現在放送中の「牙狼 VANISHING LINE」に暗黒騎士が登場しましたね。
どうやら、暗黒騎士に堕ちる前の称号が白銀騎士らしく、それを初めて聞いた時は「!?」となってしまいました。
統夜の称号と被りましたが、前作を投稿したのは去年だし、時系列は全然違うので、これで良いのかなと思っています。
白銀騎士という名前が出たのは嬉しくもあり、驚きもしました。
さて、今回は翼と邪美の2人が活躍します。
2人は何故秋葉原を訪れたのか?
それでは、後編となる番外編をどうぞ!
……奏夜がメイド喫茶で翼や邪美と出会う2日前の深夜。
秋葉原某所にある、今は使われてはいないビルの一室に、1人の女性が閉じ込められていた。
この女性は、メイド喫茶で働く、それなりに人気なメイドなのだが、何者かによって拐われてしまい、ここへ閉じ込められてしまったのである。
「ここは……どこなの……?私は確か、仕事を終えて帰ろうとしてて、それで……」
女性は、拐われる前の状況を確認していた。
すると……。
「……デュフフ、目が覚めたみたいだね」
女性の前に現れたのは、怪しい笑みを浮かべた小太りの男だった。
さらに、鎖のようなものに繋がれた、20代前半くらいの女性も一緒だった。
「!?あなたは、いつも店に来てた……。それに、あの子は……!」
小太りの男は、どうやら、女性が働くメイド喫茶の常連客みたいだった。
……とは言っても、この1ヶ月あたりでよく見かけるようになったと言った方が正しいのだが……。
「確か、2週間前に行方不明になったミキちゃんじゃない!」
「リサ……ちゃん……」
鎖のようなもので繋がれた女性は、メイド喫茶で働くメイドであり、2週間前に行方をくらませていたミキであった。
「デュフフ。この子は文字通り、身も心も俺に捧げた玩具なんだよ」
「玩具……?何を言って……」
小太りの男の言葉があまりにも常軌を逸しているため、リサは困惑していたのだが、ミキが鎖のようなもので繋がれているのを見て、言葉を失っていた。
よく見てみたら、ミキの目は輝きを失っており、まるで死んだ魚のような目をしていたのである。
「デュフフ……。こいつは胸もでかかったし、ご奉仕は最高だったな……」
小太りの男が、ゲスな笑みを浮かべながらこう語ると、リサの背筋にゾクゾクっと寒気が走っていた。
「そして、お前も今日からは身も心も俺に捧げてもらうぞ」
「何を言ってるの!?そんなの、出来るわけないじゃない!気持ち悪い!」
リサは険しい表情になると、小太りの男に嫌悪感を露わにしていた。
「……ま、そういうと思ったよ。俺に逆らったらどうなるか、見せないとな。……可哀想だな、ミキちゃん。リサちゃんが強情なせいで、犠牲になっちゃうとは……」
「な、何を言って……!」
「リサちゃん……!助けて……!」
死んだ魚のような目をしていたミキであったが、瞳から涙を流し、リサに助けを求めていた。
そして……。
「デュフフ……。いただきます……!」
小太りの男の目から怪しい輝きが放たれると、その口がまるで怪物のように大きく開かれ、ミキを頭からかぶりついたのであった。
「!!?」
あまりにグロテスクな光景に、リサは言葉を失っていた。
頭からかぶりつかれたからか、ミキのものと思われる鮮血が飛び散るのだが、小太りの男は、そんな鮮血もすするようにミキのことを喰らっていたのであった。
こうして、ミキは小太りの男に文字通り喰われてしまい、その生涯を終えることになってしまった。
「い……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
目の前で起こったことがあまりにもショッキングだからか、リサは顔を真っ青にして悲鳴をあげていた。
「あーあ……。ミキちゃんは久々の上玉だったのにな……。もったいない」
ミキを喰らった小太りの男は、それを気にする素振りを見せず、むしろ残念がっていた。
「あぁ……あぁ……!」
ショックがあまりにも大きすぎるからか、リサはその場でうなだれていたのであった。
「ミキちゃん、リサちゃんのことを恨んでるだろうなぁ……。リサちゃんが素直に俺に従っていれば、俺の餌になることはなかったのに……」
小太りの男は、追い討ちをかけるようなことを言っており、それによりリサの精神はボロボロになっていた。
「これでわかっただろ?お前は黙って俺の玩具になればいいんだ」
「……は、はい……」
この男に逆らったら殺される。
こう本能で感じ取ったからか、リサは男に従うしかなかった。
「……まずは、ここにリサちゃんのメイド服を用意したから、ここで着替えてもらおうかな」
小太りの男は、目の前で着替えをしろと、無茶な要求をしてきたのである。
「……はい」
恐怖で支配されているリサは、素直に命令に従い、その場で服を脱ぎだし、下着姿になっていた。
「うほぉ!リサちゃんの身体……。たまんねぇな!」
「……っ!」
恐怖に支配されていたも、恥ずかしさと悔しさは明らかに出ており、リサは涙を流していた。
こうして、リサは下着姿をまじまじと見られながらメイド服へと着替えたのであった。
「さて、今度は俺にキスをしてもらおうか。基本だろ?」
「……かしこまりました。ご主人様……」
小太りの男の命令に背くことは出来ず、リサは涙を流しながらキスをさせられたのであった。
それも、唇と唇がそっと触れ合うようなものではなく、もっと深いものだったのだ。
「……ふぅ、いいねいいね。夜はこれからなんだ。たっぷりリサちゃんを堪能させてもらおうかな」
「……」
「……それにしても、本当に最高だぜ。あんなろくに何もない里でずっと暮らすと考えたらゾッとするからな。おかげで、力を得たんだけどな」
どうやらこの小太りの男は、とある里で暮らしていたみたいだが、ひょんなことからオタク文化を知り、その里を抜け出し、この街へやって来たのである。
その後、何があったかはわからないが、ホラーに憑依されてしまい、先ほどのように人を喰らうこともあったのであった。
こうして、小太りの男は、リサを自らの玩具として弄び、その身体を堪能したのであった……。
※※※
奏夜は穂乃果たちや剣斗と共にメイド喫茶へ行く事になったのだが、そこで、閑岱から指令を受けて秋葉原へやって来た翼と邪美の2人と遭遇する。
2人は、秋葉原で騎士の務めを果たす奏夜の力を借りたいと思っていたみたいであった。
互いに近況を語り合ったところで、邪美は指令についての説明を行っていた。
「……なるほど、お2人は、閑岱の里を抜け出した元魔戒法師を探しているという訳ですね?」
「ああ、その通りだ」
「そいつは、どこからかオタク文化についての情報を手に入れて、そこから自堕落になっちまったみたいなんだ」
「ふむ……。それで、その男は閑岱の里を飛び出し、ここへやって来たのだな?」
「それだけなら別に放っておいても良いのだが、奴がホラーに憑依されたという話を聞いてな」
どうやら、翼と邪美が追っている男は、ホラーに憑依された可能性があるみたいだった。
「俺たちは奴を見つけ出し、本当にホラーに憑依されているのなら討滅せよと指令を受けたのだ」
「でも、奴はうまい具合にこの文化に溶け込んでいるみたいでね。捜索は難航しそうなんだよ」
『恐らくは、ワシらの力でも、気配を追うのは難しいかもしれんのう』
「奴は魔戒法師の端くれだったからな。ホラーに憑依されたとしても、自らの気配を消すなど造作でもないだろう」
このように語る翼の表情は、険しいものとなっていた。
「……なるほど、それは厄介な話ですね……」
「うむ……。せめて奴の狙いがわかれば、ターゲットを探すのが楽になるのだがな……」
「オタク文化に魅入られた元魔戒法師か……」
奏夜は、今回探すべきターゲットの特徴を呟くと、何か手がかりはないかと考えていた。
すると……。
「……いやぁ、本当に助かったよ、ミナリンスキーちゃん」
「いえ。私も久しぶりにここに来れて嬉しいですし」
不意に、この店の店長と、ことりが話をしているのが聞こえてきた。
「最近、メイドさんが次々と姿をくらましちゃってね。その影響で人手が足りなくなって困ってたんだよ」
「そうだったんですか……」
店長とことりがこのように話をしていたのだが……。
「!!」
奏夜はその話を聞くと、何かピンと来たみたいだった。
「?奏夜?どうしたんだい?」
「いえ、さっきメイドさんが次々と行方不明になっているって話が聞こえまして、ホラーが絡んでる可能性があると思いまして」
「なるほどね……。確かにその可能性はあるかもしれないね」
「さっき話してた元魔戒法師が、メイドに執着するような人間だったら全てに辻褄が合うんです」
「さすがだな、奏夜。少ない情報でここまでの推理をするとはな」
「いえ、そんな大したことは……」
翼は、ホラーに繋がる情報を出してきた奏夜を称賛しており、奏夜は尊敬する騎士に褒められたことで少しだけ照れていた。
「うむ!奏夜はなかなか頭が切れるからな!この前も、バラバラだったμ'sを1つにまとめたところだしな!」
そして剣斗は、奏夜をこのように評価していたのであった。
「ミューズ?あぁ、そういえば、メイドの子達が言ってたね。そんな名前のスクールアイドルが凄く頑張ってるとか。それはあんたたちのことだったんだね」
「ええ……まぁ……」
邪美はスクールアイドルについては詳しくはないが、ここにいるメイドさんからそれなりに情報は仕入れてたみたいだった。
「そのスクール何とかのことはよくわからんが、奏夜、どうやってホラーを見つけるつもりだ?」
翼は、スクールアイドルについて興味がないからか、いきなり核心を突く話題を切り出してきた。
「……ホラーがメイドさんを狙うなら、メイドさんを使って誘き出すしかないですね」
「うむ。本来ならイイアイディアとは言えぬが、これ以上被害を出さないためだからな。仕方あるまい」
奏夜の出した作戦に、剣斗は渋々了承していた。
「確かにそれしかないかもだけど、どうやってメイドに協力してもらうつもりだたい?そう簡単には……。ん?」
邪美は、囮になってもらうメイドさんを見つけることは難しいと思っていたのだが、何か良い案を思いついたみたいだった。
「……なぁ、奏夜。さっき話してたμ'sとやらを紹介してくれないかい?ミナリンスキーも一緒にね」
「は、はい。わかりました」
何かを思いついた邪美は、奏夜にμ'sメンバーを紹介するように頼むと、そのまま穂乃果たちのところへ行こうとしていた。
「おい、どうするつもりだ?」
翼はそんな邪美を引き止め、目的を聞き出そうとしていた。
「あんたらはそこで談笑でもしてな!……ほら、奏夜、行くよ」
「は、はい」
こうして、邪美と奏夜は、穂乃果たちのところへと向かっていったのであった。
※※※
その頃、穂乃果たちは、一向に帰ってこない奏夜と剣斗のいる方角を見ていた。
「そーくん、戻ってこないね……」
「戻ってこないということは、やはりあの男の人も魔戒騎士なのでしょうか?」
海未は、戻ってこない奏夜と剣斗の姿を見ながら、このような推測をしていた。
すると……。
「あら?奏夜が戻ってくるわ?」
「メイドさんも一緒みたいやな?」
絵里と希は、奏夜と邪美がこちらへやってくることを確認していた。
「……あんたたちがμ'sだね?」
「は、はい。そうですけど、あなたは……?」
メイドさんにしては態度が大きかったため、穂乃果たちは困惑していた。
「みんな、紹介するよ。この人は邪美さん。管轄はここじゃないけど、魔戒法師なんだ」
「なんだい?この子たちは奏夜や剣斗が魔戒騎士だってことを知ってるんだね?」
「はい、そうです」
「だったら話は早いね……」
邪美は、穂乃果たちが奏夜が魔戒騎士であることを知っていることに驚きながらも、これから話す話題的には好都合だと思っていた。
「改めて自己紹介をさせてもらうよ。あたしは邪美。とある指令でこの秋葉原にやって来た魔戒法師さ」
「魔戒法師って確か、アキトさんみたいな人のことでしたよね?」
「なんだい、アキトとも会ったことがあるんだね。本当に話が早いよ」
「あの……。とある指令ってことは、ホラーなんですか?」
邪美の素性がわかったところで、穂乃果はおずおずと本題を切り出していた。
「まだそうと決まったわけじゃないけどね。それを確かめに行くのさ」
「それで、みんなにも協力してほしいことがあって……」
奏夜は、一切隠そうとはせず、穂乃果たちへ協力を要請していた。
すると……。
「……みんな、ごめん!遅くなっちゃったぁ!」
店長との話が終わったのか、ことりが小走り気味にこちらへやって来ていた。
「……あっ、そーくん。それに、今日体験バイトをしてる邪美さん……でしたっけ?」
「た、体験バイトぉ!!?」
奏夜は、邪美がこの店で体験バイトをしていることを知り、驚きを隠せずにいた。
「ところでそーくん。そーくんって邪美さんとは知り合いなの?」
「まぁな……」
「あたしは魔戒法師なのさ。だから、奏夜のことはよく知っているよ」
「そうなんですね……」
ことりは、邪美の放つ雰囲気が独特だからか、魔戒の関係者ではないかと察していた。
そのため、邪美が魔戒法師と知っても、驚くことはなかった。
「!?もしかして……。ホラーをやっつける指令か何かですか?」
「察しが良いね。流石はミナリンスキーだ」
「いえ……。そんな……」
ことりは邪美に褒められて嬉しかったからか、少しだけ頬を赤らめていた。
「さてと、さっそくだけど、仕事の話をしようか。あんたもこっちに座りな」
「それじゃあ……。お邪魔します……」
こうして、奏夜、邪美、ことりの3人が席についたところで、邪美はこの秋葉原へ来た経緯を話し、穂乃果たちに協力を要請しようとしていた。
「……なるほど、オタク文化に染まってる元魔戒法師がメイドさんを狙ってる可能性があるんですか……」
「それにしても、随分と物好きな魔戒法師もいるものね」
邪美の話を聞き、絵里は驚いていたのだが、真姫は呆れ気味であり、髪の毛の先をクルクルと回していた。
「まぁ、あたしの住んでる閑岱っていうのは魔戒法師の里だから、普通の人間の文化はそんなに入ってこないんだけどね」
「でも、俺や統夜さんみたいに現代の文化に馴染んでる魔戒騎士や魔戒法師はけっこういるだろうし、ひょんなことからターゲットはオタク文化を知ったんだろうな」
「そうなんだ……」
「娯楽もなくて修行三昧なんでしょう?里を抜け出した奴の気持ちもわからなくはないわね……」
にこは、閑岱の里の話を聞き、少しだけ顔が青くなっていた。
「事情はどうあれ、そいつがホラーになってる可能性があって、メイドさんが次々と消えてるんだ。放ってはおけないさ」
奏夜はこれ以上被害を広げたくないと思っているからか、険しい表情になっていた。
「そこでだ。あたしが協力をお願いしたいのはミナリンスキーなんだよ」
邪美は穂乃果たちに協力してほしいと思っていたが、特にことりに協力して欲しいと思っていた。
「え?私ですか?」
「奴はメイドを狙っている可能性がある。そして、あんたは伝説のメイドと呼ばれてるんだろ?だとしたら、狙わない理由はないよね」
「……」
自分がミナリンスキーである故に、ホラーに狙われる可能性があると知り、ことりは浮かない表情をしていた。
「邪美さん。確かに、ことりに囮になってもらうのが一番の得策ではありますが、俺はことりを危険な目や怖い目に遭わせたくないんです」
「そーくん……」
このように語るのは奏夜の本心であり、ことりはそんな奏夜の言葉が嬉しかった。
「やれやれ……。だとしたら、最初からこの仕事に関わらせるべきじゃなかったんじゃないかい?それはあんただってよくわかってるだろ?」
「!?確かに、返す言葉はないです。だけど……。俺は……!」
邪美の言葉は的を得ているからか、奏夜は何も反論が出来なかった。
「待って下さい!そーくんが魔戒騎士であるとわかって関わるのは私たちの意思なんです」
「そうです!確かに今でも怖いです。だけど、何も知らないままそーくんが危険な目に遭ってると聞くのはもっと怖いんです!」
「奏夜はμ'sのマネージャーとして、私たちのことを支えてくれました。だからこそ、私たちが支えられるところは支えたいんです!」
穂乃果、花陽、絵里の3人が今自分たちが思っていることを告げており、奏夜はそんな3人の言葉が嬉しかった。
「……なるほどね。あんたらの覚悟が本物なのはわかった。だけど、奏夜。彼女たちを囮にしないならいったいどうするつもりだい?」
「大丈夫です。俺にいい考えがあるんです。ただ、それを成すには、穂乃果たちの協力が必要不可欠なんです」
「……聞かせてもらおうか?奏夜が何をしようとしているのかをね」
「わかりました」
奏夜は、ホラーの可能性がある元魔戒法師を誘き出す策を伝えると、邪美だけではなく、穂乃果たちも驚いていた。
しかし、穂乃果たちの協力が必要なのは間違いないみたいだからか、穂乃果たちはその作戦に乗り気であった。
そのため、邪美も渋々その作戦に乗ることにして、その作戦は、ことりのバイトが終了した直後に決行することにした。
その下準備をするために、奏夜は伝説のメイドであるミナリンスキーが復活したという内容の書き込みをSNSで拡散したのであった。
それを行うことで、作戦をより確実に成功させるためである。
これにより、獲物が網にかかることを信じ、奏夜たちはメイド喫茶で時間を潰すのだった。
※※※
そして、ことりのバイトが終了したのは、20時過ぎくらいであった。
バイトが終了し、ことりは何故かメイド服を着たまま、自宅へと向かっていた。
「デュフフ……!待ってたぞ……!伝説のメイドであるミナリンスキーが1人になるところを!」
ことりを狙っていると思われる小太りの男が、怪しい目付きで少し離れたところにいることりを見据えていた。
「山刀翼と邪美法師が現れたのは予想外だったけど、誰も俺の邪魔は出来ないさ。あの、青臭い魔戒騎士と、暑苦しい魔戒騎士にもな!」
どうやら小太りの男は、翼や邪美のことを知っているため、この男が、閑岱を抜け出した元魔戒法師であった。
小太りの男は、こっそりと魔導具を使うと、周囲に誰も潜んでいないことを確認した。
そして、ゆっくりとことりに接近すると、ことりを羽交い締めにする形で捕まえたのであった。
「!!?」
「大人しくしろ。騒いだらこの場で殺すからな!」
ことりは恐怖で震えているからか、無言でコクコクと頷いていた。
「とりあえず付いて来い。途中で逃げようとするなよ。手荒な真似をすることになるからな」
ことりは小太りの男の言うことを聞くしかないからか、大人しく男従い、男に付いて行ったのであった。
小太りの男とことりが姿を消してまもなく……。
「……よし、ここまでは奏夜の立てた作戦通りだな」
翼、邪美、剣斗の3人と、穂乃果たち8人が姿を現していた。
「ふむ……。あの男、魔導具を使うところを見ると、2人の探していたターゲットで間違いなさそうだな」
剣斗は、小太りの男が魔導具を使うところに着目し、この男こそが翼や邪美のターゲットであることを確信していた。
「ああ、どうやら間違いないみたいだね」
邪美もこのように答えていることから、この男が閑岱を抜け出した元魔戒法師であることは確実なものになったが、この男がホラーかどうかはまだ掴めずにいた。
ちなみに、邪美はこの時、メイド服ではなく、普段から着ている魔法衣を身に纏っていた。
「多少は法術の心得はあるみたいだけど、あたしの貼った結界に気付かないとは、まだまだだね。まぁ、そうだろうとは思ったけどさ」
邪美はこのように言っているのだが、邪美の貼った結界はかなりの効力であり、気配を消すことなど造作でもなかった。
邪美は一流の魔戒法師であるため、小太りの男と比べるのはおこがましいのだが……。
「それにしても、ことりちゃん……。大丈夫かな……」
「大丈夫ですよ。奏夜がきっと何とかしてくれます」
穂乃果はことりの身を案じており、海未は、奏夜を信じているからか、そこまで心配はしていなかった。
奏夜はことりを囮にすることを良しとしていないのに、何故ことりが囮になっているのか?
その理由は、これから明らかになっていく。
「……あんたたち、本当に奏夜のことを信頼してるんだね」
「それはもちろんだにゃ!」
「そうね。奏夜がいなかったら、私たちはこうやって9人集まることはなかっただろうしね……」
「私たちは本当に奏夜君に感謝してるんです」
「だからこそ、私は奏夜のことを信じられるんです」
「そうね。だって奏夜は……」
「ウチら9人の女神を守る光の騎士なんやもん。カードもそう言うとるしな」
1年生組と、3年生組が、奏夜のことを心から信じられる心境を語っていたのであった。
「なるほどね……」
邪美は、そんな言葉を聞き、奏夜たちの関係性を理解したみたいであった。
(この9人は間違いない……。大なり小なりはあるだろうけどね……。まぁ、これ以上のことを言うのは野暮ってものかな?)
そして、女の勘だからか、穂乃果たちの抱いている感情を読み取るのだが、あえてそれは口にしなかった。
「無駄話はそれまでだ。ゴルバ、キルバの気配を追ってくれ。それで奴の潜伏先を突き止める」
『うむ。心得た』
翼は、ゴルバに何故かキルバの気配を追うよう指示を出すと、ゴルバはキルバの気配を探るのであった。
そして、翼はゴルバのナビゲーションを頼りに移動を開始すると、邪美や剣斗。穂乃果たちもその後を追うのであった。
翼は、穂乃果たちを同行させることを良しとはしなかったが、穂乃果たちの強い意思があってのことと、生き残りがいた場合、その生き残りの保護をお願いするためである。
そうすることにより、翼や剣斗は心置きなく戦えるからである。
そして、この作戦を立てた奏夜は別行動をしているのだが、奏夜がどうしているのかはこれから明らかになっていく。
一方、小太りの男に連れ去られたことりは、秋葉原某所にある今は使われていない廃ビルに来ていた。
「デュフフ……。ついに手に入れたぞ!伝説のメイド、ミナリンスキーを!」
小太りの男は、悲願を達成したからか、喜びを露わにしていた。
「ミナリンスキーを俺の玩具に出来るなら、後の玩具は必要ない。後で俺の餌にさせてもらうか」
どうやらまだ生き残りはいるみたいなのだが、小太りの男は、その生き残りを1人残らず餌として食らおうと考えていたのである。
「ミナリンスキー。お前は今日から俺の玩具になるんだ。身も心も俺に捧げてご奉仕をしてもらうからな」
「……」
ことりは何故か顔を伏せて小太りの男に顔を見せようとはしておらず、恐怖を感じているからか小刻みに震えていた。
そして、無言でコクリと頷いていた。
「?他のメイドと比べて随分と素直だな……。でもまぁ、俺のモノになることは間違いないんだからいいか」
小太りの男は、ことりがやけに素直なことに驚いていたが、それ以上は気にすることはなかった。
「さて……。さっそく俺にご奉仕を……。ん?」
小太りの男は、ことりに何かを強要する前にことりは小太りの男の頬に手を当てていた。
そんなことりの仕草に、男は思わずドキッとしてしまっていた。
「ミナリンスキー……。愛おしいなぁ……。デュフフ、辛抱たまらん!」
ことりの仕草を見て小太りの男の理性は崩壊してしまい、そのままことりにキスをしようとしていた。
すると、何故かことりはニヤリと怪しい笑みを浮かべており……。
どこからか魔導ライターらしきものを取り出すと、それに火をつけた。
「!?何でミナリンスキーがそれを!?」
ことりが魔導ライターを持っていることに驚いていたのだが、既に手遅れであった。
橙色の魔導火は小太りの男の瞳を照らしており、その瞳からは怪しげな文字のようなものが浮かび上がってきた。
この男がホラーである何よりの証拠であった。
「!?お、お前、まさか、ミナリンスキーじゃない!?」
ここでようやく魔導火を持つことりが偽物であることを知り、驚愕していた。
「今気付いたの?だけど、手遅れだよ!」
声はことりのものなのだが、この人物はことりではなかった。
ことり(?)は、マスクを外す素ぶりをすると、変装用のマスクを外し、さらに着ているメイド服を脱ぎ捨てたのであった。
そして、姿を現したのは……。
「……き、貴様!ミナリンスキーと一緒にいた青臭い魔戒騎士か!」
ことりに扮していたのは奏夜であり、小太りの男は驚愕していた。
「まさかこんな単純な変装に気付かないとはな。魔戒法師の道を捨てただけはあるな!」
奏夜は自分の変装に気付かなかった小太りの男を嘲笑っていた。
奏夜が立てた作戦というのは、奏夜がことりに変装することにより、小太りの男をおびき出し、奏夜が囮になっている間に、翼たちが生き残りを救出するというものであった。
ちなみに、本物のことりは、奏夜が連れていかれて間もなく穂乃果たちと合流した。
これも奏夜の作戦であり、わざと合流を遅らせることで、本物のことりが狙われるリスクを避けるためであった。
だからか、ことりはメイド服ではなく、音ノ木坂学院の制服を着ているのである。
「おのれ……!小癪な真似を!こうなったら、人質を使って……」
小太りの男は、以前より捕らえた人間を人質に、その場を凌ごうと考えるのだが……。
「悪いけど、そうはいかないよ!」
小太りの男が移動しようとしたその時、邪美と翼が現れると、男の行く手を塞いでいた。
「くっ、山刀翼と邪美法師か……!」
翼と邪美のことを知っている小太りの男は、思わず舌打ちをしたのであった。
「翼さん!邪美さん!作戦は上手くいったんですね?」
「ああ。こいつに拉致されたメイドたちは救出したよ。穂乃果たちと剣斗がその子たちについてる」
「そうですか!だとしたら、心置きなくこいつを斬れるという訳ですね!」
奏夜は自分の立てた作戦が上手くいっていることに喜びながらも、小太りの男を睨みつけていた。
「うぐぐ……!おのれ!どいつもこいつも俺の桃源郷を作り上げる俺の邪魔をしやがって!」
「桃源郷だと……?ホラーの力を使って自分の欲望を満たしてるだけだろ……!」
奏夜は、実際に拉致された女の子たちを見てはいないのだが、この小太りの男が自らの欲望を満たそうとしていることは理解していたため、怒りを露わにしていた。
「……それで俺の桃源郷だと……?ふざ……」
「ふざけるんじゃないよ!!」
奏夜が怒りの声を出す前に、邪美が怒りの声をあげていた。
「じゃ、邪美さん……?」
邪美が先に怒りの声をあげたことに、奏夜は戸惑いを見せていた。
「さっき奏夜も言ってたけど、あんたはただ自分の欲望を満たしてるだけだ!魔戒法師の道を投げ出して、自堕落な生活に堕ちて……」
同じ里の魔戒法師だから思うところがあるのか、邪美の怒りは増すばかりであった。
「挙げ句の果てに女の子を拉致?女はあんたの玩具じゃないんだよ!」
そして、被害に遭った女の子たちのことを気遣い、同じ女として、許せなかった。
「ホラーに成り果てたあんたにはもう同情なんてしないよ!あんたはあたしたちが討滅する!」
邪美は鋭い目付きで小太りの男を睨み付けると、魔導筆を取り出し、構えていた。
「黙れ!あんたみたいに優秀な魔戒法師にはわからないだろう!落ちこぼれと蔑まされたこの俺の気持ちが!」
「なるほど……。そんな歪んだ感情こそ、貴様の陰我という訳か」
小太りの男の歪んだ感情を汲み取り、翼は鋭い目付きで男を睨みつけていた。
「優秀とか落ちこぼれとかそんなものはどうでもいい。本当に大切なのは、人を守ろうという覚悟と、それを成すための強い思いだ。どんな落ちこぼれだろうと、強い思いがあれば、実力は自ずとついてくるんだ」
翼は、鋭い目付きで小太りの男を睨みながら、魔戒騎士や魔戒法師として大切なことを語っていた。
「お前は周りの人間の言葉に踊らされ、努力を怠り、守りし者としての本分を見失ったんだ」
「俺は、魔戒騎士として未熟だから、あんたが言い訳をして逃げてるだけだってよくわかる」
さらに、奏夜は魔戒騎士として大きな挫折を味わったことを思い出しながらこのように語っていた。
「だからこそあんたの身勝手で、多くの人を傷付けたことが許せない!」
「黙れ……!黙れ黙れ黙れ黙れ!!」
邪美、翼、奏夜の立て続けの言葉に激昂した小太りの男は、衝撃波を放ったのであった。
それにより、3人は一瞬怯むのだが、その隙を突いて、小太りの男はどこかへと姿を消したのであった。
「くそっ!逃げたか!」
小太りの男が逃げてしまい、奏夜は舌打ちをしていた。
『奏夜!奴は上に逃げたみたいだ!』
「2人とも!奴を追いかけるよ!」
「はい!」
「無論だ!」
小太りの男は姿を消したものの、ホラーであることから、キルバはあっさりと気配を探知していた。
それを頼りに、奏夜たちは小太りの男の追跡を始め、階段を駆け上がり、屋上で男を追い詰めるのであった。
「……悪いが、これ以上は鬼ごっこに付き合っていられんぞ」
小太りの男の姿を捉えた翼は、ずっと手にしていた魔戒槍を構えると、普段は隠してあるソウルメタル製の刃が姿を現したのであった。
翼が魔戒槍を構えるのを見て、奏夜も魔戒剣を構え、邪美は魔導筆を構えるのであった。
「おのれ……!どいつもこいつも俺の邪魔をしやがって!誰が相手だろうと関係ねぇ!みんなまとめて喰ってやる!」
追い詰められたことでヤケクソになったのか、臨戦体勢に入っていた。
そして、口を大きく開くと、そこから巨大な口の魔獣が飛び出し、小太りの男の体はその衝撃で消滅していた。
巨大な魔獣は、奏夜を喰らおうと勢いよく迫ってきたのであるが……。
「はぁっ!!」
魔獣の牙が、奏夜の体を喰らおうとするよりも速く、奏夜は魔戒剣を大きな口に向かって叩き込んだ。
その一撃で怯んだからか、魔獣は奏夜と距離を取っていた。
どうやらこのホラーは、浮遊して移動するタイプのホラーであった。
「なるほどな。これが奴の本体という訳か」
『奏夜。こいつはホラー、ハングルード。何でも丸呑みにして喰らおうとする悪食なホラーだ!』
「デュフフ!確かにそうだが、俺の好物は若い女の子だけどな」
キルバの情報を補足するかのように、小太りの男ことハングルードは自分の嗜好を語っていた。
「この力を手に入れて、捨て駒な女を喰らい、本命の子を俺の玩具にするのは最高だったぜ!」
ハングルードは、ホラーの力を使い、己の欲望を満たしていたのであった。
「貴様……!本当に性根が腐ってるみたいだな……!」
ハングルードのあまりにゲスな態度に、奏夜は眉間にしわを寄せていた。
「そんな貴様の陰我、俺たちで断ち切らせてもらう」
「させるかよぉ!!」
ハングルードは翼を食らうべく、翼に向かっていくのだが、翼は、無駄のない動きで向かってくるハングルードをかわしていた。
「その程度か……?所詮は努力を放棄した元魔戒法師。俺たちの敵ではない」
「黙れ!白夜騎士だかなんだか知らないが、貴様から先に喰ってやる!」
翼の言葉が癪に触ったからか、ハングルードは完全に翼に狙いを定めていた。
『ホッホッホ!こんな簡単な挑発に乗るとはのぉ!』
翼の相棒であるゴルバは、簡単な挑発に乗ったハングルードのことを笑っていた。
『翼!白夜騎士の力を奴に思い知らせてやるのじゃ!』
「……無論、そのつもりだ」
翼は改めて魔戒槍を構えると、魔戒槍を高く突き上げると、円を描いた。
その部分のみ空間が変化すると、翼はその空間から放たれる光に包まれた。
すると、その空間から白を基調とした鎧が出現し、翼は白い鎧を身に纏うのであった。
この鎧は白夜騎士打無(ダン)。
翼が継承した、彼の魔戒騎士としての名前である。
翼は黄金騎士牙狼である冴島鋼牙や銀牙騎士絶狼の称号を持つ涼邑零と並ぶ力を持っており、彼ら共に、強大なホラーと戦ったりもした。
そんの彼の実力と経験が現れているのか、その場に立っているだけで、そのオーラを感じ取ることが出来た。
「凄いオーラだ……。これが白夜騎士……なのか?」
奏夜もまた、翼の実力を汲み取ったからか、息を飲んでいた。
「鎧を纏っても関係ない!鎧ごと食らってやる!」
「やってみろ。やれるものならな」
翼が再び軽い挑発を行なうと、ハングルードは翼に向かっていった。
すると、邪美は魔導筆を使って法術を放つと、その術はハングルードに直撃していた。
「グゥッ!貴様……」
「あたしがいることも忘れてもらっちゃこまるね!」
邪美は、法術を放つことにより、自らの存在をアピールしていた。
「翼、援護するよ!」
「援護などなくとも俺はやれる!」
「つれないこと言うんじゃないよ。あたしたちの力、奏夜に見せつけてやろうじゃないか!」
「……なるほど。それも一興か」
奏夜に自分たちの力を見せるということに共感したのか、翼は邪美の援護を受けることにした。
「はぁぁ……!」
邪美は精神を集中させていた。
どうやら、強力な術を放つみたいだった。
「させるかよぉ!!」
術を放つことを阻止しようとしているのか、ハングルードは邪美に狙いを変更し、邪美を喰らおうとしていた。
「!させない!!」
奏夜は魔戒剣を前方に突き付け、円を描くと、そのままその円の中に入っていった。
奏夜は円の中に入るのと同時に、黄金の鎧を身に纏い、円から出た時には、輝狼の鎧を身に纏っていた。
奏夜は邪美を守るように彼女の前に立つと、魔戒剣が変化した陽光剣を一閃し、ハングルードを追い払っていた。
「奏夜、すまないね!」
「気にしないでください。今のうちに術の用意を!」
「当然!!」
奏夜が稼いでくれた時間を無駄にしないべく、邪美は術の用意を行っていた。
その間、翼と奏夜はハングルードの視線を邪美から遠ざけようとしていた。
「おのれ……!邪魔をするな!」
「悪いけど、そういう訳にはいかないんでね!」
「奏夜の言う通りだ。お前を一気に討滅させてもらう」
「なめるなぁ!」
奏夜と翼の言葉に激昂したハングルードは、体を一回転させると、尻尾のようなものを奏夜と翼に叩きつけていた。
「「くっ!」」
奏夜は陽光剣で攻撃を受け止め、翼は魔戒槍が変化した白夜槍で攻撃を受け止めるのだが、少しだけ怯んでしまった。
しかし、すぐに体勢を整えた2人は、反撃に転じていた。
こうしてしばらくの間、奏夜と翼が時間稼ぎを行っていると……。
「……待たせたね!」
どうやら、邪美の準備は整ったみたいだった。
「……!奏夜!」
「はい!」
そのことを知ると、2人はハングルードを邪美の術の範囲内に誘い込むのであった。
ハングルードは頭に血が上りやすいからか、あっさりと2人の誘いに乗るのであった。
「……邪美!今だ!」
「任せな!」
囮の仕事をしっかりとこなした奏夜と翼は、術に巻き込まれないように退避をしていた。
「……!しまった!」
ハングルードはここで邪美が術を放とうとしていることに気付いたのだが、既に手遅れであった。
「はぁぁ……!」
邪美は精神を集中させると、魔導筆を用いて作った魔法陣を輝かせていた。
そして……。
「……はぁっ!!」
いつの間にか邪美は両手に旗のようなものを装備しており、舞を見せながら術を放つのであった。
すると、魔法陣から巨大な火の鳥のようなものが出現し、怒涛の勢いでハングルードに向かっていった。
その一撃が直撃すると、大きな爆発が発生していた。
その術のダメージはかなりのものなのか、ハングルードはボロボロになっていた。
その隙を見逃さず、翼はハングルードに接近し、白夜槍を一閃した。
その一撃により、ハングルードの体は真っ二つに斬り裂かれるのであった。
ハングルードは断末魔をあげており、その体は憑依された元魔戒法師である小太りの男の陰我と共に消滅したのであった。
ハングルードが消滅したことを確認した奏夜と翼はそれぞれ鎧を解除するのであった。
奏夜は元に戻った魔戒剣を緑の鞘に納め、翼は元に戻った魔戒槍を構えるのを辞めていた。
それと同時に、先端部分のソウルメタルで出来た刃は、引っ込むのであった。
「流石です、翼さん、邪美さん」
奏夜は、強大な力によりホラーを討滅した翼と邪美のことを賞賛していた。
「奏夜。あんたも腕をあげたみたいだね。あんたの剣がより鋭さを増したのを感じたよ」
「俺はそんな……。まだまだ未熟ですし……」
「そうだろうな。だが、今日のお前の剣は悪くなかった」
翼は、まだまだ奏夜が未熟であると感じながらも、奏夜のことを認めていた。
「お前を見ていると本当に統夜を思い出す。今のお前なら鍛えがいがありそうだ」
翼は、何度も統夜の修行に付き合っており、そんな経緯があるからか、まだまだ未熟な奏夜とかつての統夜を重ねていた。
「里に帰るのは少し延ばそう。奏夜、明日は時間を作れ。鍛えてやる」
どうやら翼は奏夜に稽古をつけたいと思っているからか、このような提案をしていた。
「アハハ……。お手柔らかにお願いします……」
その修行が厳しいものになると感じた奏夜は、苦笑いをしていた。
すると……。
「そーくん!」
戦いが終わったことを剣斗から聞いたのか、穂乃果が現れて奏夜に駆け寄っていた。
「穂乃果……。みんなはどうした?」
「捕まってたメイドさんたちと一緒に下にいるよ。小津先生もついてるし」
「そっか……。こっちは無事に終わったよ」
「そうなんだ……。良かった……」
穂乃果は奏夜が無事だとわかり、安堵していたのだが、奏夜はそんな穂乃果を見てドキッとするのであった。
(ほぉ……?これはこれは)
女の勘で何かを感じ取ったのか、邪美は怪しげな笑みを浮かべていた。
「さて、あんたらもよく協力してくれたね。あとはあたしらに任せて今日は帰りな。奏夜が送っていくから」
「え?いいんですか?」
奏夜が送ると聞き、穂乃果の表情は明るくなっていた。
「え?でも……」
「こっから先はあたしの仕事さ。捕まった女の子たちの記憶はしっかりと消しておくよ。あんなおぞましいものを思い出さないためにもね」
邪美は、捕まった女の子たちが受けたことに対して痛ましいと思ったからか、しっかりと記憶を消す作業をこなそうとしていた。
「わかりました。後は任せました」
そんな思いをするけど?汲み取ったからか、奏夜は後のことを邪美たちに託して穂乃果たちを送ることにしたのであった。
「あっ、そうそう。穂乃果、ちょっといいかい?」
「え?私……ですか?」
穂乃果は自分のことを指差すと、邪美は無言で頷いていた。
そして、穂乃果に近付くと……。
「……奏夜のこと、頼んだよ。あの子は人気者みたいだし、ぼやぼやしてると誰かに取られるよ」
このように耳打ちをしており、邪美の言葉を聞いた穂乃果は顔を真っ赤にしていた。
「ま、そういう訳だ。あたしは先に下に行ってるよ」
こう言葉を残して邪美は下にいる剣斗のもとへと向かい、翼もそれに付いていった。
「……なぁ、穂乃果。さっき邪美さんは穂乃果に何て言ってたんだ?」
会話の内容が気になったからか、奏夜はこのように問いかけるのだが……。
「……!な、なんでもないもん!ほら、そーくん、行こっ!」
「お、おい!引っ張るなって!」
先ほどの内容を知られたくないからか、穂乃果は奏夜の手を取り、邪美たちを追いかけるのであった。
下にいる剣斗やμ'sメンバー。そして、捕まった女の子たちと合流した奏夜は、後のことを邪美に任せ、穂乃果たちを家に送り届けるのであった。
邪美は、捕まった女の子たちのホラーに関する記憶を消し去り、警察が保護してくれるように仕向けるのであった。
行方不明になっていた女の子たちの保護は大々的に報道され、まだ行方不明の女の子がいることや、犯人が不明で、さらに行方不明だということも報道されるのであった。
※※※
翌日の放課後、穂乃果たちはいつものように練習を行おうとしていた。
しかし……。
「……あれ?そういえば奏夜君は?」
奏夜がいないことが気になった花陽がこのように話を切り出していた。
「奏夜なんですが、今日は学校を休んでるんです」
「えっ?そうなの!?」
奏夜が学校を休んでいると知り、凛は驚いていた。
「そーくんに直接聞いたんだけど、昨日会った翼さんっていう魔戒騎士の人がいたでしょ?その人がそーくんに稽古をつけてくれるみたいで、今日は学校を休むみたいだよ」
穂乃果は、昨日奏夜から聞いた情報をそのまま伝えていた。
「それじゃあ、今頃はどこかでビシバシ鍛えられてるって訳ね……」
絵里は穂乃果からの情報をもとに、奏夜が今何をしているのか分析していた。
「その翼って人、めちゃくちゃ強そうだったじゃない。奏夜、ボコボコに叩きのめされてなきゃいいけど……」
「そうね……。それで怪我でもして長々と休むなんてことはないわよね?心配だわ……」
にこと真姫は、奏夜の身を案じているからか、ソワソワしており、落ち着きがなかった。
そんな2人の様子を、凛と希はニヤニヤしながら眺めていた。
「本当に2人ともわかりやすいにゃ!」
「そうやねぇ。にこっちも真姫ちゃんも、それだけ奏夜が心配だって訳やね♪」
「「うっ、うるさいわね!」」
凛と希がニヤニヤしながらからかってくるのが癪なのか、にこと真姫は揃って異議を唱えていた。
「……」
穂乃果は、その光景を何故かぼうっとしながら眺めていた。
そして穂乃果は、昨日の邪美の言葉を思い出していた。
“あの子は人気者みたいだし、ぼやぼやしてると誰かに取られるよ”
(……海未ちゃんとことりちゃんの気持ちは知ってるけど、みんなも、そーくんのことが好きなのかなぁ……)
穂乃果は、海未やことりが奏夜に惚れてることを知っているが、他のメンバーも奏夜のことが好きなんではないか? と疑惑を抱いていた。
「……私も頑張らないとな……」
穂乃果は、邪美の言葉を気にしているからか、ボソッと呟いていた。
「?穂乃果ちゃん。何を頑張らなきゃいけないの?」
穂乃果の呟きが聞こえたことりは、このように問いかけ、首を傾げていた。
「ふぇ!?……も、もちろん!練習のことだよ!」
「うん!確かに練習を頑張らないとね!」
「はい!奏夜がいないのは残念ですが、だからと言って練習を疎かにする訳にはいきませんしね」
どうやら上手く誤魔化せたようであり、穂乃果は安堵していた。
「それじゃあ、練習を始めましょう!」
絵里の号令により、この日の練習は始まるのであった。
その頃、奏夜はとある場所にて、翼と邪美の2人による特訓を受けていた。
そこで、にこや真姫が心配する通り、ボコボコに叩きのめされながら奏夜は鍛えられたのだが、それはまた別の話である……。
……終。
久しぶりに牙狼らしい描写を書いた気がする(笑)
ホラーとなってしまった元魔戒法師は最後まで名前は出てきませんでしたが、かなりのクズでしたね(笑)
最初のシーンは書いてて胸くそ悪かったです(笑)
ちなみに、ハングルードですが、「魔法少女まどか☆マギカ」に出てきた魔女のシャルロッテをホラーっぽく改造した感じの見た目をイメージしています。
それも、翼や邪美の圧倒的な力の前にやられていましたが。
翼より邪美の方が目立ってる気はしましたが、この2人の活躍が書けて良かったと思っています。
さて、次回も番外編となりますが、番外編はしばらく続く予定です。
二期編の投稿は来年以降になるかなと思いますので、ご了承ください。
次回の番外編はどのような内容になるのか?
それでは、次回をお楽しみに!