オリトリウスと問題児たち   作:キャモメ

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アルトリウスの軌跡

転生をした。どういうことか?と聞かれても答えようがない。よくある二次小説のようにゼウスに謝られて~、などということもなく、ただ何となく漠然と自分はこの世界とは違うところにいたということだけを感覚で理解した。

 

だが何も不満はない。元の世界で自分はどのような立場にいたか?そんなことはどうでもよかった。自分の産まれに何か不幸があったならばそう考えたかもしれない。だが自分は無事に生まれたところか圧倒的に他者より優れた物をもって生まれた。天賦の才。それをもって生まれた。

 

世には自身の天賦の才を発揮する場所が、戦いがあった。出る杭は打たれるという言葉がある。だがこの世界にこの言葉がないのと同じように自分を打つ槌も存在しなかった。戦いで戦果を挙げていく自分を人々は称えた。悪い気分はしなかった。否、最高の気分だった。戦いに勝利し人々に称えられ、また戦いに出る。どんどん自分は地位と実力を上げていった。

 

その反面、友人はほとんど作ることができなかった。猫と狼、それと男が二人。周りから見れば寂しいものだと思われるかもしれないが満足だった。

 

出世街道を駆け上がっていく中自分は頂点にまで上り詰めた。大王グウィン。古龍を相手取り日の時代、自分たちが生きる時代を切り開いたもっとも偉大なる王。グウィン王、その人直々に四騎士に選ばれたのだ。

 

四騎士。グウィン王直々に選び抜いたその時代において最も優れた者。四騎士にはそれぞれ特別な二つ名と指輪、武具を与えられた。

 

『竜狩り』オーンスタイン

与えられし指輪は獅子

 

『鷹の目』ゴー

与えられし指輪は鷹

 

『王の刃』キアラン

与えられし指輪は雀蜂

 

そして最後に己

『無双』アルトリウス

 

オーンスタインとゴーとは良き関係を築けた。自身の数少ない友人だった。オーンスタインとゴー。これまで並ぶものがいなかった自分の人生でやっと自分とまともに戦える二人と高めあった。キアラン。最初は嫌われていた。自分の行いは贔屓目に見ても良いとはいえず、そのせいだった。だが徐々に互いにひかれていった。そして恋に落ちた。

 

人生の絶頂期のその時、大王より自分に勅命が下った。

『深淵』

神々を汚染するそれがウーラシール市街を飲み込んだのだ。当時四騎士最強と謳われた自分にウーラシール市街を深淵に呑みこませた『マヌス』の討伐を命じたのだ。

 

オーンスタインもゴーもキアランも全員が自分を止めた。お前でも無理だ、全員で行くべきだ、と。だが自分は止まらなかった。慢心や油断をしていたわけではない。深淵は神族を蝕む呪いである以上オーンスタインは戦えず、ゴーにはグウィン王によりある竜の討伐を命じられていて、いつ終わるのか見当がつかなかった。キアランは自身が止めた、深淵より帰ったら結婚しようと思っていたからだった。

 

そして、いくら言ってもついてくる相棒の狼『シフ』を連れてウーラシール市街に旅立った。市街には異形があふれていた。市街にいる異形は自分なら軽く倒せる程度のものだったが、油断していたせいで深淵の欠片が自分の身にへばりついた。瞬間自分の精神が黒く染まる。一瞬自分の精神が自分のものでなくなる感触に背筋が凍る。流石に自分も欠片が鎧越しに当たった程度で動けなくなるようではまずいと考えていた時、深淵が自分に迫ってきた。

気づいた瞬間驚きながらも一瞬で距離を開け、じっと観察すると驚いたことに深淵が自分に語り掛けてきた。話を聞いてみると深淵にも好みがあるという。曰くマヌスは大半の深淵に好かれるが少数には毛嫌いされ、その少数は自分が好きらしい。これを天命だと思い心配しているシフの頭を軽く撫で深淵をその身に宿す。これにより深淵への耐性を得、道を進んでいく。

 

そしてたどり着く。道中で怪我をしたシフのために盾を置いてきたために今の自分は剣と鎧しかなく、疲労もたまっている。状況は最悪と言っていい。だが引くわけにはいかない、自分が来るとわかっていなかった今でさえこれなのだ。故に決死の覚悟を持ち全力でマヌスに襲い掛かる。

 

勝った。利き腕は折れ、鎧と肉体は深淵に汚染され、意識もすでに真っ黒に染まり何も考えられない。だが歩く。

自分がどこを歩いてるかなどわからない。歩いてるかもわからない。だが歩く。友に彼女に会うために。だが、プツン、とまるで紐が切れた人形のように倒れこむ。強靭な精神で耐えていた体が、もう支えていられなかった。

ああ、自分は死ぬのか。そう何か他人事のように、少し戻ってきた思考の隅で考える。走馬灯のように思い出が駆け巡る。いい人生だった。心の底からそうおもう。綺羅星のように、流星のように駆け抜けた。故に自分はここで死ぬ。一瞬の輝きで消え去るのが道理であるから。そういえば前世はどのようだったのだろうと薄れゆく意識の中で考える。この場であっても思い出せないのだから相当地味な人生だったのだろう。そう思い返していた時だった。

 

そっと何かが指先に触れる。紙の感触が自分の指に伝わる。目だけを動かしちらりと見ると手紙であった。自分の人生の最後なのだ。最後の最後に自分あてに送られた手紙を読まずに逝く。その実に誇りか、又は生への執着かその又何かが突き動かす。そしてゆっくりとそれをひらく。

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。

 その才能を試すことを望むならば、

 己の家族を、友人を、財産を、世界の全ての捨て、

 我らの〝箱庭〟に来られたし』

 

これをよんだ瞬間四千メートル上空へと投げ出された。

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