ヤンデレ×後輩   作:レア缶

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先輩と重いの

『愛が重すぎる!?カレシに引かれる行動15選』

 

「……」

 

用事がある先輩を待つために、学食で携帯をいじって時間を潰している。

携帯でのネットサーフィンは目が疲れるから好きではないけれど、記事のタイトルにひかれてつい見てしまった。

その記事は、箇条書きで重い行動を示して、より具体的な例で説明するかたちで書かれていた。

 

(その1、束縛が強い……)

 

他の女性と話すのを嫌がったりするのは男性にとって追い込まれているように感じるらしい。

 

(その2、連絡が多い……)

 

男性は、あまりに多いメールや電話でのやりとりに苦痛を感じるらしい。

 

(その3、彼氏の行動を知りたがる…、その4………)

 

結果、15もある項目のうちかなりの数が私に当てはまってしまった。

そしてその記事の締めに、アドバイスが書かれていた。

 

『自分がされていやなことは、相手もいやがります』

 

…なんとも言えない気持ちになる。

私にとっての普通は、多くの男性にとっては『重い』らしい。

でも、私はこの記事に乗っていることは何がいけないのか分からなかった。

恋人が異性と話していたら嫉妬してしまうのは当然ではないか。

いつでも恋人と何らかのツールで繋がっていたいと誰しも思うのではないか。

この人に尽くしたい、愛して愛されたい、いつもそばにいたいと思うから恋人になったのではないか。

まして私は、先輩に重いことをされたら心の底からうれしい。

 

それでも、私がこの記事をタイトルで開いたのは、自分が重いらしいという自覚があるからだった。

あまりに重くて、先輩に嫌われるのではという不安は、いつも抱えてきた。

きっと先輩はそんなことでは嫌いにならない、と思えるくらい、先輩のことは信頼している。

でも、先輩の優しさに対する信頼から自分を変える努力を放棄してしまえば、もはや信頼とはいえない気がする。

 

だから、この記事のいう普通の女性と普通の男性を、少し参考にしようと思った。

 

 

「ユリちゃん、おまたせ」

「ひゃん!?」

 

背後から両頬をてのひらで包まれる。

 

「ふっふふ、ひゃんって。かわいいなぁ」

「もう、結構大きい声出ちゃったじゃないですか…」

「ごめんごめん。

だいぶ待たせちゃったね、行こっか」

「あ、はいっ」

 

 

・・・

 

 

食材を買うため、大学からじかにスーパーに向かう。

 

「そうだ、先輩。重い女性って、どう思います?」

 

ふと何も考えずに聞いてしまったけれど、先輩の答えにどう反応すればいいのか分からない。

 

「…『おもい』女性をどう『おもい』ますか…」

「!? ち、違いますよ!

あ、先に言っておきますけど体重の話でもないですよ!

ただ、ちょっと友達が彼氏に重いって言われたらしくて、相談されたんです」

 

ナイスフォローを挟めた。

 

「んー…、それなら、俺の意見は参考にならない気がするな。

俺はよくいわれる重いって感覚が分からないから」

「…というと?」

 

「俺は一般に重いって言われるひとの方が好きってこと。

普通は重いってあんまり良い意味で使われないから、俺にはよく分からないよ」

 

「……………んふふ、そうですか……。

なら、友達には残念な彼氏を持ったねって言っておきます」

「えぇ…?最悪、破局しちゃわないかな?」

「そしたらその子の愛もそんなに重くなかったってことですよ」

 

先輩の左腕に、胸を押し当てるように抱きつく。

 

「なんかご機嫌だね」

「んふふ、はい…」

 

外でベタベタするような行動は重い。

私にはあなただけという言動は重い。

でも、重い私を先輩は喜んで受け入れてくれる。

そんな先輩だから、これからずっと一緒に、それこそ結婚して子供が生まれて、孫を見て同じ墓に入るような未来を夢見ることができた。

 

(やっぱり私には、先輩がいないとだめだなー…)

 

 

・・・

 

 

「ユリちゃん、おなか空かない?」

「んー…」

 

先輩は『何か食べたい』と目で訴えているように見える。

普通に言えばいいのに、こういうところがかわいいと思う。

 

「はい、ちょっとおなか空きました」

「ん、じゃあ、そこのクレープ食べていかない?」

「あぁ、実は私もここ気になってたんです」

 

つい最近オープンした、洒落た外装のクレープ屋だった。

 

「ユリちゃんは何食べたい?」

「うーーーん……、じゃあ、このミックスベリー食べたいです」

「ん。すみません、ミックスベリーMサイズで1つお願いします」

「あれ、1つ?」

「うん、俺はユリちゃんのをちょっともらえればいいから」

 

程なくして、紙に巻かれたクレープが渡される。

 

「あの…何公園だっけ。あそこで食べよう」

「あ、いいですね」

 

その公園はスーパーまでの最短経路から外れたところにある。

デートをもっと長い間楽しめるなら、私はそれでよかった。

 

 

公園の中でも、人気のないところのベンチに陣取る。

先輩の左隣に、隙間をつめて座る。

先輩に手渡されたクレープを、すぐに先輩の前に突き出す。

 

「はい、あーん…」

「…ありがと。先にもらうね。ん……、うん!うまいよ」

「んふふ、そうですか。んむ…、あ、おいしい」

 

正直、味なんてどうでもいい。

クレープは先輩と触れ合うための媒体にすぎないから。

ゆっくり食べ進めていると、日が落ちてきて、公園全体から人気がなくなっていく。

少し気温も下がってきたから、もっと先輩にすり寄る。

食べきってしまったクレープの巻紙を畳んで、先輩の体に腕をまわした。

 

「さむい?」

 

先輩が私の耳元でささやく。

 

「…ちょっとだけ」

 

視線がぶつかる。

 

「ね、先輩…、あたためてください…」

 

自然と、どちらからともなくキスをした。

あたたかくて、甘い香りのキス。

 

先輩は少し触れるだけで体を引こうとしたけれど、私は強く引き寄せてそれを許さない。

先輩の後頭部に手を添えて舌を差し入れると、先輩も私を抱き締めて応えてくれる。

隣に座って横を向いたままのキスはもどかしいから、先輩の膝に正面から跨がって、もっと深くキスを求めた。

キスをしている間、ずっとさっき食べたクレープの味がした。

 

はじまりと同じく、どちらともなく唇を離す。

キスをしているあいだにさらに日が落ちて、街灯が点きはじめていた。

薄暗い中でも先輩の据わった目ははっきりとわかる。

きっと先輩にこんな目をさせたのは私だけだろう。

 

「…クレープ、ひとつでよかったでしょ」

「んふふ、そうですね……。

ひとり1つだと、重くてむねやけしちゃいそうです」

 

先輩は先の甘ったるいキスのことを言っているのだろう。

 

「…風邪をひくといけませんし、そろそろ行きましょう。

お買い物もしないといけませんから」

「ん、そうだね」

 

さっと立ち上がって、先輩の手をとる。

いつまでもこうしていたかったけれど、逆に早く買い物を済ませて、部屋に戻って、もっとすごいこともしたい。

純粋な愛情と露骨な劣情、相反する感情が私を占めていた。

 

 

ふと、夕飯は何かしっかりと塩味が効いたものがいいと思った。

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