牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第26話になります!

最近僕はスクフェスを再開したのですが、今度のイベント報酬が穂乃果と凛。

FFもやりつつって感じになるから余計に小説を執筆する時間が……。

でも、頑張って行きたいと思います。

さて、今回はオリジナルの回となっております。

それでは、第26話をどうぞ!




第26話 「勉強」

……ここは秋葉原某所にある少しばかり古びたアパート。

 

その一室で、二十代前半の青年が勉強をしていた。

 

この青年は、とある大学に目標を絞って勉強をしていたのだが、受験の度に落ちてしまい、浪人を続けていた。

 

 

「今度こそ……。今度こそあの大学に合格してみせる……!」

 

青年は他の大学を受けようとは思っておらず、ある大学にだけ狙いを定めていた。

 

そのため、周囲からは白い目で見られ、親にも見放され、このような古びたアパートで一人暮らしをしているのである。

 

「あの大学に合格して……。あいつらのことを見返してやる……」

 

それだけではなく、青年は自分を見放した人間に憎悪のような感情を抱いており、そんな人間たちを見返したいという思いが、彼を突き動かしていた。

 

そのため、他の大学に行くことは考えず、第一志望に狙いを定めているのである。

 

青年がそんな感情を抱きながら勉強をしていたその時だった。

 

__貴様……。それほどまでに大学とやらに合格したいのか……。

 

「!?だ、誰だ!!」

 

突然謎の声が聞こえてきたため、青年は立ち上がり、謎の声に怯えていた。

 

__そんなに怯えることはない……。我は貴様の知識を得たいという思いに共感しただけだ。

 

「そ、そうなのか?」

 

__我が貴様に力を貸してやろうか?我の力があれば、貴様は無限の知識を得ることが出来るぞ。

 

「ほ、本当か!?その知識さえあれば、大学合格なんて……」

 

青年は、謎の声の正体はわからなかったものの、大学に合格して、周囲を見返せるならとその提案を受けようと考えていた。

 

__だが、代償がない訳ではない。貴様には、全てを捨ててでも知識を得る覚悟はあるのか?

 

「あぁ……!どうせ俺にはもう何もないんだ。無限の知識を得られるんだろ?何だってやってやるさ!」

 

青年は、大学に受かれる程の知識があれば、どんなことでもやるつもりだった。

 

__よく言った!ならば、我を受け入れよ!

 

青年の勉強していたテキストから素体ホラーが出現すると、ホラーは青年の顔をガシッと掴んでいた。

 

「!?な、何すんだよ……!」

 

自分の勉強していたテキストからいきなり怪物が現れたため、青年は恐怖で怯えていた。

 

そして、ホラーの身体が黒い粒子のようになると、その粒子は、青年の中に入っていった。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」

 

こうして、青年は、大学に合格して、周囲を見返したいという思いが陰我となり、ホラーに憑依されてしまった。

 

「……ふふふ……。まず手始めに……」

 

ホラーに憑依された青年は、瞳から怪しい輝きを放つと、このように呟いて、どこかへと姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

 

青年が姿を消したのと同時刻、秋葉原某所にある学習塾で講師をしている男がこの日の仕事を終えて帰り仕度を始めていた。

 

この男は、某大学に通う大学生なのだが、生活費を稼ぐためにこの塾で講師のバイトをしているのである。

 

大学ではトップクラスの成績を持っており、授業もとてもわかりやすいと生徒からも好評であった。

 

「さて……。さっさと帰って勉強するか……」

 

男は、家に帰っても勉強しようと考えており、大学でのトップクラスの成績も、そんな彼の努力の賜物であることは理解することは出来た。

 

男が塾を後にしようとしたその時だった。

 

「……よう。久しぶりだな……」

 

男の前に姿を現したのは、先ほどホラーに憑依されてしまった青年だった。

 

「お前……。竹村か……。何でこんなところに?」

 

ホラーに憑依された男は、竹村と呼ばれており、どうやら男と竹村は知り合いのようだった。

 

「お前はいいよなぁ……。俺の狙ってた大学に1発で合格して、今や塾の講師か……。それに比べて、俺は……」

 

「お前……。まだ第一志望狙いだったのか……。お前の学力じゃウチの大学は無理なんだから、他の大学に行けばいいのに……」

 

男は、竹村の成績を知っているため、自分が通っている大学へ行くのは無謀だと思っていた。

 

「……そんなことはないさ……。俺は今度こそ大学に合格してみせる……。お前の知識をもらってな……」

 

「はぁ?お前、何を言って……」

 

男は、竹村の言葉に不審がっていると、竹村は男の肩をガシッと掴んでいた。

 

「な、何するんだ!」

 

「決まってるだろ?お前を喰らってお前の知識を頂くんだよ」

 

「な、何を言って……」

 

竹村の表情は狂気に満ちており、そんな竹村に、男は怯えていた。

 

「……ふふふ……。いただきます……」

 

竹村がこう言った瞬間、竹村の瞳が怪しく輝いていた。

 

そしてその直後に、男の体が少しずつ糸のようになっていき、それが竹村の口に入っていった。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そして、男は断末魔をあげながら体の全てが糸のようになっていき、一切の抵抗も出来ず、竹村に捕食されてしまった。

 

「……ふふふ……。感じる……感じるぞ!知識が入っていくのをな!」

 

竹村は、自分より成績の良い男を捕食したことにより、先ほどまではなかった知識を得られる感覚を得ていた。

 

「だが、まだ足りない。もっと知識が必要だ……」

 

竹村はこのように呟くと、その場から姿を消したのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

スクールアイドルの祭典であるラブライブにエントリーするため、奏夜たちは5日後に迫った期末試験に向けて勉強を頑張ろうとしていた。

 

そんな中、海未は、穂乃果の苦手教科を克服するために、穂乃果の家に泊まり込みで勉強することになった。

 

奏夜も穂乃果の家に泊まることになってしまい、1度家に帰って泊まりの準備を行っていた。

 

とはいっても、家は近いため、最低限の荷物で十分なのだが……。

 

リュックの中に最低限の着替えと洗面道具等を詰め込むと、そのまま穂乃果の家へと向かった。

 

「……こんばんは〜」

 

「あら、奏夜君、いらっしゃい」

 

奏夜は穂乃果の家である「穂むら」の店内に入ると、穂乃果の母親が店番をしていた。

 

「すいません。テストが終わるまでの間、お世話になります」

 

「あらあら、遠慮なんてしなくてもいいのよ?テストが終わった後も、奏夜君だけでもウチに住めばいいのに……」

 

「そのご好意はありがたいですが、そこまでご迷惑をかけるわけには……」

 

「まったくもう、真面目ねぇ……。まぁ、私たちはいつでも奏夜君のことを歓迎しているからね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

奏夜は穂乃果の母親に礼を言うと、店の奥に移動し、そのまま自宅へと上がり、階段を上がって穂乃果の部屋へと向かった。

 

「おーい、穂乃果。来たぞ」

 

奏夜はそう言いながら、穂乃果の部屋に入るのだが……。

 

「……穂乃果。またこの問題が間違ってますよ?」

 

「あぅぅ……。わからないよぉ……」

 

海未が既に穂乃果の勉強を見ており、穂乃果は難しい問題に、頭を抱えていた。

 

「やれやれ……。相変わらず苦戦してるようだな」

 

「あっ、そーくん……」

 

「奏夜。お疲れ様です」

 

「海未。ずいぶんと早いな」

 

「私はまだお泊まりの準備をせずに来ましたからね。奏夜が来てから荷物を取りに行こうと思っていたのです」

 

「なるほどな。そういうことか……」

 

どうやら海未は穂乃果と共に家に来たようであり、お泊まり道具は奏夜が来てから準備するつもりだった。

 

そんな海未の狙いを知った奏夜は、苦笑いをしていた。

 

「そういうことですので、私は1度家に戻ります。奏夜、穂乃果のことを頼みます」

 

「あぁ、わかった」

 

海未は穂乃果の勉強を奏夜に見てもらうことにして、自分は1度家に帰り、お泊まりの準備を行うことにした。

 

「さて……。穂乃果、さっそくだけど、勉強を再開するぞ」

 

「えぇ!?ちょっとくらいは休憩させてよぉ!!」

 

休憩もなく勉強を再開させようとする奏夜を、穂乃果はぷぅっと頬を膨らませながら睨んでいた。

 

「ダメだ。あまりサボってると、俺まで海未にどやされるんだからな」

 

「あぅぅ……。そーくんの鬼……」

 

こうして奏夜は、海未が戻ってくるまでの間、穂乃果の勉強を見ることになった。

 

穂乃果は最初はブツブツと文句を言っていたが、20分ほど勉強を続けると、やる気が出てきたのか問題に集中していた。

 

そして、1時間も経たないうちに海未が戻ってきて、ことりも到着した。

 

こうしてメンバーが全員揃ったところで、勉強を見る役は海未に交代し、奏夜はそんな穂乃果と海未の様子を見ながら、自分の勉強をしていた。

 

ことりも奏夜同様に自分の勉強をしており、全員が勉強に集中しているからか、雑談らしい雑談はなく2時間が経過していた。

 

「あぅぅ……。やっと終わったぁ……」

 

ここでようやくこの日のノルマを達成したようであり、穂乃果は疲れ切った表情で机に突っ伏していた。

 

「穂乃果。お疲れ様でした。これだけ集中出来たのですから、これを継続出来れば赤点はないとは思いますよ」

 

「うんうん♪穂乃果ちゃん、頑張ってたしね♪」

 

「確かにな。穂乃果、お疲れさん」

 

海未、ことり、奏夜の3人は、勉強を頑張っていた穂乃果に労いの言葉を送っていた。

 

「エヘヘ……」

 

3人に褒められ、穂乃果はまんざらでもないようだった。

 

勉強を終えて、奏夜たちがしばらくまったりしていると……。

 

「……お姉ちゃんたち、ご飯だよ」

 

どうやら夕食の用意が出来たようであり、穂乃果の妹である雪穂が、奏夜たちを呼びにきた。

 

「おっ、ご飯だ!みんな、早く行こうよ!」

 

「やれやれ……。ご飯と聞いて急に元気になったな……」

 

先ほどまでは疲れ切っていた穂乃果であったが、ご飯と聞いて元気になっており、奏夜は苦笑いをしていた。

 

とりあえず食事が出来たとのことなので、奏夜たちは雪穂と共に階段を降りて居間まで移動した。

 

穂乃果の家は、穂乃果、雪穂に両親の4人家族なのだが、今日は海未、ことり、奏夜がいるため、7人分の料理が並べられていた。

 

「すいません。食事も人数が増えて大変だっていうのに……」

 

「あら、気にしなくてもいいのよ。人数が増えた方が賑やかで楽しいしね♪」

 

穂乃果の母親は、いつもより食事を用意する人数が増えたのだが、そこを気にする素振りはなかった。

 

「ほらほら。みんな早く座った座った」

 

穂乃果の母親にこう勧められたため、奏夜たちは席につき、穂乃果、雪穂、穂乃果の母親も席についていた。

 

そして……。

 

「あっ、お父さん来た!」

 

穂乃果の父親も居間に現れて、席についていた。

 

「おやっさん!今日からしばらくお世話になります!」

 

「……」

 

奏夜の言葉を聞いた穂乃果の父親は、かなり小さな声で「うむ」と言っており、小さく頷いていた。

 

こうして食卓に全員が席に座ったところで、奏夜たちは「いただきます」と食前の挨拶をしてから、食事を始めた。

 

「……うん!やっぱり美味いです!」

 

奏夜は久しぶりに食べる穂乃果の母親の料理に舌鼓をうっていた。

 

「そう?奏夜君は食べっぷりがいいからそう言ってくれると嬉しいわ♪」

 

「そーくん、いっぱい食べてね!」

 

「あぁ。遠慮なくいただくよ」

 

本当に奏夜は遠慮なくご馳走になろうと考えているのか、色々なおかずを頬張っていたのだが……。

 

「やれやれ……。奏夜、少しがっつき過ぎではありませんか?」

 

「まぁまぁ、海未ちゃん。それだけ穂乃果ちゃんのお母さんの料理が美味しいってことだよ」

 

「まぁ♪嬉しいこと言ってくれるじゃない♪海未ちゃんもことりちゃんも遠慮なく食べてね」

 

「「はい!」」

 

「それにしても、こんなに賑やかな食事は久しぶりね。ねぇ、お父さん」

 

穂乃果の母親が穂乃果の父親に同意を求めるが、穂乃果の父親は、無言でウンウンと頷いていた。

 

「それにしても、奏夜さんって一人暮らしなんでしょ?家からも近いんだし、もっとご飯食べに来てくれればいいのに」

 

雪穂は奏夜のことをまるで兄のように慕っており、そのために、奏夜にはもっと遊びに来て、一緒にご飯を食べたいと思っていた。

 

「そうよそうよ。奏夜君は和菓子作りの才能もあるし、もっと来て欲しいくらいだわ。本当に穂乃果か雪穂のお婿さんに来て欲しいくらいだし、ねぇ、お父さん?」

 

「……うむ」

 

どうやら穂乃果の父親も、奏夜のことは歓迎しているようだった。

 

「ちょっ!?お母さん!お父さんも!何言ってるの!?////」

 

両親の唐突な言葉が恥ずかしかったからか、穂乃果の顔は真っ赤になっていた。

 

「私は奏夜さんのこと好きだけど、どっちかというとお兄ちゃんとしてって感じだからなぁ……」

 

雪穂はどうやら奏夜のことが好きなのだが、そこには恋愛感情はなく、身内と同じような感情だった。

 

「奏夜さんってしっかりしてるから、お姉ちゃんとはお似合いだと思うんだけどなぁ」

 

「ゆ、雪穂まで!!」

 

雪穂の言葉でさらに恥ずかしくなったのか、穂乃果の顔はさらに赤くなり、奏夜と目を合わせようとはしなかった。

 

「アハハ……。参ったなぁ……」

 

高坂家の人たちの言葉に、奏夜も恥ずかしいとは思っていたが、まんざらではないようだった。

 

「「……」」

 

そんな中、海未とことりは面白くないと思っているのか、ジト目で奏夜のことを睨みつけていた。

 

「な、何だよ!」

 

「奏夜、ずいぶんと嬉しそうですね?」

 

「そ、そうか?そんなことないと思うけどな」

 

「そっかそっか……。そーくんはやっぱり穂乃果ちゃんが……」

 

「おいおい。なんでそうなるんだよ……」

 

奏夜は色恋に関してはそこまで鈍感ではないため、ことりの言葉を理解しており、少しばかり呆れていた。

 

そうだとしても、奏夜がまんざらでもないことは事実のようであり……。

 

「「……」」

 

海未とことりは無言で奏夜のことを睨みつけてると、同時に奏夜の足を踏みつけていた。

 

「っ!?」

 

今は食事中のため、声はあげなかったのだが、痛みに表情が歪んでいた。

 

「「ふん!」」

 

そして、海未とことりはぷぅっと頬を膨らませながらそっぽを向いていた。

 

「あらあら……」

 

どうやら穂乃果の母親は、海未とことりの気持ちも理解しており、穏やかな表情で微笑んでいた。

 

こうして、高坂家の夕食は進んでいった。

 

それから20分後、食事は終わり、奏夜たちは食器を片付けていた。

 

「悪いわね。洗い物をやってもらっちゃって」

 

「いえ。テストの間お世話になるんですから、これくらいは」

 

「そう?したら、頼むわね」

 

こうして奏夜は洗い物を行い、海未とことりも手伝っていた。

 

そのため、洗い物は早い段階で終わらせることが出来た。

 

洗い物を終えた奏夜たちは、穂乃果と共に穂乃果の部屋へと戻ってきた。

 

「はぁ……美味しかったねぇ……」

 

「まったく……。穂乃果はのんびりしてただけじゃないですか」

 

「まぁまぁ」

 

「とりあえず、勉強のノルマも終わったし、今日はのんびりしようよ!」

 

「そうだな……」

 

奏夜はその提案を受けようとしたのだが……。

 

『奏夜。残念ながら指令のようだ。ロデルの使い魔がこっちに向かっているぞ』

 

どうやら奏夜に安らぎの時間はないようであり、指令が来たみたいだった。

 

「やれやれ……。こんな時くらい休ませてくれよ……」

 

奏夜はこのように文句を言いながら立ち上がると、穂乃果の部屋に置いてある魔法衣を羽織った。

 

「そーくん……。行っちゃうの?」

 

「ホラーが出たとなれば放ってはおけないからな」

 

「……」

 

奏夜がこれからホラーの討伐に向かうことを知った穂乃果は、心配のあまり悲しそうな表情で奏夜のことを見ていた。

 

「……心配すんなって。俺は必ず戻ってくる。信じて待っててくれ」

 

奏夜は穏やかな表情で微笑むと、穂乃果の頭を優しく撫でていた。

 

「……うん」

 

「奏夜、気を付けてくださいね」

 

「絶対に無事に帰ってきてよ」

 

「……あぁ、もちろんだ」

 

奏夜は穂乃果、海未、ことりの3人に見送られる形で穂乃果の部屋を後にすると、階段を降りていった。

 

すると……。

 

「……あら、奏夜君。どこかに行くの?」

 

階段を降りた先に穂乃果の母親がおり、このような言葉で奏夜を引き止めていた。

 

「えぇ。毎日日課でトレーニングをしてましてね。勉強勉強だったから、体を動かして色々発散したいと思いまして」

 

「なるほど、それは大事なことね。だけど、あまり遅くならないようにね」

 

「わかりました。なるべく早く戻ります」

 

穂乃果の母親に出かけることを伝えた奏夜は、穂むらを後にすると、そのままロデルの使い魔から指令書を受け取った。

 

ロデルの使い魔である鳩は奏夜に指令書を渡すと、そのままどこかへと飛び去っていった。

 

奏夜は魔法衣の裏地から魔導ライターを取り出すと、魔導火を放って指令書を燃やした。

 

すると、指令書から魔戒語で書かれた文字が浮かび上がってきた。

 

「……己の知を追求するあまり、知力のある者を喰らうホラーあり。ただちに殲滅せよ」

 

奏夜が指令書の内容を読み上げると、魔戒語で書かれた文章は消滅した。

 

「……おう、奏夜。指令の内容は確認したみたいだな」

 

「……!リンドウ……」

 

奏夜が指令を読み上げたタイミングでリンドウが現れたため、奏夜は驚きを隠せなかった。

 

「今回の指令は奏夜と共に行ってくれとロデル様からの達しでね。俺と共に任務を行うことでお前を鍛えてくれと頼まれた訳なんだよ」

 

今まで奏夜の指導は大輝に任せていたのだが、リンドウがこの番犬所に赴任し、彼がまだこの地の地理には不慣れなため、この地に慣れてもらうのと、奏夜の指導を同時に行おうとロデルは考えていた。

 

「……ま、お前は魔戒騎士としてよくやってはいるが、ロデルはそれだけお前のことを心配してるって訳だよ」

 

「そう……ですよね……」

 

「ま、そこまで気負うことはないぞ。お前の力を借りればホラー狩りも楽になるだろうしな」

 

リンドウはロデルから奏夜の指導を頼まれではいたものの、奏夜の実力を買っていたのである。

 

「まぁ、俺が新米魔戒騎士を指導した時の教訓を伝えるぞ」

 

どうやらリンドウは他の管轄でも新米魔戒騎士の指導を行ったりしており、その時も2人一組でホラー討伐の任務に当たっていた。

 

「……俺が言うべきことは3つだ。死ぬな。死にそうになったら俺に任せて逃げろ。そして隠れろ。最後に運が良ければ隙をついて……ぶっ潰せ!」

 

「……おいおい、それじゃあ……」

 

「あぁ、これじゃ4つか」

 

言いたいことが3つではなく4つになってしまったのだが、リンドウは特に気にする様子はなかった。

 

「ま、あとは生きてさえいれば万事どうにかなる。無茶をしてホラーを倒したとしても、死んじまったらそれまでだからな」

 

リンドウは、この言葉を奏夜だけではなく、多くの新人魔戒騎士に伝えてきた。

 

その結果、彼が指導した魔戒騎士の死亡率は1割にも満たないという偉業を成し遂げたのである。

 

「……俺は新米じゃないけど、リンドウの言葉は肝に銘じておくよ」

 

本来であれば、新米扱いされて奏夜は面白くないと思っていたが、守りたい存在がいるため、リンドウの死ぬなという言葉が深く胸に突き刺さっていた。

 

そのため、リンドウの言葉を素直に受け入れることが出来たのである。

 

「さて……。さっそくだけど行くぞ。ホラーの居場所の目処はついているからな」

 

「ほ、本当なのか?」

 

「あぁ。今日までにホラーに喰われたと思われるのは4人だが、その4人には共通点があったんだよ」

 

「共通点?」

 

リンドウの言葉をオウム返しのように返すと、奏夜は首を傾げていた。

 

「あぁ。全員が◯◯大学の在学生もしくは卒業生で、全員がトップクラスの成績の持ち主らしい」

 

「!!◯◯大学って……!超がつく程の一流大学じゃないか……!!」

 

奏夜が驚いている通り、◯◯大学というのは、東京某所にある大学で、相当偏差値が高くなければ入ることの出来ない超がつく程の一流大学なのである。

 

「それだけじゃない。行方不明になった4人には、共通の知人がいたそうなんだ」

 

「共通の知人?」

 

「……竹村祐介という男で、何度も◯◯大学の受験に挑戦しているが、未だに合格出来ずに浪人を続けているそうだ」

 

「何浪もしてる浪人生か……。確かに動機はありそうだけど……」

 

「その竹村って男も行方不明になっている。そいつが何かしらの陰我を抱えててホラーになっちまったとしたら、色々と辻褄が合うって訳だ」

 

リンドウは、竹村という男がホラーではないかと疑っていた。

 

彼は未だに大学に合格出来ず、大学に合格した知り合いに逆恨みをしている可能性は大いにあるからである。

 

「なるほど……。その竹村って奴の足取りさえ掴めれば……」

 

「だから言ったろ?ホラーの居場所の目処はついているってな」

 

「!?ま、まさか……」

 

「竹村の共通の知人ってのがもう1人いてな。そいつはまだ喰われてはいないみたいなんだ。そいつは神田明神とかいう神社の近くにある木原塾という小さな塾で講師をしているみたいなんだ」

 

「!木原塾って……!音ノ木坂の生徒が何人も通ってる学習塾だぞ!」

 

奏夜が再び驚く通り、木原塾というのは、奏夜たちμ'sが練習に使っている神田明神の近くにある小さな塾であり、音ノ木坂の生徒や、周辺の小中学生も通っている塾である。

 

最近その塾に◯◯大学の学生が講師としてやってきて、その先生の授業はタメになってわかりやすいと評判であると、奏夜は話だけは聞いたことがあった。

 

『……どうやら、リンドウの予想は当たりみたいだな』

 

『えぇ。その辺りでしょうか?ホラーの気配を感じます』

 

魔導輪であるキルバとレンがホラーの気配を探知していたため、リンドウの予想は当たっていると思われた。

 

「そういう訳だ。行くぞ、奏夜」

 

「あぁ、了解だ!」

 

こうして奏夜とリンドウは、ホラーが出現したと思われる木原塾へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

奏夜とリンドウが木原塾に向かっている頃、この塾で講師のバイトをしている市川という男は、講師の仕事を終え、明日行う授業の準備も今しがた終えていた。

 

「さてと……。授業の準備も終わったし、そろそろ帰るかな?」

 

授業の準備も終わったため、市川は戸締りをしっかりしてから、塾を後にして、家に帰ろうとしていた。

 

すると……。

 

「……よう、市川。今帰りなのか?」

 

「……!竹村……。お前、どうしてこんなところへ?」

 

市川は、高校が同じである竹村のことを知っているため、久しぶりの再会に驚いていた。

 

「お前はいいよなぁ……。◯◯大学に1発で合格して今は小さな塾でも塾の講師とはな……。それに引きかえ、俺は……」

 

「お前……。まだウチの大学を狙ってるのか?お前の学力じゃ無理なんだから、いい加減諦めろよ」

 

市川は竹村の学力を知っているため、未だに◯◯大学を狙っている竹村に呆れ果てていた。

 

「……本当にそうかな?今の俺は、今までの俺とは違う。今年こそは合格してみせるさ……!」

 

こう言い放つ竹村は怪しい笑みを浮かべており、そんなただならぬ雰囲気の竹村を、市川は不審がっていた。

 

「……お前を喰らえば、俺は完璧になる。そして、◯◯大学に合格することで、俺を馬鹿にしたお前らや、周囲の連中を見返してやるんだ……」

 

「く、喰らうって何言ってんだよ……」

 

竹村の不穏な言葉に市川は怯えるのだが、そんな市川を見ていた竹村の瞳は怪しい輝きを放っていた。

 

「俺は俺のことを馬鹿にしてきた奴を喰らうことで、知識を得て、復讐も果たせた。お前で最後だ。俺の一部となり、俺が大学へ受かる様を見届けるがいい!それこそが、お前らを見返す瞬間なんだからな!」

 

竹村は、自分を馬鹿にした人間を喰らって知識を得ることでその知識で大学に合格することこそ、自分を馬鹿にした人間を見返すということと復讐であった。

 

そんな思いを告白した竹村は、市川を喰らうために市川へ迫ろうとした。

 

その時だった。

 

「なるほどな……。それがあんたの陰我って訳だ」

 

「!?だ、誰だ!」

 

竹村の背後から声が聞こえてきたため、竹村は後ろを振り向くのだが、そこにいたのは、ホラーの捜索を行っていた奏夜とリンドウであった。

 

「……おい、そこのお前。死にたくなければ逃げな。今のうちだぜ」

 

リンドウは飄々とした態度でこう市川に告げると、市川は一目散に逃げ出していた。

 

「貴様ら……。魔戒騎士か……」

 

「あぁ、その通りだ」

 

「それにしても、大学に合格出来ないからって、他の人間の知識を奪おうだなんて感心しねぇなぁ」

 

リンドウは飄々とした態度で竹村にこう言い放つと、煙草を吸い始めていた。

 

「ほざくな!俺は大学に合格しなきゃいけないんだ!それで、あいつらを見返してやる!」

 

「あんたが何で◯◯大学にこだわるかはわからんが、あんたのしてることはただの逆恨みだ!あんたの暴走は俺たちが止めてみせる!」

 

奏夜は竹村にそう言い放つと、魔戒剣を抜き、それに合わせてリンドウも魔戒剣を抜いていた。

 

そして、奏夜は魔戒剣を構えると、鋭い目つきで竹村を睨みつけていた。

 

一方リンドウは、煙草を吸いながら魔戒剣を構えていた。

 

「魔戒騎士が2人相手か……。こうなったら……」

 

人間の姿ではこの2人に勝てないと察した竹村は、精神を集中させると、その体をホラーの姿へと変化させていた。

 

『……奏夜!こいつはホラー、ブレイクブレイン。ホラーの中ではかなりの知識を持つホラーだ』

 

『その知識量から、どのような攻撃を繰り出してくるか予想が出来ません。奏夜、リンドウ!油断しないでください

!』

 

ブレイクブレインの攻撃パターンは、魔導輪であるキルバとレンにもわからないようであり、レンは奏夜とリンドウに警告をしていた。

 

「わぁってるよ。行くぞ、奏夜」

 

「あぁ!!」

 

魔戒剣を構えている奏夜とリンドウは、ブレイクブレインに向かっていった。

 

「愚かな……。そんな攻撃で俺は倒せないぞ!!」

 

ブレイクブレインは、両手を前方に突きつけると、そこからビームのようなものが放たれた。

 

そのビームのようなものは、奏夜とリンドウに迫っていた。

 

「……っ!」

 

「っとと……」

 

奏夜は間一髪でビームのようなものをかわし、リンドウは少しばかり余裕そうにビームのようなものをかわしていた。

 

「ちっ、かわしたか……。だったら、これならどうだ!」

 

先制攻撃をかわされたブレイクブレインは、精神を集中させると、複数の球体を呼び出していた。

 

その球体からは、ビームのようなものが飛び出していた。

 

「くっ……。多方面からの攻撃か!」

 

「やれやれ……。面倒な攻撃だぜ!」

 

奏夜とリンドウはどうにか多方面からの攻撃をかわしていたのだが、その攻撃に少しばかりうんざりしていた。

 

「ほぉ、なかなかやるじゃないか。だけど、いつまで保つかな?」

 

この遠距離攻撃こそ、ブレイクブレインの真骨頂であった。

 

ビームのような攻撃を放つことで相手を接近させず、相手と距離を置いたまま、徐々に追い詰めていき、敵を殲滅する。

 

これこそブレイクブレインの戦法であった。

 

「リンドウ!どうする!これじゃジリ貧だぞ!」

 

『奏夜の言う通りです!どうにか奴に近づかなければどうしようもありませんよ!』

 

このままブレイクブレインの攻撃をかわし続けていても埒があかないため、どうにかブレイクブレインに接近する策をどうすべきか、奏夜とレンはリンドウに聞いていた。

 

「確かに……。このままじゃ奴は倒せないだろうなぁ」

 

リンドウは攻撃をかわしながらも未だに煙草を吸っていたのだが、攻撃をかわしているうちに、口にくわえた煙草を地面に放り投げていた。

 

「……もらった!」

 

何度目かの攻撃で、ブレイクブレインは、リンドウを仕留めるために、複数のビームのようなものをリンドウの急所目掛けて放っていた。

 

「……リンドウ!!」

 

「ふっ……心配ねぇよ!!」

 

リンドウは魔戒剣を2度、3度と振り下ろすと、自分を狙っていたビームのようなものを全て消滅させた。

 

「!?な、何だと!?」

 

自分の攻撃がかき消されるとは思っていなかったからか、ブレイクブレインは驚きを隠せなかった。

 

「奏夜。俺が奴の注意を引く!その隙に、お前は奴をぶっ倒せ!」

 

「あぁ、わかった!」

 

リンドウが囮の役を買って出てくれており、奏夜はその隙を突いて一気にブレイクブレインを倒すことになった。

 

「くそっ!なめるなぁ!!」

 

ブレイクブレインは、全ての攻撃をリンドウに集中させていた。

 

「……ふっ」

 

リンドウは魔戒剣を前方に突きつけると、それを8の字に描いた。

 

リンドウの描いた8の字がそのまま1つの円になると、ブレイクブレインの放ったビームのようなものを全て防いでいた。

 

「!?また防いだだと!?」

 

再び攻撃を防がれたことにブレイクブレインが驚いており、リンドウは前方にある円から放たれた光に包まれた。

 

すると、リンドウが描いた円の部分から黒い鎧が出現すると、リンドウは黒い鎧を身に纏った。

 

こうして、リンドウは神食騎士狼武の鎧を身に纏ったのであった。

 

そして……。

 

「貴様の陰我、俺たちが断ち切る!!」

 

奏夜がブレイクブレインに対してこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

その部分のみ空間が変化すると、奏夜はそこから放たれる光に包まれた。

 

奏夜が描いた円の部分から黄金の鎧が出現すると、奏夜は黄金の鎧を身に纏った。

 

こうして、奏夜は陽光騎士輝狼の鎧を身に纏った。

 

「……奏夜!奴をぶっ倒せ!」

 

「あぁ!!」

 

鎧を召還したことで、一気に決着をつけるために、奏夜はブレイクブレイン目掛けて突撃した。

 

「……やらせるか!」

 

そんな奏夜の進撃を阻止するために、両手を前方に突きつけてビームのようなものを放ち、それだけではなく、球体のようなものからもビームのようなもの放ち、それらは全て奏夜を狙っていた。

 

「……それはこっちの台詞だ!」

 

リンドウは奏夜の前方に移動し、奏夜の盾になると、魔戒剣が変化した機神剣をまるで盾のようにしていた。

 

それにより、ブレイクブレインの攻撃は全て防がれたのであった。

 

「……奏夜!今だ!」

 

「わかった!」

 

リンドウがブレイクブレインの攻撃を防いだ隙に、奏夜は一気にブレイクブレインに接近し、魔戒剣が変化した陽光剣を叩き込もうとしていた。

 

しかし……。

 

「そう簡単にはやられはせんぞ!!」

 

このまま何もせずにやられるブレイクブレインではなく、球体のようなものからビームのようなものを放ち、奏夜はその一撃をまともに受けて少しばかり吹き飛んでしまった。

 

「くっ……」

 

奏夜はすぐに体勢を立て直し、リンドウがフォローに入っていた。

 

「奏夜。大丈夫か?」

 

「あぁ、たいしたことはない」

 

ブレイクブレインの攻撃をまともに受けた奏夜であったが、ダメージはそこまでないようだった。

 

「……どうやら、あの球体を何とかしないと、奴に攻撃を叩き込むのは難しいようだな……」

 

「……リンドウ。俺に考えがある」

 

「ほう、それは?」

 

「2人同時に烈火炎装になって、あの球体ごと奴を叩き斬る」

 

奏夜の立てた作戦は、リンドウが烈火炎装を使えることが前提の作戦であった。

 

「なるほどな……。俺は烈火炎装は使えるし、それで行くか!」

 

リンドウは魔戒騎士の中では実力のある方であり、烈火炎装は問題なく使用することが出来る。

 

「……奏夜、さっそく行くぞ!」

 

「了解!!」

 

奏夜とリンドウは同時に魔導ライターを取り出すと、魔導火を放って、それぞれの剣の切っ先に魔導火を纏わせた。

 

そして、奏夜は橙色の炎に包まれ、リンドウは青紫色の炎に包まれた。

 

こうして、奏夜とリンドウは烈火炎装の状態になった。

 

「……奏夜。俺は左から行く。お前は右から頼むぞ」

 

「わかった!」

 

奏夜が立てた作戦ではあったが、リンドウはその作戦を理解しているため、奏夜に的確に指示を出し、ブレイクブレインに攻撃を仕掛けることにした。

 

「……どんな作戦を立てようが、俺の攻撃を防げるものか!」

 

先ほど奏夜を退けて気を良くしているのか強気になっているブレイクブレインは、球体のようなものを奏夜とリンドウの方へ展開し、それぞれにビームのようなものを放った。

 

「……奏夜、来たぞ!」

 

「了解!」

 

リンドウの言葉を合図にして、奏夜とリンドウは、陽光剣と機神剣を振り下ろした。

 

すると、それぞれの魔導火の刃が飛び出し、ビームのようなものを斬り裂きながら、球体のようなものも斬り裂いていった。

 

「……!?ば、馬鹿な!!」

 

2人のたった一撃で、自分の主力武器を失うとは思っていなかったので、ブレイクブレインは驚きを隠せなかった。

 

「これで決めるぞ、奏夜!」

 

「もちろん!」

 

奏夜とリンドウは同時にブレイクブレインに接近すると、相手が次の攻撃を仕掛けてくる前に、陽光剣と機神剣を一閃した。

 

その一撃によってブレイクブレインの体はXの字に斬り裂かれていた。

 

「……そ、そんな……。この、俺が……」

 

奏夜とリンドウに倒されたことに絶望したブレイクブレインは、絶望しながらその体が消滅していた。

 

ブレイクブレインが消滅したことを確認した奏夜とリンドウは、烈火炎装を解除してから鎧を解除した。

 

そして、元に戻った魔戒剣をそれぞれの鞘に納めていた。

 

「……ふぅ。奏夜、お疲れさん」

 

リンドウは共にホラーを討滅した奏夜に労いの言葉を送ると、煙草を吸い始めていた。

 

「あぁ。リンドウ、お疲れ」

 

「お前が一緒に任務に当たってくれたおかげで、少しは楽をさせてもらったぜ」

 

「こちらこそ、あんたと共に戦えて色々と勉強させてもらったよ」

 

奏夜はリンドウと共に戦うことで、魔戒騎士として得るものがあったため、リンドウに礼を言っていた。

 

「さて、仕事は終わったことだし、どっかで飯でも食っていくか?奢るぜ」

 

「それは良い提案なんだけど、今日は友達の家に泊まっててな。今から帰らないといけないんだよ」

 

奏夜はリンドウと共にご飯を食べに行くのも悪くないと思っていたが、穂乃果の家に戻らなければならないため、その誘いを断っていた。

 

「まぁ、それなら仕方ないよな。……それはそうと、泊まる家ってのは彼女の家とかか?」

 

「ばっ!?そんなんじゃないって!」

 

リンドウの唐突な言葉に、奏夜の顔は真っ赤になっていた。

 

「はっはっは!照れるな照れるな!まぁ、青春を謳歌しろよ。少年!」

 

リンドウは照れる奏夜に笑いながら、奏夜の肩をポンポンと叩いていた。

 

そして、「はっはっは」と笑いながらリンドウはその場を後にしており、その場には奏夜だけが残されていた。

 

『……奏夜。とりあえず穂むらに戻るぞ』

 

「そうだな。あまり遅くなっても、穂乃果たちを心配させるだけだしな」

 

奏夜は穂乃果たちをあまり心配させないためになるべく早めに穂乃果の家である穂むらへ戻ることにした。

 

奏夜とリンドウがホラーと戦っていた木原塾付近から穂むらまでは歩いて5分ほどの距離なので、予想よりも早く帰ることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏夜が戻って来た時には穂むらの店は閉まっていたため、裏口にある家の入り口から穂乃果の家に入っていった。

 

すると……。

 

「あっ、奏夜さん!お帰りなさい!」

 

たまたま近くにいた雪穂が奏夜のことを出迎えてくれた。

 

雪穂はお風呂上がりなのか、パジャマ姿であり、体が火照っているから、頬が赤くなっていた。

 

「おう、ただいま」

 

「奏夜さん、トレーニングしてきたんですよね?お疲れ様!」

 

「ありがとな。おかげさまで、いいトレーニングが出来たよ」

 

奏夜はトレーニングをするため出かけると話していたため、このようなことを言っておいた。

 

「鍵は私が閉めとくので、奏夜さんはお姉ちゃんのところに行ってあげるといいですよ!」

 

「すまないな。そうさせてもらうよ」

 

家の鍵を閉めるのは雪穂に任せた奏夜は、そのまま階段を上がっていくと、穂乃果の部屋へと向かっていった。

 

「……今戻ったぞ」

 

「あっ、そーくん」

 

「お帰りなさい、奏夜」

 

「そーくん、お帰り!」

 

奏夜が穂乃果の部屋に戻ると、3人ともパジャマ姿で出迎えてくれたため、奏夜は少しだけドキッとしてしまっていた。

 

「……?奏夜?どうしました?」

 

「い、いや。別に……」

 

奏夜はドキッとしていることを悟られたくなかったため、魔法衣を脱いで、それを部屋の角に置いていた。

 

「そーくん、疲れたでしょ?お風呂でも入ってくれば?」

 

「そうだな……。そしたら、着替えもしたいし、遠慮なく入らせてもらおうかな」

 

奏夜は持参した鞄からパジャマとシャンプー類を取り出して、風呂に入る準備を整えていた。

 

穂乃果たち3人も雪穂も既に風呂に入っていると思われるため、ラブコメのような展開はないだろうと予想した奏夜は、そのまま階段を降りて風呂場へと向かい、そのまま風呂へと入った。

 

奏夜は普段家に帰ると、早々に体を休ませたいと思っているため、風呂は沸かさずシャワーで済ませることが多かった。

 

そのため、久しぶりに湯船でまったり出来るのは奏夜にとってはありがたいことだった。

 

奏夜はのんびりと湯船に浸かり、戦いの疲れを癒した上で風呂を出ると、先ほどまで着ていた制服から、パジャマへと着替えた。

 

奏夜が風呂から出ると、1階の居間に奏夜のための布団が用意してあった。

 

穂乃果の部屋で海未とことりが寝るからという理由もあるのだが、若い男女が同じ部屋で寝かせるのはどうかという穂乃果の母親の配慮もあってのことだった。

 

とりあえず奏夜は穂乃果たちとは別の所で寝ることを報告するために1度穂乃果の部屋に戻ることにした。

 

「あっ、そーくん。お帰り〜」

 

「あれ?奏夜、制服はどこに置いてきたのですか?」

 

海未は、奏夜のパジャマ姿を見て、奏夜が制服を持っていないことにすぐ気付いていた。

 

「あぁ。下の居間に置いてきたんだよ。穂乃果のお母さんがそこに俺の布団を用意してくれたからな」

 

「えぇ!?そーくんも一緒に寝ようよ!」

 

「あのなぁ……。いくら何もしないとはいえ、若い男女が一緒に寝る訳にはいかんだろう」

 

穂乃果は奏夜に一緒に寝ようと言っていたのだが、そんな穂乃果をなだめていた。

 

「まぁ、仕方ないですよね」

 

「そうだねぇ。ことりもそーくんと一緒に寝たかったけどね」

 

海未とことりは、奏夜の言葉に納得はしているが、ことりは少しだけ残念がっていた。

 

「……むー……!」

 

穂乃果だけは納得していないのか、ぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「ま、そういうことだから、俺は下に行くな」

 

「奏夜、おやすみなさい」

 

「そーくん、おやすみ〜」

 

「おう、おやすみ」

 

「……」

 

海未、ことり、奏夜の3人は寝る前の挨拶を交わすのだが、穂乃果は未だにむすっとしている。

 

奏夜は穂乃果の部屋を後にすると、そのまま階段を降りて居間へと移動した。

 

奏夜は指に嵌められているキルバを外してテーブルに置くと、そのまま布団に潜り込んだ。

 

「さて……。明日も早いし、さっさと寝るかな……」

 

奏夜は、明日もテスト勉強が待っているため、早々に眠りにつくことにした。

 

ぐっすりと眠ることの出来た奏夜であったが、その快眠は、2時間後に打ち砕かれてしまった。

 

「……ん?」

 

ギシッ、ギシッと誰かが階段を降りる音で、奏夜は目を覚ました。

 

(……こんな時間に下に降りてくるとか……。トイレか?)

 

高坂家のトイレは1階にしかないため、誰かがトイレで降りてきたのかと奏夜は予想していた。

 

しかし、何者かが階段を降りると、その足音はトイレではなく、こちらに近付いてきた。

 

(……?誰だ?こんな時間にこっちに何の用なんだ?)

 

少しずつ足音が近付いてきており、その足音の正体がわからず、奏夜は首を傾げていた。

 

すると、その足音が止むと、奏夜は自分の背後から何者かの気配を感じていた。

 

奏夜は目を覚ましてその正体を確かめようとするのだが……。

 

「……そーくん……」

 

と、小さい声で呟く穂乃果の声が聞こえてきたため、足音の正体が穂乃果であることが判明した。

 

(穂乃果か……。いったいどうしたんだ?)

 

何故穂乃果がこのような時間にここへ来たのかがわからず、奏夜は首を傾げていた。

 

すると……。

 

「よいしょっ……」

 

「!?」

 

穂乃果は奏夜の布団に潜り込み、まさかの展開に奏夜は驚きを隠せなかった。

 

「ほ、穂乃果!?どうしたんだよ!」

 

現在は真夜中であるため、奏夜は驚きながらも小声で話していた。

 

そして、微かに伝わる穂乃果の温もりが恥ずかしかったからか、奏夜は顔を真っ赤にしていた。

 

「エヘヘ……。やっぱりそーくんと一緒に寝たいなぁって思って……」

 

穂乃果はどうしても奏夜と一緒に寝たいと思っており、その気持ちが抑えきれなかったため、ここまで来たのであった。

 

「……仕方ないな……」

 

ここまでのことをされてしまっては奏夜も断れなかったため、渋々穂乃果と一緒に寝ることを了承していた。

 

「本当?エヘヘ……♪」

 

奏夜と一緒に寝れるのが嬉しかったのか、穂乃果は奏夜の背中にぎゅっとしがみついていた。

 

「……!?おい、穂乃果……////」

 

いきなり抱きつかれるとは思っていなかったため、奏夜は顔を真っ赤にしていた。

 

「だって……。そーくんがホラーと戦いに行くって聞いて、凄く心配だったんだよ?そーくんは大丈夫って言うけど、やっぱり心配で……」

 

穂乃果は、奏夜が魔戒騎士であると知ってから、ホラーと戦いに行くと聞くたびに奏夜のことを心配していた。

 

「……そっか……。ごめんな、心配させて……」

 

「……うん」

 

「だけど、俺は絶対に死なないさ。だって、みんなを守りたいって思ってるし、μ'sのことをずっと見守りたいって思ってるからな……」

 

奏夜は、穂乃果たちのことを本気で守りたいと思っていたし、μ'sのこともずっと見守っていきたいと思っていた。

 

その気持ちが消えない限り、奏夜は誰が相手だろうと絶対に死なないと心に誓っていた。

 

「そーくん……。信じてるからね……」

 

「あぁ」

 

「それはわかってるんだけど、今日はこのままで……いさせてね……」

 

「……あぁ」

 

奏夜が穏やかな表情でこう答えると、その答えを聞いて穂乃果は安心したのか、「すぅ……すぅ……」と、穂乃果の寝息が聞こえてきた。

 

「……おやすみ、穂乃果」

 

穂乃果の寝息を聞きながら、奏夜は眠りについていた。

 

こうして奏夜と穂乃果は添い寝をしていたのだが、朝になると穂乃果の母親に発見されてしまい、朝食の時に大いにからかわれることになってしまった。

 

そこで奏夜と穂乃果が一緒に寝ていることを知った海未とことりは、そのことをすぐにμ'sのメンバーに伝達していた。

 

そして、奏夜は穂乃果以外のメンバーからお仕置きを受けることになったのだが、これはまた別の話である。

 

そんなことがありつつも、試験当日を迎えたのだが、赤点が心配だった穂乃果、凛、にこの3人は見事に赤点を回避し、ラブライブにエントリーすることは可能となったのであった。

 

ちなみに、奏夜は勉強を頑張ったからか、学年10位という好成績を叩き出し、2年生組の中では1番の成績を残していた。

 

……勉強が得意な真姫は、それ以上の成績であり、周囲を驚かせていたのだが……。

 

こうして、大きな試練となった期末試験は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ。期末試験を乗り越えたと思ったらこんな問題に直面するとはな……。次回、「指導」。おいおい、奏夜。いったいどうするつもりだ?』

 

 




ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

奏夜あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!

そこを代わりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!(切実)

ほのキチである僕がこう叫びたくなるくらい、穂乃果と添い寝している奏夜が羨ましい訳です(笑)

ここら辺で徐々にヒロインのフラグが立ってきたのかなと思っています。

そして、今回登場したブレイクブレインは、ホラーにしては珍しい遠距離特化型のホラーとなっています。

球体のようなものから放たれるビームのようなものは、ガンダムに登場するビットやファンネルを参考にさせてもらいました。

知識を司るホラーだから、ビットのような攻撃も使いこなせるという設定です。

さて、次回はいよいよラブライブ!第8話に突入します。

そう、のぞえり加入編に突入するということです。

今の章はμ'sが9人になるまでの話のため、この章のクライマックスも近付いてきています。

これからいったいどうなっていくのか?

それでは、次回をお楽しみに!

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