最近毎日毎日暑いですね……。
だけど、暑さに負けず頑張っていこうと思います。
さて、今回からいよいよラブライブの第11話に突入します。
ですが、原作+オリジナルといった感じの内容になっています。
それでは、第44話をどうぞ!
二学期がスタートし、剣斗が教師として音ノ木坂学院に潜り込んでから数日が経過した。
二学期開始時点ではμ'sのランキングは21位であり、ラブライブ出場が現実味を帯びてきた。
そのため、練習にも自然と熱が入り、奏夜や絵里の指導にも熱が入っていた。
そして、スクールアイドルについて知識のない剣斗は、そんな奏夜たちの様子を見守ることしか出来なかった。
そんな感じで数日が経過していた。
奏夜はいつものようにエレメントの浄化を行ってから登校していた。
奏夜は玄関で上履きに履き替え、そのまま教室に向かおうとしたのだが…。
「そーくん!!」
穂乃果が奏夜にタックルをする勢いで、奏夜に駆け寄っていた。
「うぉっ!?どうしたんだよ、穂乃果。そんなに血相変えて」
穂乃果が興奮冷めやらぬ感じだったため、奏夜は少しばかり困惑していた。
海未とことりも一緒のようであり、2人は穂乃果を追いかけて、先ほどようやく追いついていた。
「そーくん!19位だよ!?19位!!」
「19位って……。もしかして、またランキングが上がったのか?」
「そうだよ!このままいけばラブライブだよ!ラブライブ!!」
どうやらμ'sのランキングが再び上がり、ラブライブ出場圏内の19位まで上がっていたようであった。
しかし……。
「穂乃果。とりあえずは落ち着け。俺はまだランキングを見てないし、これからの話は全員で話をした方がいいだろ?」
「……むー……!確かにそうだけどさ……!」
穂乃果は奏夜の冷静な話が気に入らなかったからか、ぷぅっと頬を膨らませていた。
「だから奏夜にもその話は放課後すればいいと言っていたではありませんか」
どうやら海未とことりは事前にランキングのことは聞いていたようであり、海未は興奮している穂乃果をなだめていた。
「ことりもそう思いませんか?」
海未はここでことりに同意を求めるのだが……。
「……」
何故かことりは浮かない表情をして上の空になっていた。
「……ことり?どうしました?」
「ことりちゃん?」
ことりの様子がおかしいと感じたのか、海未と穂乃果は首を傾げながら語りかけていた。
「ぴぃっ!?な、何かな?」
「何かな?ではないですよ!ことり、最近様子が変ですが、何かあったのですか?」
「そ、そうかな?そんなことないと思うけど……」
「いや、しかし……」
海未はさらにことりを追求しようとしたのだが……。
「あっ、そうそう!ランキングの話だったよね?それは放課後に改めて話そうよ!……ほら、早く教室に行こっ!」
ことりは海未の追求を避けるべくまるで逃げるように教室へと向かっていった。
「……」
奏夜は険しい表情で教室へと向かうことりを見ていた。
(まただ……。ことりの奴、いったいどうしたっていうんだ?)
《ここまで続いているとはな……。ことりの奴、間違いなく何かを隠しているな》
(そうだな……。なるべく他のみんなには悟られないように調べないとな)
《それがいいだろうな》
奏夜はことりが教室へと向かっていくのを見守りながら、キルバとテレパシーで会話をしていた。
「……?奏夜?どうしましたか?」
「……いや、何でもない。さて、俺たちも行こうぜ」
ことりを追いかけるかたちで、奏夜もまた教室へと向かっていった。
「あっ、そーくん!待ってよぉ〜!!」
穂乃果と海未は慌てて奏夜を追いかけていった。
(ことりに何があったのかはわからない。だけど、このままにはしておけない。ことりが何かに悩んでるなら、俺が力になる。絶対に……!)
教室へ向かいながら、奏夜はこのように決意を固めており、表情がより険しくなっていた。
こうして教室に入った奏夜たちは普通に授業を受けて、放課後に上がったランキングについての話をすることにしていた。
※※※
そして放課後になり、奏夜たちはアイドル研究部の部室に集まっていた。
顧問である剣斗も部室に来ており、共にパソコンの画面に映る「19位」という数字を眺めていた。
「ほ、本当に19位なんだ!このまま行けばラブライブに出られるんだ!」
穂乃果は朝から現在までテンションが上がりっぱなしであり、休み時間にはクラスメイトであるヒフミトリオの3人にサインをせがまれる場面もあった。
「凄いにゃ!!」
「よくやったわね……。にこ……!」
凛とにこは、ラブライブ出場圏内に入っているという事実に感動していた。
「お前ら、まだランキングは確定した訳じゃないんだ。安心するのはまだ早いぞ」
「奏夜の言う通りよ。見てみなさい」
そう言いながら絵里はパソコンを操作すると、A-RISEのページを立ち上げていた。
すると……。
「……!?な、7日間連続ライブ!?」
どうやらA-RISEは、7日間連続でライブを行うと告知を出しており、そのことに穂乃果は驚愕していた。
「そ、そんなに!?」
「ラブライブに出場するには、2週間後の時点で、ランキングが20位に入っていないといけない」
『ま、20位圏外のグループだってこのま引き下がることはしないだろう。だからこそ、最後の追い込みに必死だろうな』
希は改めてラブライブに出場するための条件を説明していたが、ラブライブ出場グループが決まるのは、2週間後なのである。
「キルバの言う通りね。今から頑張って20位以内を勝ち取ろうとするスクールアイドルもたくさんいる」
「つまり、ここからが本番ってことね?」
真姫の言葉に、奏夜と絵里は頷いていた。
「だからと言って今から何か特別なことをやろうとしても空振りになるだろう」
「そうね。だからこそ、今度の学園祭でのライブで最高のパフォーマンスを見せましょう」
「うむ。目の前のステージに全力を注ぐ。とてもイイと思うぞ!」
顧問である剣斗も、奏夜たちが学園祭に向けて頑張ろうとしている様子を見て、頷いていた。
「それだったら!この部長にぜひ仕事をちょうだい!」
目の前の学園祭に向けて頑張ると決めたにこは、何かをしたいと思い、このようなことを申し出ていた。
「じゃあ、にこ。うってつけの仕事があるわよ?」
「へ?な、何?」
絵里はあっさりとにこに何かさせようとしていたため、にこはポカンとしていた。
絵里はにこに何をさせるか語らないまま全員を連れて生徒会室へと向かったのだが、そこではとあることが行われていた。
それは……。
ガラガラガラ……。
商店街で良く見る福引きであった。
その福引きの結果であることを決めようとしており、現在とある部活の2人組がそのチャレンジをしていた。
その結果……。
カランカラン……。
当たりと思われる金色の玉が福引きを回す器械から飛び出してきた。
「やったやった!」
「部長!」
大当たりに喜んでいた2人組は抱き合って喜びを分かち合っていた。
「書道部。午後3時からの1時間。講堂の使用を許可します」
どうやらこの福引きは講堂の使用権を勝ち取るためのものであった。
「何で講堂の使用を決めるのがくじ引きなのよ……」
「アハハ……。昔からそういう伝統らしくって……」
どうやらこの福引きによる講堂の使用権を決める方法は、音ノ木坂学院の伝統のようであった。
《それにしても、書道部が1時間も講堂で何をするって言うんだよ……》
(キルバ、あえてそこはツッコまないようにしようぜ)
書道部が講堂を使うということに疑問はあったのだが、奏夜とキルバはあえてそこのツッコミは行わないようにしていた。
「にこちゃん!」
「っ!」
次は自分たちの出番のため、にこは息を飲んでいた。
「それでは次はアイドル研究部……。うっ!!」
くじ担当の2人がアイドル研究部の名前を呼ぶのだが、にこは鬼気迫る表情をしていたからか、2人はたじろいでいた。
「見てなさい……!」
「が、頑張ってくださいね!」
「ふん!」
にこは鬼気迫る表情をして大当たりを狙っており、くじ担当の生徒の言葉にも強気な態度で返していた。
「にこちゃん!頼んだよ!」
「講堂が使えるかどうかで、ライブのアピール度は大きく変わってくるわ!」
にこは大当たりを勝ち取るために気合を入れており、にこは福引きを回す器械のレバーを力強く握っていた。
そして、ガラガラガラと回し始めると、奏夜たちは一斉にその様子を眺めていた。
もしにこが外れを引いてしまったらその時点で講堂は使えないため、奏夜たちは固唾を飲んでその様子を見守っていた。
希に至ってはどこからか数珠を取り出して神頼みをする程であったのである。
そんな中……。
《……なぁ、奏夜。俺は猛烈に嫌な予感がしているのだが、気のせいだろうか?》
(俺は最初から嫌な予感しかしてないけど、それを言うなよ。マジでフラグになるから)
奏夜はこのくじを引こうとしている時から嫌な予感はしていたのだが、あえて口には出さなかった。
それが現実になる確率が非常に高いからである。
キルバがフラグになるような言葉を口走ってしまい、奏夜はジト目で事の顛末を眺めていた。
福引き用の器械はガラガラガラガラと回っており、そこから1つの玉が出てきたのだが……。
「あ……。あぁ……」
なんと出てきたのは当たりである金色の玉ではなく、白い玉であった。
「ガーン……!」
外れを引いてしまったとわかったにこは顔を真っ青にしながら外れの玉を手にして唖然としていた。
「残念!アイドル研究部!講堂は使用出来ません!」
講堂の使用権を勝ち取ることが出来ないとわかると、奏夜と剣斗以外の全員がその場でうなだれていた。
(……やっぱりこうなるか……)
《嫌な予感が見事に的中してしまったな》
この展開を予想していた奏夜は、頭を抱えていた。
※※※
「どーしよー!!」
講堂を勝ち取ることが出来なかった奏夜たちは現在屋上に来ており、穂乃果は講堂を使用出来ないことに頭を抱えていた。
「だってしょうがないじゃないの!くじ引きで決まるなんて知らなかったんだもの!」
「あ!開き直ったにゃ!!」
「うるさい!」
にこの開き直りに凛は異議を唱えるが、すぐににこはそんな凛の言葉を遮っていた。
「あぅぅ……。なんで外れちゃったのぉ……?」
花陽は講堂が使えないのがショックなのか、ポロポロと涙を流していた。
「どーしよー!!」
「ま、予想されたオチね」
「俺もそれは思ってたよ」
奏夜だけではなく、真姫もこの展開を予想していたようであり、冷静だった。
「にこっち……。信じてたんよ……」
希もどうやらショックのようであり、体育座りでうなだれていた。
「うるさいうるさいうるさーい!!悪かったわよぉ!!」
自分はくじを引いただけなのにここまで責められてしまい、にこは参っていた。
「気持ちを切り替えましょう。講堂が使えない以上、他の会場でやるしかないわ」
絵里もショックは隠せないものの、それを引きずろうとはせず、どこでライブを行うかを考えることにした。
「まず最初に思いつくのは体育館だけど、運動部が使うだろうな」
奏夜は体育館でのライブを考えていたのだが、運動部が体育館を占拠することが予想された。
「確かにそうね……。他に出来そうなところはないかしら?」
「ねぇねぇ、廊下とかは?」
「明らかに邪魔になるだろうな……」
穂乃果は廊下でライブを行うことを提案したのだが、人の往来が激しい廊下でライブをするのは通行の邪魔にしかならなかった。
「奏夜!イイ考えを思いついたぞ」
そんな中、顧問でもある剣斗が何かを閃いたようであった。
「……聞かせてもらおうか」
「ライブの場所がなければ作ればいい。この校舎の裏手にでも魔戒法師による結界によるドームを作り、そこに客を呼べば……」
「却下だ」
奏夜は剣斗が最後まで言い切る前にその意見をバッサリと切り捨てていた、
「そ、奏夜……。小津先生は教師なんだから最後まで話を聞いてあげなさいよ……」
教師である剣斗の意見を容赦なく切り捨てる奏夜に、絵里は少しばかり引いていた。
これは奏夜が剣斗のことを友であると認めているからこそ出来ることなのだが……。
「だって考えてもみろ。魔戒法師の力をライブのために使うなんて……。ロデル様なら許可しそうだけど、明らかに非効率だろ。魔戒法師の協力だって得られそうにないだろうし」
「む……。そうか……。イイ案だと思ったのだがな……」
自分の案を却下され、剣斗は少しだけ残念そうにしていた。
「だけど……。ライブの場所がないなら作ればいいか……。そこに関してはその通りだと思うよ」
「おぉ!そうかそうか!そこに目をつけてくれるとは、奏夜、お前はやはりイイ!とてもイイぞ!」
「アハハ……。大袈裟だな……」
奏夜が剣斗の意見の一部を受け入れたことにより、剣斗の表情は明るくなり、熱っぽく語る剣斗に、奏夜は苦笑いをしていた。
「確かに私もそう思ったけど、会場を作るって言ってもどこでやるつもりよ?」
「真姫の言う通りね。そのような場所を確保することはかなり難しいと思うわ」
真姫と絵里はそんな奏夜の意見に異議を唱えていた。
学園祭ライブを成功させるためにみんなが真剣なため、シビアな意見も出てくるのである。
「うーん……。そうだなぁ……。確かに場所を確保するのはかなり難しいような……。ん?待てよ?」
奏夜は何か良い案がないか考えていたのだが、どうやら何か妙案が思いついたみたいだった。
「……なぁ、みんな。ここでライブをするっていうのはどうだ?」
「ここって……屋上でライブってことですか?」
「まぁな」
「あっ!穂乃果も屋上でライブをしたらどうかなって思ったんだよね!」
屋上でライブをするという提案に海未は困惑しており、穂乃果は同じことを考えていたようであった。
「だってこの屋上は、私たちにとって大切な場所でしょ?だからこそ、ライブをするのに相応しいと思うんだよね」
「それに、屋上でライブってことは野外ライブだろ?なんか雰囲気が出るとは思わないか?」
「野外ライブか……。格好いいにゃ♪」
どうやら奏夜が補足で話した野外ライブという言葉に、凛は惹かれるものがあるみたいだった。
「だけど、どうやってお客さんを呼ぶの?」
奏夜と穂乃果の案は妙案だと思われたのだが、花陽がもっともな疑問をぶつけていた。
「花陽の言う通りね。ここだったらたまたま通りがかることもないんじゃないの?」
「そこは心配ないさ。宣伝はバッチリと行わせてもらうよ」
「うむ!それが1番大事だろうな。私も協力しよう」
花陽と真姫の不安に対し、奏夜と剣斗はその分宣伝を頑張ると言い張り、2人揃ってドヤ顔をしていた。
「……それだけじゃない。本番は大きな声で歌おうよ!!」
「は?宣伝はともかくとして、そんなんで解決出来るはずが……」
「いや!それはイイ考えだと思うぞ!」
「お、小津先生……?」
にこの言葉を遮るかたちで剣斗は穂乃果の意見に賛同しており、にこは困惑していた。
「みんなの思いが込もった歌を聞けば校舎の中や外を歩いている者にもきっと聞こえるだろう。大丈夫だ。お前たちμ'sはイイスクールアイドルだ。お客さんもきっと来るだろう」
「小津先生の言う通りだよ!それは私も思ってたことなんだ。私たちが大きな声で歌ったら、お客さんもきっと来てくれるよ!」
剣斗の言葉に穂乃果はさらに乗っかり、熱い思いを語っていた。
「ふふ、穂乃果らしいわね」
穂乃果の思いを聞いた絵里は笑みを浮かべていた。
「ダメかな……?」
「……いつもそうやってやって来たのだものね……。μ'sっていうグループは」
「絵里ちゃん……」
このように語る絵里は、穏やかな表情をしていた。
「決まりよ!ライブは屋上にステージを作って行うことにしましょう」
「確かに。それが1番μ'sらしいのかもしれないね」
絵里は屋上でライブする決意を固めており、それに希が賛同していた。
それに反対する者はおらず、学園祭のライブは屋上で行うことになった。
こうして、頑張るべき目標が出来た奏夜たちは、学園祭ライブに向けて練習を行うことにした。
※※※
練習を終えた奏夜は穂乃果たちと別れると、そのまま番犬所へと向かった。
剣斗も番犬所へ行こうとしていたのだが、教師としての仕事が残っているため、職員室へと向かっていった。
「……お、来ましたね、奏夜。ところで、剣斗は一緒ではないのですか?」
「剣斗は教師の仕事があるみたいで、俺だけ先に来ました」
「なるほど、教師というのはなかなか大変みたいですね」
剣斗は教師として翡翠の番犬所の管轄にやって来たため、ロデルは改めてその苦労を実感していた。
「ところで奏夜、μ'sのランキングがついに19位まで来ましたね」
「えぇ。今はもうじき行われる学園祭に向けて頑張っています」
「そうですか。この2週間はどのスクールアイドルグループも躍起になっています。ここが正念場ですよ」
「はい!俺も全力でみんなを支えようと思っています」
「頼みましたよ、奏夜。……本題に入りますが、指令です」
どうやら今日は指令があるようであり、ロデルの付き人の秘書官が奏夜に赤の指令書を渡していた。
奏夜は指令書を受け取ると、魔法衣の裏地から魔導ライターを取り出すと、魔導火を放って指令書を燃やしていた。
そして、そこから飛び出してきた魔戒語の文章に注目しており、その文章を音読したら、魔戒語の文章は消滅した。
「……わかりました。ただちにホラー討伐にあたります」
「頼みましたよ、奏夜。剣斗の方にも指令書は送っておきます。もし合流が出来るのなら青銅騎士剣武(ケンブ)の力、見てみると良いですよ」
青銅騎士剣武というのは、剣斗の魔戒騎士としての称号であり、魔戒騎士の中でも由緒ある家柄の称号なのだ。
「なるほど……。わかりました。その時には剣斗と協力してホラーを倒します」
「頼みましたよ、奏夜」
奏夜はロデルに一礼をすると、番犬所を後にした。
μ'sの練習が終わった頃には夕方になっていたため、番犬所を出た時には既に夜になろうとしていた。
「さて……。キルバ、さっそくホラーの捜索を始めようぜ」
『そうだな。奏夜、こっちだ』
こうして奏夜はキルバのナビゲーションを頼りに、ホラーの捜索を開始した。
そして、しばらく歩いていると、奏夜は秋葉原某所にある今は使われていない廃ビルの前に来ていた。
「……キルバ、もしかしてこの中か?」
『いや、奴はこの近くに潜んでいるみたいだ。奏夜、油断するなよ』
「あぁ、わかってる」
どうやらホラーは近くに潜んでいるみたいであるため、奏夜は魔法衣の裏地から魔戒剣を取り出すと、いつでも抜刀できる状態にしておいた。
すると……。
『……!奏夜!来るぞ!!』
キルバがこのように警告をすると、建物の陰から何者かが素早い動きで接近し、爪のようなもので奏夜を斬り裂こうとしていたため、奏夜は魔戒剣を抜いて何者かの攻撃を防いでいた。
さらに奏夜は魔戒剣を振るってその相手を弾き飛ばすと、そこでようやくその相手の姿を認識することが出来た。
奏夜の前に現れたのは、まるでネズミのような姿をしたホラーだった。
『奏夜。こいつはラピットマウス。そのネズミのような見た目通り、すばしっこいホラーだぞ』
キルバが解説する通り、このホラーはラピットマウスと呼ばれるホラーであり、素早さが特徴のホラーである。
このホラーには他にも特殊な能力があるのだが、どうやらキルバはその能力を知らないみたいである。
「明日から学園祭の準備で忙しいんだ。一気にケリをつける!!」
このように本音を漏らしつつ、奏夜はラピットマウスに向かっていった。
キルバの説明通り、ラピットマウスは素早い動きが特徴なのだが、このホラーよりも素早いホラーを知っているため、その動きは難なく捉えられた。
「ぎ、ギィィ……!?」
ここまであっさり動きを見切られるとは思っていなかったからか、ラピットマウスは驚きを隠せずにいた。
「お前は確かに速いよ。だけど、俺が初めて統夜さんと組んだ時に倒したタイガード程じゃない!」
奏夜は初めて統夜と出会い、共に倒したタイガードと呼ばれるホラーはラピットマウス以上に素早い動きのホラーであり、その時は奏夜がタイガードの機動力を奪う戦法を駆使して討伐していた。
あれから月日が経ち、奏夜も魔戒騎士として成長しているため、素早い動きを捉えることには慣れていた。
それだけではない。
尊士やジンガとの敗戦や魔導馬光覇の獲得。
様々な出来事が奏夜を大きく成長させており、奏夜は実力のある魔戒騎士へと成長していたのだ。
だからこそ、ラピットマウスの動きを見切るのも造作ではなかった。
奏夜は魔戒剣を2度、3度と振るい、ラピットマウスの体を斬り裂くと、さらに蹴りを放ってラピットマウスを吹き飛ばした。
「ぎ、ギィィ……!!」
ここまであっさりと奏夜に圧倒されてしまい、ラピットマウスは奏夜を睨みつけていた。
「さて、鎧を召還して一気にケリをつけてやる……!」
奏夜はラピットマウスを睨みつけると、そのまま鎧を召還しようとしたのだが……。
「ギィィィィィィィィィ!!」
ラピットマウスはこのように絶叫すると、周囲の空間が黒い円に変化すると、その円からラピットマウスと同個体が3体も出現し、奏夜の前に現れた。
「なっ!?同個体を呼び出した!?」
『ラピットマウスは素早さだけが特徴のホラーのハズだ!あんな空間を作って同類を呼ぶ能力など聞いたことがないぞ!』
このラピットマウスに秘められたこの力は、どうやらキルバも知らなかったみたいだった。
奏夜とキルバはラピットマウスが増えたことに驚いていたのだが、そんな奏夜の様子を遠くで見守る影であった。
「……ジンガ様も戯れが過ぎるな。あんな小僧如きを気にかけるとは……」
奏夜を遠くで見守っていたのは、何と奏夜と幾度か衝突した尊士であった。
「あの小僧は確かにちょっとは強くなったみたいだが、まだまだ私の敵ではない」
尊士は奏夜の成長を認めてはいたのだが、自分を倒せる程ではないと感じていた。
「ジンガ様の持たせた魔導具であのホラーと同個体を呼び寄せたのだが、奴らは知る由もないだろうな。あの小僧はこれを乗り越えることが出来るか……?」
どうやらラピットマウスが増えたのは、ホラーの力ではなく、ジンガがどこからか仕入れた魔導具の力によるものだった。
その力で擬似ゲートが開き、そこから同個体が出現したのである。
自分の仕事を終えた尊士は怪しい笑みを浮かべると、その場から姿を消したのであった。
「……4対1か……。数なんぞ関係ない!やってやろうじゃねぇか!」
奏夜は4対1と、明らかに不利な状況ではあるが、それを乗り越えようとしており、4体のラピットマウスを睨みつけていた。
そして、ラピットマウスが奏夜に迫ろうたしたのだが……。
「奏夜!!」
教師の仕事を終えた剣斗が駆け付けてきた。
「剣斗!仕事はもういいのか?」
「あぁ。仕事をしていたら指令書が来たからな。急いで仕事を終わらせてきたという訳だ」
「先生も大変だな……」
奏夜は生徒のためあまり実感はないのだが、教師の大変さに苦笑いをしていた。
「それよりも、同じホラーが4体もいるとはな」
「あぁ。何故かわからないが、ゲートのようなものが現れて、そこから3体もラピットマウスが出て来やがったんだ」
「なるほど。それは気になるが、まずは目の前の障害を排除することにしよう!」
剣斗はそう宣言すると、魔戒剣を抜き、専用の装備である盾も取り出していた。
「……!剣斗って、剣と盾の両方を使う魔戒騎士なんだな」
魔戒騎士は主に魔戒剣のみをメインの武器で戦うため、盾を装備している魔戒騎士というのは珍しかった。
そのため、奏夜は驚いているのである。
「うむ。我が青銅騎士は昔より騎士道を重んじる家系。故により騎士らしくあるために剣と盾を装備しているのだよ」
「なるほど……」
奏夜がこのように納得していると、4体のラピットマウスが同時に襲いかかってきた。
「……剣斗!」
「あぁ!」
奏夜と剣斗はアイコンタクトで連携を取り合うと、それぞれの魔戒剣を一閃し、2体ずつ吹き飛ばしていた。
「剣斗!そっちの方は任せたぜ!」
「あぁ、当然だ!」
どうやら奏夜と剣斗はそれぞれ2体のラピットマウスを倒そうとしていた。
「……青銅騎士の力、刮目するといい!」
剣斗はこう宣言すると、ガシッと魔戒剣を両手で掴んでいた。
その魔戒剣をそのまま高く突き上げると、円を描いた。
その部分のみ空間が変化し、その部分から放たれる光に剣斗は包まれていた。
すると、円の部分から青銅の鎧が現れると、剣斗は青銅の鎧を身に纏っていた。
この鎧こそ、青銅騎士剣武(ケンブ)。
剣斗が受け継いだ、剣斗の魔戒騎士としての名前である。
彼の身に纏う鎧は、その名の通り、青銅の輝きを放つ鎧なのである。
「これが、剣斗の鎧……」
剣と盾だけではなく、青銅の鎧を身に纏った剣斗のその姿は、西洋の騎士と言っても自然であるため、奏夜はその鎧に見入っていた。
『奏夜。見入ってる場合じゃないぞ』
「おっと、そうだった!」
奏夜は慌てて我に帰ると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
その部分のみ空間が変化し、奏夜はそこから放たれる光に包まれた。
すると、円の部分から黄金の鎧が出現すると、奏夜は黄金の鎧を身に纏っていた。
こうして、奏夜は陽光騎士輝狼の鎧を身に纏ったのである。
「ほう。これが奏夜の鎧か!あの牙狼に匹敵する輝きではないか!イイ!とてもイイぞ!」
剣斗もまた、奏夜の鎧を初めて見ており、輝狼の放つ黄金の輝きに見入っていた。
『剣斗……。お前さんも見入ってる場合じゃないぞ』
「おっと!そうであったな!」
奏夜だけではなく剣斗も同じことをキルバに注意されてハッとしていた。
『やれやれ……。性格は違うが、この2人は似た者同士なのかもしれないな……』
奏夜と剣斗が同じことで注意されたことに対して、キルバは呆れていた。
そうしているうちに4体のラピットマウスが奏夜たちに迫ってきた。
「……剣斗!」
「承知!」
奏夜と剣斗は互いの顔を見て頷くと、それぞれ2体のラピットマウスを相手にしていた。
「ギィィ!!」
まず最初に1体のラピットマウスが剣斗に迫っていた。
ラピットマウスはその鋭い爪で剣斗の体を貫こうとしたのだが、剣斗は盾を前に突き出すと、あっさりとラピットマウスの攻撃を防いでいた。
「そのような攻撃で……。我が誇り高き小津家の家紋、一角獣の紋章がついたこの盾を貫けるものか!」
剣斗は熱い口調でこう言い切ると、盾を押し出してラピットマウスを弾き飛ばし、魔戒剣が変化した青銅剣を一閃した。
その一撃によってラピットマウスの体は真っ二つに斬り裂かれ、1体のラピットマウスは消滅した。
「まずは1体!!」
鎧を召還して早々に、剣斗が1体のラピットマウスを討滅していた。
「流石は剣斗だな。俺だって!!」
剣斗の活躍に気合が入る奏夜に、2体のラピットマウスが同時に襲いかかるのだが、奏夜は無駄のない動きで2体の攻撃をかわしていた。
「はぁっ!!」
奏夜はすかさず陽光剣を一閃すると、1体のラピットマウスを真っ二つに斬り裂いた。
「残るは2体!」
奏夜もまた、ラピットマウスを1体倒したため、残るラピットマウスは2体となり、1人1体ずつ倒せば速やかに決着がつくものと思われた。
「「ぎ、ギィィ……!!」」
2人が鎧を召還し、あっという間に2体の仲間が倒されてしまい、ラピットマウスは焦ってう。
「「ギィィィィィィィィィ!!」」
2体のラピットマウスは再び増援を呼ぶためにこのように雄叫びをあげていた。
そんな2体の雄叫びに奏夜と剣斗は焦るのだが、先ほどのゲートは現れる気配はなく、その場は静寂に包まれていた。
「なるほど、増援のカラクリは理解したぞ。奏夜、どうやらもう増援は現れないみたいだ」
「了解。だったら、一気にケリをつけようぜ、剣斗」
「承知した!」
奏夜と剣斗は互いに背中を預ける形でそれぞれラピットマウスを睨みつけており、それぞれの剣を構えていた。
「「ギィィィィィィィィィ!!」」
増援は呼べないとわかったラピットマウスは覚悟を決めたのか、奏夜と剣斗に向かっていった。
「……剣斗!」
「承知!」
2体のラピットマウスは同時に奏夜と剣斗に飛びかかってきたため、2人は同時にそれぞれの剣を一閃した。
その一撃により、2体のラピットマウスは同時に真っ二つに斬り裂かれ、消滅した。
「よし……!」
初めて共闘するとは思えない連携を見せた奏夜と剣斗は見事にラピットマウスを全滅させたため、それぞれの鎧を解除し、元に戻った魔戒剣をそれぞれの鞘に納めていた。
「奏夜、流石だな。お前が戦うところは初めて見たが、私の見立て以上だったぞ!」
「アハハ……そうかな?」
剣斗はストレートに奏夜のことを褒めており、奏夜はまんざらでもなさそうだった。
『それにしても、お前ら、初めて共に戦うんだろ?そうとは思えないほど息がピッタリだったな』
「そうだろう?それは私と奏夜がイイ友である何よりの証だ!」
「そこは否定しないよ。不思議とそう呼ばれるのが悪くないって思えるようになってきたからさ」
どうやら奏夜は、剣斗に友と呼ばれることに対して悪い印象は持っていなかった。
「奏夜。あのホラーは最初は1体だったが、数が増えたという訳なのだな?」
「あぁ、そうなんだ。あのホラーが叫んだ途端、ゲートのようなものが現れてな」
その時の状況を奏夜が話すと、剣斗はウンウンと頷いていた。
「それは、魔導具の力によるもので間違いないだろうな」
「魔導具?そんなものがあるのか?」
剣斗の推測は意外なものであったため、奏夜は驚いていた。
「その魔導具は擬似ゲートを作り出すものなのだが、その性質上、使用は禁止され、封印されていたはずなのだがな」
どうやらラピットマウスの力の正体は、禁断の魔導具の力によるものであった。
「そんなものを持ち出して使うってことは……」
「恐らくはあのジンガとかいう奴の仕業と見て間違いないだろう」
「奴はそんな魔導具まで持ち出すなんて……」
ジンガが禁断の魔導具を持っていることに、奏夜は驚きを隠せなかった。
そんな魔導具の情報を知っているのは、一部の魔戒騎士や魔戒法師のみだからである。
「これは私の推測だが、奴は元魔戒騎士である可能性はあるだろうな。それだけではない。魔戒法師もしくは元魔戒法師が関与している可能性もありそうだ」
「!?ま、まさか……そんな……。いや、あり得ない話じゃないか……」
奏夜は剣斗の話をあり得ないと一蹴したかったが、それは出来なかった。
「まぁ、そんな推測よりも、まずは目の前の問題を解決していこうではないか」
「そうだな……。とりあえずは帰るか。明日も早いし」
「それが良いだろう。さぁ、奏夜。共に帰ろうではないか!互いに熱く語り合いながらな!」
「アハハ……」
こうして、ホラーを討滅した奏夜と剣斗は一緒に帰路についたのであった。
学園祭も迫っていたのだが、奏夜たちに大きな危機が迫っているということを、奏夜は知る由もなかった……。
……続く。
__次回予告__
『もうすぐ学園祭か。だというのにことりの奴や穂乃果のやつ……。いったいどうしたっていうんだ?次回、「亀裂」。こいつは、まずいことになったんじゃないのか?』
今回初めて剣斗の鎧が登場しました。
剣斗は剣と盾を使う魔戒騎士であるため、その手の魔戒騎士はゼクスに次いで2人目になっています。
まぁ、ゼクスは暗黒騎士ですが……。
今回登場した剣武の鎧は、称号の持たない騎士の纏う「鋼」の鎧を、より西洋の騎士っぽくした感じになっています。
顔の部分は狼の顔になってはいますが。
さて、次回予告の時点で不穏な雰囲気が出ていましたが、次回はその予告通りの内容になります。
奏夜やμ'sを待ち受ける運命とは?
それでは、次回をお楽しみに!