牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第10話になります!

この小説を投稿しておよそ1ヶ月になりますが、もうすぐでUAが3000を越えそうです。

前作よりもペースが早く、これだけ多くの人にこの作品を読んでもらえてると思うと、非常に嬉しく思っています。

これからも牙狼ライブ!をよろしくお願いします!

さて、今回はいよいよμ'sの初ライブとなります。

穂乃果たちは無事にライブを終わらせることは出来るのか?

それでは、第10話をどうぞ!




第10話 「舞台」

奏夜たちがチラシ配りなどライブに向けて準備に追われていた翌日、この日は新入生歓迎会が行われた。

 

新入生歓迎会と言っても運動部のパフォーマンスや文化部の演奏などはなく、ただ理事長や生徒会長の話があるだけだった。

 

(……正直つまんねぇ……)

 

新入生歓迎会が予想以上につまらないと感じているのか、奏夜は座ってるだけで苦痛だった。

 

《新入生歓迎会とやらでこの程度しか出来ないとは……。廃校問題も仕方ないかもしれないな》

 

(そうだよな……。俺もそう思ったよ……)

 

この学校は確かに歴史がある分、伝統のある学校だというのは推測出来るのだが、このような堅苦しい体制だからこそ廃校問題が出てるのではないかとキルバは思っている。

 

それは奏夜も同じ思いだったため、キルバをたしなめることはしなかった。

 

(……ふわぁ….…)

 

奏夜は何度目かわからない欠伸をするとそれを海未がジト目で見ていた。

 

スクールアイドルのマネージャーと魔戒騎士。これらを掛け持ちしている奏夜は想像以上に忙しい生活を送っているため、疲れは多少出ている。

 

だからこそ奏夜は欠伸をしていたのである。

 

奏夜はまた欠伸が出そうだったのだが、再び欠伸をしてしまうと今度は海未に睨まれそうなので奏夜はシャキッとしてありがたいお話を聞くことにしていた。

 

『これで新入生歓迎会を終わります。各部活ごとに体験入部を行っていますので興味があったらどんどん覗いてみて下さい』

 

(ふぅ……。やっと終わったぁ……)

 

《おい、奏夜。落ち着いてる場合じゃないぞ。これからが本番なんだからな》

 

(わかってるって)

 

新入生歓迎会終了後、奏夜たちは再びこの後のライブのお知らせのチラシを配ることになった。

 

しかし、人数の多い部活の勧誘の勢いが凄いからか、新入生が他の部活に流れてしまった。

 

そのため、なかなかチラシ配りが思うようにいかなかったのである。

 

そんな中、昨日までの海未はどこへ行ったのか。海未は人前であるにも関わらず動じることなくチラシを配っていた。

 

その海未の様子を見ていた奏夜たちにも笑みがこぼれる。

 

恥ずかしがり屋の海未だってここまで頑張っているため自分も頑張らなければ。

 

しばらくチラシ配りを行っているとヒフミトリオが奏夜たちのところにやってきた。

 

「おっ、やってるやってる」

 

「みんな、私たちも手伝うよ」

 

「えっ、本当?」

 

「リハーサルとかしたいでしょう?」

 

「それに、私たちだって学校なくなるの嫌だし」

 

「穂乃果たちには上手くいってほしいって思ってるから」

 

この3人は何かあれば手伝いをすると穂乃果に言っていたのだが、どうやら本気で手伝いをしてくれるようだ。

 

学校が無くなって欲しくない。その気持ちは奏夜たちと同じようだった。

 

この後、穂乃果たちのリハーサルをしたいと考えていたため、ヒフミトリオが手伝いをしてくれるのは奏夜としてもありがたかった。

 

「3人とも、ありがとな。本当に助かるよ」

 

「もぉ、そんな水臭いことは言わないの!」

 

「そうだな。……そしたら穂乃果たちは講堂に行ってリハーサルをやってくれ。俺はこの後もチラシ配りを続けるよ」

 

「え?でも……」

 

「いいから行ってこい。これは実際に歌わない俺の仕事なんだ。いくらお前らとはいっても譲らないぞ」

 

「そーくん……」

 

これは奏夜の本音であった。マネージャーとして自分のやるべきことはしっかりとしたいと思っていたからである。

 

「すみません、奏夜。それではよろしくお願いします」

 

「そーくん、お願いね♪」

 

「あぁ、任せろ!」

 

こうして穂乃果たちとヒフミトリオは講堂へ向かい、1人残された奏夜はチラシ配りを続けた。

 

(……さて、穂乃果たちのためにも人をたくさん集めないとな……)

 

奏夜は気合をいれてチラシを配っていった。

 

1時間ほど続けているとヒフミトリオの1人。短めのツインテールが特徴のミカが奏夜の手伝いに来てくれた。

 

どうやら照明や音響も整い、リハーサルも滞りなく終わったみたいで、現在はライブの衣装に着替えているようだった。

 

「ねぇ、奏夜くん。ここはいいから一度穂乃果ちゃんたちの様子を見に行ってあげてよ。奏夜くんの顔を見たらきっと安心すると思うから♪」

 

「悪い。したら少しの間頼めるか?3人の様子を見てきたらまた戻ってくるから」

 

「うん♪任せといて♪」

 

奏夜はチラシ配りの仕事をしばらくの間ミカに頼むとそのまま講堂の控え室へと向かった。

 

控え室に到着するとまずはドアをノックした。

 

いきなり開けて着替え中だったらラブコメでよく見かける展開になってしまうからである。

 

「俺だけど入っても大丈夫か?」

 

「あっ、そーくん?大丈夫だよ!」

 

穂乃果の了承を聞いたところで控え室の扉を開けるのだが、そんな奏夜の目に飛び込んで来たのは、昨日ことりが用意した衣装を身に纏った穂乃果とことりだった。

 

「へぇ……」

 

アイドルの衣装が予想以上に似合っていたのか、奏夜は感嘆の声をあげていた。

 

衣装を着た2人を見た時、本当にスクールアイドルなんだなと奏夜は実感していた。

 

「そ、そーくん……どうかな……?穂乃果たち、変じゃない?」

 

「何言ってるんだよ!2人ともすっごく似合ってる。正直思ってた以上だよ」

 

『奏夜。お前は2人に見惚れて鼻の下を伸ばしてたよな』

 

「ちょっ!?キルバ!それは言うなよ!」

 

奏夜は2人に見惚れているのを見透かされないため平静を装っていたのだが、それをキルバに見抜かれてしまい、奏夜は慌てふためいていた。

 

「本当?エヘヘ……嬉しいな……」

 

「クスッ……。そーくん、ありがとね♪」

 

衣装を褒められ、穂乃果もことりも満更でもないといった感じであった。

 

「あれ?ところで海未は?」

 

「あぁ、海未ちゃんなら…」

 

穂乃果が目線を移した先は着替え専用のスペースだった。

 

まだ着替え終わってないのか恥ずかしくて出てこれないかのどちらかであると予想することが出来た。

 

「海未、俺だけどもう着替えは終わってるのか?」

 

「そ、奏夜!?あっ、はい……。ですが……」

 

「俺がいちゃまずいなら出てったほうがいいか?俺は3人の様子を見に来ただけだし」

 

「あっ、いえ。大丈夫です!」

 

「……本当に大丈夫か?」

 

海未は無理をしてるのではないかと奏夜は心配をしていたが、シャッとカーテンの音が聞こえ、あの衣装に身を纏った海未が出てきた。

 

出てきたのは良かったのだが……。

 

「ど、どうでしょうか?」

 

「どうでしょうかじゃないよ!何、この往生際の悪さは!」

 

穂乃果の言う通り海未は最後の抵抗と言わんばかりに衣装の下にジャージを履いていた。

 

『おいおい……それじゃダメだろう……』

 

海未の最後の抵抗に呆れ果てていたキルバはジト目で海未を見ていた。

 

「海未、まさかとは思うけど、それ着た瞬間恥ずかしくなったとか言わないよな?」

 

「えぇ、実は……。鏡を見たら……急に……」

 

(やっぱりか……。だけどこれで本番はまずいよなぁ……)

 

スカートの下にジャージを着ているアイドルなど誰も見たくないだろう。だからなんとかしなければ。

 

奏夜がそんなことを考えていたその時だった。

 

「えいっ!」

 

「ちょっ、おまっ!?」

 

目の前に奏夜がいるのに穂乃果は躊躇なく海未のジャージを脱がしたため、奏夜は頬を赤らめながらも咄嗟に回れ右をしてその光景を見ないようにしていた。

 

「あぁっ!嫌ぁ!」

 

突然の出来事に、海未は慌てて両手でスカートを抑えていた。

 

「隠してどうするの。スカート履いてるのに」

 

「で、ですが!」

 

「海未ちゃん、可愛いよ♪」

 

(くそぅ、見てぇ……。だけど許可もなく振り向いたら後が怖いぞこれ……)

 

ことりが海未のことを褒めている声が聞こえてきて、奏夜は海未の衣装姿を見たいと考えていたのだが、今はその時ではないと判断し、堪えていた。

 

「ほらほら、海未ちゃん。一番似合ってるんじゃない?」

 

穂乃果もまた、衣装を着た海未のことをべた褒めしていた。

 

「……そーくん、そろそろこっち見ても大丈夫だよ」

 

ここでようやく穂乃果のお許しを得たので奏夜は改めて衣装を着た海未を見たのだが……。

 

「……!!」

 

穂乃果やことりが褒める通り、海未の衣装姿はとても似合っており、それを見た奏夜は頬を赤らめていた。

 

似合っているのもあるのだが、海未は衣装を着るのが恥ずかしいのか、頬を赤らめながらもじもじしており、それが奏夜をよりドキッとさせていた。

 

「……そーくん、鼻の下伸びてるよ……」

 

今度は誰が見てもわかるくらいあからさまに奏夜は鼻の下を伸ばしていたため、ことりはジト目で奏夜を睨みつけていた。

 

「……!お、オホン!……それはともかくとして、似合ってよ、凄く。それに、3人並んで立ったら恥ずかしくないだろ?」

 

「はっ、はい……。こうしていれば……」

 

海未はちょっとはにかみながらも嬉しそうにしていたため、その姿がより魅力的に見えていた。

 

「さて、俺はもう一度チラシ配りに行くから3人は時間まで最後の調整をするといいよ」

 

「うん♪そーくん、来てくれてありがとう♪」

 

「あぁ。ライブ、頑張ろうな」

 

「「「うん(はい)!」」」

 

こうして奏夜は控え室を後にするとチラシ配りを続けているミカと合流して俺もチラシ配りを再開した。

 

その時、奏夜は相当顔がにやけていたらしく、そこをミカにいじられたのだが、そこは軽くあしらっていた。

 

「この後、16時から講堂でμ`sのライブがあります!よろしくお願いします!」

 

学校の中庭に、奏夜の軽快な声が響き渡っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

……ちょうどその頃、赤いロングコートを着た青年が音ノ木坂学院を訪れていた。

 

「……ここが奏夜の通ってる音ノ木坂学院か……。何となくだけど、桜高に似てるところはあるよな……」

 

赤いロングコートの青年は、奏夜の先輩騎士である月影統夜であり、統夜は音ノ木坂学院の佇まいが統夜の母校である桜ヶ丘高校に似ていると思っていた。

 

『……そうか?建物だけいうとこっちの方が立派そうだがな』

 

奏夜の左手にはめられているドクロの形をした指輪がふと口を開いた。

 

この指輪は、「魔導輪イルバ」。白銀騎士奏狼である統夜の相棒である。

 

その見た目は黄金騎士牙狼の魔導輪であるザルバそっくりなのだが、本人はそれを認めようとはしない。

 

それはザルバも同様であり、会えばいつも喧嘩をしてしまうため、統夜と牙狼の称号を持つ冴島鋼牙(さえじまこうが)を困らせていた。

 

「……俺は桜ヶ丘の古くさい感じが好きだけどな……」

 

音ノ木坂学院の校舎の方が若干立派であることは統夜も認めていたのだが、やはり統夜は母校である桜ヶ丘高校の校舎を気に入っていたのである。

 

「さてと……。まずはこの中に入る申し込みをしないとな」

 

何の申し込みもしないで校内をウロウロしていては不審者と思われてしまうので、統夜は学校の入り口を探していたのだが……。

 

「……あれ?見ない顔やけど、この学校に何かご用ですか?」

 

副会長である希が統夜の姿を見つけたので、統夜に声をかけていた。

 

「あぁ。俺の弟みたいな存在がスクールアイドルの手伝いをしてると聞いてな。今日ライブをやると聞いたから見にきたんだよ」

 

「弟みたいな存在……。あぁ、如月くんのことですね?」

 

「あぁ。……君は、奏夜を知っているのか?」

 

「ウチは生徒会の副会長ですから」

 

「へぇ、生徒会の人間なのか」

 

自分に声をかけてきた希が副会長だとは思っていなかったのか、統夜は少しばかり驚いていた。

 

「ウチが玄関まで案内しましょうか?」

 

「いいのか?こちらとしてはありがたいけど……」

 

「もちろんですよ。さ、こちらへどうぞ」

 

希は統夜を玄関まで案内すると、統夜は学校の中に入る手続きを済ませて、「GUEST」と書かれたネームプレートを首にぶら下げていた。

 

「……ありがとな。手続きにも立ち会ってくれて」

 

希は統夜を玄関まで案内しただけではなく、学校の中に入る手続きにも立ち会ってくれたため、統夜は改めて希に礼を言っていた。

 

「気にしなくてもいいですよ。ウチは副会長として当然のことをしたまでですから」

 

「本当に助かったよ。えっと……」

 

「ウチは東條希です」

 

「希……だな。俺は月影統夜。よろしくな」

 

「月影さんですね。覚えておきます」

 

こう語る希はかなりニコニコしていたため、統夜は首を傾げていた。

 

「……月影さんって雰囲気が如月くんと似てますね。……如月くんもやけど、他の人とは違うというか……。普通の人がしていないことをしているというか……」

 

《……統夜。このお嬢ちゃんは魔戒騎士やホラーのことは知らないみたいだが、ただ者じゃないぞ》

 

(そうみたいだな……。雰囲気だけでここまで見抜くんだもんな……)

 

イルバは希がただ者ではないと感じていたのだが、それは統夜も感じていたことだった。

 

「……月影さん?」

 

「あ、あぁ!いや、何でもないよ!俺なんてそんな凄い人間じゃないけどな。しがないフリーターだし」

 

大学に行っている訳でも就職してる訳でもない統夜は、自分のことをフリーターと言って希の話を誤魔化していた。

 

「へぇ、そうなんや……」

 

希はそんな統夜の考えを見抜いているのか、ニヤニヤしながら統夜のことを見ていた。

 

「……と、とりあえずここまで案内してくれてありがとな!それじゃあ、また!」

 

統夜はこのように希に別れを告げると、逃げるようにその場を後にした。

 

それからまもなくして、統夜はあることに気が付いたのである。

 

それは……。

 

「……あれ?何で俺はあの子に“また”なんて言ったんだ?」

 

咄嗟な言葉であったとはいえ、希に対して「またな」と言ったことが統夜は気になっていた。

 

『まぁ、俺様もあのお嬢ちゃんにはまた会いそうな気はしたけどな』

 

イルバは近いうちに希と再会することを予想していたため、特に統夜の言葉を気にしてなかった。

 

「……そうかもな。さて、校内を見て回りながら講堂へ向かうとするか」

 

統夜はとりあえず校内観光を行いながら講堂の場所を探すことにした。

 

そんな中、希は逃げるようにその場を離れていった統夜の姿をジッと見つめていた。

 

「……“またな”……か……。ふふ、確かにまた会いそうな気がする。そんな気はするよね」

 

統夜の言葉を真に受けていた希は、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

そして、1枚のタロットカードを引くのだが、そのカードはソードの騎士であった。

 

それを見た希は、再び笑みを浮かべると……。

 

「……なるほど。そういうことなんやな」

 

まるで全てを見透かしているような言葉を浮かべると、希は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

希は本当に奏夜や統夜が魔戒騎士であるということを理解しているのか?

 

それが明らかになるのはもう少し先の話であった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

奏夜がチラシ配りを再開してどれだけ時間がたっただろうか。

 

途中「ダレカタスケテー!」とか聞こえてきて、奏夜は反応するのだが、チラシ配りをしなければならないため、奏夜はスルーしたのである。

 

奏夜が時計を確認すると、ライブ開始まであと20分と迫っていた。

 

そのため奏夜は一度講堂に戻りどれだけお客さんが入ってるか確認しに行ったんだが……。

 

「……何でだよ……」

 

講堂には誰も人はおらず、奏夜は思わず自分の気持ちを声に出してしまった。

 

無名のアイドルの初ライブなんて5、6人入れば上々だと思っていたが、まさか誰もいないとは思わなかったからである。

 

こんなのを3人に見せたらきっと平常ではいられない。

 

そう考えていた奏夜は焦っていた。

 

この状況を何とかするにはどうすればいいか必死に考えたのだが、良いアイディアは思いつかなかった。

 

考えても時間の無駄だと判断し、奏夜もう一度チラシ配りに行こうとしたのだが……。

 

「ちょっと奏夜くん、どこに行くの?」

 

「もう一度チラシ配りに行ってくる。これじゃあ穂乃果たちに合わせる顔がないからな……」

 

「奏夜くんの気持ちはわかるけど…。今から宣伝したって……もう……」

 

「……っ」

 

奏夜は居ても立っても居られないからあ、止めてくれたヒフミトリオの声も聞かず講堂を飛び出した。

 

もう16時前。チラシ配りを始めた時とはうって変わり人はだいぶ疎らになっていた。

 

そのため、ヒフミトリオの3人が止めるのも理解出来るのだが、体を動かさずにはいられなかった。

 

『……おい、奏夜。いい加減諦めろ。もうすぐライブだろう?今から頑張っても客は来ないぞ。現実を受け止めろ』

 

「わかってるよ!だけど、ジッとなんてしてられねぇよ!」

 

キルバの言い分は理解出来るのだが、奏夜はこのまま大人しくライブが始まるのを待っていられなかった。

 

奏夜の努力も徒労に終わってしまい、時間だけが無情に過ぎていった。

 

ライブ開始まであと5分まで粘ったところで奏夜は講堂に戻ってきたが、やはり誰も来ていなかった。

 

ライブに行くと話していた花陽と統夜の姿もなかった。

 

統夜は魔戒騎士であるため、急な指令が来てしまえば行けないのは仕方ないし、花陽も別の用事が出来たのでは?と予想することは出来た。

 

そんなこと考えても手遅れであり、悔しいけど、この結果は真摯に受け止めなくてはならない。

 

奏夜は唇を噛み締めながらライブ開始のブザーを聞いていた。

 

3人はどんな気持ちでそこに立っていたのだろうか?奏夜はそんなことを考えていた。

 

恐らくは不安もあるだろうが、ワクワクの方が勝っていると予想することが出来た。

 

最高のライブにする。その気持ちでここまで来たため、この現場を見て3人がどんな気持ちになるか。想像するのは容易かった。

 

そして舞台の幕が上がり、3人の姿が見えた。

 

……それはすなわち、この会場には誰もお客さんがいないということを、穂乃果たちが目の当たりにする瞬間だった。

 

「……ごめん……。私たちも頑張ったんだけど……」

 

この張り詰めた空気にいたたまれなくなったのかヒフミトリオの1人、ポニーテールが特徴のフミコが申し訳なさそうに言葉を発していた。

 

奏夜の予想通り穂乃果たちはまさかの展開に唖然としていた。

 

「穂乃果ちゃん…」

 

「穂乃果…」

 

ことりと海未に至っては今にも泣きそうだったが、どうにか涙をこらえていた。

 

奏夜は穂乃果の顔を見るが穂乃果は固まったままだった。

 

恐らく今まで頑張ってきたことを思い出しているのだろう。

 

「……そりゃ、そうだ。世の中そんなに甘くない……」

 

穂乃果はどうにか強がっていたけどその声は震えていた。

 

穂乃果だって本当は泣きたいんだろう。それは簡単に予想出来たのだが、今泣いてしまえば止まらなくなってしまう。

 

そしてライブどころではなくなる。

 

奏夜はそんな穂乃果たちになんて言葉をかけて良いのかわからず、ここで自分の無力さを思い知らされていた。

 

(……くそっ!穂乃果たちの笑顔を守ることが出来ないなんて何が守りし者だよ……!こんな時に何もしてやれないなんて……!)

 

直接的には穂乃果たちのことは守ることが出来ても、いざという時に穂乃果たちのために何もしてやれない。

 

自分の無力さを呪った奏夜は、両手の拳をギュッと握りしめて唇を噛んでいた。

 

ここにいる全員がライブの開催を諦めていたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コツン……。コツン……。コツン……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽快な足音が聞こえてくると、赤いロングコートを着た青年が、講堂に現れた。

 

「!?」

 

「あなたは……」

 

「もしかして……」

 

「統夜……さん……?」

 

ライブの開始時間は既に過ぎているのだが、少し遅れて姿を現したのは、奏夜の先輩騎士である統夜であった。

 

「すまんな、ちょっと遅くなっちまった。ちょっと道に迷っちまってな……」

 

統夜は穏やかな表情で笑みを浮かべながら遅くなったことを詫び、弁解していた。

 

《やれやれ……。よく言うぜ……。ちょっと前までアルパカと戯れてたから遅くなったくせに……》

 

(ちょっ!?イルバ!それは言うなよ!!格好がつかないだろ!?)

 

イルバの指摘通り、統夜はここへくる前にアルパカ小屋を訪れていたのだが、時間を忘れてアルパカと戯れてしまい、この時間となっていたのである。

 

この音ノ木坂学院はアルパカを飼育しており、それは普通の学校としては珍しいケースである。

 

統夜はイルバに痛いところを突かれてしまったため、視線をイルバに向けるのだが、目が泳いでるようにも見えたため、穂乃果たち3人は首を傾げていた。

 

「……それにしても、客は俺だけなのか……。もうライブの開始時間は過ぎてるのに何で始めないんだ?」

 

現在は16時5分。16時ちょうどにライブが始まったのなら、終わってもおかしくはない時間なのだが、どうやらライブは始まってないため、そのことが統夜には気になっていた。

 

「そ、それは……」

 

この統夜の問いかけに、奏夜は答えることは出来なかった。

 

一生懸命努力をしたのに、客は誰も来なかった。

 

今、統夜は来てくれたが、こんな状態でライブなんて出来るハズはない。

 

そんなことを奏夜は考えていたからである。

 

しかし、そんな奏夜の考えを統夜は見抜いていた。

 

「まさかとは思うけど、客がいないからライブをしない……なんて言わないよな?」

 

こう問いかけをする統夜の声は、優しい声ではなく、少しだけ低く、ドスの効いた声であった。

 

「……っ!!」

 

統夜に自分の考えを見透かされ、奏夜は息を飲んでいた。

 

穂乃果たちは統夜のここまで厳しさの伝わる声を聞いたことがなかったため、驚きを隠せずにいた。

 

「お前たちも……。そう思ってるんだな?」

 

奏夜だけではなく、穂乃果たちにも統夜は問いかけをするのだが、穂乃果たちは上手く答えることは出来なかった。

 

そんな中……。

 

「そ、そう思うのも仕方ありません!これだけ一生懸命努力してきたのに、お客さんが統夜さんしかいないんですよ!?」

 

「そうです!そんな状態なのに……歌えって言うんですか!?」

 

海未とことりが、涙目で自分の思いを統夜にぶつけていた。

 

そんな2人の主張を聞いた統夜は、少しばかり呆れているのか、ため息をついていた。

 

「……そうか……。俺はスクールアイドルのことはよく知らないけど、お前らの覚悟はその程度のものだったんだな」

 

「「「「!!?」」」」

 

統夜は険しい表情で厳しい言葉を投げかけており、それを聞いた奏夜たちは息を飲んでいた。

 

そして、講堂を包み込む険悪な雰囲気に、ヒフミトリオの3人は困惑していた。

 

「……お前らに1つ聞きたいんだけど、お前らは何でスクールアイドルを始めたんだ?」

 

「そっ、それは……。廃校の危機を迎えてるこの学校を何とかしたくて……」

 

「ほぉ……」

 

この音ノ木坂学院が廃校の危機にあるという話は知らなかったからか、統夜は少しばかり驚いていた。

 

しかし……。

 

「……お前らは確かに努力をしてきたのかもしれない。だけどな、この程度のことで挫けていたら、廃校阻止なんて夢のまた夢だろうな。その程度の覚悟しかないなら、スクールアイドルなんて辞めてしまえ。今のお前らの覚悟じゃ決して上手くはいかないんだからな」

 

統夜がここまで容赦ない発言をするとは思っていなかったので、穂乃果たち3人は目に涙を溜めており、泣くのを必死に堪えていた。

 

そんな中、いくら尊敬する魔戒騎士とはいえ、統夜の発言を許すことは出来ず、両手の拳をギュッと握りしめていた。

 

「統夜さん……!いくらあなたでも言って良いことと悪いことがありますよ!」

 

「ほぉ……?」

 

鬼のような形相をした奏夜の剣幕に、統夜は少しだけ驚いていた。

 

奏夜がここまで怒るところを初めて見たからである。

 

「あいつらは……。穂乃果たちは今日のために必死に努力をしてきたんです!!全ては、スクールアイドルとして有名になって、廃校を阻止するために……!俺は3人が本気だってことがわかってたからマネージャーとして3人を支えようと誓ったんです!!」

 

「……」

 

奏夜は怒りの口調だったが、相手が統夜だからということもあるのか、タメ口は使わず、敬語で話していた。

 

「「そーくん……」」

 

「奏夜……」

 

「……それに、この3人がスクールアイドルを始めると決意したのは、並大抵な覚悟じゃないです!!……こいつらの覚悟を馬鹿にするというなら、いくら統夜さんといえど許しません!!」

 

奏夜は悪鬼の如く表情で統夜を睨みつけており、今にでも魔戒剣を抜いてしまいそうな勢いだった。

 

「ちょ、ちょっと……!さすがに暴力沙汰は……」

 

奏夜のただならぬ雰囲気を感じ取ったヒデコは奏夜をなだめようと必死になっていた。

 

そんな奏夜の言葉を聞いていた統夜は気を悪くするどころか、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

自分の大切なもののために怒る奏夜を見た統夜は、奏夜の成長を嬉しく思っていたのである。

 

「フッ……。お前らの覚悟が本物だとしたら今何をするべきか……。わかるだろ?」

 

「そ、それは……」

 

怒ることなく冷静に言葉を返す統夜を見て、奏夜の怒気はすっかりと消え去ってしまった。

 

統夜が穂乃果たちを焚き付けるために、わざと悪役を演じたということを理解したからである。

 

そんな統夜の真意を奏夜が感じ取ったその時、バタン!大きな音を立てながら、花陽が講堂の中に入ってきた。

 

花陽はμ'sのライブを楽しみにしていたのだが、何かしら用事があって遅くなったみたいである。

 

「……あれ?ライブは……?あれ……?あれぇ……?」

 

どうやら花陽はライブが終わってしまったと勘違いしていたのか、困惑しながら講堂内を見ていた。

 

「……そこの君、運が良いな。こいつらのライブのスタートはちょっと遅れたみたいでな。今から始まるみたいだぞ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

統夜の言葉を聞いて嬉しくなったのか、花陽の表情がぱぁっと明るくなっていた。

 

「と、統夜さん。俺たちはまだ……」

 

統夜のライブを行うことを前提にしている発言に奏夜は困惑していた。

 

「……たった2人の観客だけどな。客はお前らの都合なんて知ったこっちゃない。例え客が誰もいなくたって、ライブをやると決めたからには全力でパフォーマンスをする。……それがスクールアイドルってもんだろ?」

 

「!!」

 

この瞬間、奏夜は大事なことに気付くことが出来た。

 

例え客の人数が多かろうと少なかろうと、自分たちのライブを楽しみにしてる人はいる。

 

そんな人たちに応えることこそ1番大切であると。

 

(……流石は統夜さんだ……。俺は正直焦ってた。初ライブをどうしても成功させて、みんなの笑顔を守ろうって……。だけど、それは違うんだな……)

 

奏夜はこの講堂を満員にするまではいかなくても、半分以上はお客さんを動員したいと考えていた。

 

そして、それが叶わないと知ると諦めてしまっていた。

 

(……ここで歌うのを辞めたら……。俺たちはもうスクールアイドルだなんて偉そうなことは言えなくなる。本当に大事なのは、この結果を真摯に受け止めて、次に繋げていくことなんだよ……)

 

《やれやれ……。奏夜のやつ、やっと気付いたようだな》

 

キルバは今奏夜が考えていることにいち早く気付いてはいたのだが、奏夜の成長のためにあえて黙っていた。

 

奏夜が大切なことに気付き、キルバは安堵していた。

 

そんな中、統夜は……。

 

(……まぁ、音楽準備室で毎日のようにお茶を飲んではダラダラしていた俺がこんな偉そうなこと言うのはちょっと違うかなとは思ったんだけどな……)

 

《……確かにそうだが、別にいいんじゃないのか?お前さんが悪役をやったおかげで、あいつらを焚き付けることは出来たみたいだしな》

 

統夜は軽音部時代、毎日のようにお茶を飲んではダラダラと、奏夜たちのように脇目も振らずに練習に打ち込んできた訳ではなかった。

 

そのため、そんな自分がここまで偉そうなことを言って良いのかと自問自答してしまい、苦笑いしていた。

 

……そんな中、統夜が現れてからは沈黙を貫いていた穂乃果だったが……。

 

「……みんな、やろう!歌おう!全力で!!」

 

穂乃果がライブを行う意思を示していた。

 

「ほ、穂乃果ちゃん?」

 

「で、ですが……」

 

「統夜さんの言ってることは正しいよ。……それに、私たちはこの日のためにここまで頑張ってきたんだから!」

 

「「!!」」

 

穂乃果の真っ直ぐな言葉を聞いて、海未とことりは大事なことを思い出した。

 

確かに客がほとんどいないのは残念なのだが、自分たちは今日のライブのために苦しい練習にも耐えてきたのである。

 

「……だから……やろう!」

 

「穂乃果ちゃん……。う、海未ちゃん!」

 

「えぇ!そうですね!やりましょう!」

 

「……ったく……。やっとやる気になったか……」

 

穂乃果たちがようやくライブを行う決意を固めたため、統夜は安堵のため息をついていたのだが、その表情は穏やかなものだった。

 

「……みんな……。最後まで悔いのないよう、頑張れよ……」

 

そして奏夜は、ライブの成功はもちろんだが、穂乃果たちが後悔のないようパフォーマンスが出来るように祈っていた。

 

穂乃果たち3人がライブを行う決意をしたことを確認したヒフミトリオは、それぞれ持ち場について、ライブの準備を行った。

 

準備は数分で終了し、講堂の明かりが全て消えると、曲のイントロが流れ、照明が穂乃果たちに集中していた。

 

こうして、穂乃果たちのパフォーマンスは幕を開けたのである。

 

 

 

 

 

〜使用曲→START:DASH 〜

 

 

 

 

 

曲が始まると、穂乃果たち3人は歌と共に踊りを始めた。

 

3人のパフォーマンスが始まって間もなくすると、花陽の友人である星空凛が、講堂に現れた。

 

友人である花陽を探しに来たのだろう。

 

凛は花陽に声をかけようとしたのだが、花陽は穂乃果たち3人のパフォーマンスに夢中だったため、自然とステージに視線が向いていた。

 

そんなことなど気にすることはなく、奏夜は3人のパフォーマンスに見とれていた。

 

(うんうん……。正直言うとまだまだなところはあるけど、3人とも、凄く輝いてるぞ……!!)

 

穂乃果たち3人は努力の甲斐があったのか、今までで1番出来の良いパフォーマンスとなっており、奏夜はウンウンと頷いていた。

 

3人の表情は、奏夜の普段見る3人とは異なり、スクールアイドルとして恥じることのない堂々とした表情をしていた。

 

そして、スクールアイドルのパフォーマンスを初めて見た統夜は……。

 

(なるほど……。これがスクールアイドルか……。こりゃ、梓が熱中するのもわかる気がするよ……)

 

3人のパフォーマンスは素人の統夜は圧巻に見えており、恋人である梓がスクールアイドルにハマっていることに納得していた。

 

(……それに、客もちょっとずつではあるけど、増えてるじゃないか……。これなら、心配しなくても大丈夫そうだな……)

 

奏夜たちならこれからもスクールアイドルとしてやっていける。

 

3人のパフォーマンスを見て、統夜はこう確信していた。

 

(……それにしても、あの3人のパフォーマンスを見てると、軽音部でのライブを思い出すな……。3人とも、本当に楽しそうだからな……)

 

穂乃果たちのパフォーマンスを見て、軽音部でのライブを思い出した統夜は、先ほどよりも優しい表情で微笑んでいた。

 

統夜たち放課後ティータイムの行うライブは毎回毎回楽しそうだと評判であり、統夜たちも自分たちの演奏を楽しんでいる。

 

そんな自分たちの演奏と穂乃果たちのパフォーマンスを重ねて見ているからか、穏やかな表情をしているのであった。

 

さらに、統夜の言う通り、先ほどまでは客が統夜と花陽だけだったのだが、花陽の友人である凛が講堂に来ており、さらには穂乃果たちの曲を作った真姫も、講堂の入り口で穂乃果たちのパフォーマンスを見守っていた。

 

そして、希は講堂の中に入ろうとはしなかったのだが、穂乃果たちの様子を見守っており、さらには自分をにこと名乗るツインテールの少女……矢澤にこも講堂内に潜んでいた。

 

奏夜もどうやら少しずつ人が増えているのを確認し、ありがたいという気持ちになっていた。

 

人数は少なくても自分たちのパフォーマンスを見てくれる人がいる。

 

それだけでも穂乃果たちにとっては力になると確信しているからである。

 

こうして、人数は多くはないが、この講堂にいる全員が穂乃果たちのパフォーマンスに見入っており、穂乃果たちも今のところは順調にパフォーマンスを進めていった。

 

まだμ'sを結成しておよそ1ヶ月であるため、お世辞にも上手なパフォーマンスという訳ではなかったのだが、この日の穂乃果たちは誰よりも輝いていた。

 

こうして、全てを出し切った穂乃果たち3人のライブは無事に終了することが出来た。

 

演奏が終わるとこの会場にいるみんなが惜しみなく拍手を送っていた。

 

奏夜は3人の顔を見ると自分のやるべきことを最後まで出し切った顔をしていた。

 

(……本当によく頑張ったな。お前ら……)

 

奏夜は3人のパフォーマンスの成功を、まるで自分がその場で踊っているかのような感覚で喜んでいた。

 

会場も穏やかな空気に包まれていたのだが、突然現れた絵里が険しい表情をしていたため、そんな空気は壊れてしまった。

 

絵里は穂乃果たちのパフォーマンスが始まって間もなくあたりに音響室へ現れると、そこで穂乃果たちのパフォーマンスを見ていたのである。

 

「生徒……会長……」

 

「どうするつもり?」

 

ライブをやると高々に宣言して観客はほとんどいなかったため、このように聞いてくることは予想出来た。

 

そんな中、穂乃果は……。

 

「続けます」

 

と、簡潔な言葉ではあったが、力強く答えていた。

 

(……うん、穂乃果。それでいい)

 

穂乃果のスクールアイドルへの気持ちが揺らいでいないことに安堵した奏夜は笑みを浮かべていた。

 

「何故?これ以上続けても意味はないと思うけど」

 

絵里の言葉には言葉に棘があり、本当なら言い返したいと思った奏夜だったが、それは穂乃果に任せることにした。

 

「やりたいからです!今、私はもっともっと歌いたい!踊りたい!って思ってます。きっと海未ちゃんも…ことりちゃんも」

 

(……あぁ、そして俺だって同じ気持ちだ。3人を支えたいってな)

 

「こんな気持ち初めてなんです!やって良かったって、本気で思えたんです!…今はこの気持ちを信じたい…」

 

(そうだぞ、穂乃果。一番大事なのは後悔しないことだからな)

 

穂乃果の熱い言葉を1つ1つ反芻しながら、奏夜は穂乃果の言葉に同意しており、ウンウンと頷いていた。

 

恐らくあのままライブを中止してたら穂乃果たちはここまでの気持ちにはならなかっただろう。

 

「……このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。応援なんて全然もらえないかもしれない。でも、一生懸命頑張って。とにかく私たちが頑張って届けたい!今、私たちがここにいる、この思いを!」

 

この穂乃果の言葉を聞いた瞬間、今までやって来て良かったなと奏夜は本気で思ったのであった。

 

この結果だったからこそ、3人はスクールアイドルとしてがむしゃらに頑張る覚悟が本当に出来たんだと奏夜は確信したからである。

 

「いつか……。いつか私たち必ず……ここを満員にしてみせます!」

 

(アハハ……。大きく出たもんだ……)

 

穂乃果のこの言葉に奏夜は苦笑いをするが、目標があるから人は頑張れると確信していた。

 

絵里は何も言わずしっかりと穂乃果たちのことを見ていた。

 

「やれやれ……。確かに結果はダメだったかもしれないけど、この3人は頑張ったんだ。ライブが終わった直後にあれこれ言うのは野暮ってもんじゃないのか?」

 

ここで統夜は話に入り、まさかの統夜の介入に、奏夜は驚いていた。

 

そんな統夜を、絵里は訝しげに見ていた。

 

「……あなた、誰なの?この学校の生徒ではないわよね?」

 

「俺は怪しい者じゃないぞ。しっかり手続きをしてここに入ったしな。ほら」

 

統夜は首にぶら下げている「GUEST」と書かれたネームプレートを絵里に見せつけていた。

 

それを見て、絵里は統夜を不審者ではないと確信したのだが、何かを思い出し、統夜をジッと見ていた。

 

「あなた……。どこかで会ったことがないかしら?」

 

「さぁて、どうだかね」

 

統夜はこのようにとぼけていたのだが、実は統夜と絵里は1度会ったことがあるのである。

 

どのように2人は出会ったのか……。明かされるのはまだ先のことであった。

 

「……ま、それはともかくとして、この3人の覚悟は本物だぜ?それはあんたもよくわかってるんじゃないのか?」

 

「……っ!生徒会としては、スクールアイドル部を認めていません。部外者のあなたが口を挟まないでください」

 

「そう言われりゃ俺は何も言えんよな」

 

飄々と答える統夜であったが、悪びれる様子はなかった。

 

「……生徒会長。俺からも言わせてもらいますが、この3人の覚悟は本物です。この3人は初ライブでいきなり大きな挫折を味わって立ち上がったんです。生半可な方法じゃ彼女たちの足を止めることは出来ませんよ」

 

部外者と一蹴されてしまった統夜に代わって奏夜がこのように言葉を紡いでいた。

 

恐らくはこれからも生徒会長は奏夜たちのことを認めようとはしないだろう。

 

これは奏夜からの宣戦布告でもあった。

 

「あなたも…こんなことをして無駄だと思わないの?」

 

「全然思いませんよ?」

 

奏夜は本気でそう思っているからか、一切迷わず即答したので、それに驚いたのか絵里は少しだけ唖然としていた。

 

「そりゃあ生徒会長の気持ちもわかります。こんなことをして何になるのかってね」

 

「っ!だったらどうしてそこまで?」

 

「簡単なことです。俺は彼女たち……いや、この音ノ木坂学院のスクールアイドル「μ's」に大きな可能性を感じるからです。だからこそ俺は3人がスクールアイドルをやるって言った時に3人を支えようと決意したんです」

 

「「そーくん……」」

 

「奏夜……」

 

「へぇ……」

 

後輩である奏夜の力強い言葉を聞いた統夜は、そんな奏夜の凛とした表情に感心していた。

 

奏夜はμ'sのマネージャーに誇りを持っている。

 

それを感じ取ることが出来たからである。

 

「それに、生徒会長が言うようにやっても無駄だなんて言ってなんでもかんでも切り捨てるのは廃校阻止の可能性だって否定してるようなもんですよ」

 

「……っ!」

 

奏夜の言葉がけっこう効いてるのか生徒会長は何も反論してこなかった。

 

「俺はこの「μ's」という存在が音ノ木坂の廃校を無くすかもしれない。その可能性がある限り諦めることはしません。それは彼女たちも同じ気持ちです」

 

奏夜はまだまだ言いたいことはあったが、これ以上口撃してもどうしょうもないと思ったのでここまでにすることにした。

 

「……勝手にしなさい。だけど、私はやっぱりあなたたちを認めないわ」

 

「まぁ、それは仕方のないことですね」

 

俺はやれやれと肩をすくめながら笑みを浮かべると生徒会長は何も言わず講堂を出て行った。

 

生徒会長がいなくなったのを確認してから俺は3人に駆け寄った。

 

「みんな、お疲れ様♪3人ともすごく良かったぞ♪」

 

「「そーくん……」」

 

「奏夜……」

 

奏夜はいつもと変わらない優しい表情で穂乃果たちに労いの言葉を送るのだが、そんな奏夜の顔を見て、穂乃果たちはどうやら安心したようである。

 

すると、そんな奏夜たちの様子を見ていた統夜もこちらにやって来ると……。

 

「……よっ、3人とも、凄く良かったぞ」

 

統夜は簡単な言葉だったが、穏やかな表情で労いの言葉を送っていた。

 

「統夜さん!お久しぶりです!」

 

「今日は来てくれて、本当にありがとうございます!」

 

「いいっていいって。俺だって楽しみにしてたから来たんだぜ」

 

「統夜さん、唯さんたちはお元気ですか?」

 

「あぁ、あいつらは相変わらずだな。今日お前らのステージを見に行くって話したら羨ましがってたぞ」

 

統夜以外の軽音部のメンバーは、桜ヶ丘高校を卒業後、同じ大学であるN女子大学に進学した。

 

それから穂乃果たちは携帯で連絡は取ってはいたが会っておらず、久しぶりに唯たちと会いたいとも考えていたのである。

 

「とりあえず無事に初ライブを終えて疲れてるだろう?この後、どこかで飯でも食いに行かないか?何か奢るからさ♪」

 

「え?いいんですか?」

 

「もちろん。俺だって一応は社会人だしな」

 

統夜は、頑張った奏夜たちを労うために、食事をご馳走する旨を伝えていた。

 

「やったぁ♪統夜さん、ありがとうございます!」

 

「すみません、統夜さん。お言葉に甘えてご馳走になります」

 

「本当にありがとうございます!それじゃあ、私たちは着替えてきますね」

 

統夜のご馳走するという言葉を聞いた穂乃果たち3人は喜びの気持ちを露わにすると、穂乃果たちは着替えるために控え室へと移動した。

 

「と、統夜さん……本当にいいんですか?」

 

「いいんだよ。だって、指令が来たら使い魔の鳩が飛んでくるんだろ?」

 

「確かにそうですけど……」

 

統夜は翡翠の番犬所所属の魔戒騎士ではないが、この管轄で仕事をしたことは何度かあるため、この番犬所のシステムは理解していた。

 

現在講堂には誰もおらず、花陽を始め、ライブを見ていた者たちはみんな帰ってしまった。

 

そして、手伝いをしてくれたヒフミトリオの3人は、機材の片付けに追われているため、指令などと言った魔戒騎士に関する言葉を言っても、問題ないのである。

 

「お前も騎士の使命とスクールアイドルのマネージャーと大変だったろ?たまには美味いもんでも喰って英気を養えよ。お前の分だってもちろん奢るからさ」

 

「……ありがとうございます、統夜さん。遠慮なくご馳走になります。それに、統夜さんに相談もありますし……」

 

「俺に相談か?まぁ、構わないけど」

 

奏夜は、統夜に相談したいことがあるため、その話を聞いてもらおうと考えていた。

 

穂乃果たちは着替えに少し時間がかかるため、奏夜はこの場で穂乃果たちがホラーや魔戒騎士の秘密を知ったことを打ち明けた。

 

「……そっか……。穂乃果たちも知っちまったんだな。魔戒騎士やホラーについての秘密を……」

 

「はい……。あの3人には隠し事はどうしても出来なくて……」

 

「……本当にお前は、俺と似たような道を歩いているよな……。だから、お前のその気持ちは理解出来るけど……」

 

統夜は奏夜の気持ちを理解しているからか、その話を聞いた後も、特に厳しい言葉を投げかけることはしなかった。

 

「……怒らないんですか?」

 

「当たり前だろ?俺だって唯たちに魔戒騎士の秘密を話したんだ。お前にあれこれ言う権利はないさ」

 

「統夜さん……」

 

「それに……。穂乃果たち3人はお前にとって守りたいと思う存在……なんだろ?」

 

「はい!」

 

統夜にとって唯たちが守りたいと思う存在であり、奏夜にとって穂乃果たちが守りたいと思う存在であった。

 

「……だったらそれでいいじゃねぇか。穂乃果たちの存在がきっとお前の力になるハズだぜ」

 

「そうですね……。最近はそうだと実感していたところなんです。あいつらを守りたい。そう思ったら自然と力がみなぎってくるんです」

 

「……お前がそう思ってるのなら、俺から言えることはないな。あいつらを……ちゃんと守ってやれよ」

 

「はい!」

 

このように堂々と答える奏夜の顔は凛としたものであった。

 

「……ところでさ、穂乃果たちは俺が魔戒騎士だってことは知ってるのか?」

 

「いや、まだそこは話してないです。もしかしたら感付いてるかもしれませんが……」

 

奏夜は穂乃果たちに魔戒騎士やホラーの秘密を話しはしたのだが、統夜が奏夜と同じ魔戒騎士であることは話していなかった。

 

遅かれ早かれ知ることにはなるとは思うが、今は黙っておこうと奏夜が判断したからである。

 

「……そっか。だとしたら、この後飯食いに行く時は、迂闊なことは話せないな……」

 

穂乃果たちに統夜が魔戒騎士であるとバレないよう、気を付けなければと統夜は思っていた。

 

万が一バレてしまったら、その時はその時なのだが……。

 

このような話をしていたその時だった。

 

「そーくん!統夜さん!お待たせ!!」

 

着替えを終えた穂乃果たちが講堂に戻ってくると、2人で話をしている奏夜たちのもとへと駆け寄ったきた。

 

「……いや、統夜さんと話してたし、そんなに待ってないよ」

 

「なるほど……。それで、2人で何の話をしてたんですか?」

 

「あ、それは……」

 

奏夜は今までの話を正直に話すわけにはいかなかったため、どう答えるべきか悩んでいた。

 

すると……。

 

「最近の近況を聞いてたんだよ。詳しくは飯でも食いながら話そうぜ。お前らの近況も知りたいからな」

 

統夜はうまく話を誤魔化しながら、ここでの話を終了させていた。

 

この統夜の機転の良さに奏夜は驚くのだが、奏夜たちは機材の片付けを行ってくれたヒフミトリオの3人に別れを告げると、そのまま学校を後にした。

 

こうして、奏夜たちは統夜が下調べしておいた秋葉原のとある店を訪れると、統夜の奢りで食事を楽しみ、互いの近況を語り合ったりして、終始盛り上がっていた。

 

穂乃果たち「μ's」の初ライブは決して成功したといえる結果ではなかったが、このライブは奏夜たちが本気でスクールアイドルの活動をするという覚悟を決めたのであった。

 

完敗からのスタートだが、この結果だったからこそ、自分たちは大きく成長することが出来たと奏夜は後に実感するのであった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『あの大人しいお嬢ちゃんはどうやらスクールアイドルに興味があるようだな。さて、どうしたものか……。次回、「羨望」。μ'sに新しいメンバーが増えるのか!?』

 

 




μ'sの初ライブは完敗からのスタートとなってしまいましたが、無事にライブは終わりました。

そして今回、前作主人公である統夜が初登場しました。

それだけではなく、穂乃果たちを焚き付け、前作主人公らしい存在感を見せていました。

ですが、今作主人公である奏夜の出番もしっかり作ったつもりです。

どうやら絵里は統夜に見覚えがあるようですが、何故見覚えがあるのか、これから明らかになりますが、その答えは「牙狼×けいおん 白銀の刃」にもありますので、ぜひご覧ください!

さて、次回からは、ラブライブ!の第4話に突入します。

初ライブは終わり、再び動き始めた奏夜たちですが、μ'sに新たなるメンバーは入るのか?

それでは、次回をお楽しみに!

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