今回はUAが20000を越えた記念の番外編となります。
現在はUAが約24000なので今更感は否めませんが(笑)
今回の番外編は、主人公である奏夜の休日にスポットを当てています。
奏夜がどのような趣味を持っており、どのような休日を過ごすのか?
それでは、番外編をどうぞ!
UA20000記念作品 「休日 前編」
音ノ木坂学院に存在するスクールアイドルグループ「μ's」のマネージャーであり、陽光騎士輝狼の称号を持つ如月奏夜は、現在静岡県の沼津市に来ていた。
「……ここが沼津か……。初めて来たが、いいところだな……」
奏夜は現在、沼津駅の前に来ており、駅前の景色をじっくりと眺めていた。
何故奏夜が現在沼津に来ているのか?
それは、今から数日前まで話は遡る……。
※※※
奏夜が沼津を訪れる数日前、奏夜はロデルからの呼び出しを受けて、番犬所を訪れていた。
「奏夜。最近のあなたは魔戒騎士としての成長が著しく、次々と戦果をあげていますね。あなたの成長は、私も嬉しく思っています」
この頃の奏夜は魔戒騎士として一人前と言っても過言ではない程成長しており、様々な強大なホラーも討滅してきた。
そんな奏夜の戦果を、ロデルは心から評価していたのであった。
「あっ、いえ……。俺はまだまだ未熟です。憧れの統夜さんには遠く及ばないんですから……」
ロデルに褒められて、奏夜は満更でもなかったのだが、自分は魔戒騎士としてはまだまだ未熟だと評価をしていた。
自分はまだ、白銀騎士奏狼の称号を持つ、月影統夜に追い付いてはおらず、足元にも及ばないと感じていた。
「まぁまぁ、そんなに自分を卑下しないで下さい。あなたの活躍は、元老院も大きく評価していますよ?」
「元老院が……?俺を?」
元老院が自分を評価してくれていることに、奏夜は驚きを隠せなかった。
「高校生ながら魔戒騎士として大いに活躍しているあなたに何か褒美を与えるようにと元老院からも言われています。奏夜、あなたは何か欲しいものはありますか?」
ロデルは、奏夜に何か褒美を与えようと考えており、何が欲しいのか奏夜に問いかけていた。
「そうですね……」
自分は何が欲しいのか。奏夜はじっくりと考えていた。
そして……。
「それであれば、何日か休みが欲しいと思っています」
「なるほど……。休みですか……」
「はい。魔戒騎士の使命を忘れるつもりはありませんが、私は見識を深めるために少しだけ旅をしたいのです」
現在はスクールアイドルとしての活動も落ち着いているため、このような提案が出来るのである。
「なるほど……。確かにあなたは魔戒騎士にμ'sのマネージャーと忙しい日々を過ごしていますしね。時には休息も必要でしょう」
ロデルは、奏夜が毎日忙しくしていることを知っているため、休息の大事さを感じていた。
「……わかりました。それでは、数日後の◯月◯日から、3日間の休日を与えます。その3日間で体を休め、見識を広めると良いでしょう」
こうして、ロデルは奏夜に休日を与えたのであった。
翌日、奏夜は穂乃果たちに数日後、3日間の休日をもらったことを報告していた。
「へぇ、それじゃあそーくんはしばらく魔戒騎士の仕事はお休みするんだ!」
「ああ。俺もちょうと休みが欲しいって思ってたし、言ってみるもんだよな」
褒美を与えると言われれば、通常は高価な商品や価値のあるもの。もしくはそれなりの金銭を求めるのが通説だと思うが、奏夜は何よりも安上がりな休みを要求したのであった。
「ねぇねぇ、そーくん!それだけ休みがあるなら、穂乃果たちと一緒に遊ぼうよ!」
「それはいいにゃ!だって、そーや君は最近凛たちと遊んでくれないし……」
「仕方ないだろ?俺だってμ'sのマネージャーとして仕事をしながら騎士の使命を果たしていたんだからな」
奏夜はここ最近忙しい生活を送っていたことを愚痴っぽく語っていた。
「ぶー、そうだけどさぁ……」
「やっぱり一緒に遊びたいにゃ!」
奏夜が忙しくしていたことは穂乃果と凛も理解していたし、感謝もしていたが、やはり奏夜と遊びたい気持ちは強かった。
「仕方ないわねぇ……。奏夜には感謝をしてるし、普段から疲れてる奏夜のために、この宇宙ナンバーワンアイドルのにこにーが人肌脱いであげるわよ」
にこはこのように提案していたのだが、にこの本音は、奏夜と遊びたいというものであった。
「にこにーのラブにこパワーで奏夜の疲れなんてあっという間に吹き飛ばしてやるわよ♪」
にこはアイドルスマイル全開でこのように提案するが……。
「……悪いけど、間に合ってる」
「ぬわぁんでよ!!」
奏夜はジト目でにこの提案をスルーしており、にこはそれに異議を唱えていた。
奏夜は休みの日にやりたいことがあるため、それを伝えようとしたのだが……。
「……ねぇ、みんな。ちょっと待って!」
奏夜と遊びたいという話に、絵里が待ったをかけたのであった。
「?どうしたの?絵里ちゃん」
「私も奏夜と遊びたいけれど、奏夜は私たちだけではなく、多くの人のために頑張っているでしょう?だったら、数日くらいは奏夜のために時間を作っても良いと思わない?」
絵里は奏夜に日頃から感謝しているため、休日を自分のために使って欲しいということが言えたのであった。
「それは私も思っていました。奏夜にはスクールアイドルのことや魔戒騎士のことは忘れてリフレッシュする時間が必要なのだと」
「そうやねぇ。カードも言うとるよ。このまま根を詰めるのは災いしかない。全てを忘れるように体を休めるべしって」
海未は絵里の提案に賛成しており、希は占いの結果をそのまま奏夜に伝えていた。
「ま、いつも私たちとべったりじゃ奏夜も疲れるでしょうしね」
「そうだよね……。そーくんは疲れてるんだもんね……」
「こういう時じゃないと、感謝を伝えられないし、奏夜君にはゆっくりと体を休めてきて欲しいな!」
真姫は絵里の提案を妥当なものだと思っており、ことりは少しだけ残念そうにしていた。
それは花陽も同じ気持ちだが、奏夜に感謝をしてるからこそ、それを伝えるために絵里の言葉に賛同していた。
「……まぁ、俺としてはみんなと一緒に過ごしたいって気持ちはあるけど、休みを使って行きたいところがあるんだよ」
「へぇ、そうなんだねぇ」
「ところで奏夜。差し支えなければ、どこに行きたいのかを教えてくれますか?」
「まぁ、構わないけど」
奏夜としても、隠し立てすることではないからか、奏夜は海未の問いかけに平然とした表情で答えていた。
「……これはみんなに初めて話すことなんだが、俺は釣りが趣味でな」
「え!?そうなの!?」
奏夜の口から語られたあまりに意外な趣味に、穂乃果は驚いており、それは他のメンバーも同様だった。
「まぁ、魔戒騎士としての仕事やμ'sのマネージャーとしての仕事が忙しくて、最近は行けても釣り堀程度なんだけどな」
奏夜は毎日忙しく過ごしているため、どこかへ遠出して釣りに興じることは叶わず、近所にある小さな釣り堀で釣り気分を味わうことしか出来なかった。
「だからこそ、休みをもらってのんびり釣りでもしたいと思ってな」
「まぁ、確かに釣りに行くのなら、ウチらが付いて行っても退屈やもんね」
μ'sのメンバーで、奏夜同様に釣りが趣味の者はおらず、釣りに同行するという発想は持てなかったのであった。
「それで、釣りと行ってもどこに行くつもりなの?」
釣りに行くと行っても、釣りには川釣りや海釣りがあり、他にも有名な湖が釣りスポットになってることもあるため、絵里はどこまで釣りに行くのかを奏夜に尋ねていた。
「ああ。とりあえずは静岡の沼津に行こうと思ってるんだ」
「静岡……?沼津……?」
奏夜の口から飛び出してきた予想外の回答に、穂乃果は困惑していた。
「どうしてそこを選んだのよ?」
「そうね。釣りをするなら他にも有名なスポットがあるでしょう?」
にこと真姫は釣りに詳しい訳ではないが、普段あまり聞くことのない地名で釣りをすることが疑問だった。
「俺はそれも考えたが、有名な釣りスポットは人が多いから落ち着かないんだよ」
「まぁ、確かにそれは言えてるかもね」
奏夜が有名な釣りスポットを避けたのは、人が多いところを避けるためであり、ことりはその理由に納得していた。
「だからネットで調べてたんだよ。したら、沼津にある内浦って街は人も少ないし、釣りスポットもあるから、のんびり釣りをしたい人には向いているって書いてあったんだ」
「ふーん……。そうなんだぁ」
このように凛は相槌を打っていたが、あまり興味はなさそうであった。
「ところで奏夜。休みは3日で、その3日を使って内浦まで行くのですよね?」
「そういうことになるかな」
「その間はどこに泊まるのですか?」
海未は、内浦に滞在中の宿泊先の心配をしていた。
「本当なら釣り場にテントを張って、キャンプでもしようって思ってたけど、テントを張ってのキャンプは禁止されてるみたいなんだよ」
奏夜としては、キャンプをしてのんびり過ごそうと考えていたのだが、釣りスポットでのキャンプは禁止されているみたいだった。
「……だから、どっか旅館にでも泊まるとするよ。内浦にも旅館はあるみたいだし」
奏夜はネットで調べた結果、内浦に旅館があることを調べており、そこに泊まろうかと考えていた。
「まぁ、それなら安心ですよね」
どこに泊まるのかハッキリと聞いた海未は安心したみたいだった。
「ま、そういう訳で、俺は休みの日に釣りに行かせてもらうから」
「うん、わかった!そーくん、楽しんできてね!」
「ああ。そうさせてもらうよ」
こうして、奏夜は番犬所から3日間の休日をもらい、沼津へと釣りに出かけることになったのであった。
※※※
そして現在、奏夜は沼津駅へと来ていたのである。
「さて……。内浦へはバスだったかな?」
奏夜はスマホを操作しながら、内浦への行き方を検索していた。
そして、その情報を元に内浦行きのバスのバス停へと到着したのだが……。
「……うわ、さっき出たばっかりなのか……」
タイミングが悪いことに、バスは数分前に出発してしまったみたいであり、次のバスまでは30分ほど待たなければいけなかった。
『ま、ここら辺は東京と比べたら田舎なのだろう?バスの本数が少ないのは仕方ない気がするがな』
「おいおい、あまりそういうこと言うなよな、キルバ……」
キルバの容赦ない言葉に、奏夜は少しだけ呆れていた。
「ま、少しは時間が出来たんだし、ここら辺を見て回るとするかな」
奏夜はバスを待たなきゃいけないことに落胆することはせず、街を見る時間が出来たことを喜んでいた。
『やれやれ。前向きな奴だ』
ほんな奏夜の姿勢に、キルバは少しだけ呆れていた。
「さて、まずはどこへ行こうかな?」
奏夜は沼津駅周辺の散策を始めようとしたのだが……。
「……ん?何だ?」
奏夜は気になるものを見つけたからか、足を止めていた。
奏夜の視線の先には、赤い髪の女の子がしゃがみこみながらうなだれていた。
実際の年齢はわからないが、小学生くらいだと思われる。
「……ったく……。仕方ないな……」
あの女の子の事情は知る由もないのだが、このまま放ったらかしにして観光も気がひけるため、女の子に声をかけることにした。
「……グスッ……ヒック……。お姉ちゃあん……」
その女の子は弱々しい口調で姉のことを呼び、泣いていた。
そこに、奏夜が近付いてきたのであった。
「……君、大丈夫か?」
「びぎぃ!!?」
奏夜は可能な限り優しく声をかけたのだが、女の子は奏夜の声に驚きと共に怯えており、少しだけ後ろに下がっていた。
「ったく……。そんなに警戒しないで……。って言っても無理か。俺はただ君の様子がおかしくて気になったから声をかけただけだから」
奏夜はこれ以上女の子を警戒させないために穏やかな表情で微笑みながら声をかけていた。
「うゆゆ……。そのぉ……ルビィは……」
どうやらこの女の子の名前はルビィというみたいだった。
「初対面の男に警戒するのは仕方ないことだけど、何か困ってることがあれば言って欲しいな」
「……」
「心配すんなって。俺は休みを利用して釣りをしに来たしがない高校生だから」
奏夜は女の子を安心させるために、自前の釣竿をチラッと見せて、自分の生徒手帳も見せていた。
魔戒騎士とはいえ、高校生の一人旅であることは間違いないため、生徒手帳を提示しなければいけない場面があると判断し、持ってきたのだ。
奏夜は生徒手帳がさっそく役に立つと思っていなかったため、苦笑いをしていた。
すると……。
「音ノ木坂学院の生徒さんなんですか!?」
先ほどの怯えきった表情とは打って変わり、目をキラキラと輝かせながら食い付いてきた。
「アハハ……。そんなに食い付いてくるとは……」
ルビィと名乗る女の子の食い付きぶりに、奏夜は苦笑いをしていた。
奏夜が音ノ木坂学院の生徒だとわかると、ルビィと名乗る女の子は何故か奏夜を警戒しなくなり、何があったのかを話す気になったのであった。
「実は……。お姉ちゃんとはぐれちゃって……。探したんだけど、見つからなくて……」
どうやらルビィと名乗る女の子は、迷子になったみたいだった。
「なるほどな……」
ルビィと名乗る女の子の事情を理解し、奏夜はウンウンと頷いていた。
「どこら辺ではぐれたのかはわかるか?」
「あの……。駅の広場の方なんです。そこは人が多くて……。それで……」
(なるほどな……。ここら辺の地理には詳しくないけど、だいたいわかったぞ)
奏夜はルビィと名乗る女の子を彼女の姉と再会させるために動こうとしていたのである。
《おい、奏夜。お人好しが過ぎるんじゃないか?人探しをしてバスに乗り遅れたらどうするんだ?》
キルバは、奏夜が安請け合いをしようとしていることに対して苦言を呈していた。
(その時はその時さ。この旅は急ぎの旅じゃないんだ。ちょっとくらいのハプニングは想定の範囲内さ)
《やれやれ……。まぁ、好きにしたらどうだ?》
奏夜は万が一バスに乗り遅れたら、その時になってどうするか考えるみたいであり、あまり気にしていなかった。
そんな奏夜の楽観的な態度に、キルバは呆れており、これ以上の苦言は言わなかった。
「とりあえず、広場の方に行ってみないか?そしたら、案外早く見つかるかもしれないぞ」
「それはそうなんですけど……。ルビィ、人の多いところは苦手で……」
(……ま、そんな気はするよな。気が弱そうなところがあるし……)
奏夜は、ルビィと名乗る女の子がかなり内気な性格であることを理解し、何故広場まで行こうとしないのかを理解していた。
「……だったら俺が付いてってやるよ。したらちょっとは安心だろ?」
「え?でも……」
「いいっていいって。俺はこれから内浦に行こうって思ってたんだけど、もうバスが出ちゃっててまだ時間があるからさ」
奏夜はこれから内浦に向かうということを明かし、ルビィと名乗る女の子の姉探しに行くことを伝えていた。
「……」
ルビィと名乗る女の子は、初対面の男性をここまで信用して良いものか悩んでいた。
しかし、このまま迷子でいるわけにもいかないと感じたからか……。
「……は、はい。お願いします……」
ルビィと名乗る女の子は、奏夜の提案を受け入れるのであった。
「それじゃあさっそく、広場の方に行ってみるか」
奏夜がこう提案すると、ルビィと名乗る女の子は無言で頷いていた。
そして、そのまま沼津駅の駅前にある広場に向かうことにした。
その広場は、今いる場所から歩いてそこまで時間はかからずに到着したのだが、それなりに人で賑わっていた。
「ふーん……。ここも行ってみようって思ってたけど、思ったより人が多いんだな」
秋葉原と沼津。比べたら秋葉原の方が人は多いのだが、この場所も予想以上に賑わっており、奏夜は驚いていた。
「うゆゆ……。人がいっぱい……」
ルビィと名乗る女の子は、人混みが苦手なのか、オドオドしながら一歩だけ奏夜の後ろに引いていた。
「なぁ。君のお姉さんってどんな感じの人なんだ?」
ルビィと名乗る女の子の姉を探すと言っても、容姿を知らなければ意味はないため、奏夜は確認作業を行っていた。
「あっ、はい……。背が高くて、黒くて長い髪が特徴なんです」
「なるほどね……」
ルビィと名乗る女の子から彼女のお姉さんの特徴を聞いた奏夜は、改めて周囲を見渡していた。
(背の高い黒髪の長髪ねぇ。けっこうそういう人は多そうな気はするんだねどな……)
奏夜はそんなことを考えながら周囲を見渡していたのだが、先ほど話していた特徴と酷似する少女と目が合ったのであった。
目が合った少女が、ルビィと名乗る女の子の姉かどうかはまだわからなかったが、確認はする必要があった。
しかし、少女はルビィと名乗る女の子の方を見て驚いており……。
「……ルビィ!」
「お姉ちゃん!」
どうやら、確認するまでもなく正解だったようであり、ルビィと名乗る女の子は、姉に駆け寄り、抱きついていた。
(アハハ……。まさかこうもあっさり見つかるなんて……)
予想以上に探し人が早く見つかり、奏夜は苦笑いをしていた。
「どこへ行っていたの?勝手にどこかへ行ったらダメだとあれほど……」
「……ごめんなさい、お姉ちゃん……」
「まぁ、無事にルビィが見つかったから、良しとしますわ」
どうやら、この問題は一件落着したみたいだった。
(ま、これで俺はお払い箱か。再会した姉妹の間にわざわざ入ることもないだろ)
姉妹の再会に割って入ることを良しとしないと思った奏夜は、こっそりとその場からいなくなろうとしたのだが……。
「……そこのあなた!ちょっとお待ちなさい!」
ルビィと名乗る女の子の姉に呼び止められてしまい、奏夜は足を止めるのであった。
(アハハ……。呼び止められたか……。出来ればあのまま去りたかったんだけどな……)
引き止められてしまったため、奏夜はこのまま離れる訳にも行かず、2人の方へと向かっていった。
「あなたなんですの?妹をここまで連れて来てくれたのは?」
「まぁ、そういうことになるのかな?」
「何故そこまでしてくれたのです?何か見返りを求めてのことなんですの?」
ルビィと名乗る女の子の姉は、鋭い目付きで奏夜のことを睨みながら奏夜を警戒していた。
(うわぁ……。明らかに警戒してるよ……。まぁ、こんなご時世だから仕方ないけどさ……)
目の前にいる黒髪長髪の女性の警戒してる態度に、奏夜は苦笑いをしていた。
それと同時に、警戒するのも仕方ないと感じていたのである。
「別に?あの子をここまで連れてきたのはただの気まぐれだよ。あと、内浦行きのバスが来るまでの暇つぶし……って感じかな」
言葉を繕っては余計に警戒させると思ったからか、奏夜は思ったことをそのまま話していた。
「そ、そうなのですか……?」
「ま、だから気にしなくていいよ。それじゃあ」
ここまであっさりと答えたため、黒髪の女性は奏夜の言葉を信じていた。
奏夜は思ったことを正直に話してしまうタイプなのだが、そんな癖がこんなところで役に立っていたのであった。
見返りを求める下心がないことを伝えた奏夜はその場から離れようとしたのだが……。
「だからお待ちなさいな!」
再び黒髪の女性に呼び止められたため、その場を離れることは出来なかった。
「わかりました。あなたのその態度は嘘をついてる訳ではなさそうですし、信じるとしますわ」
「そう言ってくれるとこっちも助かるよ」
「理由はともあれ、迷子の妹を私と会わせてくれたのも事実。お礼も無しにこのまま返す訳にはいきませんわ」
「だから礼なんていいのに。全部俺の気まぐれなんだから」
奏夜がルビィと名乗る女の子の姉探しに付き合ったのは本当に気まぐれであるため、お礼をしてもらう筋合いはなかった。
「いーえ!礼はきっちりと返さねば、黒澤の名が廃りますわ」
ここで自分の苗字を出すということは、それなりの家元なんだなと、奏夜は感じていた。
「……だったら、俺は内浦の「十千万(とちまん)」って旅館に泊まるんだが、そこまで案内してくれないか?」
奏夜は行き方を知っていたが、この黒髪の女性は何か礼をしなければ気が済まなさそうだったため、このように提案していた。
「お安い御用ですわ。私たちもこれから内浦に帰る途中ですし、その旅館ならそこの前にバスは止まりますわ。そこまで案内しますわね」
「助かるよ。えっと……」
「……私の名前は黒澤ダイヤ。中学1年生ですわ」
黒髪の女性……黒澤ダイヤは、奏夜に簡単な自己紹介をしていた。
「その妹の黒澤ルビィです!」
ルビィと名乗っていた女の子……黒澤ルビィもまた、自己紹介をしていた。
「なるほど、ダイヤちゃんにルビィちゃんね」
奏夜は先ほど自己紹介をした2人の名前を確認していた。
「……俺は如月奏夜。高校2年生だ」
奏夜はあえて音ノ木坂学院のという言葉は付けず、ただ学年を名乗っていた。
ルビィが話すと判断したのもあるが、わざわざ自分からする話でもないと思っていたからである。
「奏夜さんですか……。よろしくお願いしますわ」
「よろしくお願いします!」
ここで奏夜の名前を知ったダイヤとルビィは、ペコリと頭を下げていた。
するとまもなく……。
「……ん?如月奏夜……。そのような名前、どこかで……」
ダイヤは、奏夜の名前を聞いたことがあるのか、「うーん」と唸って考え事をしていた。
ま、まぁいいじゃねぇか、そこは。もうすぐバスだってくるだろう?そこら辺はバスでゆっくり話そうぜ」
「?ま、まぁ。確かに、その方がいいかもしれませんわね」
「それじゃあ、バス停まで行こうか」
「ええ、案内しますわね」
(さっき行ったからわかるけどな……)
奏夜はそんなことを考えながら苦笑いをしつつ、ダイヤの案内で内浦行きのバス停へと向かっていった。
(それにしても危なかったな。危うく俺のことがバレるところだった)
奏夜は現在、μ'sのマネージャーとして、それなりに有名人になっていたため、正体がバレることを良しとはしなかった。
《おい、奏夜。何故μ'sのマネージャーであることを隠す?お前の顔と名前はだいぶ知れ渡ってるだろう?》
(確かにそうなんだけど、正体がバレて騒がれるのが面倒なんだよ。俺はのんびり釣りがしたいだけだからな)
《なるほど、それは一理あるかもな》
バス停に到着し、奏夜とキルバがテレパシーで会話をしていると、バスが到着したため、奏夜たちはバスに乗り込んだ。
バスに乗り込んだ奏夜は、自分の話はなるべく避け、ダイヤやルビィの話を聞くことにしていた。
話を聞くと、2人の家はここら辺では有名な網元であり、ダイヤはその跡取りになるからか、様々な稽古事をこなしているみたいだった。
(まるで海未みたいだな……)
奏夜がこのように思う通り、海未もまた、園田家という武道や日舞の家系の人間であり、スクールアイドルの活動の傍でそれらもこなしていた。
そんなところが、ダイヤと海未の似ているところではないかと奏夜は感じていたのである。
一方ルビィは、その内気な性格が災いしているからか、なかなか友達が出来ないと悩んでるみたいだった。
そんな中……。
「……それにしても不思議ですわね。ルビィは男の人が苦手なのでしょう?それなのに奏夜さんに付いていって私を探しに行ったとは驚きですわ」
ダイヤの指摘通り、ルビィは内気な性格+男性恐怖症であるため、ここまで奏夜に接することが出来ていることが驚きだった。
「うん。そこはルビィも思ってたんだけど、奏夜さんは不思議と怖いって思わなかったの」
「そうなのですか?まぁ、奏夜さんは確かに不思議な雰囲気を持ってる傍ではありますけれども」
「それに!奏夜さんはあの音ノ木坂学院の生徒さんなんだよ!」
ここでルビィは奏夜が音ノ木坂の生徒だということを明かしており、ダイヤはそれに反応していた。
「音ノ木坂?まさか、あのμ'sの通っているという?」
どうやらダイヤはμ'sのことを知っているみたいであり、キラキラと目を輝かせていた。
(あっ、これってもしかしてやばいパターンじゃね?)
《どうやら、そうみたいだな》
ダイヤがμ'sのことを知っているということは、奏夜がμ'sのマネージャーである事がバレるのも時間の問題であった。
そんな奏夜の嫌な予感をさらに確信にするように、ダイヤはハッとしていた。
「そういえば、μ'sには敏腕マネージャーいますが、そのマネージャーの名前も確か……」
ダイヤはμ'sのマネージャーである奏夜の名前を口にしようとしたその時だった。
『次は、十千万前。十千万前〜。お降りのお客様はブザーでお知らせください』
奏夜の目的地である十千万へ到着することを告げるアナウンスが鳴り、奏夜は心の中でガッツポーズをしていた。
そして、嬉々として停車ブザーを押したのであった。
「悪いな。どうやら目的地に着いたみたいだから、俺はここで失礼するよ」
奏夜は軽い足取りで降車の準備をすると、バスが止まったところでそのまま料金所の方へと向かっていった。
「あっ!ちょっと!」
ダイヤは今気になっていることを確認したいからか奏夜を呼び止めようとしていた。
奏夜は1度足を止め、2人の方を振り向くと……。
「……μ'sのことを知ってるっていうならきっとまた会えるさ。それじゃあ、また!」
このような言葉を残し、奏夜は料金を支払ってバスを降りたのであった。
ダイヤとルビィは、窓から見える遠ざかっていく奏夜の姿をジッと見ることしか出来なかった。
「……行っちゃったね、お姉ちゃん」
「あの方、やはり、μ'sのマネージャーの如月奏夜さんなのですね……」
「え!?そうなの!?」
ルビィは奏夜の正体に気付いていないからか、ダイヤの言葉を聞いて驚いていた。
「何故内浦に来てるかはわかりませんが、まさかの出会いですわ!」
「そういえば、ここには釣りをしに来たって言ってたけど……」
「なるほど、そうなのですね」
ここでダイヤは初めて奏夜が内浦を訪れた目的を聞き、少し驚きながらも納得していた。
(また……会えると良いのですけど……)
ダイヤは心の中で、奏夜との再会を望んでいたのであった。
その頃、バスを降りた奏夜は……。
「危ない危ない……。危うく面倒なことになるとこだったよ……」
バスが走り去ったのを確認して、このように呟いていた。
『まったく……。お前が気まぐれで人助けなんてするからだ。あまり人に干渉し過ぎるなといつも言ってるだろう?』
「わかってるって。だけど、今日からしばらくは魔戒騎士としてのことは忘れて羽を伸ばしに来たんだ。固いことは言いっこなしだぜ」
奏夜としても頭ではわかってはいるが、今の奏夜はただの高校生だと言い訳をしてキルバの小言をかわしていた。
そのまま目の前に広がる建物の中へと向かうのだが、その建物の前にはあるものがあり、奏夜は足を止めていた。
「……ん?」
足を止めてその方角を見ると、それはどうやら犬小屋のようであり、1匹の犬が繋がれていた。
「この犬は、この旅館の看板犬……なのかな?」
旅館に犬がいるとは思わなかったからか、奏夜は首を傾げていた。
「ま、いいか。とりあえず早く中に入ろう」
奏夜は先輩騎士である月影統夜とは違い、動物がかなり好きという訳ではなく、人並みに可愛いと感じる程度だった。
そのためその犬をスルーし、奏夜はしばらく世話になる旅館である十千万の中へと入っていった。
……奏夜の休日は始まったばかりである……。
……後編に続く。
本当なら1話でまとめたかったけど、前後編になってしまった……。
そうしないと文字数がえらいことになって読みづらくなるかな?と思いまして……。
奏夜の趣味が釣りだということがわかりましたが、皆さんは奏夜の趣味は意外だと思いますか?
実は、奏夜の趣味を釣りにしようと思ったのはFF14をプレイしてる時に思いついたのです。
FF14では釣りも出来るのですが、綺麗なグラフィックにて、釣りをするのが楽しくて、奏夜の趣味を釣りにさせてもらったのです(笑)
そして、奏夜は釣りをするために休みをもらったのですが、なんと内浦で釣りをすることに!
この番外編の時系列は本編とは異なりますが、一応、牙狼ライブの続編のフラグを立てたくてこのようにさせてもらいました。
そして、サンシャインから黒澤姉妹が登場しました。
僕はサンシャインではルビィ推しなので、出せて良かったと思っています。
後編ではサンシャインのキャラは何人登場するのか?
そこも楽しみにしていて下さい!
それでは、後編もお楽しみに!