「ここは…?」
あたりを見回してみると全く見覚えのない光景が広がっている。さらに自分の体を見ると傷の処置がされ包帯がまかれている。頭の中を?がグルグルと回る。だが、深く息を吐き何があったかを一つ一つおもいだす。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全ての捨て、
我らの〝箱庭〟に来られたし』
戦いの傷で死にかけながら、こんな手紙を見た瞬間、自分は上空に放り出されたのだ。とりあえず近くに置かれていた見たことがない、触れたことがない素材でできた服を身に着け、近くにあった自分の鎧と剣をソウルの中にしまい込む。傷が痛むが自分を助けてくれた人物に礼の一言でも言おうと部屋を出る。
そして、話し声のする方へいくと、ウサギの耳をはやしている少女と奇妙な恰好をしている幼女、10代程の子供たちがいる部屋につく。部屋の前で談笑している中入ってよいものかと首をひねっていると、奇妙な恰好をしている幼女が話しかけてくる。
「おお随分と早い回復じゃな」
「君が私の手当を?」
「うむ傷の手当は儂で、おんしをここに連れてきたのはそこのうさ耳をはやしておる、黒ウサギじゃ」
「黒ウサギ殿、この度は私の窮地を助けていただき感謝する。そして…?「儂の名は白夜叉じゃ」白夜叉殿、傷の手当感謝する」
「貴殿らがいなければ間違いなく私の命はなかっただろう。そして助けてもらった上にこのようなことを頼むのは厚かましい事であると重々承知しているが、私はいまこのような状態だ。故に数日間の滞在を認めていただきたい。無論、アノールロンドに帰還後それ相応の謝礼を我が名、アルトリウスの名に誓ってしよう」
「「アノールロンド?」」
2人共、アノールロンドを知らないという事実にこちらも頭に?が浮かぶ。いったい自分はどこに来てしまったのか、と頭を悩ませていると、黒ウサギがとんでもない事をいいだした。
「あの、おそらくここは貴方が知っている世界ではありません。ここは箱庭と呼ばれる場所なのです」
「…すまないが説明を頼む」
思わず天を仰ぎ、顔を手で覆い、壁にもたれかかる。だが、ここが全く自分のいた世界と違うと言われれば納得できてしまう。なにせ自分は助けられた後、見た者全てに見覚えがないのだ。そして黒ウサギの言っていることを要約すると、以下のことが分かった。
①ここは箱庭と呼ばれる神々が作った場所である。
②恩恵と呼ばれるものでギフトゲームというもので勝負するということ。
③10代の子供たちは自分と同じ手紙で呼び出された。
④コミュニィティという国のようなものがある。
ふざけているような雰囲気もなく至極真面目に黒ウサギは箱庭について語り終える。黒ウサギが語り終えた後、数瞬間を置き、藁にも縋る気持ちで黒ウサギに質問を投げかけた。
「…黒ウサギ殿、いやこの場にいる皆に聞きたい、大王グウィン、この名に聞き覚えは?」
この世界にグウィン王がおられたならば何も問題はなかった。だが、帰ってきた答えは無情にもノーであった。頭に、パンチを食らったかのような衝撃を受ける。傷の痛みに加え、精神にも強烈な一撃を食らい思わず倒れそうになり、慌てた黒ウサギに導かれ子供達が座っていた場所に座る。どうすれば良いのか、頭を悩ましていると目の前でコントが始まった。
「…そ、そういえばアルトリウス様のいた世界はどのような場所だったのですか!?」
「黒ウサギ、もう少しごまかし方という物があるんじゃないかしら…」
「黒ウサギ、へたくそ」
「さすが、自分のコミュニティの現状を説明しなかったうさぎ様だぜ」
「黒ウサギのフォローを邪魔しないでくださいますか!?」
「気遣い感謝する。…。あ、いやフォローありがとな。あとできればゴムかなんかくれないか?」
「…え?あ、はい、どうぞ」
アルトリウスの豹変具合に目を丸くするほど驚きながらも、手渡されたゴムで、長い黒髪をくくる。スイッチングウィンバックという行為がある。一流のスポーツ選手がピンチに追い込まれたときにする精神回復法である。アルトリスにとってそれは髪をくくるという行為だった。口調に関しては、グウィン王がいないのならばかしこまる必要が無いがゆえに、素を出しているだけである。
深く息を吐くとともに悩みを心の奥底に沈め、思考をプラスに切り替える。自分は生きている。そう、自分は生きているのだ。確実に死ぬ定めであった、これまで自分が切り殺してきた者たちのように儚く散る定めであったというのに、だ。それを考えれば異世界に飛ばされたことがなんだというのだ。それに来れたというのならば帰れるはずだ。深く息を吐く。そうするとさっきまでの悩みが嘘のようにふきとんだ。
「で、俺の話だったか?いいぜ、恩もあるしなんでも話してやるよ」
そういいながら悩みに目を背けながら、質問に答えるのだった。