最近は最新話のストックが尽きて予定通りに投稿できるか不安でしたが、どうにか投稿することが出来ました。
FF14が楽しすぎて執筆時間が減っている……。
FF14はオンラインだし、月額かかったりもするけど、フリートライアルもあるので、ちょっとでも興味があればオススメです(宣伝)
本当に面白いですよ。牙狼装備もありますし。
ちなみに、僕は主人公の名前を統夜にしてるので、もしやってる人は見つけたらぜひ声をかけて欲しいです!
さて、FFの話はともかくとして、今回はあの曲の披露回となっています。
ラブライブ出場に向けて、いったいどのようなことを行うのか?
前書きが長くなりましたが、それでは、第33話をどうぞ!
ことりが伝説のメイド、「ミナリンスキー」であるということが明らかになった翌日、絵里は妙案を思いついたようであり、それを奏夜たちに明かしていた。
それは、秋葉原の街中で路上ライブを行うことである。
秋葉原といえば、A-RISEのお膝元とさえ言われている場所であり、そんなところでライブをしては、どうなってしまうのか予想することすら出来なかった。
しかし、現在の50位から20位までランキングを上げるためには、これくらい大胆な手が必要であるという絵里の力説を聞いて、奏夜たちは秋葉原でのライブを了承する。
そんな中、新曲の作詞を任させれたのは、なんと海未ではなく、ことりであった。
メイド喫茶でバイトをしているため、ことりは秋葉原に詳しいことりが適任であると絵里が判断したからである。
それから数日が経過し、この日もことりは歌詞作りを行っていたのだが、思うようにいかないみたいであった。
ことりは教室でジックリと案を練っており、奏夜、穂乃果、海未の3人は、そんなことりの様子を見守っていた。
最初から助けてしまってはことりのためにならないあらである。
「……チョコレートパフェ……。美味しい。生地がパリパリのクレープ……。食べたい。ハチワレの猫……。可愛い……。五本指ソックス。気持ちいい……」
ことりはそれらしいフレーズを思い浮かべてみたのだが、これを歌詞にするとなると難しいようであった。
「……思いつかないよぉ!!」
ことりは歌詞作りに苦戦していた。
今まで歌詞作りなど行ったことはなく、どのように行えば良いのかわからなかったため、ここまで歌詞作りが難航しているのである。
しばらく案を練っていたことりは……。
「……♪ふ〜わふ〜わし〜たも〜の可愛いな♪はいっ!あとはマカロンたくさん並べたら〜。カラ〜フル〜で〜し〜あ〜わ〜せ♪」
(ぐぁぁ!!やめろ!脳が!脳が溶ける!!)
ことりの歌を聞いた奏夜は、まるで脳が溶けるような感覚に陥っており、苦しそうに頭を抱えていた。
『アホくさ……』
奏夜のあまりの動揺ぶりにキルバは呆れており、ジト目で奏夜のことを見ていた。
ことりはノリノリでこのような歌を歌っていたのだが……。
「……やっぱり無理だよぉ!!」
どうやらことりは良い歌詞が思いつかず、べそをかきながらこのようなことを言っていた。
「……なかなか苦戦しているみたいですね……」
「うん……」
今まで作詞をやったことのない人間に作詞をやれというのはさすがに難しいのかと海未と穂乃果は感じていた。
ことりは歌詞が思いつかないもどかしさに涙目になっていた。
「あぅぅ……。穂乃果ちゃあん……」
ことりは涙目で、細々とこのように呟いていた。
それを聞いた奏夜は……。
「えぇい!これ以上は放ってはおけん!」
そんな弱った感じのことりを放っておけないと思ったのか、奏夜はことりの助け舟に入ろうとする。
「奏夜!落ち着いてください!そんなにすぐことりの助けに向かってはことりのためにはなりません!」
海未と穂乃果は慌てて奏夜の腕を掴むと、ことりを助けに行こうとしている奏夜を止めていた。
「えぇい!離せ!」
奏夜はジタバタと暴れるのだが、そんな奏夜を黙らせるために海未が拳骨をお見舞いすると、奏夜はその場でダウンしてしまった。
この日は結局、歌詞の妙案は思いつかず、時間だけが無情にも過ぎていってしまった。
それから数日が経過したのだが、やはり妙案は思い浮かばなかった。
そのため、ことりは授業中も心ここに在らずのことが多く、先生に度々注意されることもあった。
そしてこの日の放課後、ことりはやはり1人で新しい曲の歌詞を考えていたのだが、これまで通り妙案は思いつかないようだった。
「やはり、思いつかないようですね……」
「……そうだよねぇ……」
「こうなったら俺たちも協力した方がいいんじゃないのか?」
「奏夜!何度も言うようですが、ここで手を貸してしまってはことりのためにはなりません!」
奏夜は苦しむことりを見て手を貸そうとしていたのだが、海未に注意されてしまっていた。
それは今回が初めてではなく、何度も注意されたことであった。
しかし、今回の奏夜は……。
「……海未、何か勘違いしてないか?」
「勘違い……ですか?」
奏夜の言葉の意図が理解出来ず、海未は首を傾げていた。
「歌詞のアイディアはことり自身に考えてもらおうと思ってるさ。俺はただ、アイディアを変えるために別の場所で考えてみたら良いんじゃないかって思っただけだ」
どうやら奏夜は良いアイディアを出すために、どこか場所を変えるべきではないかと主張していた。
こう言っていた奏夜だったが、それまでは本当にことりに手を貸そうと本気で思っていた。
しかし、何度も海未に言われた通り、ここで力を貸してはことりのためにならないという言葉を真摯に受け止めていたのである。
「そうは言っても、何か良いアイディアはあるんですか?」
「……まぁな。つか、そうじゃなかったら、そんな無責任なことは言わないって」
「ねぇねぇ、そーくん!それっていったい何なの?」
「ふふん……。多少荒療治ではあるかもしれないけどな……」
このように答える奏夜は怪しい笑みを浮かべており、それを見た海未は、少しだけ不安そうになっていた。
そして奏夜はどこで歌詞を考えるのか。さらに何をしようと考えているのかを2人に説明したのだが……。
「ほ、本気ですか!?」
「この状況で酔狂なことは言ってられんだろう」
「……それいいね!私も同じようなことを考えていたんだ!」
どうやら穂乃果も、奏夜と同じまではいかないものの、似たようなことは考えていた。
そのため穂乃果は……。
「……ことりちゃん!」
1人で歌詞を考えていることりに声をかけていた。
「ほ、穂乃果ちゃん!?」
「1人じゃなくて、みんなで考えようよ!そーくんも良いアイディアがあるみたいだし!」
「!?ほ、本当なの?そーくん!」
ことりは1人でずっと思い詰めていたため、奏夜のアイディアというのは藁にもすがる思いなのであった。
「あぁ。ちょっと荒療治ではあるけれど、ここで考えてるよりかはマシだと思うぞ」
このように説明する奏夜は、再び怪しい笑みを浮かべていた。
『何故だろう。嫌な予感しかしないのだが……』
「キルバもですか?実は私もそう思っていたのです……」
キルバと海未は、奏夜のアイディアに対して嫌な予感しかしていなかったのだが、穂乃果とことりはやる気みたいだった。
こうして奏夜たち4人が向かった場所とは……。
※※※
「……お帰りなさいませ♪ご主人様♪」
「お帰りなさいませ!ご主人様!」
「お帰りなさいませ……。ご主人様……」
ことりの働いているメイド喫茶なのだが、ことりだけではなく、穂乃果と海未もメイドの格好をしており、このような挨拶をしていた。
「ふっ……。あえて言わせてもらおう。……「ただいま!!」っと!!」
3人の挨拶を聞いた奏夜は気持ちが昂っているからか、このようなことを言っていた。
『……アホくさ……。それに、嫌な予感が的中したな……』
奏夜の考えた案というのは、ことりの実際働いているメイド喫茶で働くことで、歌詞を考えるといったことであった。
そんな奏夜たちの事情を聞いたこの店の店長は、快く穂乃果と海未を受け入れてくれた。
ちなみに奏夜は客の1人として、3人を見守るという役割であった。
こうして穂乃果、海未、ことりの3人は働き始めたのだが……。
「やっほー!遊びに来たよ!」
「エヘヘ♪」
凛と花陽が店内に入ってきた。
この2人だけではなく、他のメンバーも遊びに来ていた。
「え!?どうして!?」
まさか、こんなに早く他のメンバーが遊びに来るとは思わなかったからか、穂乃果は驚いていた。
「俺が声をかけといたんだ」
奏夜は他のメンバーにもこれからやろうとしていることを伝えると、3人が働いているところを見たいがために駆けつけてくれた。
「奏夜から話を聞いた時は驚いたけど、良いアイディアだと思うわ。秋葉原でライブをやるのだから、秋葉原で歌詞を考えるということがね」
絵里はどうやら、奏夜の荒療治ともいえる考えを、全面的に賛同しているようだった。
「……そんなことよりも早く接客してくれない?」
奏夜の考えは理解しているものの、今は客であることは間違いないため、にこはこのように横柄な態度をとっていた。
「にこ先輩。そんな態度を取っていたらことりの神対応を見て後悔しますよ」
奏夜は既にことりの接客を体験しており、それを体験したらにこの今の態度は出来なくなるだろうと思っていた。
ことりはまず最初に凛と花陽の接客を行っていたのだが、奏夜の時同様、完璧な接客を行っていた。
「さ、さすがは伝説のメイド……」
「ミナリンスキー……」
ことりの完璧な接客に、どうやら花陽と凛はメロメロになっているみたいだった。
「うんうん。さすがはことりだよ」
ことりの接客を体験している奏夜は、改めてことりの接客を見て、ウンウンと頷いていた。
その後、奏夜たちも席に着き、飲み物やスイーツを楽しんでいた。
「……うん、ことりの奴、本当に生き生きとしているよな……」
奏夜は、ミナリンスキーとして働いていることりを見て、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。
《確かにな。今こうやって楽しそうに働いているあいつは、すごくあいつらしい気がするぞ》
(そうだよな。それだけことりはこの店が、それに、この街が好きなんだろうな。そんな感じがするよ)
《この街は色々なものを取り入れては受け入れてるからな。だからこそ、メイドの姿になったら自分に自信が持てるのかもしれないな》
奏夜とキルバは、テレパシーで会話をしながら、ことりがメイド服を着たことによる変化を感じ取っていた。
(もしも、ことりがそう考えているならば、歌詞作りの最大の武器になりそうなんだけどな)
《確かにな。奏夜、お前はそこまで考えてここへ来ることを提案したって訳なのか?》
(いや、そこまでは考えてなかったさ。ことりが生き生きしてるのを見てそう感じたんだけどな)
《……お前なぁ……》
奏夜がこの場所へ行こうと考えているのも半ば行き当たりばったりなところがあったため、キルバは呆れていた。
奏夜がそんなことを考えていたその時だった。
「そーくん!!」
「うぉっ!?」
ことりが興奮冷めやらぬ感じで奏夜に詰め寄ってきたため、奏夜は驚いていた。
「私……。書けるかもしれない!新しい曲の歌詞を!!」
奏夜は厨房を覗いた訳ではないため、仕事中に何があったのかはわからなかったが、ことりが今日の仕事を通して何かを掴んだことは理解していた。
「そうか……。それなら、ことりの思いの丈を思い切り歌詞にぶつけてくれ!」
「うん!」
「良い歌詞を期待しているぜ!」
「任せてよ!」
最初に歌詞作りを依頼された時は色々とプレッシャーを感じていたことりだったが、色々と吹っ切ることが出来たからか、その表情には清々しさも感じることが出来た。
そんな自信に溢れることりの姿を見て、1年生組の3人と、3年生組の3人は、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。
こうして、ことりは自信を取り戻すことに成功し、この日は解散となった。
※※※
どのような歌詞を書きたいのか。
ことりがそれを理解し、自分に自信を持つようになってからか、これまでの不調が嘘のように絶好調な日々だった。
ことりは次々と伝えたい思いを言葉にしていき、歌詞が完成するまでにそれほど時間はかからなかった。
歌詞が出来ていない時は心ここに在らずなことりであったが、歌詞が完成してからというものの、ことりは今まで以上に生き生きとした表情をするようになった。
そんなことりに奏夜は安堵しながら、絵里の提案した路上ライブをどのように行うかを考えていた。
とはいっても、言い出しっぺの絵里が色々と提案してくれているため、プランや場所は割とすぐに決まったのだが……。
1番の問題となるのは衣装であったのだが、今回は全員メイド服を着ることになった。
短い期間で9人分のメイド服を作るのはかなり大変なため、ことりのバイト先からレンタルすることを検討していた。
しかし、奏夜にはメイド喫茶からレンタルをしなくてもメイド服を借りることの出来る妙案があった。
奏夜の先輩騎士である統夜が3年間過ごした軽音部の顧問である山中さわ子という人物が趣味でコスプレ衣装を作っており、メイド服も複数作っているということを統夜から話を聞いたことがあった。
その妙案というのは、統夜を通してさわ子にコスプレ衣装の貸し出しを依頼するというものであった。
わざわざそこまでする必要はないのでは?という絵里の反対意見もあったのだが、聞いてみるだけ聞いてみようということになり、奏夜はその旨を統夜に相談してみることにしたのである。
それを聞いた統夜は苦笑いをしながらもそれを了承し、すぐさまさわ子に連絡を取っていた。
すると、さわ子はμ'sのことを知っていたため、やる気に火をつけることになり、路上ライブが行われる次の日曜日までに衣装を揃えると言い切っていた。
統夜は奏夜から全員のおおよそのサイズを伝えると、さわ子はそれを参考にメイド服を用意するみたいであった。
こうしてライブを行う場所も確保し、衣装の問題も解決し、ライブ当日を迎えることが出来た。
「……あなたたちがμ'sのみんなね。写真や動画で見るよりも可愛いじゃない」
この日、ライブを行う場所の近くで統夜とさわ子と待ち合わせをすることになっており、奏夜たちは時間通りに待ち合わせの場所へと向かっていた。
そこにいたのは統夜と、自分たちより一回りくらい歳の離れた茶色の長髪で眼鏡をかけた女性だった。
「えっと……。あなたが……」
「初めまして。私は山中さわ子。桜ヶ丘高校で教師をしているわ」
さわ子は自己紹介をしながら穏やかな表情で笑みを浮かべていた。
そんなさわ子に、奏夜を除く9人が思わず見とれてしまっていた。
「綺麗な人にゃあ……」
「うん……。すごくおしとやかな先生って感じ……」
凛と花陽がこのように感想を言っており、それを聞いたさわ子は、後ろを振り向いて「グフフ」と怪しい笑みを浮かべていた。
さわ子の本性を知っている統夜は、そんなさわ子を見て苦笑いをしていた。
そして、それは奏夜も同様であり、奏夜も苦笑いをしていた。
「……?奏夜?いったいどうしたのですか?」
「いや、実はな。さわ子先生っておしとやかそうに見えるけど、実は……」
「……あぁん!?」
奏夜がさわ子の本性をバラそうとしたのだが、その前にさわ子が鋭い眼光で奏夜のことを睨みつけていた。
「……申し訳ございません……」
さわ子の睨みに怯えていた奏夜は、ガクガクと肩を震わせながら謝っていた。
しかし、この時点で自分の本性を明らかにしているのと同様であり……。
「こ、怖いにゃあ……」
「せ、先生なのに不良さん……なんですか?」
先ほどの奏夜同様に凛と花陽が肩を震わせながら怯えていた。
「ちょ、ちょっと!私は別に不良じゃないわよ!」
「そうだぞ、みんな。さわ子先生は高校の時からデスメタルをやってたからこんなキャラになってるだけだから」
「……統夜君?」
あっさりと自分のことをバラされてしまい、さわ子は鋭い目付きで統夜のことを睨みつけていた。
「しっ、仕方ないじゃないですか!それに、おしとやかなキャラで通すなんて無理な話なんですよ!軽音部の時だってそうだったじゃないですか!」
「うぐっ……。それはそうだけれども……」
統夜はさわ子の睨みに怯えながらも正論を言っており、さわ子はそれに反論することは出来なかった。
「あっ、あの……」
「あぁ、ごめんね。ライブの時間が迫っているものね。衣装は用意してあるわ。部屋を用意してあるからそこで着替えましょう」
さわ子は紙袋に入った衣装を見せると、穂乃果たちを連れて近くで確保している部屋へと向かっていき、奏夜と統夜はその場で待機していた。
10分後、メイド服を着た穂乃果たちを連れて、さわ子が戻ってきた。
「……へぇ……」
「凄いな……。完璧な仕上がりじゃないですか……」
穂乃果たちの着ているメイド服はさわ子お手製のものであり、そのクオリティの高さに奏夜は驚いていた。
「ふふん。当たり前でしょう?どの衣装も気合入れて作ったんだから!」
さわ子の作った衣装のレベルは趣味のレベルとは思えないもので、職人の技と言っても言い過ぎではなかった。
そんなさわ子のメイド服を着たことりは、キラキラと目を輝かせていた。
「……?ことりちゃん?」
そんなことりに穂乃果は首を傾げていたのだが……。
「さわ子先生!」
「は、はい!」
「し、師匠って呼んでもいいですか?私、μ'sの衣装を作ってるんですけど、もっともっと可愛い衣装を作りたいんです!」
ことりは、さわ子の衣装を見て、弟子入りすることを望んでいた。
それだけさわ子のメイド服のクオリティが高いということである。
弟子入りしたいという話を聞いていたさわ子は……。
「えぇ。もちろんいいわよ。私も、スクールアイドルの衣装には興味あったしね」
二つ返事でことりの願いを聞き入れていた。
「本当ですか!?」
「えぇ。いつでも桜ヶ丘高校に遊びにいらっしゃい。色々と教えてあげるわ」
「はい!よろしくお願いします!」
ことりはさわ子という衣装作りの師匠を得て、満足そうにしていた。
「……なんていうか……」
「あぁ、何か面白いことになってきたな」
ことりがさわ子に師事するというこの展開は予想出来なかったからか、奏夜と統夜は苦笑いをしていた。
「……さぁ、もうすぐライブよ!みんな、思い切り輝いてきなさい!」
「何で先生が仕切るんですか……」
さわ子がその場を仕切っていたため、統夜は少しだけ呆れながら苦笑いをしていた。
こうして、路上ライブの開始時間となり、ことりを中心にして、スタンバイしていた。
奏夜、統夜、さわ子の3人は、ギャラリーの先頭で穂乃果たちのパフォーマンスを見守っていた。
穂乃果たちのスタンバイが終わり、曲が再生されると、ことりの歌から曲がスタートした。
この路上ライブのために作られた、「Wonder Zone」である。
この曲はことりがメインであり、足を止めていた客の中にはミナリンスキーがスクールアイドルとしてライブに出ていることに驚いている者もいた。
しかし、批判がある訳でもなく、ライブは大いに盛り上がっていた。
……ただ1人を除いては……。
「……何がミナリンスキーよ……。所詮はただのあざとい小娘じゃない……。こんな奴が伝説のメイドだなんて……。私は絶対に認めないわ……」
どうやらこの女性は、ミナリンスキーであることりに嫉妬のような感情を抱いているようである。
その嫉妬は憎悪へと変わり、ことりのことを逆恨みしているみたいだった。
「……私の最初の獲物は、あの女にしてやる……」
どうやらこの女性は、何かしらの陰我を抱えており、ホラーに憑依されてしまったみたいであった。
穂乃果たちは、観客の中にホラーが紛れているとは知る由もなく、パフォーマンスを行っていた。
それはライブを見守っていた奏夜と統夜も同様だった。
このホラーは気配を出していないため、キルバやイルバにも感知することは出来なかったのである。
そんな中、ホラーの存在に気付いているものが1人だけいた。
その人物とは……。
「……やれやれ……。せっかくミナリンスキーの晴れ舞台を見にきたというのに、ホラーが紛れているとはな……」
奏夜と統夜にとって先輩騎士にあたるベテラン騎士、桐島大輝であった。
大輝は奏夜と統夜の2人から路上ライブをやることを聞き、ミナリンスキーことことりの晴れ舞台を見たいがために駆けつけたのである。
大輝はキラキラしながらパフォーマンスを行うことりたちを見ながらも、ホラーと思われる女性にも目を配っていた。
こうして、秋葉原での路上ライブは終了し、大いに盛り上がって幕を閉じた。
※※※
ライブ終了後、穂乃果たちは撤収作業を行い、先ほど着替えを行った部屋で着替えを済ませてから奏夜や統夜と合流した。
さわ子は、穂乃果たちの着替えが終わるなり、そのまま帰っていってしまった。
明日はもう1つの顧問である吹奏楽部の練習があるからである。
穂乃果たちはさわ子を見送ってから、2人と合流したのであった。
「いやぁ、無事に終わってよかったねぇ!」
「そうだな。みんな、最高に輝いていたぞ」
奏夜は簡単な言葉でライブを褒めていたのだが、穂乃果たちにとっては、奏夜の褒め言葉が何よりの労いとなった。
「特にことり。今日まで本当に頑張ったな」
「うん!ありがとう、そーくん!」
ことりは今までの努力を褒めてもらい、満面の笑みを浮かべていた。
「それよりも、これからどうするの?今日はまっすぐ帰るつもり?」
このようにこの後の話を切り出してきたのはにこであった。
「どこかでご飯でも食べに行くかにゃ?」
「おぉ、それいいね!」
凛がご飯を食べに行くことを提案し、穂乃果がそれに乗っていた。
しかし……。
「今日はやめておきましょう。もう遅い時間ですし」
路上ライブが行われたのは夕方なのだが、撤収作業や着替えなどをしていたら、すでに外は暗くなっていた。
「そうね。明日だって練習を行う訳なんだし、今日はもう帰りましょう」
「それには賛成ね」
「せやなぁ。今日はもう帰ろうか」
絵里が帰ろうかと提案したことに、真姫と希が賛同していた。
遊びすぎて明日の練習に支障をきたす訳にはいかなかったため、穂乃果、凛、にこの3人も同意しており、奏夜たちはそのまま帰ろうとした。
その時だった。
「……あんたが伝説のメイド、ミナリンスキーね?」
怪しい雰囲気を出している女性が、奏夜たちの前に現れた。
「あの、あなたは……?」
女性の質問に答えることなく、ことりは少しばかり怯えていた。
怪しい雰囲気を出した女性がいきなり自分のこと名前を言い出したら誰だって警戒するだろう。
「あなた如きが伝説のメイドだなんて、笑わせるわ!あんたのせいで私は……!」
この女性は元々秋葉原某所にあるメイド喫茶でメイドをしながらこの店の経営も担っていた。
しかし、ことりがミナリンスキーとしてメイド喫茶でバイトするようになってからというものの、客を全てことりが働く店に取られてしまい、廃業を余儀なくされたのである。
……当然それだけが理由ではないのだが、この女性は伝説のメイドと呼ばれたことりに逆恨みをしていたのであった。
「あなただけは絶対に許さない……!あなたのせいで私の人生はメチャクチャになったのよ!伝説のメイド、ミナリンスキー!!」
この女性のことりに対する憎悪はかなりのものであり、鋭い目付きでことりを睨みつけていた。
「そんな!私はただ!」
ことりは自分を変えたいという気持ちでメイド喫茶で働いていたため、自分のせいで人生を潰されたと言われる筋合いはなかった。
女性の憎悪に満ちた表情に怯えることりを守る形で奏夜は女性の前に立っていた。
「な、何よ!あんた!」
「俺か?俺はμ'sのマネージャーだ。どんな理由だろうと、こいつらに危害は加えさせない!」
奏夜はことりだけではなく、穂乃果たちもこの女性から守ろうとしていた。
「それに……」
それだけではなく、統夜も女性の前に立つと、統夜は魔法衣の裏地から魔導ライターを取り出し、魔導火を放った。
魔導ライターから放たれる赤い魔導火は女性の瞳を照らすのだが、女性の瞳からは不気味な文字のようなものが浮かび上がっていた。
「……お前ら……!魔戒騎士か……!」
「まぁ、そういうことだ」
「っ!」
女性は奏夜と統夜が魔戒騎士であることがわかると、有無を言わせずに先制攻撃を仕掛けてきた。
それを受け止めた統夜は、女性と激しい格闘戦を繰り広げていた。
「奏夜!こいつは俺に任せて、お前は穂乃果たちを頼む!」
「わかりました!みんな、逃げるぞ!」
奏夜は穂乃果たちを誘導し、その場を離れようとした。
「っ!逃さない……!」
統夜と格闘戦を繰り広げていた女性は統夜を吹き飛ばすと、全力で駆け出し、奏夜たちを追いかけていた。
そして大きくジャンプをすると、女性は奏夜たちの前に立ちはだかっていた。
「くっ……!こいつ……!」
「魔戒騎士に用などないわ!私が用があるのはミナリンスキーだけなんだから!」
「お前にはなくても俺にはあるんだよ!」
奏夜は穂乃果たちを女性に近付けさせないために拳による攻撃を仕掛けた。
そして、女性は反撃と言わんばかりに拳を放つのだが、奏夜はその攻撃を受け止めていた。
その時、不思議な感覚が奏夜を襲っていた。
(当たり前だけど、こいつは尊士よりも攻撃が遅い……。見える!こいつの動きが……見えるぞ!)
奏夜は自分が完膚なきまでに叩きのめされた尊士とこの女性の力の差を確認し、女性の攻撃が尊士と比べたら明らかに遅いため、動きを簡単に見切ることが出来ていた。
奏夜は女性の攻撃を軽々と受け止めると、2度、3度と拳を叩き込み、回し蹴りを放って女性を吹き飛ばした。
「す、凄い……」
「奏夜……。この短期間で強くなっています……」
奏夜はホラーである女性を圧倒しており、そのことに穂乃果と海未は驚いていた。
「へぇ、奏夜の奴、あの尊士と戦ってちょっとは成長したんじゃないのか?」
『そうか?俺様に言わせれば、あのホラーが弱すぎるだけだと思うんだが』
「まぁ、そう言うなって、イルバ」
統夜もまた、奏夜の成長に少しばかり驚いていたが、イルバは奏夜が成長したとは思っていなかった。
それは、奏夜の魔導輪であるキルバも同様であった。
「おのれ……!魔戒騎士……!」
自分の攻撃を受け止められ、さらに連続攻撃により奏夜に圧倒されてしまった女性は、奏夜を睨みつけていた。
「……このまま一気にケリをつけさせてもらうぞ」
奏夜はホラーである女性を一気に討滅するために魔戒剣を取り出そうとした。
その時だった。
1人の男が戦いに乱入すると、剣らしきもので女性を斬り裂き、蹴りを放って女性を吹き飛ばした。
「ぐぅ……。何者だ!」
体勢を立て直した女性は、鋭い目付きで乱入者を睨みつけていた。
その乱入者の正体とは……。
「……奏夜、統夜。すまんな、いきなり戦いに乱入して」
「大輝さん!?」
「どうして?」
奏夜と統夜の先輩騎士である大輝であったため、2人は驚きを隠せなかった。
奏夜はともかくとして、魔戒騎士として経験を積んだ奏夜がいれば大輝がわざわざ戦いに介入する必要はないからである。
しかし、大輝にはどうしてま戦いに介入したい理由があったのである。
「……話は聞かせてもらった。そのホラーはミナリンスキーを逆恨みしているんだろ?他のメイドにも危害を加えそうと思ってな」
どうやら大輝は、この女性がミナリンスキーであることりを始めとして、他のメイドも狙いそうと考えたため、戦いに介入したのである。
「……お前たちには悪いが、こいつは俺にやらせてくれないか。こいつは俺自身の手で葬りたいんだ」
「「……」」
奏夜と統夜は、先輩騎士である大輝がここまで1人のホラーにこだわるとは思わず、驚きを隠せなかった。
その結果……。
「……わかりました。俺と統夜さんで穂乃果たちを守ります」
「だから大輝さんは思い切り戦ってください」
奏夜は魔戒剣を取り出すことは辞め、統夜もまた戦いに介入することはせず、この女性の相手は大輝に任せることにした。
奏夜と統夜は、穂乃果たちのもとへ駆け寄り、穂乃果たちを守る体勢に入っていた。
「そ、そーくん!?何やってるの!?」
「そうです!あの人も魔戒騎士なのでしょう?協力すれば良いではないですか!」
「そうにゃそうにゃ!何であの人1人で戦わせるの?」
「そうですよ!あの人がどれだけ強いかはわかりませんが、危ないんじゃ……」
奏夜がホラーをほっぽり出してこちらに来たことに、穂乃果、海未、凛、花陽の4人は異議を唱えていた。
「……大丈夫。あの人なら問題ないさ」
「どうしてそこまで言い切れるの?」
「だってあの人は、俺や統夜さんよりも経験を積んだ魔戒騎士なんだ。その実力は明らかに俺以上だよ」
絵里の問いかけに、奏夜はすぐさま答えていた。
「……なるほどね。あんたたちはそれだけあの人を信頼しているという訳ね」
「そういうことだな」
「それはわかったけど、やっぱりあんたらも加勢した方がいいんじゃないの?」
「せやなぁ。その方が戦いも早く終わるんと違う?」
大輝が強い魔戒騎士であることは理解したものの、魔戒騎士が3人もいるのに1人で戦わせることににこと希は疑問を持っていた。
「そうだよなぁ。だけど、1人で戦うのは大輝さんだっての希望なんだよ」
「その通りだ。男なら、譲れないものがあるからな。それは魔戒騎士であることを抜きにしてもな」
「……男って本当に面倒くさいわね……」
大輝が1人で戦うのは大輝のこだわりであるとわかり、真姫は呆れ果てていた。
「お前には言われたくないよなぁ……」
「なんですって!?」
奏夜にしてみたら、真姫も相当面倒な性格なため、このようなことを呟いていたのだが、その言葉に真姫はカチンときてしまったようだった。
このままだと2人の口喧嘩が始まりそうなのだが……。
「おのれ……!どいつもこいつも私のことを馬鹿にしやがって……!許さんぞ!全員まとめて喰らってやる!」
自分を置いてけぼりにして盛り上がる奏夜たちが許せなかったからか、憎悪の対象をことりだけではなく、奏夜たち全員に広げていた。
激昂した女性の体は徐々に変化していき、人間の姿からホラーの姿へと変わっていった。
『……こいつはホラー、ヘルディオル。憎悪を司るホラーだ』
『こいつに取り憑かれたあの女は、あのお嬢ちゃんへの逆恨みによる憎悪がかなりのものだったんだろう』
目の前にいるホラーについて、キルバとイルバがこのような解説をしていた。
「……ふっ、相手が誰だろうと関係ない。俺は魔戒騎士として貴様を斬るだけだ」
「おのれ……!この私をそう簡単に倒せると思うな……!」
大輝はヘルディオルを見ても余裕そうな態度を取っていたため、ヘルディオルはより一層怒り狂っていた。
「……貴様を斬る!そして、アキバのメイドたちは俺が守る!!」
大輝は魔戒剣を前方に突きつけながらこのようなことを言っていたのだが……。
「……不思議ね。言葉の雰囲気は格好いいのだけれど……」
「全然格好良くない!」
大輝の言っている台詞に拍子抜けしたからか、絵里とにこは呆れており、他のメンバーもポカーンとしていた。
穂乃果たちがポカーンとする中、大輝は魔戒剣を上空に高く突き上げると、円を描いた。
その部分だけ空間が変化すると、大輝はそこから放たれる光に包まれた。
すると、変化した空間から銅の鎧が現れると、大輝は銅の鎧を身に纏った。
大輝の身に纏ったこの鎧は、「鋼」と呼ばれる称号を持たない魔戒騎士が身に纏う鎧である。
しかし、大輝は魔戒騎士として多くの経験を積んでおり、その実力は称号持ちの騎士に匹敵する程であった。
「……!思い出した!あの人、にこが初めてホラーに襲われた時に奏夜と一緒にホラーを倒した魔戒騎士だわ!」
にこはホラー、アスモディに襲われた時に奏夜に救われたのだが、その時に大輝は奏夜の応援として駆けつけていたのである。
その時のことをにこは思い出しており、にこは大輝とは初めましてではないことも思い出したようであった。
大輝が鎧を身に纏った瞬間、ヘルディオルは大輝に向かっていったのだが、大輝は変化した魔戒剣を一閃し、返り討ちにしていた。
「ぐっ……!こいつ……くらえ!!」
先制攻撃に失敗したヘルディオルだったが、すかさずに攻撃を仕掛けていった。
「……ふっ、甘いな」
大輝はヘルディオルのストレート過ぎる攻撃を読み切っており、攻撃を完全に防ぐと、連続で魔戒剣を叩き込み、ヘルディオルに確実にダメージを与えていった。
「な、何故だ……!何故私の攻撃が全て防がれる!」
「簡単なことだ。俺とお前には決定的な実力差がある。それに、アキバのメイドを狙うお前に負けるわけにはいかないんだよ!」
こう言い放つ大輝の言葉はとても力強いものなのだが……。
「……大輝さん、完全にメイドさんにどハマりしちゃってますね……」
「アハハ……」
「やっぱり不思議と格好良いとは思えない台詞よね……」
「……ちょっと引くわ……」
奏夜と統夜は、大輝の台詞を聞いた時に大輝が完璧にメイドにハマってしまったことを察しており、苦笑いをしていた。
絵里もまた、大輝の台詞が格好良いとは思えずに苦笑いをしており、真姫はジト目になりながらドン引きしていた。
そんなことなどお構い無しで、大輝はホラーへと向かっていった。
「……これで決める!」
大輝は決着をつけるために力強く魔戒剣を振るうと、ヘルディオルの体を真っ二つに斬り裂いた。
「そ、そんな……!私の復讐は……!ミナリンスキーを殺すのは、私……なのに……!」
大輝の一撃によって真っ二つになったヘルディオルは、ことりに復讐することが出来ないことに絶望しながら消滅していった。
そして、鎧を解除して、元に戻った魔戒剣を鞘に納めた大輝はこのように呟いていた。
「……殺させはしないさ。アキバのメイドは絶対にな……」
「……なんだか、ツッコミを入れるのも馬鹿馬鹿しく思えてきたわ」
大輝の少し抜けた台詞にわざわざ反応していては疲れてしまうと判断したにこは、呆れながらもこれ以上の追求はやめておいた。
とりあえず、大輝がホラーを討伐したため、奏夜たちは大輝に駆け寄った。
「……すまんな。奏夜、統夜。お前らの獲物を横取りしてしまって」
「いえ、気にしないで下さい」
「奏夜の言う通りです。動機はともかくとして、守りたい対象は同じだったんです。それに、ホラーを誰が倒すかなんて問題じゃないですしね」
「……ふっ、確かにそうだな」
魔戒騎士である3人がこのような会話をしているところを、穂乃果たちはジッと眺めていた。
その会話が終わると、大輝はことりの方を見ていた。
「……今日のライブ。見させてもらったが、なかなか良かったぞ」
「えっ!?ライブ、見にきてくれたんですか!?」
まさか、魔戒騎士である大輝が今日の路上ライブに来ているとは思っておらず、ことりは驚きの声をあげていた。
「俺は伝説のメイドであるお前のファンだったが、これからはお前のファンになりそうだよ。音ノ木坂学院のスクールアイドル。μ'sのメンバーである南ことりのな」
大輝はμ'sの路上ライブを見て、ことりのことをミナリンスキーではなく、南ことりとして見るようになり、それを踏まえてファンであると宣言していた。
「!あ、ありがとうございます!!」
自分のことをファンだと言ってくれる人物がいることが嬉しく、ことりは頬を赤らめながらも嬉しそうに微笑んでいた。
「……これからも頑張れよ。スクールアイドル、μ'sよ」
大輝はそれだけ言い残すと、その場を離れていった。
「あっ、大輝さん!……それじゃあ、お前ら。また今度な!」
統夜はそんな大輝を追いかけていったため、その場には奏夜たちだけが残されていった。
「……なんていうか……」
「格好良いのか格好悪いのかよくわからない人だったわね……」
メイドが関わると熱くなってみたり、先ほどのようにクールな去り方をしてみたりを見ていた穂乃果たちは、大輝の本当の姿がわからず、絵里とにこは呆気にとられていた。
「……大輝さんは魔戒騎士としてはかなり優秀なんだぞ。なんだか、弁護してるみたいだけどさ……」
奏夜は大輝のことを熱弁するのだが、それがなぜだか大輝のことを弁護しているようにも感じ取れてしまい、奏夜は苦笑いをしていた。
「……まぁ、とりあえずホラーはいなくなったんだ。今日は帰ろうぜ」
「そうですね……」
こうしてラブライブに出場するために行った路上ライブは無事に終わることが出来て、奏夜たちはその場で解散した。
※※※
路上ライブが終わり、その場で解散となった奏夜たちだったが、奏夜、穂乃果、海未、ことりの4人は自然と再び集まっており、4人は現在神田明神に来ていた。
奏夜たちは神田明神の階段に並んで立って、今日のライブの成功の余韻に浸っていた。
「……上手くいってよかったね!ことりちゃんのおかげだよ!」
「うぅん!私じゃないよ!みんながいてくれたから、みんなで作った曲だから!」
この曲の歌詞を担当したのはことりだったが、ことりがこの歌詞を作れたのも、μ'sの存在が大きく、自分1人の力で作ったものとは思っていなかった。
「そんなこと……」
「……あるだろうな」
「そ、そーくん?」
「今日のライブを見てて思ったよ。今回のライブの成功は、1人だけの力じゃない。みんなの力が合わさったからだってな」
「そうそう!私もそれを言いたかったんだ!」
どうやらことりの伝えたいことは、奏夜の言ったことと重なる部分があるみたいだった。
「奏夜……。ことり……」
そんな奏夜やことりの言葉に海未は少々困惑していたが、穂乃果は微笑んでおり、3人もそれに合わせて笑みを浮かべていた。
「……それにしても、こうやって4人で並んでいると、ファーストライブのことを思い出すね」
「……うん、そうだね」
「あの時はまだ、私たちだけでしたもんね」
「……あの時の俺は本当に無力で何も出来なかったよ。まぁ、それは今もそうなのかもしれないけどさ」
ファーストライブの時、奏夜は1人でも多くのお客さんを呼ぼうと必死だったが、結果は誰も来ることがなかった。
あの時、統夜が駆けつけてくれなければ、ファーストライブの結果がどうなっていたか、わからなかった。
「そんなことはありません!奏夜は今も昔も私たちのために一生懸命ではありませんか!」
「そうだよ!そーくんが支えてくれるから、私たちはパフォーマンスに集中が出来るんだよ」
「そんなそーくんが無力だなんて、絶対に思わないよ!」
「お前ら……」
奏夜は本気で無力だと思っていたが、穂乃果たち3人は奏夜のことを心の底から信じているため、奏夜が何も出来ない無力な奴だと思うはずもなかった。
「……そうだな。そういうことにしておくよ。そう言ってもらえると嬉しいからな」
穂乃果たちの言葉を聞き、奏夜は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。
奏夜たち4人はそのまま、神田明神の階段から見える景色を眺めていた。
しばらくすると……。
「……ねぇ、私たちって、いつまで一緒にいられるのかな?」
「……ことり?」
「ことりちゃん、どうしたの?急に」
唐突なことりの言葉に奏夜は困惑していた。
それだけではなく、ことりの言葉には他の真意があるように感じ取れたため、ことりからは寂しそうな気持ちが伝わってきていた。
「だって!私たち、あと2年で卒業なんだよ!?」
ことりは悲痛な表情で訴えかける通り、2年生である奏夜たちは、あと2年もすれば、学校を卒業することになる。
進路もそれぞれ異なるため、いつまでも一緒にいられる訳ではなかった。
「……それは仕方ないことです」
いくら仲が良くても、人生や進路は人それぞれである。
よほどのことがない限りはそれが1つに重なることはないのである。
「そうだよな。それに……」
奏夜のような魔戒騎士は、毎日が命がけであり、いつ命を落としてもおかしくはない危険な仕事である。
そのため、穂乃果たちとは住む世界が違うだけではなく、人生が重なるということはあり得ないことであった。
しかし、ここまでハッキリと言うことは出来ず、奏夜は口をつぐんでいた。
「……?奏夜?」
「いや、なんでもない」
奏夜はそう言って話を誤魔化すのだが、海未は奏夜の思いを察したからか、これ以上の追求はしなかった。
穂乃果はことりの話の実感がわかないからか、ポカンとしていたのだが……。
「大丈夫だよ!ずっと一緒だよ!」
穂乃果はそう言いながらことりに抱きついていた。
「だって私、この先ずっとことりちゃんと海未ちゃんとそーくんと一緒にいたいって思ってるよ!大好きだもん!」
「大好きって、お前なぁ……////」
穂乃果の言う大好きと言うのはあくまでも友人としてということはわかっていたのだが、奏夜は恥ずかしさからか頬を赤らめていた。
穂乃果の真っ直ぐな言葉が嬉しかったからか、ことりは瞳をウルウルとさせていた。
「穂乃果ちゃん……」
ここで穂乃果とことりは1度離れるのだが……。
「……えいっ!」
穂乃果は奏夜と海未も巻き込み、4人はまるで肩を組むかのように抱きついていた。
「ちょっ、穂乃果!」
「は、恥ずかしいだろうが!」
「えぇ?いいじゃん!別に!」
「そうだよ。ちょっとくらいはこうさせてよ。私だって、みんなのことが大好きなんだもん!」
穂乃果たちはギュッと力強く抱きついており、互いの体温を感じていた。
奏夜は気恥ずかしさがあるからか顔は赤いが、奏夜も同じ気持ちであるため、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。
「だから……ずっと一緒にいようね!」
「うん!」
「えぇ!」
「あぁ!」
奏夜は魔戒騎士であるため、いつまでも一緒にはいられない。
そんなことはわかっていたのだが、奏夜は穂乃果たちとずっと一緒にいたいと思っていたため、力強く答えていた。
奏夜たちは互いの絆の深さを感じ取っていた。
しかし、奏夜たちは知る由もなかった。
ずっと一緒にいようという言葉が、とある事がきっかけで崩れ落ちそうになってしまうことを……。
このような話をした翌日、ことりの家のポストに1枚の手紙が入っていた。
それは、英語で「Kotori Minami」と書かれており、ことり宛ての手紙であった。
ことり宛てにこの手紙が送られたこの時から、既に始まっていたのである。
……μ's全体を襲い、その存在を脅かす大きな波乱が……。
……続く。
__次回予告__
『ずいぶんと暑くなってきたな。まさか、このようなことを計画するとは思わなかったがな。次回、「合宿」。どうやら何か企みもあるみたいだがな』
奏夜及び大輝のキャラ崩壊(笑)
特に大輝はベテランの魔戒騎士であるため、メイドとかには興味なさそうなんですけどね……。
まさかここまでどハマりするとは(笑)
しかも、大輝はことり推しになったようです。
前作である「牙狼×けいおん 白銀の刃」にも大輝は出ていましたが、ここまでキャラが崩壊することはありませんでした。
なので、前作を見た人は驚いたと思います。
ちなみに、今回登場したヘルディオルは、牙狼一期に登場したウトックの色違いとなっています。
そして、前作からさわちゃん降臨。
さわ子の衣装のクオリティは相変わらずのようです。
ことりが師事するくらいなので……。
恐らくさわ子はちょこちょこ登場するかな?とは考えています。
ここから先の話のことを考えると……。
さて、次回からは合宿回となります。
個人的にも早く合宿回は書きたいと思っていたので、執筆にと気合が入ります。
FF14はほどほどにして頑張りたいと思います(笑)
それでは、次回を楽しみに!