そういえば、「神ノ牙」の上映日が来年の1月に決まりましたね!
久しぶりにあの三騎士が揃うみたいですし、ぜひ見に行きたいです!
この小説にもジンガは関わっていますし(笑)
さて、今回は物語が大きく進んでいきます。
これから、奏夜たちを待ち受けるものとは?
それでは、第53話をどうぞ!
……ここは秋葉原某所にある今は使われていない廃ビルの一室。
その部屋に1匹の黒い蝶が現れたのだが、その蝶を黒い法衣のようなものを着た女性が捕まえていた。
その蝶を捕まえた女性……アミリは、自らが放った蝶が持ち帰った情報を主であるジンガに伝えようとしていた。
「……ジンガ様。失礼します」
アミリはジンガのいる部屋へと移動すると、このように挨拶をして、ジンガに頭を下げていた。
「おう、アミリ。どうやら、良い情報を持ってきたみたいだな」
「……はい。あの南ことりとかいう小娘の留学ですが、明後日だそうです。時間は言っていませんでしたが、恐らくは昼頃ではないかと」
「そうか……。これで、あのμ'sとやらは永遠にバラバラになりそうだな」
ことりが2日後に留学すると知り、ジンガは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。
しかし……。
「ジンガ様。どうやらそのμ'sとやらを脱退した小娘が何かしらのきっかけがあり、μ'sに復帰したみたいです。その結果、バラバラだった連中がまとまりそうになっております」
「フン。ことりとかいう小娘が留学することが決まってるというのに、無駄な足掻きを……」
ジンガはアミリの報告を聞いても冷静だった。
留学という話を簡単に覆せるとは思っていないからである。
「ですが、あの魔戒騎士は何かを企んでいるようです。下手をすれば、例の小娘の留学はなかったことになるのでは?」
「ふむ……。そうなったらあの小僧はきっとさらに力をつけることになるか……」
奏夜の強さの源は、μ'sメンバーにあると感じていたジンガは少しだけ危機感を抱いていた。
そこで……。
「尊士。お前はあの小僧の動向を探れ。万が一あの小僧が小娘の留学を阻止しようと動いたならば、それを全力で邪魔するんだ」
「ハッ、かしこまりました」
ジンガの密命を受けて、尊士はジンガに頭を下げてその命令を承認していた。
その命令を受けた尊士は、奏夜の動きを探るべく、どこかへと姿を消したのであった。
「さて……。ここからいったいどうなるのか、見ものだな……」
ここからは何が起こるかわからないと感じたジンガはグラスに入ったワインを飲みながら、その状況を楽しんでいたのであった……。
※※※
スクールアイドルを辞めると言っていた穂乃果が無事に復帰し、奏夜はすかさず穂乃果に海未やことりと仲直りをさせようとしていた。
そんな中、ことりの留学が2日後に迫る中、奏夜は海未と共にことりの家を訪れていた。
そこで、ことりの隠された真意を感じ取った奏夜は、とある作戦を決行しようとしていた。
その話を海未にした後に、奏夜は電話で剣斗にその作戦を説明していた。
奏夜が直接伝えればいいのだが、翌日はキルバとの契約の日であるため、奏夜は動けないのである。
そのため、奏夜は剣斗に様々なことを託したのであった。
そして翌日の放課後、剣斗は穂乃果とことりを除いたμ'sメンバー全員をアイドル研究部の部室に集めていた。
「うむ、皆揃ったようだな」
招集したメンバーが全員集まり、剣斗はウンウンと頷いていた。
「あれ?奏夜君と穂乃果ちゃんは?」
花陽は奏夜と穂乃果の姿がないことに対して首を傾げていた。
「うむ。奏夜については後で話すが、穂乃果はあえて呼んでいない。後から話そうと思っているのでな」
「そうなんですか……」
何故穂乃果を今呼ばないかは疑問だったのだが、花陽はあえて追求しなかった。
一方海未は、奏夜が気を遣ってくれたからだろうと察しており、穏やかな表情になっていた。
「さて、本題に入らせてもらうが、ことりが明日日本を発つことになる」
「ことり……。もう留学してしまうの……?」
ことりとの別れが迫っていると知った絵里は悲痛な表情をしており、海未以外のメンバーも悲しげな表情をしていた。
「そこでだ。急ではあるが明日、ライブを行なおうと思う。……“9人全員”でな!」
剣斗は9人全員というところを強調しつつライブを行うことを話しており、そんな剣斗の提案に、海未以外の全員が驚愕していた。
「ちょっと!いくらなんでも急すぎるわ!」
「そうよ!それに、ことりは明日留学でしょ?9人全員でライブなんて無理に決まってるじゃない!」
剣斗の提案があまりに無謀なものだと思ったからか、にこと真姫が異議を唱えていた。
「まぁ、慌てるな。これは私の提案ではない。全ては奏夜が考えたことなのだ」
「それで、そーや君はどうしたんだにゃ?」
「そうやねぇ。奏夜君が何か計画してるなら奏夜君が話すのが手っ取り早いと思うんやけど」
この作戦を提案したのが奏夜だと知り、凛と希は疑問をぶつけていた。
「うむ。奏夜もそうしたいのは山々みたいなのだが、今日はキルバとの契約があるからなのだ」
「「「「「「契約?」」」」」」
キルバとの契約という聞きなれない言葉に、海未以外の全員が首を傾げていた。
「うむ。魔戒騎士は大抵魔導輪や魔導具と契約をしているのだよ。そして、それらと契約した魔戒騎士は、1月に1度、その命を差し出さなければいけないのだ」
「い、命を……!?」
剣斗はサラッと話していたがあまりに話が大きいため、花陽の顔は真っ青になっていた。
「まぁ、そんなに気にすることはない。今日1日だけ仮死状態になるだけで、実際に死ぬ訳ではないのだからな」
そんな花陽をフォローするために、剣斗は説明を付け加えていた。
「それにしても、そんなことまでしなきゃいけないなんて……」
「魔戒騎士って大変やね」
魔導輪との契約の話を聞き、真姫と希は苦笑いをしていた。
「ところで、小津先生はキルバみたいな魔導輪とは契約してないんですか?」
「うむ。私もそうだが、代々青銅騎士剣武(ケンブ)の称号を受け継いだ先代達も魔導輪との契約はしていない」
「それでは、どうやってホラーを探すのですか?」
「心配ない。熱いパッションがあればホラーを探すなど容易なことだ」
「な、なるほど……」
剣斗が自信満々に言っているため、海未は思わず納得してしまった。
しかし……。
「まぁ、それは冗談なのだが」
剣斗はサラッと冗談を言っており、そのことに対して海未たちは思わずコケそうになっていた。
「な……何よそれ!」
「アハハ……。小津先生って結構お茶目なところがあるんだね……」
真姫はサラッと冗談を言う剣斗に文句を言っており、花陽は知られざる剣斗の一面に苦笑いをしていた。
「実際は魔戒法師が使っている魔針盤を使ってホラーを捜索している。我が小津家は代々から法術の心得もあるのでな」
剣斗はこのように説明をすると、魔戒法師がホラー捜索などに用いる魔針盤と呼ばれる魔導具や、魔導筆を取り出して海未たちに見せていた。
「へぇ、そんなのがあるんですね……」
「小津先生のことだから本当に気合でホラーを探しているのだと思ったけど……」
剣斗はアイドル研究部の顧問であるため、μ'sメンバーは他の生徒よりも剣斗と交流する機会は多い。
そのため、剣斗となら本気で気合でホラーを探しかねないと思い、絵里は苦笑いをしていた。
「それに、ライブをするって言っても曲はどうするのよ?今から何かを用意して練習するなんてとても無理だわ」
そして真姫は、ライブをするにあたって1番問題になるだろうことを指摘していた。
しかし、剣斗はその指摘に動じることはなく、むしろ笑みを浮かべていたのである。
「ふっ……。あるではないか!バラバラだったμ'sが再スタートするのに相応しい、とびきりイイ曲がな!」
剣斗は不敵な笑みを浮かべながらこのようなことを言っていた。
再スタートに相応しいと聞き、海未たちは何の曲をやるのか察したようであり、口々に「あっ!」と言っていた。
「まぁ、そういう訳だ。さぁ、みんな!いつでもライブが行えるよう、準備を始めるぞ!」
『はい!』
剣斗がこのように号令を出しており、海未たちは一斉に応えていた。
「さて、私は明日講堂が使えるように掛け合ってこよう」
剣斗は講堂を確保するために、どこかへと向かっていった。
「それじゃあ、私たちは手分けしてライブの宣伝をしましょう!」
絵里はライブの宣伝を提案しており、他のメンバーはそれに賛同しているからか、無言で頷いていた。
こうして、明日行われるライブの準備が始まったのであった。
このライブが、μ'sの再スタートとなることを信じて……。
※※※
そんな中、キルバと契約を行い、仮死状態になっていた奏夜が目を覚ましたのは間もなく日付が変わるといったところだった。
奏夜は起きてからすぐに携帯をチェックしたのだが、穂乃果とことり以外のメンバーからメールが来ていた。
その内容としては、いきなりライブをやることについての文句もあったのだが、ライブを必ず成功させようといった内容乃ものもあり、穂乃果とことりを絶対に連れ戻してほしいというメッセージもあった。
そのメールを全て確認した奏夜は、ここまで準備を進めてくれた剣斗に感謝をしていた。
こうして、明日はμ'sの存続がかかる1日となるため、必ずことりを連れ戻してライブを成功させると決意を固め、奏夜は再び眠りについたのであった。
そして翌日、この日は学校が休みのため、奏夜たちは午前中から学校へ来ていた。
「……そーくん!それ、本気で言ってるの!?」
穂乃果は奏夜からライブのことを今聞かされたようであり、驚きを隠せずにいた。
「そんなこと、冗談で言うもんか。俺は本気でやるつもりだぞ。……9人全員でな」
「9人……?でも。ことりちゃんは……」
「ああ。今日、日本を発つみたいだ」
「え?それじゃあ、9人でライブなんて無理なんじゃ……」
穂乃果は9人でライブをするという奏夜の提案は不可能なものではないかと感じとり、不安な表情をしていた。
しかし、奏夜はそんなことを気にするどころか、冷静だった。
「そうかもしれないな。だけど、俺はことりを連れ戻すつもりだ」
「連れ戻すって……。今日日本を出発するんでしょ?そんなこと……」
「お前の言いたいことはわかる。正直なところ、俺1人の力じゃどうにもならないからな。穂乃果、お前の力が必要なんだ」
「私の力……?」
奏夜は何故そこまで自分の力を頼るのか。
そこが理解出来なかった穂乃果は首を傾げていた。
「とりあえずそこら辺の話は後だ。ことりを連れ戻す前にお前は海未と会って仲直りをしてもらう」
「……うん」
どうやら穂乃果は穂乃果で海未に伝えたいことがあるからか、奏夜の言葉を拒否せず、真剣な表情で頷いていた。
「海未は今講堂でお前のことを待っているはずだ。行ってこい。そして、自分の思いを海未にぶつけてこい!」
「そーくん……。うん!わかった!」
穂乃果は決意に満ちた表情で頷くと、そのまま講堂へと向かっていった。
「頑張れよ、穂乃果……」
奏夜はこのように呟くと、これから行われるライブの準備のため、どこかへと移動したのであった。
そして、穂乃果は奏夜の指定通り講堂に入ると、ステージの上に海未が立っており、穂乃果が来るのを待っていた。
「海未ちゃん……」
海未の姿を認識した穂乃果は、そのままゆっくりとステージの方へ向かっていき、海未としっかりと向き合っている。
「穂乃果……。来てくれたのですね」
「うん。ごめんね、海未ちゃん。私のために時間を作ってくれて……」
「礼なら奏夜に言って下さい。このようにお膳立てをしてくれたのは奏夜なのですから……」
「うん。そうだね……」
ここで話は一旦途切れてしまい、少しだけ気まずい空気になっていた。
「あっ、海未ちゃん……。あの……あのね……」
穂乃果は話を切り出そうとするのだが、なかなか勇気がだせず、上手く話を切り出せなかった。
しかし、大切なことを伝えたいと思っていた穂乃果は、勇気を振り絞って自分の気持ちを伝えることにした。
「私ね、ここでファーストライブをやって、ことりちゃんや海未ちゃんと歌った時に思ったんだ。もっと歌いたいって。スクールアイドルをやっていたいって!」
穂乃果は1度語り始めると、止まらなくなってしまったからか、饒舌になっていた。
「辞めるって言ったけど、私の気持ちは変わらなかった。学校の為とか、ラブライブの為じゃなく、私は好きなの!歌うのが!これだけは譲れない……」
「……」
穂乃果の真剣な思いを聞いていた海未は相槌を打つことすら忘れて、穂乃果の話を聞いていた。
「私がこの気持ちに気付くことが出来たのは、そーくんのおかげなの。だから……」
穂乃果は一呼吸置くと、海未に頭を下げていた。
「ごめんなさい!」
「穂乃果……」
穂乃果はストレートな言葉で海未に対して謝罪をしていた。
「私、これから迷惑をかけると思うし、夢中になって、誰かが悩んでいるのに気付かなかったり、入れ込み過ぎて空回りすると思う!だって私、不器用だもん!」
穂乃果は今まで自分の犯した失敗を話に出して、自分の不器用さを表現していた。
「でも!追いかけていきたいの!ワガママなのはわかってるけど、私……!」
穂乃果は自分のありのままの気持ちを海未に伝えていたのだが……。
「……ふふっ」
海未は何故か急に笑い出したのであった。
「海未ちゃん!何で笑うの?私、真剣なんだよ!」
いきなり海未が笑い出したことが気に入らなかったからか、穂乃果は異議を唱えていた。
「ふふっ、ごめんなさい……。でもね、穂乃果。ハッキリ言いますが……」
一通り笑った海未は自分の思ったことを話そうとしており、穂乃果は息を飲んでいた。
「……穂乃果には昔からずっと迷惑かけられっぱなしですよ?」
「ふぇ!?」
海未は満面の笑みでこのように言い放つのだが、その言葉はあまりに予想外のため、穂乃果は間の抜けた声をあげてしまった。
「ことりや奏夜とよく話をしていました。穂乃果と一緒にいると、いつも大変なことになると。どんなに止めても、夢中になったら何でも聞こえなくて……」
海未はしみじみと語り出すのだが、穂乃果たち3人とは中3からの付き合いである奏夜もまた、幼馴染である海未やことりと同じ気持ちを抱いていたのである。
4人でつるむようになってからは、奏夜がフォローする場面が増えていたため、奏夜もそのように思うようになったのであった。
「だいたい、スクールアイドルだってそうです。私は本当に嫌だったんですよ?」
「海未ちゃん……」
「どうにかして辞めようと思っていましたし、奏夜に相談しようかと考えもしました。穂乃果のことを恨んだりもしたんですよ?全然気付いてないみたいでしょうけど」
「あ、ごめん……」
海未がスクールアイドルを始めた当初、本気で嫌がっていたことを知り、穂乃果は申し訳なさそうに謝罪をしていた。
「……ですが……。穂乃果は連れて行ってくれるんです。私やことりでは勇気がなくて行けないような凄い所に」
「……海未ちゃん……」
「それに、奏夜だってそうです。奏夜は魔戒騎士という、特殊な環境にいますが、μ'sのマネージャーとして、私たちを導いてくれました。穂乃果と奏夜。この2人が一緒なら、私たちはどこへだって飛べそうな気がするんです」
海未はここで穂乃果の話だけではなく、奏夜の話も出していた。
μ'sというスクールアイドルグループは、穂乃果がリーダーとして他のメンバーを引っ張り、奏夜がそれを支え、正しい方向へ導いていく。
この絶妙なバランスがあったからこそ、奏夜たちはラブライブ出場目前まで来れたのだと容易に想像が出来た。
「……それに、奏夜が手を回してくれたおかげでその機会を無くしていましたが、私は本気で怒っていたんですよ?」
「……うん」
「ですが、私が怒っていたのは穂乃果がことりの気持ちに気付いてあげられなかったからではなく、穂乃果が自分の気持ちに嘘をついていることがわかっているからです」
奏夜がすぐに話をつけて穂乃果を屋上から出て行かせたから怒らなかったのだが、そうじゃなければ、穂乃果の頬を殴っていただろうと海未は予想していた。
「穂乃果に振り回されるのは慣れっこですからね」
「海未ちゃん……」
「穂乃果。あなたがスクールアイドルを辞めたことは許すつもりです。しかし、1つだけ約束をしてください」
「約束?」
「はい。……穂乃果。奏夜と一緒に連れて行って下さい!私たちの知らない世界へ!それが穂乃果や奏夜の凄いところなんです!」
海未は穂乃果のことを最初から許すつもりだったのだが、これからはμ'sとして、見たことのない高みへ連れていって欲しいと約束させていた。
穂乃果や奏夜の力ならば、それが可能だと思っていたからである。
「私もことりも……。μ'sのみんなもそう思っています」
「……うん、わかった。約束するよ!私たちの力でどこまでいけるかはわからないけど、海未ちゃんやみんなの期待に応えられるように努力する!」
「……ふふっ、頼みますよ、穂乃果」
こうして、穂乃果と海未は互いに自分の気持ちを語り合い、仲直りをしたのであった。
「……それでは、穂乃果!ことりが待っています!迎えに行ってきて下さい!」
「えぇ!?で、でもことりちゃんは……」
海未がいきなりとんでもないことを言っていたため、穂乃果は困惑していた。
「私と一緒ですよ。ことりも引っ張っていって欲しいんです。ワガママを言ってもらいたいんです!」
「わっ、ワガママ!?」
自分がワガママなのは自覚しているつもりの穂乃果だったが、改めて言われると、面白くはなかった。
「そうですよ。有名なデザイナーに見込まれたのに、残れだなんて……。私や奏夜ではそこまでのことは言えません」
奏夜も「行かないで欲しい」というワガママは言っていたのだが、それを押し通すことは出来なかった。
「それが言えるのは、穂乃果。あなただけです!」
海未がこのように宣言すると、まるでタイミングを見計らったかのように講堂の扉が開かれ、奏夜が中に入ってきた。
「穂乃果!話は終わったな?早く行くぞ!」
「そーくん!?どうして?」
穂乃果はいきなり奏夜が現れたことに驚いていた。
「そんなに驚くことはない。海未と仲直りをした後、穂乃果と一緒にことりを連れ戻しに行くつもりだったしな」
奏夜は穂乃果と海未を仲直りさせた後、そのままことりが出国する空港へと向かい、ことりを連れ戻す算段だった。
「でっ、でも!ことりちゃんがどの空港で何時に出発するかもわからないのに……」
「ふっ、心配はいらんよ。ことりがどの空港から日本を発つのかは既に調査済みだ。14時に飛行機が出る予定だから、今から行けば必ず間に合うさ」
奏夜はことりからは直接どこの空港から出発するかや飛行機の時間は聞けなかったが、そこは既に調べていた。
「さ、流石は奏夜。抜け目がないですね……」
奏夜の行動の早さに、海未も驚いていた。
「とりあえず行くぞ、穂乃果。急いでことりを連れ戻すんだ!」
「うん!海未ちゃん、行ってくるね!」
「私はみんなとライブの準備を整えて待っています。必ず……ことりを連れ戻して来てください!」
「ああ、任せろ!」
こうして奏夜は穂乃果と共に講堂を飛び出し、ことりがいると思われる空港へと向かっていった。
「……頼みましたよ……。奏夜、穂乃果……」
2人がいなくなり、海未はこのように呟いていた。
※※※
穂乃果と奏夜を見送った海未は、そのままアイドル研究部の部室へと戻っていった。
「……あっ、海未ちゃん……」
海未が部室に入るなり、花陽が海未のことを見つけ、声をあげていた。
「海未、穂乃果と奏夜は?」
「はい、先ほどことりを連れ戻しに向かいました」
すかさず絵里は奏夜と穂乃果のことを聞いており、海未はすぐに報告していた。
「ここまでは奏夜の計画通りね」
奏夜は穂乃果以外のμ'sメンバーを早めに集合させると、今日の段取りの説明を行っていた。
穂乃果が部室に来るなりライブのことを話し、そのまま海未と仲直りをしてもらう。
そして奏夜と共に空港へ向かい、ことりを連れ戻し、それが済み次第、ライブを行うといった計画であった。
今のところは計画通りに進んでおり、真姫は安堵していた。
「だけど、大丈夫かにゃ?今日留学だっていうのに……」
「心配はいらないわ。奏夜と穂乃果ならきっとことりを連れ戻してくれる。私は信じているわ」
凛は不安な気持ちを露わにするのだが、絵里はそんな気持ちを吹き飛ばすくらい自信に満ちた表情で2人のことを信じていた。
「エリチは奏夜君や穂乃果ちゃんのこと、心から信じているんやね?」
「もちろんよ。だって私は、穂乃果や奏夜から大切なことを教わったもの」
絵里は、穂乃果や奏夜から得るものがあったからこそ2人のことを信じられるのである。
「……変わることを恐れないで、突き進む勇気。あの時私は……。穂乃果の手に救われたんだもの……」
μ'sに入る前の絵里は、生徒会長という立場からか、廃校になろうとしている学校を救わねばという使命感に駆られていた。
そのため、気を張りすぎており、スクールアイドルのことを認められず、奏夜たちと反発したこともあった。
しかし、絵里をスクールアイドルへ誘う時、穂乃果は手を差し伸べていたのだが、この時絵里は穂乃果に救われたような気持ちになっていたのであった。
「……わかるな、その気持ち」
絵里の語る思いに、花陽は大いに共感していた。
「凛もそう思うにゃ!そーや君と穂乃果ちゃんがいなかったら、きっと凛はμ'sに入ってなかったと思うし」
「ま、そこは私も同じね」
花陽だけではなく、凛と真姫もまた、絵里の話に共感していた。
「私だってそうよ。あの2人がいたからこそ、また誰かを信じてみようって思えたんだし」
にこは、先にスクールアイドルを始めたものの、その時いたメンバーに裏切られたという過去を持っていた。
そのため、中々人を信じることが出来なかったが、そんな気持ちを奏夜と穂乃果が壊してくれたのであった。
「……ウチもその通りやと思うよ。だって、ずっとμ'sのことを見てたんやもん」
そして、奏夜たちをμ'sと名前を付けた張本人であり、ずっとμ'sのことを影から支えていた希もまた、絵里の言葉に共感していた。
「えぇ。だからこそ2人を信じられるのです。あの2人なら、私たちをまだ見ぬ高みへと連れて行ってくれるのではないかと」
最後に海未は、自分の思ったことをそのまま言葉にしていた。
その言葉も共感出来る言葉だったからか、絵里たちはウンウンと頷いていた。
「なるほど……!お前たちのそんな熱い気持ちがμ'sを作ったという訳なのだな?イイ!とてもいいぞ!」
絵里たちの気持ちを聞いた剣斗は興奮を露わにしており、相変わらず熱い剣斗に、絵里たちは苦笑いをしていた。
「……さて、この話はこれでおしまいよ。いつ2人が戻ってきても良いように準備をしておきましょう!」
絵里がこのように話をまとめると、それ以外の全員が「うん!」と力強く返事をしていた。
「ふむ。私は改めてライブの宣伝をしてこよう。どうせライブを行うのなら、最高の結果にしたいからな!」
そう言い残し、剣斗はアイドル研究部の部室を後にして、絵里たちもまた、講堂へ向かい、ライブの準備を行うことにしたのであった。
※※※
穂乃果と海未の仲直りが済み、奏夜は穂乃果を連れて講堂を飛び出し、現在は玄関を出て、そのまま校門に向かうところであった。
「ほら、穂乃果。早く行くぞ!」
奏夜は逸る気持ちを抑えきれないからか、穂乃果のことを急かしていた。
「そーくん。空港に行くって言ってもどうやって空港まで行くつもりなの?」
穂乃果は1番重要な疑問をぶつけるのだが、それを聞いた瞬間、奏夜の動きはピタッと止まってしまい、ダラダラと冷や汗を流していた。
「ま、まさかそーくん……。考えてなかったの?」
『やれやれ……。1番重要なところをど忘れするとはな……。相変わらず詰めの甘い奴だ』
1番重要になってくる空港への移動方法を考えていなかった奏夜に、穂乃果とキルバは呆れ果てていた。
「うるせー!い、今からタクシーを捕まえるところだったんだよ!」
奏夜は本当に重要なことを考えていなかったことを見透かされたくなかったからか、顔を真っ赤にしてムキになっていた。
そして、本当にタクシーを捕まえるつもりなのか、奏夜は校門へ向かい、穂乃果はそれを追いかけていた。
2人が校門を出たその時、プップー!とクラクションの鳴る音が聞こえたため、2人はその方向を見た。
すると、1台の青い乗用車が止まっており、まもなく助手席側の窓が開かれた。
「……奏夜!穂乃果!乗れ!」
なんと車を運転していたのは奏夜の先輩騎士である月影統夜であった。
「!?統夜さん!?どうして?」
こんなところで統夜に会えると思っていなかったからか、奏夜は驚いており、穂乃果も同じように驚いていた。
「話は後だ!これからことりを連れ戻しに行くんだろ?」
どうやら統夜はこちらの事情を知っているみたいだった。
「……穂乃果、行くぞ!」
「うん!」
2人は急いで統夜の車の後部座席に乗り込んだ。
「よし、急ぐぞ!」
2人が乗り込んだことを確認した統夜は、そのまま車を発進させ、ことりが日本を発つ某国際空港へと向かっていった。
奏夜たちがことりを連れ戻すために空港へと向かう様子をジッと見ている黒い影があった。
それは……。
「……やはり動き始めたか……。ジンガ様のご命令だ。このまま奴らを行かせる訳にはいかない」
ジンガの命令を受けて、奏夜たちの動きを探っていた尊士であり、尊士は奏夜たちの邪魔をしようとしていた。
そんなことを企みながら、尊士は奏夜たちの向かっていった方向へ姿を消したのだった。
奏夜たちにとって最大の障害が、目の前に迫ろうとしていたのであった……。
……続く。
__次回予告__
『まさか、こんなところで厄介な奴が出てきたものだ。奏夜、この壁を乗り越えないと全てが水の泡だぞ!次回、「九人 中編」。その想いや輝きと共に飛翔しろ!輝狼!』
奏夜と穂乃果はことりを連れ戻すために動き始めました!
まさか統夜が車に乗って現れるとは予想外だったと思います。
統夜はどのように免許を取ったのか。それは次回明らかにしたいと思います、
そして、忍び寄る尊士の影。
奏夜たちは無事にことりを連れ戻し、ライブを成功させることは出来るのか?
さて、次回で「崩壊と再生の絆編」は最終回となり、一期編も終わりとなります。
……と言いたいところだったのですが、文字数の都合により、前編中編後編の三部構成にさせてもらいました。
その経緯は次回投稿時に説明をしようと思っています。
この章終了後は番外編を投稿していこうと思いますが、詳細は後編終了後の後書きで書こうと思っています。
それでは、次回をお楽しみに!