牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第2話になります!

FF14と牙狼がコラボをしてるとのことで、FF14をやってますが、最近、牙狼や絶狼など鎧を着けてる人をチラホラと見かけるようになりました。

自分も早く牙狼装備を手に入れたい!

それはともかくとして、今回からいよいよラブライブ!の本編がスタートしていきます。

そして、今回は奏夜の鎧が登場します。

前作である「牙狼×けいおん 白銀の刃」にも奏夜は登場して鎧を召還しているので、前作を見ている方はあの鎧が登場します。

前作を見ていない方は、奏夜の鎧が登場するので、ご期待ください!

それでは、第2話をどうぞ!




第2話 「廃校」

奏夜が、海未の稽古に付き合い、素体ホラーを討滅してから数日が経過した。

 

魔戒騎士と高校生。2つの顔を持っている奏夜の高校生活は順調そのものであり、このまま卒業までは何事もなく順調に日々が過ぎていくと思われた。

 

しかし……。この日は朝礼があり、この学校の理事長から思いもよらぬことが告げられた。

 

それは、来年度からの入学希望者を打ち切り、この学校が廃校になるというものである。

 

そんな理事長の言葉に全校生徒は戸惑いを隠せず、ざわついていた。

 

奏夜にとっても廃校は思ってもみないことであり、驚きを隠せなかった。

 

(廃校とかマジかよ……。この学校にはけっこう思い入れがあるのに……)

 

奏夜にとってもこの学校には思い入れがあり、廃校という事実は奏夜にショックを与えるものであった。

 

そして朝礼が終わり、校内の掲示板にも廃校の知らせがデカデカと貼られていた。

 

「は、廃校って……」

 

「つまり、学校がなくなるということですか?」

 

奏夜と一緒に廃校の知らせのポスターを見ていたことりと海未も、信じられないと言いたげな感じでポスターを見ていた。

 

穂乃果も一緒にポスターを見ていたのだが、1番ショックが大きいようで、言葉を失って絶句していた。

 

「あぁぁ……」

 

あまりのショックのせいて、穂乃果は気を失ってしまった。

 

「危ない!!」

 

そのまま倒れたら危険なため、奏夜は気を失って倒れる穂乃果を支えていた。

 

「おい、穂乃果!大丈夫か?」

 

「穂乃果!」

 

「穂乃果ちゃん!」

 

奏夜、海未、ことりの3人気を失った穂乃果に呼びかけるが、穂乃果の反応はなかった。

 

「わ……私の……私の輝かしい……高校生活が……!」

 

気を失った穂乃果はみんなに聞こえるか聞こえないかくらいのうわ言を言っており、ショックのあまり涙目になっていた。

 

(……こいつは重症だな……)

 

廃校という事実を突きつけられた穂乃果が予想以上に狼狽しており、奏夜はやや呆れ気味だった。

 

「海未、ことり。とりあえず穂乃果は俺が保健室に連れていくよ」

 

「すいません、奏夜。お願いします!」

 

「お願い、そーくん!」

 

「あぁ、任せろ!」

 

こうして、奏夜は穂乃果を保健室へ連れて行くことになったのだが……。

 

「「!!?」」

 

海未とことりは奏夜の行動に驚いていた。

 

穂乃果を運ぶのに、奏夜は穂乃果をお姫様抱っこで運んでいたからである。

 

奏夜はそのまま保健室へと向かっていった。

 

お姫様抱っこというのは漫画でたまに見る展開であるからか、それを目撃した生徒の視線が奏夜に集中していた。

 

(……何か、周りの視線が凄いんだけど……)

 

《おい、奏夜。それはお前がこのお嬢ちゃんをお姫様抱っこしてるからだろ》

 

(これが1番手っ取り早いと思ってたが、恥ずかしいな……)

 

奏夜は恥ずかしさからか頬を赤らめながら保健室へと移動した。

 

「すいません、彼女をちょっとここで休ませてあげて下さい!」

 

奏夜は保健室に入るなり、保健室の先生にこう伝えた。

 

「わかったわ。こっちのベッドに寝かせてちょうだい」

 

「ありがとうございます」

 

奏夜は保健室の先生が指定したベッドに穂乃果を寝かせた。

 

「……すいません、よろしくお願いします」

 

奏夜は穂乃果を先生に任せると、保健室を後にして教室へと戻っていった。

 

教室に戻ると、まだホームルームの途中だったのだが、海未とことりが予め奏夜と穂乃果のことを先生に伝えていたからか、特に咎められることもなく、奏夜は自分の席についた。

 

そしてホームルームが終わるなり、海未とことりが奏夜のもとへやってきた。

 

「……奏夜、穂乃果は大丈夫でしたか?」

 

海未は不安そうな表情で奏夜に聞いていた。

 

「あぁ。とりあえずは大丈夫だと思う」

 

「良かったぁ♪だけど、やっぱり穂乃果ちゃんが心配だなぁ……」

 

大丈夫だとわかって安堵はするものの、ことりも不安そうな表情をしていた。

 

「確かに。俺も心配だよ」

 

奏夜も穂乃果との付き合いは長いため、穂乃果のことを心配していた。

 

奏夜たちは3人揃って穂乃果の心配をしていたその時だった。

 

ガラガラ……。

 

目を覚ました穂乃果が教室に入ってきたのだが、何故かジト目だった。

 

「穂乃果?」

 

「穂乃果ちゃん?」

 

穂乃果はフラフラになりながらも奏夜の席まで移動すると、「学校がなくなる……」とまるで呪文のように呟いていた。

 

「穂乃果ちゃん、そんなに学校が大好きだったなんて……」

 

「いえ、あれは何か勘違いをしています」

 

「あぁ。俺もそんな気がするよ」

 

「学校がなくなる」と呟いていた穂乃果を奏夜たちが心配そうに見ていたその時だった。

 

「どうしよぉ!全然勉強してないよぉ!!」

 

穂乃果は涙目になりながらこう訴えかけていた。

 

「……やっぱり勘違いしてたか……」

 

奏夜は穂乃果がこんなことを思っていると予想していたのか、ジト目で穂乃果のことを見ていた。

 

「だって、学校が無くなるってことは他の学校に行かなきゃいけないんでしょ?編入試験とかあるじゃん!」

 

穂乃果は学校が無くなるのはショックだったが、それと同時に編入試験を受けなければいけないと思い込んでしまい、焦っていたのである。

 

「ほ、穂乃果ちゃん落ち着いて……」

 

「ことりちゃんと海未ちゃんはいいよ!そこそこ勉強出来るし!そーくんだっていつもテストでは平均くらいは取れてるし!」

 

穂乃果が言う通り、ことりと海未はそれなりに成績が良かった。

 

奏夜は魔戒騎士の務めを果たしながら勉強しているのだが、成績は良くも悪くも平均的であった。

 

しかし、勉強を怠り、赤点ギリギリくらいの点数になったこともあるため、成績が良いとは言いがたいものだった。

 

「穂乃果、落ち着いて下さい。いいですか。廃校とは言ってもすぐに学校が無くなる訳ではありません」

 

「ふぇ?」

 

この音ノ木坂高校は確かに廃校が決まってしまったのだが、今すぐ学校が無くなるものではなかった。

 

来年度からの入学希望者の受け入れを辞め、今いる1年生が卒業したら廃校になるというものだった。

 

海未は穂乃果にこの説明をすると、穂乃果はどうにか納得したようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、今日もパンが美味いっ♪」

 

昼休みになり、奏夜たちは中庭で昼食を取っていたのだが、パンが大好きな穂乃果は、満面の笑みでパンを頬張っていた。

 

「それにしても、来年度から1年生が入って来ないっていうのは何か寂しいよな」

 

奏夜はコンビニで買ってきたパンを頬張りながらこう呟いていた。

 

「そうですね……。今の1年生には後輩はいないということになりますからね……」

 

来年度からの入学希望者を受け入れないということは、今の1年生に後輩が出来ることはなく、卒業して廃校になる時は先輩も後輩もいないという寂しい状況になってしまう。

 

しかも、今年の1年生は1クラスしかなく、より寂しさを感じさせるものだった。

 

そのことを痛感し、奏夜たちは浮かない表情のまま食事を取っていたのだが……。

 

「……ちょっといいかしら?」

 

突然声をかけられたので奏夜たちは声の方を向くと、綺麗な金髪のポニーテールで、吸い込まれそうなほど綺麗な青い瞳の少女が立っていた。

 

その瞳には憂いを帯びており、とても大人っぽい雰囲気を醸し出していた。

 

その少女の隣には紫の入った黒髪で、ツインテールの少女が立っていた。

 

奏夜たち2年生は紫のリボンなのだが、2人は黄色のリボンであり、黄色のリボンは3年生のつけるリボンだった。

 

それ故に2人は3年生であるということがわかった。

 

「……なぁ、海未。この人たちって確か……」

 

「えぇ。生徒会長と副会長です」

 

奏夜と海未はまるで確認を取るように小声で会話をしていた。

 

金髪でポニーテールの少女が、絢瀬絵里(あやせえり)であり、この音ノ木坂学院の生徒会長である。

 

そして、紫の入った黒髪にツインテールの少女が東條希(とうじょうのぞみ)で、彼女は副会長であった。

 

「……南さん」

 

「は、はい!」

 

ことりは絵里に名指しされ、思わず立ち上がった。

 

「あなた……。確か理事長の娘よね?理事長、何か言ってなかった?」

 

「い、いえ……。私も今日知ったので……」

 

ことりの母親はこの音ノ木坂学院の理事長なのだが、ことりが廃校の話を聞いたのは今日が初めてだった。

 

「そう……。ならいいわ」

 

「ほなな〜」

 

絵里の要件はそれだけだったため、希と共にその場を離れようとしたのだが……。

 

「……あ、あの!」

 

穂乃果が2人を呼びとめたので、2人は足を止めた。

 

「学校……本当になくなっちゃうんですか?」

 

穂乃果にとっては学校がなくなるというのは避けたいことであり、今でも信じがたいものだった。

 

そんな心配から穂乃果は絵里に訪ねたのだが……。

 

「……あなたたちが気にすることじゃないわ」

 

こう言い放つ絵里の口調はとても冷たいものであった。

 

絵里のそのような態度を見ていた奏夜は苛立ちを募らせていた。

 

「……そんな言い方はないんじゃないっすかね?」

 

そのため、奏夜は思わず絵里に反論してしまった。

 

「……何ですって?」

 

奏夜の反論を聞いた絵里は眉間にしわを寄せながら奏夜を睨んでいた。

 

(あ……やべ!!)

 

奏夜は思ったことをつい口にしてしまったことを後悔するが、既に手遅れだった。

 

《やれやれ……。思ったことを口にするのがお前の悪い癖だぞ、奏夜》

 

キルバはテレパシーで奏夜のダメ出しをしていた。

 

ここまで言ってしまったら後戻りは出来ないため、奏夜は思ったことを言うことにした。

 

「こいつは本気で学校を心配して言ってるんです。だからそんな突き放すような言い方は良くないと思っただけなんです。気に障ったのなら謝ります」

 

奏夜は出来る限り波風を立てないように、なるべく大人しめに思ったことを言っていた。

 

「そう……。気を付けるわ」

 

絵里が簡単に引き下がってくれたので、奏夜は安堵のため息をついていた。

 

「話はそれだけよね?だったらもう行くわね」

 

絵里は眉間にしわを寄せながら踵を返すと、そのまま教室へと向かっていった。

 

奏夜に反論されたことが気に入らなかったため、絵里は不機嫌そうな表情をしているということは予想できた。

 

そんな絵里の様子を見ていた希は、ニヤニヤしながら奏夜のことを見ていた。

 

「君……おもろいな♪」

 

「?そうですかね……」

 

「まぁ、そういうことや。ほなな〜」

 

奏夜のことが面白い。それだけを言いたかったのか、希は絵里を追いかけるため小走りで去っていった。

 

「……ほっ、危なかった……」

 

《奏夜。面倒なことに巻き込まれたくないなら、あまり思ったことをポンポンと言うんじゃないぞ》

 

(わかってるって)

 

キルバは思ったことをつい口に出してしまう奏夜に対してこのように釘を刺していた。

 

「奏夜、生徒会長は上級生なんですから、口の利き方は気を付けた方がいいですよ」

 

キルバだけではなく、海未も同じような注意を統夜にしていた。

 

「あぁ、気を付けるよ」

 

海未やキルバに言われるまでもなく気を付けるべきことだということは奏夜も理解しているため、自分に言い聞かせるのも兼ねて返事をしていた。

 

「さて、昼休みも終わるし、そろそろ教室に戻ろうか」

 

奏夜の言う通り、昼休みは間も無く終わるため、奏夜は教室へ戻ろうとしていた。

 

すると……。

 

「あっ、そーくん!待って!」

 

「?どうした?」

 

「ありがとね♪穂乃果のために怒ってくれて」

 

穂乃果は、奏夜が上級生だろうと自分のために言うべきことを言ってくれたのが嬉しかったのか、お礼を言っていた。

 

「べ、別に穂乃果のためじゃなくて、思ったことをつい言っちゃっただけなんだからな!」

 

お礼を言われたことが照れ臭かったのか、奏夜は頰を赤らめながらプイっとそっぽを向いていた。

 

「クスッ。そーくんってばツンデレだねぇ♪」

 

素直になれずツンデレのような対応をしている奏夜が可愛いと思ったのか、ことりは笑みを浮かべていた。

 

「そ、そんなことはないぞ!ほら!俺は先行くからな!」

 

奏夜は照れが大きかったからか、そのままスタスタと歩き出し、教室へと向かっていった。

 

「あ、そーくん!待ってよぉ!!」

 

穂乃果はそんな奏夜を慌てて追いかけ、海未とことりもその後を追いかけていた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

昼休みが終わると、奏夜は普通に授業を受けていた。

 

そして放課後、奏夜は帰り支度を始めていた。

 

「奏夜、帰るのですか?」

 

「あぁ。俺は帰ろうと思ってるけど」

 

海未に声をかけられたので、奏夜は帰り支度をしながら返事をしていた。

 

「今から穂乃果やことりと廃校をどうにか阻止するためにこの学校のいい所を探そうとしてるんですけど、奏夜も参加出来ませんか?」

 

「悪い。協力したいのは山々なんだけど、今日はこの後用事があってな」

 

「そうでしたか……。残念ですけど、仕方ないですね……」

 

「悪いな、それじゃあまた明日!」

 

こうして海未と別れて教室を出た奏夜は、そのまま学校を後にした。

 

学校を後にした奏夜は、音ノ木坂学院の近くにあるとある場所に向けて歩いていた。

 

そして、奏夜が足を止めたのは、音ノ木坂学院から歩いて3分ほどのところなのだが、その場所はなんと行き止まりであった。

 

奏夜は一切焦ることはなくキルバを行き止まりの壁に向かって突き出した。

 

すると、その壁から魔法陣のようなものが出現すると、奏夜はその魔法陣の中に入っていった。

 

奏夜がその中に入ったのと同時に魔法陣のようなものは消えていた。

 

奏夜が向かっているのは、奏夜たち魔戒騎士を総括する番犬所という機関である。

 

この番犬所は各所に存在し、奏夜の所属する翡翠の番犬所は、秋葉原と神田と神保町あたりを管轄にしている番犬所である。

 

奏夜は何もない道を進んでいくと、奏夜は神官の間にたどり着いた。

 

そこには高い玉座に座る20代くらいの男性と、その付き人の秘書官2人が立っていた。

 

「あ、奏夜。来ましたね」

 

「はい、ロデル様」

 

奏夜はこの翡翠の番犬所の神官であるロデルに一礼すると、近くにあった狼の像の前に立った。

 

すると、奏夜は魔戒剣を抜くと、狼の像の開いた口に剣を突き刺した。

 

そして、魔戒剣を引き抜くと、狼の像の口から煙のようなものが現れ、さらに小さな短剣のようなものが出て来た。

 

この短剣は、討伐したホラーを封印したものであり、この短剣が12本になった時、魔界へと強制送還される。

 

12という数字は、魔を祓う意味があるためである。

 

さらに、狼の口に魔戒剣を突き刺すことで、魔戒剣に溜まった邪気を浄化することが出来る。

 

魔戒剣の浄化を終えた奏夜は、魔戒剣を鞘に納めると、ロデルの前に立った。

 

「奏夜。どうですか?学校は」

 

ロデルは奏夜に学校のことを聞いていた。

 

奏夜がこの音ノ木坂学院に通うようになったのは、ロデルの力添えがあってこそであった。

 

そもそも、奏夜が高校に通うようになったのは、高校に通いながら魔戒騎士として務めを果たしていた月影統夜の存在がとても大きい。

 

統夜は本来高校に行く気はなかったのだが、統夜の所属する桜ヶ丘を管轄としている紅の番犬所の神官であるイレスの薦めで桜ヶ丘高校に入学したのであった。

 

高校に通いながら様々な試練を乗り越えていった統夜は高校を卒業し、今も紅の番犬所所属の魔戒騎士として、ホラーを討伐しているのである。

 

奏夜はそんな統夜に憧れ、尊敬しており、統夜のように高校生活を通して「守りし者」とは何なのかを学ぶために、共学となった音ノ木坂学院に入学することを決意したのである。

 

「えぇ。学校はやはり楽しいです。ですが……」

 

「ですが?」

 

「最近入学希望者が減っているらしく、音ノ木坂学院は廃校になるみたいなんです」

 

「は、廃校……ですか?」

 

奏夜から告げられた廃校という言葉に、ロデルは驚きを隠せなかった。

 

「今いる1年生が卒業するまでは残るみたいですけど、やはり俺は廃校して欲しくはないんですよね……」

 

奏夜は1年間音ノ木坂学院に通っていたため、その分この学校には愛着を持つようになっていた。

 

「そうですよね。どうにか廃校の話がなくなればいいですが……」

 

ロデルは紅の番犬所のイレスとは違って高校生活に憧れてる訳ではないが、奏夜から聞かされる話は面白いと感じており、廃校の話がなくなればいいと祈っていた。

 

「それはそうと、奏夜。指令です」

 

ロデルがこのように告げると、ロデルの付き人の秘書官が、赤い封筒……指令書を奏夜に手渡していた。

 

奏夜は指令書を受け取ると、魔法衣の裏地から魔導ライターを取り出し、魔導火を放つと、指令書を燃やした。

 

すると、燃え尽きた指令書から、魔戒語で書かれた文章が飛び出してきた。

 

「……若さ溢れる者を見境なく喰らう兎の魔獣が出現せり。これを討滅せよ」

 

奏夜が指令書の内容を読み上げると、魔戒語で書かれた文章は消滅した。

 

『……ホラー、ラビットールか……。若い人間を好んで喰らう胸くその悪いホラーだぜ』

 

「すでに2人の若者が行方不明になっていると聞いています。統夜、これ以上被害が出る前にホラーを見つけ出し、討滅するのです」

 

「わかりました。直ちにホラーを捜索し、討滅します」

 

奏夜はロデルに一礼をすると、そのまま番犬所を後にして、ホラーを捜索するべく行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜穂乃果 side〜

 

 

 

 

……私、高坂穂乃果!音ノ木坂学院に通う高校2年。

 

私の通う音ノ木坂学院が大ピンチなの!

 

今日の朝礼でことりちゃんのお母さんでもある理事長がこの学校が廃校になるって言ってたの。

 

私は今でも信じられないし、学校が無くなるなんてヤダよ!!

 

だから、幼馴染の海未ちゃんやことりちゃんと一緒に廃校を阻止するにはどうすればいいか話し合ってたの。

 

そーくんは何か用事があるって海未ちゃんから聞いてたけど、学校の一大事なんだから、協力してくれればいいのに……。

 

そーくんこと如月奏夜君は、穂乃果がまだこの学校に入る前の中学3年生の夏頃に知り合ったんだ。

 

穂乃果の家は和菓子屋さんなんだけど、その近くにそーくんが引っ越してきて、同じ中学に通ってるってことがわかって仲良くなったんだよね。

 

そーくんって、秋葉原周辺を転々としてたってのは聞いてたけど、詳しいことは何も教えてくれないんだよね。

 

それに、今でも仲良くしてるけど、そーくんは何か私たちに隠し事をしてるような気がするんだよね……。

 

それが何か?って言われたらわからないけど、それがいつかわかればいいな……。

 

……って!そうじゃなくて!今は音ノ木坂が廃校になるって話をしてたんだよ!

 

海未ちゃんとことりちゃんの3人で話し合っても何もいい案は出なかったから、明日以降に持ち越しになっちゃったんだよね……。

 

それで、私の妹である雪穂(ゆきほ)は音ノ木坂じゃなくてUTXっていう高校に行くって言い出すし……。

 

雪穂がどんどん入学希望者が減ってる高校に入る意味はないなんて言ってたけど、お母さんもお婆ちゃんも音ノ木坂なんだから、そんな風に言わないでもいいじゃん!

 

この日の夜、私はお風呂から出て、居間に移動したんだけど、お母さんが卒業アルバムを懐かしそうに見てたんだよね……。

 

やっぱりお母さんも音ノ木坂が無くなって欲しくないって思ってるのかな?

 

……そうだ!雪穂がUTXが人気だって言ってたし、明日の朝、UTXに行ってみよう!

 

そうすれば、廃校阻止のヒントが得られるかも。

 

よし、そーくんに相談してみよう!

 

そう思い立った私はそーくんに電話をかけるんだけど……。

 

「……あれ?出ない?」

 

そーくん、家で家事でもしてるのかな?

 

ちょっとそーくんの家に行ってみよう!

 

私は自分の部屋に戻って急いで着替えを済ませると、そのまま階段を降りていった。

 

「ちょっとそーくんの家に行ってくる!」

 

「奏夜君のって、もう夜よ?穂乃果!」

 

お母さんは引き止めてたけど、私はそれを聞かずに駆け出していった。

 

そして、歩いてすぐのところにあるそーくんの家に着いて、家のチャイムを鳴らすんだけど……。

 

「……あれ?もしかして、まだ帰ってないのかな?」

 

もう夜なのに、そーくんの用事はまだ終わってないなのかなぁ……。

 

こうなったら、家の近所を探してみて、いなったら仕方ないから諦めて帰ることにしようかな。

 

私はそーくんを探すために家の周りを探してみることにしたんだけど、やっぱりそーくんを見つけることは出来なかった。

 

……そーくん……。どこに行ったんだろ?

 

もう夜も遅いし、明日の朝早くにそーくんに相談してみようかな。

 

私は今、近所の公園にいたんだけど、諦めて家に帰るために歩き始めようとしたんだけど……。

 

「……あれぇ?お嬢さん、こんな時間にどうしたの?」

 

「!?」

 

いきなり男の人に話しかけられてしまい、ちょっとびっくりしちゃった……。

 

私は男の人が苦手って訳じゃないけど、この人はなんかチャラそうな感じで少し怖いな……。

 

「こんな時間に女の子が1人なんて危ないよ?ねぇねぇ、家はどこ?送ってこうか?」

 

「いえ、1人で帰れますので……」

 

私は怖かったので、逃げるようにその場を立ち去ろうとしたんだけど……。

 

「……ちょっと待てよ。送ってやるって言ってるのに、その態度はないんじゃないの?」

 

男の人は私の手を掴んで捕まえてきた。

 

……怖い……!誰か、助けて!!

 

私がそんなことを考えていたその時だった。

 

「……その汚い手を離せ。この下衆が……!!」

 

いきなり私の手が誰かに引き離されたんだけど、その正体はそーくんで、そーくんは怖い顔をしてたけど、私を助けてくれた。

 

「そ、そーくん……」

 

「な、何だよ!お前は!」

 

「俺はこいつの友達だよ。だからこそ、お前みたいなナンパ野郎の好きにはさせないって訳」

 

「このガキが……!」

 

男の人が、怖い顔をしてそーくんを睨んでたけど、そーくんは何故か平気そうだった。

 

「それよりも……」

 

そーくんはこう前置きをすると、いつも来ているあのコートから奇妙な形をしたものを取り出していた。

 

これは……。ライターなのかな?

 

そーくんは火を着けてたからライターなのは間違いないんだけど、何故かそのライターで男の人の瞳を照らしていた。

 

?何をしようとしているんだろう……。

 

私がそんなことを考えていると、男の人の瞳から、不気味な文字のようなものが浮かび上がってきた。

 

こ、これは……いったい……?

 

私は、この展開について行けなくて、困惑していた。

 

すると、男の人は、さっきよりも怖い顔をしていた。

 

「貴様……魔戒騎士か」

 

「魔戒騎士?」

 

聞いたことない言葉だけど、魔戒騎士って何なの?

 

私は聞いたことない言葉に困惑してたんだけど……。

 

「……穂乃果。何してる」

 

「え?」

 

「逃げろ」

 

そーくんのその声は、いつものような優しい声ではなくて、低くてドスの効いた怖い声だった。

 

「え?でも、そーくんが……」

 

「早くしろ!!死にたいのか!!」

 

初めて聞いたそーくんの怒鳴り声に、私はビックリしたんだけど、ここはそーくんの言うことを聞くことしか出来ず、その場を離れようとした。

 

だけど、そーくんが心配だったから、少し離れたところで様子を伺っていた。

 

これから……何が起ころうとしているの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜三人称 side〜

 

 

 

 

 

番犬所から指令を受けた奏夜は、ホラーの捜索を行っていた。

 

そうしているうちに夜になったのだが、家の近くの公園から邪気を感じるとキルバが探知したため、奏夜は家の近くの公園へと急行した。

 

公園に到着した奏夜が見たものは、チャラそうな男に絡まれている穂乃果の姿だった。

 

奏夜はすぐさま穂乃果を助け、魔導火を男の瞳に当てた。

 

すると、不気味な文字のようなものが浮かび上がってきたのだが、これこそが、この男がホラーである証であった。

 

奏夜は穂乃果に逃げるよう告げるのだが、穂乃果は完全に逃げることはせず、少し離れたところで様子を伺っていた。

 

「……穂乃果のやつ……。逃げろって言ったのに……」

 

穂乃果が完全に逃げていないことを確認した奏夜は、舌打ちをしていた。

 

奏夜が穂乃果に気を取られていると、男がパンチを繰り出してきたのだが、それを見切っていたのか、無駄のない動きでかわしていた。

 

そして、反撃と言わんばかりの蹴りで、男を吹き飛ばしていた。

 

「このガキ……!!」

 

自分の先制攻撃を軽くいなされてしまい、男がは怒りを露わにして、奏夜を睨みつけていた。

 

「ふふん……♪来いよ!」

 

奏夜は何故かドヤ顔で男を挑発していた。

 

その挑発で逆上した男は、奏夜に突撃して連続で攻撃をするのだが、奏夜は無駄のない動きで攻撃をかわしていた。

 

その動きは、まるでダンスを踊っているようであった。

 

「綺麗……」

 

奏夜はダンスが得意であり、穂乃果はそのことをよく知っていた。

 

そして、穂乃果は奏夜のダンスのような動きに見惚れていたのであった。

 

何度目かの蹴りをかわした奏夜は、反撃と言わんばかりの蹴りを放ち、再び男を蹴り飛ばした。

 

「どうした。もう終わりか?」

 

奏夜は、さらにドヤ顔をして男を挑発していた。

 

「おのれ……!魔戒騎士め……!!」

 

奏夜に幾度となく攻撃を凌がれた男は、確実に奏夜を仕留めるために両腕を自らの武器である爪に変化させた。

 

そして、その爪で奏夜を斬り裂こうとしていた。

 

「っ!?危ない!」

 

そんな展開に、穂乃果は思わず声をあげるのだが、奏夜は慌てる様子はなく、冷静だった。

 

何故なら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……ガキン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……魔法衣から取り出した、鞘に納まったまんまの魔戒剣を取り出し、男の爪による攻撃を防いだからである。

 

「なっ!?」

 

「残念だったな……。俺は魔戒騎士だぜ?これくらい察しろよな」

 

「こいつ……!!」

 

男は再び爪による攻撃を仕掛けるのだが、奏夜は無駄のない動きでそれをかわした。

 

そして、鞘に納まったまんまの魔戒剣を振り下ろして抜刀すると、空中に浮いた鞘を蹴り飛ばして男の顔面に直撃させた。

 

「ぐっ……!?」

 

魔戒剣の鞘はそのまま奏夜の手に戻り、奏夜は鞘を魔法衣の裏地にしまうと、魔戒剣を一閃して、男を斬り裂き、さらに男を蹴り飛ばした。

 

そして、男が起き上がるのを見ながら、奏夜は魔戒剣を構えていた。

 

「……!?け、剣!?それに、あの構え……」

 

奏夜の手にしている魔戒剣に穂乃果は驚きを隠せなかった。

 

友人である奏夜が、そんな危ないものを隠し持ってるとは思わなかったからである。

 

さらに、穂乃果は、奏夜の構えに見覚えがあった。

 

それは、海未と剣道の稽古をしている時にも、奏夜は同じ構えをしていたからである。

 

「このガキが……!ぶっ殺してやる!」

 

男の瞳が不気味なほど真っ白になると、男の体が徐々に変化していき、この世のものとは思えない怪物へと変貌していた。

 

「……!?か、怪物……!?」

 

穂乃果は初めて見るホラーに驚き、さらに怯えていた。

 

男の変化したホラーは、不気味な兎のようなホラーであり、奏夜よりも、ひと回りほど大きなホラーであった。

 

『奏夜!こいつがホラー、ラビットールだ。油断するなよ!』

 

「あぁ。わかってるって」

 

奏夜はラビットールの姿をしっかりと捉え、いつ攻撃が来ても対応できるように備えていた。

 

ホラーの姿になったラビットールは、先制攻撃を仕掛けるべく奏夜に攻撃を仕掛けるのだが、奏夜は上空へジャンプして、その攻撃をかわしていた。

 

そして、反撃と言わんばかりに魔戒剣を一閃するのだが、ラビットールの皮膚は硬く、魔戒剣でダメージを与えることは出来なかった。

 

「くそっ!厄介な硬さだな……!」

 

ラビットールの皮膚が予想以上に硬く、奏夜は舌打ちをしていた。

 

そして、今までの借りを返すため、ラビットールは渾身の力を込めて奏夜を殴り飛ばすのだが、奏夜は近くに植えられていた木に叩きつけられていた。

 

「そーくん!!」

 

奏夜が追い詰められていると感じていた穂乃果は、思わず声をあげていたのだが、ゆっくりと立ち上がる奏夜は何故か不敵な笑みを浮かべていた。

 

「……やってくれるじゃねぇか……!」

 

先ほどの攻撃は多少は効いているようだが、奏夜はピンピンしており、すぐさま体勢を立て直していた。

 

ラビットールは奏夜に追撃をかけるべく攻撃を仕掛けるのだが、奏夜はラビットールの攻撃をジャンプして再びかわしていた。

 

奏夜は再び魔戒剣を一閃するのだが、やはりダメージを与えることは出来なかった。

 

ラビットールは奏夜を弱らせるためにすかさず攻撃を仕掛けるのだが、奏夜はそんなラビットールの動きを見極めて攻撃をかわした。

 

「な、何だと!?」

 

隙だらけと思われていた奏夜に攻撃をかわされてしまい、ラビットールは驚きを隠せずにいた。

 

地面に着地した奏夜は、ラビットールの脛の部分に魔戒剣を叩き込み、ラビットールが痛みによって苦しんでいる隙に、後方にジャンプして、距離を取っていた。

 

どうやら、一気に決着をつけようとしているらしく、奏夜は魔戒剣をラビットールの方へと突き付けていた。

 

「……貴様の陰我。俺が断ち切る!」

 

「?陰我?」

 

奏夜はラビットールに向かってこう宣言したのだが、穂乃果は奏夜の言っていた陰我という言葉の意味がわからず、首を傾げていた。

 

すると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏夜は魔戒剣を上空に向けて高く突き上げ、円を描いた。

 

円を描いた部分のみ空間が変化すると、その空間から放たれる光に奏夜は包まれていた。

 

すると、円の部分から鎧のようなものが姿を現していった。

 

その鎧は黄金の輝きを放っており、ガチャン!ガチャン!という金属音と共に、奏夜の足、身体、腕と順番に纏われ、最後に狼の顔をモチーフにしたかのような鎧が、奏夜の顔に纏われた。

 

狼のような顔の頭部の部分には3本の角。身体はまるで漆黒の闇を照らすような黄金の輝きを放っていた。

 

腰の部分には、自分の魔法衣にも刻まれている丸のエンブレムが存在している。

 

さらに、奏夜の左手にはめられたキルバは、まるで鎧と一体化したかのように左手にくっついていた。

 

奏夜の手にしていた鍔のなかった魔戒剣も徐々にその姿を変えていき、丸の紋章が付いた鍔が出現して、刀身も変化していた。

 

こうして、奏夜はこの世のものとは思えない異形の鎧を身に纏っていた。

 

奏夜が身につけているこの鎧は陽光騎士輝狼(ようこうきしキロ)。

 

魔戒騎士の最高位である黄金騎士牙狼(おうごんきしガロ)と同じ黄金の輝きを放っているのだが、牙狼の系譜とはまったく関係のない黄金の騎士である。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜穂乃果 side〜

 

 

 

 

 

……な、何?何が起こってるの!?

 

そーくんが剣なんて持ってるのもびっくりだけど、あんな見たことのない怪物相手に戦ってるんだもん……。

 

そーくんが強いってことは海未ちゃんとの稽古を見てて思ってたけど、まさかここまでだなんて……。

 

危ない部分はあったけど、今はまたあの怪物に負けてないし……。

 

私はそーくんの戦いをジッと見守ってたんだけど……。

 

「……貴様の陰我。俺が断ち切る!」

 

「?陰我?」

 

聞いたことない言葉だけど、それって一体何なんだろう……。

 

そんなことを考えていると、そーくんは剣を高く突き上げて、それをクルクルって回していた。

 

そこから何故か光が出てきていて、そーくんはその光に包まれていた。

 

ガチャン!って凄い音が聞こえたと思ったら、そーくんの姿はいつの間にか消えていて、代わりにいたのは金色の狼だった。

 

「……き、金色の……狼……?」

 

見た目は凄く怖い鎧だけど、その鎧はビックリするくらいピカピカで、私は気が付けばその鎧の輝きに見惚れていた。

 

「……お、黄金の鎧……!貴様!まさか、黄金騎士牙狼か!?」

 

黄金騎士?ガロ?いったい何のことなの?

 

さっきの魔戒騎士とか何とかもわからないし……。

 

「……その間違いは本当に多いんだよな……。俺は牙狼じゃない!」

 

あの鎧からそーくんの声が聞こえてきたので、やっぱりあの鎧の狼さんはそーくんだった。

 

そーくん……!頑張って……!

 

私は、そーくんの無事を祈って応援するしかなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜三人称 side〜

 

 

 

 

 

 

「……お、黄金の鎧……!貴様!まさか、黄金騎士牙狼か!?」

 

「……その間違いは本当に多いんだよな……。俺は牙狼じゃない!」

 

奏夜が輝狼の鎧を召還すると、ラビットールは黄金騎士牙狼の名前を出して驚いていた。

 

黄金の鎧ということもあるからか、奏夜は度々ホラーに牙狼と間違えられ、げんなりとすることが多く、今回も同様だった。

 

奏夜の身に纏っている輝狼の鎧は、魔界より召還されたものである。

 

輝狼の鎧を召還したのと同時に、魔界では砂時計のようなものが動き始めた。

 

輝狼を含め、魔戒騎士の身に纏う鎧には、99.9秒というタイムリミットがある。

 

その制限時間を過ぎてしまうと、鎧の装着者の身に危険が及ぶと言われている。

 

そのため、奏夜は99.9秒という短期間で決着をつけなければいけなかった。

 

そんな輝狼の鎧を目の当たりにしたラビットールは、その黄金の輝きに少しだけたじろぐのだが、どうにか恐れを振り切って奏夜に攻撃を仕掛けていた。

 

奏夜は攻撃をかわすことなく、鎧の丈夫さだけで攻撃を受け止めると、魔戒剣が姿を変えた陽光剣を一閃するのだが、その一撃でラビットールの左腕が切断され、ラビットールは痛みのあまり断末魔をあげていた。

 

ラビットールはどうにか痛みを堪えて後方に下がると、口から種のようなものをまるで銃弾のように吐き出していた。

 

奏夜はゆっくりとラビットールに近付いていくのだが、種のようなものをかわすことはせず鎧で受け止めていた。

 

種のようなものは輝狼の身体を貫くことはなく、全て鎧に弾かれてしまった。

 

「くそっ!こいつ!!」

 

ラビットールは輝狼の鎧に傷を付けることは出来ず、焦りの色を見せていた。

 

そうこうしているうちに、奏夜とラビットールの距離はかなり近くなっていた。

 

「……これで決めてやる!」

 

奏夜は陽光剣を構えると、ラビットール目掛けて突撃した。

 

ラビットールはそんな奏夜の攻撃を阻止するべく右腕で攻撃を仕掛けるのだが、奏夜は陽光剣を一閃することで右腕も切断し、攻撃を防いでいた。

 

再びラビットールが痛みで断末魔をあげている隙に、奏夜は陽光剣を大きく振り降ろすと、ラビットールの巨体を真っ二つに斬り裂いた。

 

陽光剣の一撃によって身体を真っ二つに斬り裂かれたラビットールは断末魔をあげており、その身体は陰我と共に消滅した。

 

「……よし……」

 

ラビットールを討滅したことを確認した奏夜は、鎧を解除した。

 

そのことによって輝狼の鎧は魔界へと戻っていき、陽光剣も元の魔戒剣へと戻っていた。

 

奏夜は元に戻った魔戒剣を緑の鞘に納めると、魔法衣の裏地の中にしまった。

 

そのプロセスが終わると、奏夜は穂乃果の方へと歩み寄ろうとするのだが、その前に穂乃果が奏夜の前に駆け寄ってきた。

 

「そーくん!大丈夫だったの?」

 

「あぁ。俺は大丈夫だ。穂乃果の方こそ大丈夫なのか?」

 

「うん!穂乃果は大丈夫だよ!」

 

「ったく……。俺は逃げろって言ってるのに……」

 

奏夜は穂乃果に逃げろと言ったのだが、穂乃果は少し離れたところで奏夜の様子を伺っていたため、そんな穂乃果に奏夜は呆れていた。

 

「だって……。そーくんのことが凄く心配だったんだもん……」

 

(……キルバ。穂乃果にホラーの返り血はついてないよな?)

 

《あぁ、問題ない。お前もずいぶんと気を遣って戦っていたしな》

 

奏夜はキルバにテレパシーで話しかけると、穂乃果にホラーの返り血がついていないかの確認を行っていた。

 

ホラーの返り血を浴びたものは、ホラーにとって格好の餌となってしまい、ホラーに喰われなかったとしても、100日後には悲惨な死を遂げてしまう。

 

そのため、魔戒騎士はホラーの返り血を浴びた者は容姿なく斬り捨てなければならないという掟があった。

 

穂乃果が大丈夫だとわかり、奏夜は安堵のため息をついていた。

 

「……ま、とにかく穂乃果が無事で本当に良かったよ」

 

奏夜は穏やかな表情で笑みを浮かべると、穂乃果の頭を優しく撫でていた。

 

そんな奏夜の顔は、ホラーと対峙していた険しい表情とはうって変わって、いつもと変わらない優しい表情をしていた。

 

ここで穂乃果は目の前にいるのはやっぱり自分のよく知っている奏夜なんだなと改めて認識していた。

 

奏夜の笑顔を見て安心したのか、穂乃果の目から少しずつ涙が溢れていた。

 

「さてと……。穂乃果。そろそろ帰ろ……」

 

帰ろうぜと言い切ろうとしたのだが、その前に穂乃果は奏夜に抱き付いていた。

 

「……穂乃果?」

 

「そーくん!……グスッ……怖かった……。怖かったよぉ……!」

 

穂乃果は奏夜に顔を埋めた状態で泣き出しており、抱きつく力も自然と強くなっていた。

 

「……あぁ。怖かったな。だけど、もう大丈夫だからな」

 

奏夜はまるで泣いている子供をあやすかのように穂乃果の頭を優しく撫でていた。

 

抱きつかれて恥ずかしいという気持ちは当然あったのだが、それよりも泣いている穂乃果を落ち着かせたいという気持ちの方が優っていた。

 

(……よほど怖かったんだろうな……。まぁ、それも無理はないよな。しばらくはこのままにしておくとしよう)

 

《そうだな。俺もそう思うぞ》

 

奏夜は穂乃果が落ち着くまでこの状態を維持しようと考えており、それにキルバは賛同していた。

 

こうして、奏夜は穂乃果が泣き止むまで、ずっと穂乃果の頭を優しく撫でていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんね。もう大丈夫だから」

 

しばらくの間泣いていた穂乃果はようやく落ち着いたのか、ゆっくりと奏夜の体から離れていった。

 

穂乃果は奏夜に顔を埋めて泣いていたため、奏夜の着ていたワイシャツが穂乃果の涙で濡れてしまっていた。

 

「ごめんね、そーくん。ワイシャツを濡らしちゃって」

 

「気にするなよ。これくらいすぐ乾くしな」

 

穂乃果はワイシャツを濡らして申し訳ないと思っていたが、奏夜はまったく気にしていなかった。

 

「ところで、穂乃果は何でこんな時間にこんな所にいたんだ?」

 

奏夜は、穂乃果が何故夜の公園に1人でいたのかを聞いていた。

 

「そーくんを探してたんだよね。そーくんに相談したいことがあって……」

 

「もしかして、廃校阻止についてのことか?」

 

穂乃果の用事を察した奏夜はこう確認を取ると、穂乃果は無言で頷いていた。

 

「ったく……。そういうのは電話とかLAINで良かったのに……」

 

奏夜はわざわざ自分を探そうとしていた穂乃果に呆れていた。

 

奏夜が高校に入ったこの2年でスマートフォンが大幅に普及しており、LAINというのは、無料のメッセージアプリのことである。

 

奏夜も携帯はスマートフォンのため、穂乃果とLAINでやり取りすることは多かった。

 

「だって……。そーくん電話に出なかったんだもん……。だから直接伝えようと思って……」

 

「そうなのか?」

 

奏夜はポケットから携帯を取り出したのだが、確かに穂乃果から電話が来ており、着信履歴が残っていた。

 

「それで、いったい何をしようとしてるんだ?」

 

「あのね。雪穂が音ノ木坂じゃなくてUTXに行くって言い出したの」

 

「雪穂が?……まぁ、音ノ木坂は入学希望者を打ち切るって言ってたし、仕方ないんじゃないのか?」

 

「むぅ……!そーくんも雪穂みたいなこと言ってる!」

 

奏夜の正論が気に入らなかったのか、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「……あのなぁ……。俺だって雪穂には音ノ木坂に入ってほしいが、これはさすがにな……」

 

「それでね、UTXって今人気らしいんだけど、何で人気なのかって明日の朝見に行こうと思っているの」

 

「なるほどな……。そこで、廃校阻止のヒントが何かないか調べる訳だな」

 

「さっすがそーくん!」

 

自分の言いたかったことを理解してくれて、先ほどまでの膨れっ面から変わって表情が明るくなっていた。

 

「それでね……。そーくんにも一緒について来て欲しいの……」

 

「……ダメだって言いたいところだけど、UTXで待ち合わせでもいいって言うならついてってやるよ」

 

奏夜は明日もエレメントの浄化を朝から行わなければならないため、穂乃果と家で待ち合わせをしてそのままUTXへ行くのは厳しかった。

 

現地集合であればエレメントの浄化を行ってからでも行けるため、大丈夫と判断していた。

 

「うん。それでもいいんだけど、何で現地集合じゃなきゃダメなの?」

 

「……あの怪物……ホラーが言ってた通り、俺は魔戒騎士って存在なんだ。だからその仕事があるんだよ」

 

「ねぇ、それってずっと前からそんなことをしてたの?」

 

「あぁ。ちょうど今の家に越してきた辺りからな」

 

「……」

 

奏夜が自分たちと出会った時からこのようなことをしているということを知り、驚きを隠せずにいた。

 

「ねぇ、そーくん。魔戒騎士って何?あ と、ホラーとかいう怪物も」

 

「……穂乃果。そこから先は聞かない方がいいぞ。お前は普通の高校生として生きていきたいだろ?魔戒騎士に首を突っ込むと、廃校阻止どころじゃなくなるからな」

 

「……」

 

奏夜は穂乃果にこのような警告をしていたのだが、それは穂乃果には普通の高校生として生きて欲しいという奏夜の願いがあったからである。

 

「……とりあえず帰るぞ。送るから」

 

「う、うん……」

 

こうして、ラビットールを討滅した奏夜は、穂乃果を家に送るために穂乃果の家である和菓子屋「穂むら」へと向かい、穂乃果を送った後は、そのまま家へと帰っていった。

 

穂乃果は奏夜が魔戒騎士であるということを知ってしまったのだが、このことこそ、これから起こる激闘の始まりであることを、奏夜は知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『人間というのはつくづくわからん生き物だな。あんなものに夢中になるなんてな。次回、「提案」。ま、そんなものが上手くいくとは思えないがな』

 

 

 




今回、奏夜の鎧である輝狼の鎧が登場しました。

本編でも触れてましたが、輝狼の鎧も牙狼同様に黄金の鎧ですが、牙狼の系譜とはまったく関係ありません。

あと、今回登場したラビットールは、「絶狼 DRAGON BLOOD」に登場したラビリアというホラーの色違いになっています。

ラビリアは黒ですが、ラビットールは白になっています。

今回穂乃果が奏夜の秘密を知ってしまったのですが、これからいったいどうなっていくのか?

あと、何気に絵里と希も初登場しています。

絵里はまだツン期の頃なので、奏夜とぶつかりそうになる一面がありました。

これからもこんなことがあるのかも……?

さて、次回はラブライブ!原作メインの話になる予定です。

それでは、次回をお楽しみに!

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