牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第12話になります!

さて、今回は本編+オリジナルの回となっています。

前回真姫の勧誘に失敗した奏夜だが、果たしてμ'sのメンバーを増やすことは出来るのか?

それでは、第12話をどうぞ!




第12話 「花連」

……ここは秋葉原某所にある生け花スタジオ。

 

このスタジオの人気は低迷してしまった結果、生け花教室に申込みをする人が減り、廃業も時間の問題になっていた。

 

「……何故なの!?何故こんなことに!」

 

このスタジオを経営している女性は、廃業寸前のこの状態に納得していなかった。

 

ここ最近、生け花の人気が低迷しているためこのような状況になっているというのが予想されている。

 

しかし、それだけではなく、このスタジオを経営している女性の経営のし方にも、問題があるようであり、スタッフも全員辞めてしまったのだ。

 

「……どいつもこいつも、生けた花の本当の美しさに気付いていないのよ……!そんな醜い輩がはびこるこんな世界なんて……」

 

なくなってしまえばいい。

 

女性はこのような歪んだ考えを持つようになってしまい、それが陰我となってしまった。

 

女性がこのようなことを考えていたその時だった。

 

__貴様、本当にこんな醜い世界がなくなれば良いと願っているのか?

 

「!?だ、誰!?」

 

唐突に聞こえてくる声に、女性は困惑していた。

 

__そんなに怯えることはない。我は貴様の気持ちがよくわかるからな。

 

「よ、よくわかるって、どういうことなの!?」

 

__生けた花の美しいこと……。人間共はその美しさに気付かない愚かな生き物よ……。

 

「……そうよ。だからこそ私はこんな醜い世界なんて滅びればいいと思ってるわ。いや、私が滅ぼしてやるわよ。例え、悪魔と契約しようともね……」

 

女性の歪んだ感情がとてつもない陰我へと変わってしまい、人間を辞めてもいいとさえ思ってしまっていた。

 

そして……。

 

__よくぞ言った!ならば、我を受け入れよ!!

 

「……!!」

 

女性が生けた花がゲートとなり、1体のホラーが現れると、ホラーの体は黒い帯状になり、女性の中へと入っていった。

 

女性は悲鳴をあげることはせず、ホラーを受け入れており、そのままホラーに憑依されてしまった。

 

ホラーに憑依された女性は、怪しい表情で笑みを浮かべていた。

 

「……ふふふ、私の芸術を理解出来ない愚か者は、みーんな私の餌にしてあげるわ……!」

 

怪しい笑みを浮かべた女性は、不穏な言葉を残し、どこかへと姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院に登場したスクールアイドル、「μ's」の初ライブが終わっておよそ1週間が経過していた。

 

奏夜はμ'sのマネージャーを行いながら、スクールアイドルに興味を持っている小泉花陽と、μ'sの曲を作曲してくれた西木野真姫を勧誘するが、失敗に終わる。

 

しかし、花陽は本当に自分のやりたいことはなんなのか。それが理解出来ていないため、迷っていた。

 

そんな中、花陽と共に真姫の家を訪れた奏夜は、現在花陽と共に秋葉原某所の道を歩いていた。

 

「人って色々なんですね……」

 

「まぁ、そうだな」

 

花陽は真姫との会話を思い出し、しみじみと呟いていた。

 

(…….あれ?そういえばここって俺んちの近くだよな?)

 

《そうだな。それに、穂乃果の家も近いな》

 

奏夜は偶然にも、自宅および穂乃果の家の近くを歩いていたようだった。

 

「なぁ、花陽ちゃん。この近くに美味しい和菓子屋があるんだけど、ちょっと寄っていかないか?」

 

「和菓子ですか?いいですね。お母さんにお土産でも買って行こうかな……」

 

こうして奏夜と花陽は穂乃果の家である穂むらに寄ることになった。

 

「いらっしゃいませ」

 

どうやら今日は穂乃果が店番をしているようであった。

 

「よう、穂乃果。今日は店番してるんだな」

 

「あっ、そーくん!それに……」

 

「こ、こんばんは……」

 

花陽も穂乃果が店番をしていることに気付いてペコリとお辞儀をしていた。

 

「あっ、ちょうど良かった。店番もうすぐ終わるから、花陽ちゃんと一緒に穂乃果の部屋で待ってて」

 

「わかった。それじゃあ、花陽ちゃん、行こうか」

 

「あっ、はい。お邪魔します….…」

 

奏夜と花陽は店の奥に入ると穂乃果の店番が終わるまで穂乃果の部屋で待つことになった。

 

階段を上がり、2人は2階にやってきた。

 

「あの、先輩の部屋はどっちですか?」

 

「あぁ、奥の部屋だよ」

 

奏夜は花陽が部屋を間違えないように部屋の場所を教えていた。

 

ちなみに、2階には2つ部屋があるのだが、手前が穂乃果の妹である雪穂の部屋であり、奥が穂乃果の部屋となっている。

 

(……ん?雪穂の部屋からぐぬぬ……って声が聞こえてきてるけど、何をしてるんだ?)

 

《奏夜。間違ってもそこの部屋は開けるなよ。面倒なことになるからな》

 

(わかってるって)

 

雪穂の部屋の様子は気になったものの、そこをスルーした奏夜は、花陽と共に穂乃果の部屋の前にやってきた。

 

「……花陽ちゃん。ここが穂乃果の部屋だよ」

 

「そうなんですか?」

 

「とりあえず中で待ってようぜ」

 

奏夜は花陽と共に穂乃果を待つために部屋の扉を開けたのだが……。

 

「ラーンララーンララーン、ララララーン♪ジャーン!ありがとー!」

 

……奏夜は何事もなかったかのように静かに扉を閉めた。

 

「……花陽ちゃん、俺たちは何も見なかった。いいな?」

 

「え?いや、でも……」

 

明らかに様子のおかしい奏夜を見て、花陽は戸惑っていた。

 

するとその時、ガタン!と勢いよく穂乃果の部屋の扉が開かれると……。

 

「……見ました?」

 

どす黒いオーラを放った悪鬼(海未)が扉を開けて出てきた。

 

「……な、ナンノコトカナー」

 

奏夜はこの場をどうにか穏便に治めようと、話を誤魔化すのだが……。

 

「ふん!」

 

「ひでぶっ!!」

 

海未の強烈な正拳突きを受けた奏夜はその場に倒れこんでしまった。

 

「き、如月先輩!?」

 

事の一部始終を見ていた花陽は、ダウンする奏夜を見て、慌てていた。

 

《……おいおい……。さっきの海未の一撃は、ホラー相手でも充分に通用するんじゃないのか?》

 

キルバは、海未の放った正拳突きの予想以上の威力に、唖然としていた。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

「……あの、ごめんなさい、私のせいで……」

 

奏夜が海未にノックアウトされてまもなく、店番を終えた穂乃果が戻ってきたため、奏夜たちは今穂乃果の部屋にいた。

 

ちなみに奏夜は穂乃果がやってきた後、海未と穂乃果の2人の手によって、穂乃果の部屋に連行され、そこでようやく目を覚ましたのである。

 

「あぁ、花陽ちゃんが気にすることはないよ。これくらい日常茶飯事だから」

 

本音を言えばまだ痛みが残っているのだが、花陽に気を遣わせるわけにはいかなため、奏夜はこう言って平静を装っていた。

 

「それにしても海未ちゃんがポーズの練習してただなんて」

 

海未がアイドルらしいポーズを練習してたことを知り、穂乃果はニヤニヤしながら海未をからかっていた。

 

「ほ、穂乃果が店番でいなくなるからです!」

 

海未は余程恥ずかしかったのかムキになって反論していた。

 

「まぁまぁ、そうカッカするなって」

 

「奏夜は黙ってて下さい!」

 

「……すいません」

 

奏夜は海未をなだめようとしていたのだが、どうやら逆効果のようであり、海未に怒られてしまった。

 

「あっ、あのっ!」

 

海未の剣幕にしゅんとしている奏夜を、花陽が弁護をしようとしたのだが、その前にことりが穂乃果の部屋に入ってきた。

 

ことりは部屋に入るなり花陽の存在に少し驚いていた。

 

「えっ、もしかして本当にアイドルに?」

 

「たまたまそーくんと一緒にお店に来たからご馳走しようかと思って。穂むら名物「穂むら饅頭」。略して「ほむまん」。美味しいよ♪」

 

「……まるでコマーシャルのような宣伝の仕方だな……」

 

奏夜は、穂乃果の宣伝の上手さに驚いていた。

 

そこは流石は和菓子屋の娘だなと実感出来る程に。

 

「穂乃果ちゃん、パソコン持ってきたよ」

 

「ありがとう♪肝心な時に限って壊れちゃうんだよねぇ」

 

どうやら穂乃果のパソコンの調子が悪いため、ことりがノートパソコンを持ってきていた。

 

「悪いな、ことり。重いのに持ってきてもらってさ」

 

「うぅん、気にしないで♪」

 

そう言いながらことりはパソコンをテーブルに置くと花陽ちゃんはお茶と煎餅をどかしていた。

 

「あっ、ごめん」

 

「あっ、いえ……」

 

「それで、ありましたか?動画は?」

 

「まだ確かめてないけど……」

 

この間行われた、μ'sのファーストライブの映像が動画サイトに上がっているらしいという噂が出ており、今からその確認を行おうとしていた。

 

ことりはパソコンを起動するとスクールアイドルの公式サイトにアクセスして、動画を探してみた。

 

意外にも、μ`sの動画はすぐ見つかり、動画を見てみたのだが、その映像は初ライブのもので間違いなく、アングルも絶妙な感じであった。

 

しかし、ここで1つの疑問が出てくる。

 

「誰が撮ってくれたのかなぁ?」

 

「もしかしてそーくん?」

 

「いやいや違うって。俺はあの時3人のパフォーマンスに見とれてたし、カメラも持ってきてなかったし」

 

誰かがこっそりと撮影してた割にはアングルが良すぎるため、誰かが撮影したことは予想出来たものの、誰が撮影したかまではわからなかった。

 

「すごい再生数ですね….…」

 

「こんなに見てもらったんだ……」

 

思った以上にこの動画の反響があるようで、再生数も予想以上のものになっていた。

 

そのため、ランキングも多少は上がってるのではないかと予想するのは容易だった。

 

そんな中、少し離れたところで動画を見ていた花陽は、真剣な表情で動画に食い入っていた。

 

「花陽ちゃん、そっちじゃ見にくくないか?」

 

奏夜は花陽に声をかけるが、余程集中しているのか花陽には聞こえていないようだった。

 

穂乃果たちもそれで花陽が動画に見入っていることに気付くと奏夜たちは顔を見合わせて笑みを浮かべた。

 

「……花陽ちゃん!」

 

「……っ、は、はいっ!」

 

どうやら今度は気づいたようであり、花陽はいきなり呼ばれて少しだけ驚いていた。

 

「スクールアイドル、本気でやってみない?」

 

「え?でも、私、向いてないです……」

 

「心配しなくてもいいよ。そこにいる海未なんて人前に出るのが苦手なんだ。向いてるか?と言われると向いてないかもな」

 

「……確かにその通りですが、奏夜に言われるとなんか癪ですね…….」

 

奏夜の説明が気に入らなかったのか、海未は頬を膨らませながら奏夜のことを睨みつけていた。

 

「私も歌を忘れちゃったり、運動も苦手なんだ」

 

「私はすっごいおっちょこちょいだよ!」

 

「……穂乃果よ、それは自慢気に言うことか?」

 

「へ?エヘヘ……」

 

奏夜に痛いところを突かれてしまったからか、穂乃果は照れ隠しに笑っていた。

 

「プロのアイドルなら私たちはすぐに失格。でも、スクールアイドルならやりたいって気持ちをもって自分たちの目標を持ってやってみることは出来る!」

 

(なるほどな……。確かにそれは一理あるかもな……)

 

ことりの言葉に思うところがあったからか、奏夜はウンウンと頷いていた。

 

しかし、スクールアイドルはプロのアイドルと比べて始めやすいのは事実だが、その分プロ以上に努力をしなければ人気を得ることなど出来ないのである。

 

「それがスクールアイドルだと思います」

 

「だから、やりたいって思ったらやってみようよ!」

 

「もっとも、練習は厳しいですが」

 

「おいおい、海未」

 

「あっ、失礼しました……」

 

奏夜たちのやり取りを見た花陽ちゃんは笑みを浮かべていた。

 

「……だからさ、ゆっくり考えて答えを聞かせて欲しいな。俺たちはいつでも待ってるからさ」

 

こうしてこの日は解散となり、奏夜は花陽を家の近くまで送り届けることにした。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

「……」

 

現在、奏夜は花陽を家に送り届けるために花陽の家に向かっているのだが、花陽は少しばかり思い詰めた顔をしていた。

 

奏夜はそんな花陽の顔をジッと見ていた。

 

(……花陽ちゃん、相当思い詰めているな……)

 

《確かにな。だが、このお嬢ちゃんはそれだけ迷ってるのだろう。俺たちは見守るしかないな》

 

(そうだよな……)

 

もう少し押せば花陽はμ'sに入ってくれそうだが、自分の意思で入ると決めないと意味はない。

 

そのため、奏夜は花陽が自分の意思でμ'sに入りたいと決意するのを待つことにしたのである。

 

そう考える中、花陽の家に向かっていたその時だった。

 

「……あれ?」

 

花陽は何かに気付いたのか、足を止めていた。

 

「……ん?どうしたんだ、花陽ちゃん?」

 

それにつられて奏夜も足を止めたのだが、何故花陽が足を止めたのかがわからず、首を傾げていた。

 

「あっ、いえ……。こんなところに庭園なんてあったかなぁと思いまして……」

 

奏夜たちの前には生けた花を飾っている庭園があったのだが、花陽はいつの間にこのような場所が出来たのかと驚いていた。

 

《……奏夜。確かにおかしいぞ。俺たちも今日のエレメントの浄化でここを通ったが、あんなものは存在しなかったぞ》

 

(……!!そうだったな。……ということは……)

 

《あぁ。奏夜、油断するなよ》

 

この庭園はホラーが作ったものと予想することが出来たため、奏夜はどこからホラーが現れても良いように、警戒を強めていた。

 

その時だった。

 

「……あら、可愛らしいカップルじゃない」

 

「か……カップル!!?////」

 

庭園から着物姿の女性が現れたのだが、奏夜と花陽のことをカップルと称しており、それを聞いた花陽は恥ずかしさから顔を真っ赤にしていた。

 

「……あら、違うのかしら?それはともかく、そこのお嬢さん、貴女は花は好きかしら?」

 

「は、はい……。大好き……です」

 

花陽は自分の名前に「花」がついているからという訳ではないのだが、花を見ることは好きなのである。

 

「そう……。せっかくだから、私の作品を見ていきなさい」

 

「あっ……でも……」

 

「いいからいいから♪」

 

女性は、花陽を半ば強引に庭園まで連れていくと、奏夜もその後を追いかけようとした。

 

その時である。

 

《……!おい、奏夜!ロデルの使い魔がこっちに来るぞ!》

 

ロデルの使い魔である鳩が、指令書を持って、奏夜の方へと飛んできた。

 

(……ということは、ビンゴみたいだな)

 

指令が来たということは、この庭園にホラーが紛れ込んでいることはほぼ確実だった。

 

奏夜は指令書を受け取ると、ロデルの使い魔の鳩は、そのまま主人のもとへと帰っていった。

 

そして奏夜は魔導ライターを取り出すと、魔導火を放って指令書を燃やし、そこから飛び出してきた魔戒語で書かれた文章を読み始めた。

 

「……歪んだ美しさを持つ、陰我にまみれた妖華が出現せり。ただちに殲滅せよ」

 

奏夜が指令内容を読み上げると、魔戒語で書かれた文章は消滅し、魔導ライターを魔法衣の裏地の中へしまった。

 

そして奏夜は女性と花陽に合流するため、庭園の中へと入っていった。

 

奏夜が2人と合流すると、どうやら花陽は女性の作品をじっくり見ているようだった。

 

「あら……。遅かったじゃない。いったいどうしたの?」

 

「あぁ、すいません。さっきまで親に電話してたんです。ちょっと帰りが遅くなるって」

 

奏夜はとりあえず魔戒騎士ではなく普通の高校生を演じるため、このような言い訳をしていた。

 

「あら、そうなの?」

 

女性は奏夜のことをただの高校生と思っているようであり、その言い訳に納得していた。

 

「あっ、そうだ!私、親に連絡してない……」

 

「花陽ちゃん。今のうちに家に連絡しとくと良いよ。俺はここで花でも見てるからさ」

 

「はい、わかりました」

 

花陽は携帯を取り出すと、帰りが少し遅くなる旨を親に伝えるために電話をしていた。

 

奏夜はこの隙に、花陽と女性を引き離そうと考えていた。

 

何故なら、奏夜はこの女性こそがホラーではないか?と予想していたからである。

 

「あの、実は俺も花が好きなんです。ですから、あなたの最高傑作があるならば見てみたいです」

 

本当はそこまで花が好きという訳ではなかったが、このような芝居をしていた。

 

「あら、そうなの?若い男の子にしたら珍しいわね。いいわよ、こっちへいらっしゃい」

 

奏夜の言葉に気を良くした女性は、奏夜を庭園の奥に案内していた。

 

それからおよそ数分後、電話を終えた花陽が戻ってきたのだが……。

 

「……あれ?」

 

奏夜と女性の姿が消えており、花陽は首を傾げていた。

 

そして、奏夜と女性を探すために、花陽はそのまま庭園の奥へと移動したのであった。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

そんなこととはつゆ知らず、奏夜は庭園の奥にある作品を眺めていた。

 

「……へぇ、なかなか良い作品じゃないですか」

 

「あなた、なかなか見所があるじゃない。この作品の美しさを理解するなんて」

 

女性は、奏夜が自分の傑作に興味を示していることが嬉しかった。

 

「……それに比べて、最近の若者ときたら、生けた花の素晴らしさを理解しようとすらしない……!」

 

このように語る女性の表情が、突然険しいものに変わっていた。

 

そんな女性の感情の変化を、奏夜は見逃さなかった。

 

そのため……。

 

「……もしかして、生け花って思ったよりも人気がないんですかね……?」

 

奏夜はあえて女性を試すような言葉を放って、女性の反応を伺っていた。

 

その結果……。

 

「そんなことはないわ!!あなただってわかってるでしょう!?生けた花こそ普通の花よりも美しいって。それを理解しない連中が明らかに多過ぎるのよ!だからこそ、私は……」

 

奏夜の言葉が気に入らなかったのか、女性は語気を強めて生け花の素晴らしさを語っていた。

 

そんな女性の反応を見た瞬間、奏夜が女性に対して抱いていた疑惑が確信に変わったのである。

 

「……なるほどな。それがあんたの陰我って訳か」

 

「はぁ?あなた何を言って……」

 

奏夜の言葉に女性が困惑していると、奏夜は魔法衣の裏地から魔導ライターを取り出した。

 

そこから魔導火を放ち、女性の瞳を照らす。

 

すると、女性の瞳から不気味な文字のようなものが浮かび上がり、女性がホラーであるということが判明した。

 

ここまでは奏夜の予定通りだったのだが、ここで1つだけ誤算が生じたのであった。

 

それは……。

 

「……え?え!?」

 

花陽が奏夜たちを探してここまで来てしまったことである。

 

「……げ!花陽ちゃん!来ちまったのか……」

 

奏夜は慌てて魔導火を消して魔導ライターを魔法衣の裏地の中にしまったのだが、ホラーとのコンタクトを花陽に見られてしまった。

 

奏夜が花陽の方に視線が向いたその時だった。

 

女性は顔の部分だけホラーの姿に変化させると、口から鋭いツタのようなものを放ち、それは花陽を狙っていた。

 

「……!」

 

奏夜は慌てて花陽の前に立って花陽を守る体勢に入ると、魔戒剣を取り出し、抜刀していない状態で女性によるツタの攻撃を防いだ。

 

「……ヒッ!?」

 

花陽は女性の顔が急に化け物のように不気味なものに変わってしまったため、怯えていた。

 

「……花陽ちゃん!早く逃げろ!」

 

「え?で、でも!如月先輩が!」

 

「俺なら大丈夫だ!だから早く!」

 

「は……はい!」

 

花陽は奏夜のことが心配ではあったのだが、ここは奏夜を信じることにして逃げようとしていた。

 

しかし……。

 

「……逃がさないわよ!」

 

口の部分がホラーの部分に変わっていた女性の口が元に戻ると、女性はこの場に何か細工を施したのである。

 

その結果……。

 

「……あれ!?で、出られない!?」

 

花陽はこの場を離れることが出来なくなってしまった。

 

「くそっ!結界か!」

 

奏夜がこう言って舌打ちをした通り、女性は結界を貼り、花陽が逃げるのを阻止していた。

 

「……せっかく上等な獲物が現れたんですもの、逃がさないわよ。……まぁ、魔戒騎士まで釣れるとは思わなかったけどね」

 

どうやら女性は、花陽と奏夜を捕食しようとしていたのだが、奏夜が魔戒騎士だとは思わなかったようである。

 

「ま……魔戒騎士……?」

 

花陽は聞きなれない単語に戸惑っていた。

 

「花陽ちゃん。隠れてろ」

 

「は、はい!」

 

この場から逃げられないと知った奏夜は、花陽に安全な場所へ隠れるよう告げると、魔戒剣を抜き、女性へと向かっていった。

 

「け……剣!?一体どうなってるの!?」

 

花陽はあまりに唐突な展開に頭がついていかなかったのだが、すぐに我に返ると、少し離れた場所へ移動し、奏夜の戦いを見守っていた。

 

「……はぁっ!!」

 

奏夜は魔戒剣を一閃するのだが、その一撃は女性にあっさりとかわされてしまった。

 

しかし、女性は着物を着ているからか思う通りに身動きをとることができず、動きに大きな隙が出来てしまった。

 

その大チャンスを見逃さなかった奏夜は女性を蹴り飛ばし、吹き飛ばされた女性の体は自身が生けた花に直撃してしまい、自身が最高傑作と言っていた花は見るも無残な形になってしまった。

 

「……!貴様ぁ!!」

 

奏夜によって自身の作品を壊された女性は大きく激昂し、口の部分だけホラーの形に変化した。

 

すると、口から鋭いツタのようなものを放ち、奏夜の体を貫こうとするのだが、奏夜は無駄のない動きで攻撃をかわしていた。

 

それから女性のツタのようなものによる攻撃は何度も続き、避けきれない時は魔戒剣を一閃することでツタのようなものを斬り裂いて攻撃を防いでいた。

 

「……」

 

花陽は、奇妙な怪物相手に臆せず向かっていく奏夜を見て唖然としていた。

 

奏夜が普通の人とは雰囲気が違うということは察していたのだが、怪物と平然と戦えるとは思ってもいなかったからである。

 

(如月先輩……。あなたは、一体何者なんですか……?)

 

花陽は素性のわからない奏夜に困惑しながらも、奏夜の戦いをジッと見守っていた。

 

そんな中、奏夜は女性のツタのようなものによる攻撃をことごとく防ぎ、少しばかり余裕そうな表情を見せていた。

 

これは、本当に余裕なのではなく、相手を挑発するためにわざとこのような表情をしているのである。

 

「……ふふん、どうした?もう終わりか?」

 

奏夜は笑みを浮かべながら女性を挑発していた。

 

普通の相手ならあからさまな挑発には乗りにくいと思われるのだが……。

 

「……貴様ぁ!!」

 

奏夜に自分の作品を壊されて激昂している女性は、あっさりと奏夜の挑発に乗ってしまった。

 

そして、女性は一気に奏夜を仕留めるために、完全にホラーの姿へと変わっていった。

 

「!!?」

 

花陽は、この世のものとは思えない怪物を目の当たりにしたことで、恐怖で体が震えてしまっていた。

 

一方奏夜は、本当の姿を現したホラーの姿をジッと眺めていた。

 

『……奏夜!こいつはホラー、シャドウハーブ。ツタによる攻撃に注意しろよ!』

 

「あぁ、わかってる!」

 

奏夜は魔戒剣を構えると、鋭い目付きでシャドウハーブを睨みつけていた。

 

すると、シャドウハーブは体のあちこちから鋭いツタを放つと、全てを奏夜に向けていた。

 

「……っ!」

 

奏夜はどうにかその攻撃をかわすのだが、それでもなお、ツタは奏夜に向かっていた。

 

「くっ……。このぉ!!」

 

奏夜は魔戒剣を一閃しらツタを斬り裂くのだが、全てのツタを斬り裂くことは出来ず、その一部が奏夜の顔面に迫っていた。

 

「っ……!」

 

奏夜はどうにか回避体勢をとることで直撃は避けることが出来たのだが、奏夜の右頬をかすめてしまい、右頬から少量の鮮血が飛び散っていた。

 

「……如月先輩!!」

 

シャドウハーブ相手に押されていると判断した花陽は、心配からか思わず奏夜の名を呼んでいた。

 

「……ちっ!まだ生きてるのね……!!だったら……これでどう!?」

 

シャドウハーブは先ほどよりも多くのツタを奏夜目掛けて放つことで、確実に奏夜を仕留めようとしていた。

 

『……奏夜!来るぞ!!』

 

「……」

 

奏夜はシャドウハーブの放つツタの動きをジッと見極めていた。

 

すると、奏夜はジャンプをして最初の攻撃をかわすと、続けて迫り来るツタを魔戒剣の一閃にて斬り裂き、それでも迫り来るツタは、体を回転させながら回避していた。

 

「!!?」

 

「す、凄い……」

 

まさか全ての攻撃がかわされるとは思ってなかったからか、シャドウハーブは驚き、花陽もまた、奏夜のアクロバティックな動きについ見とれてしまっていた。

 

「……取った!」

 

シャドウハーブの攻撃をかわし、地面に着地した奏夜は、絶妙な位置へ移動して、魔戒剣を一閃しようとした。

 

だが……。

 

「フン、甘いわね!!」

 

シャドウハーブは体を回転させると、そこから花びらの吹雪が舞いあがっていた。

 

「ぐっ……!」

 

その一撃により、吹き飛ばされてしまった奏夜は、そのまま結界に叩きつけられてしまった。

 

「ぐぁっ……!!」

 

壁に叩きつけられたような衝撃と、結界による衝撃の2つをまともに受けた奏夜は、表情を歪ませながら、その場に倒れ込んでしまった。

 

「……!そ、そんな……!!」

 

奏夜は絶体絶命の状態に陥っており、花陽はその状況に息を飲んでいた。

 

「……これでトドメよ!!」

 

シャドウハーブは、奏夜にトドメを刺すべく、4つほどツタを放ち、奏夜の体を貫こうとした。

 

「……如月先輩!!」

 

「!!」

 

花陽の心配する声を聞いた奏夜は、ハッとして、自らを奮い立たせていた。

 

自分が花陽を守らなければいけず、シャドウハーブに負けるわけにはいかない。

 

そんな気持ちで立ち上がった奏夜は、魔戒剣を一閃して、4つのツタを斬り裂いた。

 

「……!?ま、まさか……!!私の攻撃を凌ぐだなんて……!」

 

奏夜に反撃する気力はないと思っていたからか、シャドウハーブは驚きを隠せずにいた。

 

「こんなところで……やられる訳にはいかねぇんだよ!!」

 

奏夜は改めて気合を入れると、鋭い目付きでシャドウハーブを睨みつけていた。

 

シャドウハーブの一撃でかなりのダメージを受けた奏夜だったが、戦闘続行に支障はなかったのである。

 

「……貴様の陰我、俺が断ち切る!!」

 

「……?陰我……?」

 

奏夜はシャドウハーブに向かってこう宣言するのだが、花陽は聞き慣れない言葉を聞いて、首を傾げていた。

 

そして、奏夜は魔戒剣を高く突き上げると、円を描いた。

 

その部分だけ空間が変化すると、奏夜はそこから放たれた光に包まれた。

 

すると、空間が変化した場所から、黄金の鎧が出現すると、奏夜は黄金の鎧を身に纏った。

 

こうして、奏夜は輝狼の鎧を身に纏ったのである。

 

「……き、金色の……狼!?」

 

花陽は初めて見る異形の鎧を奏夜が身につけたことに、驚きを隠せなかった。

 

(……き、如月先輩。変身シチャッタノォ!?まさか、如月先輩もあの怪物と同じ……?)

 

奏夜の身につけた異形の鎧を見た花陽は、奏夜もシャドウハーブと同じホラーなのではないか?と疑惑を持ってしまい、怯えた表情で輝狼の鎧を見ていた。

 

「おのれ……鎧を召還したからって、恐れることはないわ!」

 

シャドウハーブは、体のあちこちからツタを放ち、輝狼の鎧を貫こうとした。

 

ソウルメタルで出来ている輝狼の鎧はそう簡単に貫くことは出来ないのだが……。

 

「……キルバ!!」

 

『やれやれ……。仕方ないな……』

 

奏夜はキルバを前方に突きつけると、キルバは口から魔導火を放つと、奏夜に迫り来るツタを全て焼き払った。

 

「!!?」

 

キルバの放った炎はツタを通してシャドウハーブにも伝わっているようであり、あまりの熱さに苦しんでいた。

 

『ほう……。なるほど、考えたな、奏夜』

 

奏夜は何故キルバに魔導火を放たせたのか、その目論見に気付いたキルバは感心していた。

 

「なぁに、奴は植物のホラーだから、単純に火に弱いと思っただけだよ」

 

奏夜は単純に、シャドウハーブの弱点が火ではないかと予想し、このような行動に出たのである。

 

「ぐぅぅ……!おのれぇ!!」

 

シャドウハーブは鋭い目付きで奏夜を睨みつけるが、未だに魔導火は燃えており、シャドウハーブは熱さで苦しんでいた。

 

動きが鈍ったのがチャンスと感じた奏夜は、陽光剣を構えると、シャドウハーブにトドメを刺すべく接近した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

奏夜は獣のような咆哮をあげながら陽光剣を一閃し、シャドウハーブの体を真っ二つに斬り裂いた。

 

奏夜の一撃で魔導火はかき消されたのだが、シャドウハーブは断末魔をあげており、その体は陰我と共に消滅した。

 

「……よし」

 

シャドウハーブを討滅したことを確認した奏夜は、鎧を解除すると、元に戻った魔戒剣を緑の鞘に納めた。

 

「……」

 

ホラーの脅威は消え去り、花陽の目には、自分が憧れているスクールアイドルの1つ、μ'sのマネージャーである奏夜の姿が映っていた。

 

しかし、鎧を召還して戦う様子を見て、花陽は奏夜にも恐怖を覚えてしまったのである。

 

そんなこととはつゆ知らず、奏夜は花陽のもとへ歩み寄った。

 

「……花陽ちゃん、大丈夫か?」

 

奏夜は穏やかな表情で笑みを浮かべながら花陽に近付くのだが……。

 

「……ヒッ!?」

 

奏夜に恐怖を覚えてしまった花陽は、ビクンと肩をすくめていた。

 

「は……花陽ちゃん……?」

 

ここまで怖がられるとは思わなかったからか、奏夜は面食らっていた。

 

「ご、ごめんなさい……。あと、助けてくれて、ありがとうございます……」

 

花陽は勇気を振り絞って助けてもらったことの例を言うと、逃げるようにその場を立ち去っていった。

 

「……あちゃあ……。これはちょっとまずいことになったかな?」

 

花陽をμ'sのメンバーに勧誘しようと思った矢先に、ホラーとの戦いで花陽を怖がらせてしまったので、今のままでは花陽をμ'sのメンバーにするのはほぼ不可能な状態になってしまった。

 

『ま、あれが普通の反応だな。お前だって慣れてるはずだろ?』

 

「そりゃ、そうだけどさ……」

 

キルバの言う通り、ホラーを討滅した後、助けた人に怖がられたり、お前も化け物だと非難されることはよくある話なのである。

 

そのため、花陽もその例の1人ではあるのだが、μ'sに誘えなくなったことは申し訳ないと思っていた。

 

「……明日、穂乃果たちに謝らないとな。それに、なるべく花陽ちゃんに近付かないようにしないと……」

 

『ま、それがいいだろうな。俺たちも帰るぞ、奏夜』

 

「そうだな」

 

こうして、1つの問題を抱えてしまったのだが、シャドウハーブを討滅したため、奏夜は家に帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『あのお嬢ちゃんは奏夜のことを怖がってやがる。このままだとμ'sの活動にも支障が出そうだな。次回、「勇気」。さて、これからどうなることやら……』

 

 




花陽をμ'sに勧誘し始めた奏夜たちですが、花陽は迷ってるみたいです。

奏夜は海未に殴られてまたヒャッハーのような悲鳴をあげていますが、奏夜も徐々にギャグキャラに(笑)

そんな中、花陽がホラーとの戦いに巻き込まれたため、花陽を救った奏夜ですが、怖がられてしまいました。

当初は奏夜の戦いを見てそのまま受け入れる感じにしようと思いましたが、みんながみんな反応が同じだとつまらないと思い、こうしました。

メンバーによって、奏夜を見た時の反応が異なる方が面白いかなと思いまして。

その結果、牙狼とのクロスっぽい展開になったと思います。

まぁ、牙狼とのクロスオーバーなんですが(笑)

このままだと花陽をμ'sに勧誘するのは困難ですが、花陽は奏夜に対する恐怖心を消し去ることは出来るのか?

それでは、次回をお楽しみに!

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