ソードアート・オンライン episode of side S 作:ソウルメイジ
アインクラッド第一層
「違うわ、サイト。もっと動きをゲームに合わせなさい。ゲームに体を任せるような感じで!」
「自分の体がそんなに早く動くイメージが持てないんだよ!メイさんはβテストでさんざんやりこんでるからわかるのかもしれないけどさ!」
フィールドはどこまでも続くような緑の芝生。そこに体力ゲージの表示されたイノシシや豚がいるなかで、僕は一緒にこの世界に来たプレイヤー名 メイ 本名 赤野 芽衣とソードスキルと呼ばれるこの世界の技の発動にいそしんでいた。
「ぐぅっと貯めたら、技の発動のモーションに入るでしょ。そこに体を持っていくのよ」
そういいながらメイさんは僕の剣を軽々といなしていく。
だが、そのアドバイスのおかげで、僕はようやくソードスキルというものの発動の感覚がつかめたような気がした。
「こう……かな!?」
力をためるという動作で思い浮かびやすいのはやはり居合の動作であろうと考え、剣を鞘に納めそのままぐっと力をためるとそのモーションに剣が反応。赤く光る剣とそこから僕の頭に次に行う動作が流れてくるように感じた。
その動作に合わせて足を一歩前へと進めると体は想像していた三倍ほど前進、メイさんの目の前へと迫った。
だが、メイさんはどうやらそこまで読んでいたらしく近づいた僕の体に対して、長い髪だけを残して僕の下に回り込みをその勢いのままにつかんで投げ飛ばした。
「私に剣を抜かせられないようじゃまだまだだね。」
そういって、彼女は汗一つかかず余裕の笑みで僕を見てくる。
「メイさん強すぎ。βテストのときいったい何時間やりこんだの。。。」
「うーん、一日15時間くらいかな、テヘッ」
かわいく舌をペロッと出してごまかす。
この人いったい何者なんだ。。。
と思ってふと考える。
僕といま一緒にいるこの人だが実は全く接点があるわけでもなく、ある日突然として僕の目の前に現れたのだ。
何をしているのかも、どういう経歴の人なのか、まったくの謎。
僕の家は普通の家よりも少し厳しい家で、常に勉強三昧の中にいた。そんな中で僕の唯一の楽しみだったのが、親の目を盗んで通うゲームセンターだった。
そこで、であったのがこの人。
ゲームセンターには場違いの美しい整った容姿、長くすらりと落ちたストレートの髪、だが中身はと言えばさっきの通りとんでもないゲーム狂。ゲームセンターでコンピューターを無感情にコテンパンにする僕に彼女はこういったのだ。
「ゲームは楽しんでプレイしましょう!というわけでそこの君!私と勝負だ!」
結果はというもの、僕は相当このゲームをやりこんでいたため、ストレート勝ち。ただ、ゲーム狂なだけあって腕自体は相当のものだった。もう一回、もう一回と言われるままに15戦ほどさせられたがすべてストレートで勝ってしまった。
それ以来、やたらと絡まれるようになったのがなれそめだ。
だが、この人こんな(ゲーム狂)だけど、いいところもたくさんあって、家での出来事や学校でのことなど、僕の相談にも快く乗ってくれた。本当に感謝している人で、親に怒られること覚悟で黙ってこのゲームに付き合うことに決めたのも、この人だからこそだった。
ただ、この売り切れ必死のゲームをいともたやすく二機も手に入れる謎のコネクション、また15時間ゲームを毎日やっていても尽きない無尽蔵な体力とお金、本当に謎の人だった。
「メイさんってなんでそんな宇宙人なんですか?」
「宇宙人!?どういう意味かな!?」
「いや、だってβテスト期間ってひと月もあったじゃないですか、その間ずっとゲームしてるとか頭がおかしいとしか、というかお金的にも普通に無理じゃないですか」
「その宇宙人にゲームで完膚なきまでに勝利した君こそ私は宇宙人だと思うけど?」
そう、不思議と僕にはゲームの才能があるらしく、それからメイさんに様々なゲームで吹っ掛けられたゲームも一週間もすればメイさんを上回るようになっていた。決してメイさんは下手というわけではなくむしろ上位レベルの腕前なのだが。
だが、ほめると調子に乗りやすい人なのでしっかりけなしておくことにした。
「それは、メイさんにはゲームの素質がな……」
すべての言葉をいう前に剣を差し向けられて言葉を紡ぐ。
だが、ここで僕はニヤリとする。
「はい、剣抜かせました。僕もこれで一人前ですね」
「あ!サイトずるい!そういうこと言っちゃうんだ!だったら私も容赦せずにあなたをコテンパンにしてあげるわ!」
そういうやいなや彼女の剣に光が宿る。
ソードスキル発動の合図だ。
僕は一瞬のうちに周りを見渡し、自分の先ほどのソードスキルで行ける幅にモンスターの牛が一体僕の真後ろにもう一体いることを確認したうえで、ソードスキルを先ほどと同じ要領で展開。
「やるのね、泣いて許しを乞うたって許さないわ!」
フハハハハと笑う彼女はまるで悪魔。
ためが長いことからも多少大技とわかる。
ゆえに僕は、このソードスキルを選んだ。一番手軽なこの技を。
向こうの光と僕の光がかちりと発動のために光る。
その瞬間僕は、彼女のほうから僕の斜め後ろにいた牛に向かって全力でスキルを発動。
その駆動力を生かして全力で逃げる。
そして、彼女のソードスキルはといえば、僕が逃げたことによりターゲティングが僕の後ろにいた牛へと変わり、ものの見事に牛へと全力のソードスキルを発動、見事な身のこなしで最弱モンスターを倒して見せた。
そして、僕が狙っていたのはこのラグの時間である。
ソードスキルにはその技の大きさによって、スキル使用後に数秒から数十秒技が出せなくなる時間が存在する。それは大技であるほど多い。ゆえに僕はこの技を選び、そして、もう一度使用することがもうすでに可能になっていたこの技を彼女にめがけて構えた。
その時間わずか2秒、そしてすこし後ろに下がりソードスキルを発動、寸でのところで彼女には当たらず空を切った。
ふう、と言いながら構えた剣を再びしまった。少しスキルの発動時間が早まったように感じたがおそらく先ほどが慣れてなさ過ぎてそう感じただけだろう。
「くやしいいいい、このゲームだけはサイトの上に常に立つつもりだったのにいいいい」
そういいながらメイさんは地団太を踏む。
だが、僕は見えていた。彼女の指先はほぼ間違いなく、僕の剣をいなす動きの反応をしていたこと。
一体この人、何を考えているのだろう。それともさっきのは無意識?
なんにせよどうやらメイさんは気づいてないようだから、いっか。と流すことにした。
「メイさんはいつも詰めが甘いんだよ」
「サイトが容赦ないだけよ!」
いつものように言い合っている。
突然、メイさんの顔が沈んだ。
「ねぇ、サイト?」
「どうしたの?メイさん」
「あたしの最初に行ったこと覚えてる?」
「もちろん、僕記憶力はいいんだ」
「今は……今はあなたは」
メイさんがひどく心細げに見えた。このタイミングでどうして突然、と戸惑う気持ちもあったが僕の身を案じていってくれていたのであろう。両親のことも話していることだ。おそらくこのゲームをログアウトした後のことでも心配してくれているのかもしれない。だから、僕は強く言い放った。
「このゲームは今、すごく楽しんでるよ!」
そうすると、彼女はほっとしたように、そして少し寂しそうに笑って
「その気持ち、忘れないでね」
そういった。
いったい、どうしたっていうのメイさん
その言葉は突然のテレポートによってかき消された。
そして、次の瞬間、僕たちは大広間にいた。