが終わる頃には、クソみたいな伯父と伯母。そして従兄弟が起きてくる。
「よぉポッター!!」
「うぐっ!」
そう言うとハリーは殴り飛ばされた。彼の名前はダドリー。ハリーがこの家で最も嫌いな少年だ。
腹にはたくさんの脂肪を蓄え、身長も高いことからハリーと比べると年が二周りは違うのでは無いかと誰もが思う。
しかし、この2人は同じ年なので驚きだ。ハリーは口を切ったらしく少し血を垂らしていた。
「おい。血は吹いておけ、目障りだ」
「ああ、自分の服で拭くのよ。雑巾が勿体無いわ」
そこに、この家の主人バーノンとペチュニアがやってきた。彼らに至ってはハリーの事を召使いどころか、物とすら考えている節がある。それでも、ハリーは反抗すれば何日も物置に閉じ込められる事を知っていたので、文句も言わずに血を拭き始めた。
「床を汚してしまい、申し訳ありません.....」
ハリーはそう言いながら、床を拭く。しかし、地獄は終わらない。
次は場所が学校に変わるだけだ。そう思い、さらに憂鬱になりながら、ハリーは床を拭き終えた。
「そう言えば、今日隣の家に誰か引っ越してくるらしいわよ」
「ああ、フィッグさんが亡くなってからは、空き家だったな」
そんな2人の言葉もハリーには聞こえていなかった。
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多くの人が好きな曜日を聞かれたら、日曜日だと答えるだろう。
学校は休みで、仕事も多くの人が休みである。
普通の家庭であれば、外出したり、家族で過ごしたり、友達と遊んだりするのではないだろうか。
だがハリーは"普通ではなかった"。
ハリーには休日も平日も大した違いではなかった。
「ハリー!!公園に行くぞ!!」
「.....わかったよ」
休日は大抵、この親愛なる従兄弟に公園へと連れて行かれる。
そこには、四人の少年達がいた。四人とも、顔に笑みを浮かべている。
だが、決して友達に向けるものではない。最も似ているものは、"奴隷"に似たものだろう。
「今日は、何して遊ぶんだ?ダドリー!」
目の細い少年がニタニタと笑いながら、ダドリーに尋ねる。
勿論、他の少年達も笑顔だしダドリーも笑顔だ。だが、その笑顔は子供が浮かべるようなものではなかった。
恨むべきは彼らの育て方を間違えた親達だろうか、それとも自分をいじめる少年達だろうか、それとも自分を見捨てた両親だろうか、それともやり返すこともできない自分自身だろうか.......いや違う
「決まってるだろ!!ハリー狩りだ!!」
このクソみたいな世界だろう。
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ハリー狩りなどと言ってダドリー達が僕を殴ったり蹴り始めると、すぐに僕は気を失った。痛みを遮断するためだ。僕が唯一、この十年間で得たものと言ってもいいだろう。
僕には、何もない。
親も。
友達も。
家も。
普通の子供が持っているものが、僕には何もなかった。
僕は欲しかった。
家族からの愛が。
優しさが。
暖かさが。
普通の子供が持っているものが、僕には堪らなく輝いて見えた。
昔は、殴られたり、蹴られたりするたびに、泣いていた。大声で泣き叫んだ。
でも、無駄だと知った。
家では、伯父と伯母に叱られた。
学校では先生に叱られた。
不思議だった。他の子供は泣けば誰かが助けてくれるのに僕は誰も助けてくれなかった。理不尽な世界だ。でもそれが世界の全てだ。
この世界は理不尽なのだ。
生きてきて良かったと思うことは、何もなかった。
でも死ぬ勇気もなかった。
僕は、屑だ。
自分には何も無いと知っていても、求めたかった。
この地獄を救い出してくれる誰かを。
ここから救ってくれるなら、天使でも、悪魔でもよかった。
だから早く来てくれ。
そう願った時、一筋の光が僕の前を過ぎて行った。
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目を覚まして、ハリーが始めに思ったのはここはどこなのかだった。
知らない天井だった。学校の保健室の天井では無いし、ダーズリー家の天井でも勿論ない。少し体を起こして見渡すと、非常に散らかっていた。
それは服であったり、妙なアクセサリーであった。
不思議なことに痛みが消えていたので、少しこの家を見て回ることにした。
知らない家で何を呑気な思うかも知らないないが、ハリーもまだ10歳。
子供なのだ。
始めに、隣の部屋に行ってみると、大量の本棚が並んでいた。床にはダンボールの山と何冊もの分厚い本が散乱しており、ここは図書館なのかと勘違いしそうなほどだった。
だが、その疑念はすぐに消えた。
隣の部屋に行ってみると、そこだけは綺麗に片付いていた。
どうやら、武術の修練に使う部屋のようで壁には剣や槍など多くの武器がかけられていた。
「......凄い」
思わず、ハリーが手を伸ばした時だった。背後から声が聞こえた。
「それには触らないほうがいい。怪我をしますよ」
振り向くとそこには一人の少年が立っていた。
少年は肩を少し越える長い濃紺の髪を後ろで束ねており、右目は青く、左目は灰色のオッドアイとなっていて、アジア系の非常に整った顔立ちをしていた。
しかし、目を引くのはそこでは無い。
少年の顔は左半分が火傷で色が変色していた。それでも少年の容姿が美しいことに違いなく、火傷もまた少年の美しさを際立たせていた。
ハリーは少年を見た瞬間、確かにゾッとした。しかし、それは醜いからではなく、あまりに美しかったからだ。
思わずハリーが見とれていると、少年は首をかしげた。
「ああ、この火傷の事ですか?気になるようなら眼帯をしますが.....」
恐らく少年は、ハリーが火傷を見て気味が悪いと思っているように感じたのだろう。
「え!?いやいや違うよ!ただ、綺麗な顔だなぁって.....」
それは嘘ではなく、ハリーの本心だった。ハリーの周囲に、少年よりも容姿が優れた人間は間違いなくいないだろう。少年は、少し照れ臭そうに笑うと、ハリーの方へ歩み寄って来た。
「それより......お腹空いていませんか?もう一時過ぎですし料理を作ったので、是非食べて行ってください!!」
「いや、そこまでお世話になるわけには......」
「いやいや、気にしないでください」
少年は笑顔を浮かべるとハリーの手を掴み、連れて行った。
少年の手が、ハリーの手に触れた時、ハリーの心臓が少し、高鳴った。
ダイニングに着くとテーブルの上に沢山の料理が並んでいた。
正直に言えば、ハリーはよだれが垂れそうだった。ダーズリー家ではろくな物を食べられないし、今朝も何も食べていなかったのだ当然だろう。
少年はハリーを席に座らせた。食器は2人分しか無いようだった。
「......この家って、君しか住んでいないの?」
「ええ。本当は、父と来たのですが、気候が合わなかった様で.......今は病院で入院しています。一応、兄.....の様なのも居たんですが、今は仕事で海外に行っていて今は俺しか居ないですね。と言っても、今日からここで住むんですけどね」
ハリーは驚いていた。少年が1人で暮らしているのにもそうだが、この大量の料理は、恐らく少年が1人で作ったのだろうということにだ。
もうハリーの理性は限界だった。今すぐ、この料理の山に飛びつきたかった。
ただ、ハリーには気になったのだ。
「ねぇ一つ聞いてもいい?」
「はい。何でしょうか?」
「.........なんで君は僕に優しくするの?名前も知らないのに.......」
ハリーは少年のことを何も知らないし、少年も自分とは初対面のはずだ。
それなのに何故少年がハリーに優しくしてくれるのか、ハリーには不思議で仕方なかった。
だが、それを尋ねた後の少年は、先程までの自分と同じ様に、驚いていた。
「えっと......つまり貴方は何も知らないのですか?自分が、何者であるかを」
「どういう事?」
そう尋ねると、少年は更にショックを受けた様で、うな垂れていた。
やがて体を起こすとブツブツ何かを呟きだした。何を言っているのかは聞こえなかったが、聞こえなくてよかったかもしれない。
暫くすると、落ち着きを取り戻したのか一息をついて少年がハリーの目を見た。
「では、まず自己紹介から始めましょう」
少年はハリーの前で片膝をつき、両手を不思議な形に合わせた。
ハリーは知らなかったが、知る人が見れば少年のポーズは、西洋の騎士が王に対してとる礼の仕方によく似ていたし、古代中国で臣下が王に対してとる礼にも似ていた。
「俺の名前は、練白龍。貴方を護衛するために送られてきた魔法使いです」
この出会いが、ハリーの運命を大きく変えることになるのを、ハリーはまだ知らない。