牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

79 / 97
お待たせしました!第69話になります!

相変わらず更新は遅くなってしまいましたが、執筆はどうにか時間を見つけて頑張っています。

そして、今回からいよいよ二期の5話に突入します!

奏夜たちは修学旅行へ行き、凛メインの話になっていくと思います。

そういえば、投稿が遅れてる間に、「神ノ牙 JINGA」が始まりましたね(^ ^)

映画からあの展開に驚き、様々な状況に驚きながら楽しんでいます。(地元では放送されてないので、1週遅れではありますがw)

神ノ牙の今後に期待しつつ、第69話をどうぞ!




第69話 「劣等」

修学旅行を間近に控えた奏夜、剣斗、ララの3人は、偶然助太刀をしてくれた統夜とアキトと共に、巨大なゲートになろうとしていたビルの封印に成功する。

 

しかし、そんな奏夜達の目の前に、魔竜ホラーニーズヘッグの眷属であるダークスケイルが出現するのであった。

 

奏夜達は、どうにか強大な力を持つダークスケイルを討滅する。

 

その結果、ララが魔竜の眼を隠し持っている事をジンガやアミリに知られてしまった事など、知る由もなく……。

 

それから間もなくして、奏夜達2年生組は、修学旅行の為、沖縄へと向かうのであった。

 

 

 

 

そしてその頃……。

 

「……はぁっ!!」

 

現在午後2時半になろうとしている時間帯、赤いロングコートを着た青年……月影統夜は、魔戒騎士の日課であるエレメントの浄化を行っていた。

 

翡翠の番犬所の管轄である奏夜が離れており、他にも桐島大輝と天宮リンドウという実力者は居るものの、統夜は奏夜の代わりを務める為に張り切ってエレメントの浄化を行っていたのである。

 

その背景としては、彼も高校時代、部活や行事などがある時に仲間達に協力して貰った事により、それらを楽しみ、心から高校生活を楽しむ事が出来た。

 

だからこそ、後輩である奏夜にも高校生活を楽しんで貰いたい。

 

そんな気持ちがあるのである。

 

オブジェから飛び出してきた邪気の塊を魔戒剣で斬り裂いた統夜は、魔戒剣を青い鞘に納めた。

 

「イルバ、浄化するべき場所はこれで全部か?」

 

『ああ、元々あの小僧が居なくても、大輝やリンドウも居るんだ。お前さんの出る幕は無いくらいだぜ』

 

統夜の相棒である、魔導輪のイルバは、カチカチと音を鳴らしながら小気味よく笑う。

 

「……ま、ジンガの件もあるからか、今は比較的に人手は足りてるからな」

 

自分の仕事は終わったと感じた統夜は、魔戒剣を自分の魔法衣の裏地の中に仕舞う。

 

魔法衣の裏地は特殊な性質であり、特別な空間に魔戒剣などの武器を仕舞うが出来るのであるのだ。

 

『それよりも統夜、そろそろあの学校に行く時間じゃないのか?』

 

「……おっと、そうだった!ああ言った手前、俺が奏夜の代わりにμ'sのマネージャーを務めないとな」

 

統夜は、梓の知り合いが持ってきた依頼を引き受けて貰う手前もあり、奏夜が修学旅行で居なくなるのもあるからか、その間だけ、μ'sのマネージャーを引き受ける事になったのだ。

 

『梓は講義やバイトがあるから前日でなければ来れないのだろう?本当に大丈夫なのか?』

 

「心配すんなって、なんとかなるさ」

 

『やれやれ……。その根拠の無い自信は何処から来るのやら……』

 

イルバは、奏夜の代わりを自信満々で務めようとする統夜に呆れていたのであった。

 

こうして、エレメントの浄化を終えた統夜は、そのまま音ノ木坂学院に向かって行く。

 

統夜は、奏夜達がスクールアイドルを始めた時から度々この学校を訪れているからか、職員に顔と名前が知られるようになり、この頃にはほぼ顔パスで入れるようになっていたのである。

 

慣れた感じで入校の手続きを終えた統夜は、すれ違う教師に挨拶をし、挨拶をしてくれる生徒に挨拶を返しながらアイドル研究部の部室へと向かう。

 

「……よお、みんな、やってるか?」

 

統夜が部室に入ると、2年生組を除く全員が集まっており、どうやら何か話し合いをしているみたいだった。

 

「あ!とーやさんだにゃ!!」

 

「統夜さん!ちょうど良かったです!」

 

統夜が姿を見せるなり、凛と絵里の表情がぱぁっと明るくなる。

 

「……あれ?そう言えば、梓さんは一緒じゃなかったんですか?」

 

今この部屋を訪れたのは統夜だけである為、希は首を傾げていた。

 

「ああ、梓は週末のファッションショーにしっかり参加する為に、大学に戻って講義やバイトを頑張ってるよ」

 

「なんか、大変そうですね……」

 

「そう言えば、梓さんは女子大生だものね……」

 

花陽と真姫は、梓が大学生である事を改めて認識する事で、忙しそうに過ごしている梓に驚いていた。

 

「で、奏夜達が戻ってくるまではあんたがマネージャーをするんでしょう?大丈夫なの?」

 

「に、にこちゃん!統夜さんに失礼だよぉ!!」

 

にこは奏夜の先輩である統夜に対しても強気な態度を取っており、それを見かねた花陽は慌てながらもにこを宥める。

 

「まあ、気にすんなよ。俺は気にしてないからさ」

 

統夜はにこの性格をよく知っている為、気にする素振りを見せる事なく平然としていた。

 

「それで?今何かを相談してたんだろ?」

 

「あ、はい……。実は、昨日修学旅行に行ってる穂乃果や奏夜と電話で相談してたんです。穂乃果や奏夜がいない今、代理のリーダーを立てるべきじゃないか?って」

 

「なるほどな……。そういえば昨日奏夜から連絡来て、あっちは雨だから暇だってボヤいてたな」

 

現在、奏夜達は沖縄にて修学旅行真っ只中なのだが、生憎沖縄は台風の接近に伴って悪天候であり、とても海で遊べる状態では無かったのである。

 

そんな中、絵里は穂乃果や奏夜とこれからの相談をしていた。

 

そした、奏夜は統夜に現状報告も欠かさなかったのである。

 

「リーダーねぇ……。確かに、質のある練習のためには必要かもしれないな」

 

臨時のリーダーを決める。

 

その事に対して、統夜は賛成していた。

 

すると……。

 

『やれやれ……。軽音部で率先してダラダラしてたお前さんが良く言うぜ……』

 

「ちょ!?茶々を入れるなよ、イルバ」

 

イルバは、当時の軽音部の事を話していたからか、統夜は焦ってイルバを宥めていた。

 

「……あんた達、どんだけ部活でだらけてたのよ……」

 

軽音部ではティータイムが主であり、練習が疎かになりがちなのはμ's全員が知っており、その事に対してにこは呆れていた。

 

「それはともかく!一体誰をリーダーにするつもりなんだ?」

 

統夜は軽音部の話を逸らすために、本題を切り出す。

 

すると……。

 

「とーやさん!みんな、凛がリーダーにって言ってるんだけど、凛がリーダーって変だよねぇ!?」

 

どうやら、臨時のリーダーは凛に決まりそうになっており、凛は統夜に詰め寄っていた。

 

「凛!あなたまだそんな事言ってるの!?」

 

どうやら根気よく説得をしてる所だったからか、凛の言葉に真姫が反応する。

 

「だって……。凛にリーダーなんて向いてないよ……」

 

『ほう、こいつは意外だな。お前さんなら、結果がどうなるとか気にせず飛びつくと思ったんだがな』

 

「それは私も思ってたのよ……」

 

どうやらにこはイルバとまったく同じことを考えていたようで、そのことに驚きながらも賛同する。

 

「でも……凛は……」

 

「……」

 

本当に自分にリーダーは向いていないと俯く凛を見ながら、統夜は首を傾げながら考え事をしていた。

 

「……?統夜さん?」

 

そんな統夜を見て、絵里もつられて首を傾げている。

 

「……本当にお前にリーダーの素質は無いのだろうか……?」

 

「え?」

 

統夜が投げかける疑問に、凛はポカンとしてるからか、目を丸くしている。

 

しかし、そんな統夜の疑問を否定するかのようにブンブンと首を横に降るのであった。

 

「さっきからそう言ってるじゃん!凛にリーダーは向いてないよ!」

 

「だけどさ、そんなに難しく考える必要はないんじゃないのか?リーダーと言っても、穂乃果が戻ってくる間だけなんだろ?」

 

「そうだけど……」

 

「それにさ、リーダーの素質が有るとか無いとかは、決めるのは自分じゃない。他の奴らなんだ。皆、凛がリーダーに相応しいって思ってるんだからさ、やってみたらどうだ?俺や皆も出来る限りサポートするからさ」

 

統夜は優しい表情で凛の事を諭すと、凛以外の全員は無言で頷いていた。

 

「……分かった。とーやさんがそこまで言うなら、ちょっと頑張ってみようかな」

 

奏夜の代わりに、やった事の無いマネージャーを引き受けてくれた統夜に応える形で、凛は一時的にμ'sのリーダーになる事を了承する。

 

「ハラショー♪」

 

「流石は統夜さん♪年長者なだけあるなぁ♪」

 

「はい!頼り甲斐のあるお兄さんです!」

 

絵里、希、花陽の3人は、笑みを浮かべながら、統夜の事を称賛する。

 

「それに……」

 

「それに?」

 

「……あのガサツで好い加減な律が3年間部長を務めあげたんだ!なんら問題はないさ!」

 

統夜は軽音部の仲間であり、部長を務めていた律を話の引き合いに出すと、「ふんす!」と言いながらドヤ顔をしていた。

 

「……最後の余計な一言が無ければ完璧だったんだけどね……」

 

「しかも今の言葉、この部の部長であるにこへの当てつけにも聞こえるんですけど……」

 

統夜の言葉に、真姫とにこはジト目になるのだが、真姫は統夜に呆れており、にこは少しだけ怒りを露わにしていた。

 

「取り敢えずこれから練習だろ?そろそろ始めなくても良いのか?」

 

統夜はそんな真姫とにこの視線に気付いているのかいないのか、練習の話を出すのである。

 

「そうだったわね!私と希は、生徒会の仕事を片付けなきゃいけないから、皆は先に練習に行って下さい!」

 

「統夜さんはマネージャーのお仕事やね♪」

 

「ああ、分かったよ」

 

「そうだね!みんな、さっそく練習……行っくにゃあ!!」

 

こうして、凛は部室を飛び出して屋上へと向かって行き、花陽、真姫、にこがそれを追いかける。

 

「やれやれ……。さてと、マネージャーの仕事は何から始めればいいのやら……」

 

「あ、統夜さん!このメモを奏夜から預かっていたんです。自分の代わりをしてくれる統夜さんに渡して欲しいって」

 

部室に取り残された絵里は、制服の胸ポケットから1枚のメモ用紙を取り出し、統夜に手渡す。

 

「おお!有難い。それを参考に早速仕事を……」

 

絵里からメモを受け取った統夜は、そのメモの中身を見るのだが……。

 

「……!!?おいおい!奏夜は毎日これだけの事をやってるのかよ!?」

 

そのメモには、奏夜がマネージャーとして毎日やっている内容がびっしりと書いてあり、その内容を見た統夜の顔が真っ青になる。

 

「私も見させて貰いましたが、これだけの事を統夜さんに強いるのは、と渡すのを迷ってたんですけどね……」

 

スクールアイドルのマネージャーなどやった事も無く、スクールアイドルの事も遂最近知るようになった統夜としてはキツいであろう仕事に、絵里は申し訳なさそうにしていた。

 

「だ、大丈夫だ!奏夜に出来たんだ!俺にだってきっと出来るさ!」

 

『やれやれ。見え透いた強がりだな……』

 

統夜は顔を引き攣らせながら苦笑いをしており、そんな統夜の強がりに、イルバは呆れ果てる。

 

こうして統夜は、絵里から受け取ったメモを参考にして、マネージャーとしての仕事を始めるのであった。

 

(そ、奏夜の奴……。魔戒騎士の仕事を熟しながらこれだけの仕事をやって来たって言うのか!?)

 

奏夜が普段行っているマネージャーとしての仕事は統夜の想像を遥かに超えており、統夜は驚きを隠せない。

 

《ま、あの小僧は魔戒騎士としてはまだまだ未熟だが、そこだけは認めざるを得ないな》

 

イルバは奏夜の事を完全に認めている訳では無かったが、奏夜の普段の仕事量を知り、その凄さを認めざるを得なかったのだ。

 

(完璧には無理だろうけど、俺に出来る事はやってやるさ!)

 

《ま、それしかないだろうな》

 

統夜の抱いていた根拠のない自信は打ち砕かれたのだが、後輩である奏夜が気兼ねなく修学旅行を楽しめるよう、統夜は全力を尽くすのであった。

 

統夜がある程度の仕事を終わらし、練習が行われている屋上に辿り着いたのは、基礎練習が終わり、新曲に向けてのステップを練習している時であった。

 

「……おっ、どうやら頑張ってるみたいだな」

 

真剣に練習を行う風景に、統夜は只感心するだけだった。

 

しかし、真姫とにことの間で、ステップをどうするかで揉め始め、少しだけ不穏な空気に包まれる。

 

(まあ、俺はどっちが良いかは分からんが、此処ら辺は重要だからこその衝突だよな、うん)

 

統夜は、にこと真姫の衝突を止めるでもなく、只事の動向を見守る事に徹していた。

 

すると……。

 

「……ねぇ、リーダーはどう思うの?」

 

此処で、リーダーである凛に白羽の矢が立ち、ステップをどうするか白黒はっきりつけさせようとしていた。

 

自分が大事な決断をしなくてはいけない事もあり、凛は戸惑う。

 

しかし、統夜はそれを偲びないと思いながらも口出しを行おうとはせず、動向を見守っていた。

 

「……ほ、穂乃果ちゃんかそーや君に聞いた方が……」

 

「それじゃ間に合わないじゃない!」

 

凛は自分では判断出来ないと感じたからか、穂乃果や奏夜の意見を仰ぎたかったが、2人が戻るのはイベント前日であり、それから練習をするのでは間に合わない。

 

真姫の指摘はもっともであった。

 

「えっと……。あ!とーやさん!とーやさんはどっちが良いと思う?」

 

「え!?俺か!?」

 

『やれやれ……。予想はしてたが、まさか本当に統夜に聞いてくるとはな』

 

イルバは凛が統夜にも意見を求めようとする事を予想しており、予想通りの結果に呆れていた。

 

「どっちと言われても、俺はダンスに関しては素人だからな……」

 

統夜は凛を突っぱねる訳ではなく、本当に判断出来ないからか、このように口ごもる。

 

「凛」

 

「な、何?」

 

そんな凛を見かねたにこは真剣な眼差しで凛に話しかけると、凛は少しだけオドオドしながら答える。

 

「統夜さんは臨時のマネージャーとはいえ、素人なのよ。そこに頼るのはお門違いだと思うわ」

 

「……」

 

「それに、今のリーダーは貴方なのよ?貴方が決めなさい!」

 

にこは仮に自分の意見が通らなかったとしても、ステップをどうするかはリーダーである凛の判断に委ねる事にした。

 

そうする事で、リーダーの自覚が芽生えるのではないかと考えていたからである。

 

「……」

 

そうは言っても、元々リーダーは乗り気では無かった凛は、俯いて返事に困っていた。

 

すると……。

 

「まぁまぁ、この辺にしておいたらどうだ?」

 

そんな凛を見かねた統夜は、此処で助け舟を出すのであった。

 

「統夜さん、さっきも言ったけど、臨時のマネージャーとは言え、貴方は素人なのよ?だからこっちの話に口を挟まないで貰えるかしら?」

 

「に、にこちゃん!そんな言い方は……」

 

にこの棘のある言葉に、花陽は慌ててにこを宥める。

 

「ま、そこは自覚してるさ。だけど、俺が言いたいのはステップがどうこうじゃないんだよ」

 

「?どう言う事なの?」

 

統夜が何を言いたいのか理解出来ず、真姫は首を傾げる。

 

「確かに、リーダーとしての自覚を持たせる為に凛に意見を出させたいのは分かる。だけど、凛は戸惑ってるだろ?そんな状態で無理に意見を求めてちゃんとした意見が出せると思うか?」

 

「そ、それは……」

 

統夜の言葉は的を得ているからか、にこは何も言い返せなかった。

 

統夜がこう言うのも、凛に味方している訳ではなく……。

 

「凛、穂乃果が戻って来るまでとは言え、一度はリーダーを引き受けたんだろ?だったら、今のステップの所をどうするべきか、一晩考えて結論を出してみたらどうだ?」

 

「えっ……?」

 

統夜からの言葉が思いがけないものだったからか、凛は更に戸惑いを見せる。

 

「ま、多少ではあるけどイベントまではまだ時間はあるんだ。慌てて結論を急ぐよりは、じっくり考える時間だって今の凛には必要だろ?」

 

「そ、そうだよね……。結論を急がせるのも、凛ちゃんにとって負担でしかないもんね……」

 

「ま、そう言う事なら納得するしかないわね。にこちゃんもそれで良いでしょ?」

 

「そうね……。私もそれで異論はないわ」

 

どうやら、統夜の提案に、真姫もにこも反対はしていなかった。

 

「……わ、分かったよ……。明日までに考えてみるね……」

 

こうして、ダンスのステップをどうするべきかは凛が検討して後日決定する事で話は落ち着いた。

 

(ったく……。俺って奴は、お節介が過ぎたか?)

 

《全く持ってその通りだな。ま、今の彼奴らには必要だったのかもしれないがな》

 

統夜は思わず口を出してしまったのだが、イルバはその事に呆れながらも、結果的には必要な事だと納得していた。

 

こうして、ステップの件は落ち着き、再び練習が再開され、統夜は練習の様子を見守るのである。

 

その後は問題のステップ以外の部分の練習を徹底して行った所で丁度日も暮れて来たので、練習は終了となり、解散となった。

 

統夜は残ったマネージャーの仕事を片付け、漸く音ノ木坂学院を後にするのであった。

 

「あ〜……疲れた……」

 

今までやった事の無いスクールアイドルのマネージャーと言う仕事をどうにか熟した統夜は、誰が見ても明らかなくらいに疲れを露わにしながら歩いている。

 

『やれやれ……。統夜、疲れてる暇は無いぜ。もしかしたらホラーが現れるかもしれないんだからな』

 

「分かってるよ。俺としてはそっちが本業なんだからそこは弁えてるさ」

 

疲れを露わにしている統夜ではあったが、魔戒騎士の使命を忘れている訳では無かった。

 

「それにしても、奏夜は魔戒騎士の中でもかなり忙しい魔戒騎士なんだなぁ。正直感心したよ」

 

『そこは俺様も認めざるを得ないな。魔戒騎士としてはまだまだ未熟だが、此処まで忙しい魔戒騎士はそう居ないからな』

 

イルバは、奏夜の魔戒騎士としての技量はまだ認めていないものの、その仕事ぶりは認めざるを得なかった。

 

「さて、街の見回りをする前に番犬所に寄るか……」

 

統夜は、番犬所に向かい、魔戒騎士としての仕事を始めようとしたのだが……。

 

『……おい、統夜。あの3人、μ'sの1年生組じゃないのか?』

 

「……あ、本当だ」

 

イルバが偶然にも花陽、凛、真姫の3人が歩いているのを発見し、統夜もすぐに気付く。

 

見かけてスルーするのも気分が悪いと感じたからか、統夜は近くに行って声をかけようとしたのだが……。

 

「〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

距離が離れている為、聞き取る事は出来無かったが、凛が何か叫んでおり、そのままその場を走り去って行ったのだ。

 

「凛の奴、一体どうしたんだ?」

 

『さあな。だが、凛の奴は臨時のリーダーになる事を嫌がってたからな。その事じゃないか?』

 

「やっぱそうだよな……」

 

何となく事情は察したものの、詳細が気になっている統夜はゆっくりと花陽と真姫に近付いていく。

 

すると……。

 

「……凛ちゃん、ずっと男の子みたいって言われてて……」

 

「!?」

 

花陽が真姫に対して凛の過去を語り始めると、統夜は花陽と真姫の側でさっと身を隠し、話に聞き耳を立てていた。

 

《おい、統夜。凛の話を聞くのにそんなにこそこそする必要はないだろう?》

 

(いや、何となく体が勝手に動いちまってな。これも、魔戒騎士の性ってやつかね?)

 

《なんだよ、それは……》

 

統夜は現在μ'sの臨時マネージャーとしてメンバーに関わっている為、凛に関する情報ならばコソコソせずとも得られるのだが、色々な話を聞き出す為に、敢えて身を隠して話をこっそりと聞いていたのだ。

 

そんな統夜の姿勢に、イルバは呆れて果てている。

 

そうこうしている内にも話は続いており、凛は小学生の頃も短い髪のせいか男の子みたいとからかわれており、そんなある日、スカートを履いて登校した時に、男子児童にからかわれてしまったのだ。

 

それがどうやら、凛にはトラウマになっており、自分は女らしくないと植えつけている要因になっているみたいだった。

 

「そう言えば、私服でスカートを見た事は無いわね」

 

そんな花陽の話を聞き、真姫はなるほどと言わんばかりに頷いている。

 

「……もう、気にしてないと思ってたんだけどな……」

 

そのような話も過去の話である為、凛は既にその話を気にしていないかと思っていた花陽であったが、どうやら女の子らしくないと思い込む凛の心の闇は思ったよりも深いみたいだった。

 

そんな話を終えた後、花陽と真姫は再び歩き出し、帰路につく。

 

「……なるほどな、そう言う事か」

 

花陽と真姫が居なくなったのを確認した所で、統夜はしみじみと呟くのであった。

 

『凛のコンプレックスは思ったよりも深いみたいだな。統夜、なるべく気にかけておけよ。凛のコンプレックスは、十分陰我になり得るし、陰我を引きつけかねないからな』

 

「そうだな……」

 

統夜は魔戒騎士として様々な事例を見て来た為、凛の抱えるコンプレックスが陰我になり得る事は十分理解出来ていた。

 

その為、奏夜の留守中に悲劇を起こさせる訳にはいかない。

 

統夜はそんな気持ちでいっぱいになるのであった。

 

そのような決意を固めた所で統夜は1度番犬所に立ち寄り、その後、街の見回りを行う。

 

その途中に梓から連絡があり、明後日には講義もバイトもひと段落つきそうな為、こちらに顔を出すと話があった。

 

その時に、先方が希望している衣装を持ってくるとのこと。

 

その話を了承した所で梓からの連絡が終わり、統夜は現在宿泊をしている某所へと戻ろうとしたのだが……。

 

「……ん?梓の奴、連絡忘れてた事が有ったか?」

 

再び統夜の携帯が鳴った為、また梓からの連絡かと思い、携帯を取り出すのだが……。

 

「……!奏夜か……!」

 

どうやら次に連絡が来たのは、現在沖縄に居る奏夜からであった。

 

「……おお、奏夜か」

 

『はい、統夜さん。絵里から聞いたのですが、すいません。俺の仕事を代わりにやって貰って……』

 

奏夜は開口一番で、自分の代わりを引き受けてくれた統夜に申し訳ないという気持ちを露わにしていた。

 

「気にするなって、仕事が思ったより多くて焦ったが、あれだけの仕事を熟すお前に感心してた所なんだぜ」

 

『いや、そんな……。俺は……』

 

奏夜は謙遜から照れを出しているのだが、声色からは満更でも無いと言う事が伝わってくる。

 

「それに、丁度良かったよ。お前に話しておきたい事が有ったからな」

 

『そうなんですか?実は俺も、話しておかなきゃいけない事があって……』

 

統夜も話が有ったのだが、奏夜もどうやら話が有ったみたいだった。

 

その声色から、それも深刻そうな話である事は予想出来た。

 

その為、統夜は自分の話から始めようと思ったからか、先程の凛の話を始める。

 

統夜からの報告を聞いた奏夜は「う〜ん……」と考え込んでいる。

 

『確かにそこは俺も気になっていました。凛がリーダーが気乗りじゃないって穂乃果から聞いた時は驚いていたので』

 

「凛は自分に自信が無いだけじゃなくて、自分が女の子らしくないって思い込んでいる。そんな気持ちは陰我になりかねないから、気を付けて見るつもりだ」

 

統夜は花陽が話していた情報から凛の心境を分析し、それを奏夜に報告する。

 

『やっぱりそう言う事か……。凛はあんなに元気いっぱいなのに、どこか一歩引いてる所が気になっていたんです。俺がもっと早く気付いていれば、わざわざ統夜さんの手を煩わせる事も無かったのに……』

 

奏夜は統夜よりも凛と過ごしていた時間は長かった為、そんなコンプレックスの兆候は感じ取っていた。

 

しかし、確証も無く聞き出せなかったと言う事もあり、奏夜はその部分を悔やみ、統夜に詫びを入れる。

 

「気にするなって。そんな事は誰も予想出来ないし、俺だって少しはお前らの役に立てそうだしさ」

 

統夜は奏夜みたいにダンスが出来る訳では無く、メンバーの指導やマネージャーらしい事は余り出来ないが、年長者として凛の問題を解決させ、陰我を芽生えさせない様にする事は出来ると考えていたのだ。

 

『統夜さん、有難うございます!凛の事は宜しくお願いします!』

 

「おう、任せときな。それで、奏夜の話は何なんだ?」

 

『はい。実は……』

 

奏夜はバツが悪そうにしているのが電話越しでも伝わって来た為、統夜は首を傾げるのであった。

 

『統夜さん、沖縄の方は天気が良くない事は話しましたよね?』

 

「ああ、お前もボヤいてたもんな」

 

『中々天気が良くならないんです。寧ろ悪くなってるような……』

 

「なあ、奏夜。まさかとは思うけど……」

 

奏夜の話を聞き、事情を察した統夜は驚きを隠せずにいた。

 

『はい。もしかしたら近い内に先生から話が出るかもしれませんが……』

 

奏夜は今後の修学旅行はこうなるかもしれない事を統夜に打ち明ける。

 

統夜は予想はしてたものの、やはり驚いていた。

 

『もし、その話が本当になったとしたら改めて報告するので……』

 

「そうだな……。奏夜、頼むな」

 

『はい。統夜さんも、μ'sの皆を宜しくお願いします!』

 

奏夜はこの様にμ'sの事を統夜に託した上で電話を切り、統夜はそれを確認すると携帯をポケットに仕舞って立ち尽くしていた。

 

「……これは……。中々面倒な事が起きそうだな……」

 

これから起こるであろう事態に、統夜は頭を抱えていた。

 

奏夜が予想していた嫌な予感は的中する事になり、それが他のメンバーに伝達されるのは、梓が訪れる2日後の話であった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『凛の奴、どうやら色々思い詰めてるみたいだな。お前は自惚れてる訳でも無いのだから、そこまで気にする必要はないのだがな。次回、「変身」。女ってのは皆等しく綺麗になれると俺は確信してるぞ』

 

 

 




凛メイン回と見せかけて、統夜メイン回となってしまったww

前作の「白銀の刃」では、軽音部としてダラダラ過ごしていた統夜が、臨時のマネージャーに!

そして四苦八苦してるのを見ると、奏夜がマネージャーをこなしながら魔戒騎士をやれてるのがかなり凄いと感じられると思いますww

そして次回も5話の話ではありますが、一部オリジナル要素を入れたいと考えています。

さらに、前作にも登場したあのキャラも登場するかも?

果たして、どのようなキャラが出てくるのか?

それでは、次回をお楽しみに!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。