牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第70話になります!

タイトルを見て気付いた方もいるとは思いますが、本来1話予定だった話を、今回は前後編にさせてもらいました。

とある話を書きたかったため、1話でまとめきれなかったのです。

後編の方も鋭意執筆中ですので、よろしくお願いします!

と、前後編になった事情を説明したところで、

今回もまた、凛+統夜のメイン回になっています。

μ'sの臨時マネージャーとなった統夜がどのようなもの活躍を見せるのか?

それでは、第70話をどうぞ!




第70話 「変身 前編」

奏夜たち2年生組が修学旅行へ出かけ、残されたメンバーは、奏夜の先輩騎士である統夜を臨時のマネージャーに迎え入れ、出演が決まっている、ファッションショーの準備のため、動いていた。

 

リーダーである穂乃果が不在のため、その代理として、凛が選ばれる。

 

自分に対して自信を持てない凛は最初は臨時のリーダーになることを拒否していたが、統夜の説得を受けて、渋々とその任を受けることになる。

 

しかし、凛は思うようにメンバーを引っ張ることは出来ず、戸惑いを見せていた。

 

その日の帰り道、統夜は偶然にも花陽と真姫の話を遠くからではあるが聞くことができ、凛の心の中に抱えている闇に警戒していた。

 

それからまもなく奏夜から連絡が入り、統夜はそのことを報告するのだが、奏夜の口から最悪の報告がされることになる。

 

それがμ'sのメンバーに伝達されたのは、その日から2日後である。

 

その時には、統夜の恋人であり、今回μ'sにファッションショーでのパフォーマンスの仕事を持ってきた中野梓も来ていた。

 

「ええ!?帰れない!?」

 

統夜から話を聞いた凛は、驚きを隠せないからか、声をあげていた。

 

「ああ、奏夜から連絡があってな。今沖縄の方は台風が酷いらしく、飛行機が出せる状態じゃないらしい」

 

奏夜が統夜にしていた話というのはこのことであり、この時はまだ飛行機が出せないと確定していた訳ではなかったが、奏夜は最悪の事態を想定して統夜へ報告していたのである。

 

「そうなると、奏夜たちが戻ってくるのは厳しいから、今度のライブは6人でやるしかないわね……」

 

「うん、先方の方には私から話をしておくね。事情が事情だし、仕方ないから……」

 

「梓さん、よろしくお願いします」

 

奏夜たちが戻れないということは、9人でのライブは不可能になる。

 

絵里は、断腸の思いではあるが、6人でライブを行うことを話し、梓はその旨をファッションショーの関係者に話すことにした。

 

「あっ、それでね……」

 

梓が今日、μ'sのメンバーのもとを訪ねたのは、統夜の手伝いをするだけではなく、当日の衣装の話をするためであった。

 

前置きをした梓は、先方から預かっていた衣装を取り出す。

 

この衣装は、まるでウェディングドレスを彷彿とさせる衣装であり、凛以外の全員が「おお!」と声をあげていた。

 

「今回センターで歌う人はこれを着てほしいって先方から話があったんだよね」

 

「こ、これを着て歌うの……?凛が……?」

 

穂乃果がいない現在、臨時でμ'sのリーダーをしているのは凛である。

 

リーダーがセンターを担当する故、この衣装を着るのは穂乃果ではなく、凛ということになる。

 

その事実を知った凛は、顔を真っ青にするのであった。

 

どうやら凛は全ての女の子の憧れであるウェディングドレス風の衣装を着るという現実から逃避したいからか……。

 

「シャーーー!!」

 

まるで猫のように近くにいたにこのことを威嚇するのであった。

 

「り、凛が壊れた!!」

 

『おいおい、何やってるんだか……』

 

そんな凛に、イルバは呆れており、一瞬の隙を突いた凛はその場から逃げ出そうとした。

 

しかし……。

 

「……あ、あれ?何で鍵が!?」

 

凛は部室の扉を開けようとするも、鍵がかかっており、逃げられないことに凛は焦りを見せる。

 

そんな中……。

 

「……なんでだと思う?」

 

にこが凛の背後に現れると、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「さ、さあ……?」

 

「それは……散々あんたらに逃げられてるからよ!!」

 

「うに"ゃーーー!!」

 

逃げ場を失った凛を、にこはすぐ確保に入った。

 

凛は抵抗するものの、逃げられないとわかったからか、凛はすぐに観念するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり、凛には似合わないよ」

 

逃げることは辞めた凛ではあったが、センターが着なくてはいけないウェディングドレス風の衣装を着ることを頑なに拒否するのであった。

 

「μ'sのためにも、凛じゃない方がいい!」

 

凛は、自分に自信がないからか、この衣装を着るべきではないとさえ考えていたのだ。

 

「凛ちゃん、そんなことは……」

 

「梓」

 

梓はすぐにそんな凛のことをなだめようとするのだが、凛が女の子らしい衣装は似合わないという事情を偶然にも知った統夜は梓の肩に手を置き、首を横に振る。

 

「統夜先輩……」

 

「梓、ここは俺に任せてくれないか?」

 

統夜は他のメンバーに聞こえないように、梓に耳打ちをすると、梓は無言で頷くのであった。

 

《やれやれ……。本当は凛だって着たいだろうに、自分の気持ちを押し殺しやがって……》

 

(それがわかってるからこそ、今は何も言うべきではないんだよ。今上辺の言葉で説得したって凛に届くわけはないんだからな)

 

統夜は、凛の心境を察しているからこそ、必要以上のことを言うべきではないと判断したのだ。

 

梓は、そんな統夜のことを心から信頼しているため、統夜の言葉に従ったのだ。

 

「ま、どっちにせよ、この衣装は元々穂乃果に合わせてるから、手直しをする必要はあるけどな」

 

この衣装は、穂乃果が着る予定で話が通っており、衣装も穂乃果に合わせて作られていた。

 

なので、凛が着るにせよ他の誰かが着るにせよ、手直しは必要なのである。

 

「そうですね……。この6人の中で、1番穂乃果に近いとなれば……」

 

「うーん……。花陽ちゃん?」

 

穂乃果と体型が似ているのが誰か絵里と希は考えており、希は花陽が1番穂乃果に近いのではないかと考えていた。

 

「え!?私!?」

 

まさか自分に白羽の矢が立つと思ってなかったからか、花陽は驚きを隠せない。

 

すると……。

 

「うん!かよちんがいいにゃ!!」

 

凛はこの衣装を着たくないからか、花陽が候補に挙がると、ここぞとばかりに花陽を推薦する。

 

「で、でも……」

 

「かよちん可愛いし、絶対に似合うにゃ!!」

 

凛のこの言葉は、自分がこの衣装を着たくないというだけではなく、心の底から似合うと本気で思ってたからである。

 

「凛ちゃん……いいの?」

 

「いいに決まってるにゃ!!」

 

「……」

 

花陽は、凛の心情を察しているからか、これ以上は何も言うことは出来ず、このまま、リーダー代理を凛から代わることになり、衣装も花陽が着ることになった。

 

花陽がこの衣装を着るにしても、直しは必要であるため、その作業を行おうとするのだが、その前に、絵里は穂乃果に連絡を入れる。

 

センターが凛ではなく、花陽になったことを報告するためだ。

 

それと同時に、統夜は奏夜に電話をかける。

 

報告する内容は同じなのだが、現在奏夜は、穂乃果たちとは離れていると考えられたため、別個に報告をしているのだ。

 

奏夜が電話に出るなり、奏夜たちが帰れない旨をメンバーに伝えたことや、センターが凛ではなく花陽に変更になったことを報告した。

 

『花陽がセンター……ですか?』

 

「ああ、本当なら凛が着る予定だったんだが、自分には似合わんって渋っちまってな」

 

『そうでしたか……』

 

唐突にセンターが変わったというのに、奏夜は冷静であり、そのことに統夜は首を傾げる。

 

「奏夜、ずいぶんと冷静なんだな」

 

『はい。どちらにせよ俺たちはイベントに出れなくなったから、そこに対してとやかくは言えないんです。それに……』

 

「それに?」

 

『統夜さんなら、今の迷った凛を導ける……。俺はそう信じてるからです!』

 

「やれやれ……。とんでもなく重いものを背負わされた気分だぜ……」

 

自分はマネージャーとしてまともな仕事は出来ていない。

 

しかし、奏夜は軽音部のメンバーを導いてきた統夜を心から信頼していたのだ。

 

「……ま、このまま終わらせるつもりはないしな。この件は俺に任せてくれ」

 

『はい……!統夜さん、よろしくお願いします!』

 

こうして、奏夜は間近に迫ったイベントを統夜に託して、電話を切るのであった。

 

それと同時に絵里の電話も終わったみたいであり、統夜が電話を終えて部室に戻った時には、花陽は既に衣装に着替えていた。

 

「……おお、なかなか似合うじゃないか」

 

花嫁風の衣装を着た花陽を見て、統夜はこのように褒め言葉を送っていた。

 

「そ、そう……ですかね……」

 

異性に褒められるということに慣れていないのか、花陽は頬を赤らめて照れていた。

 

すると……。

 

「……統夜先輩。鼻の下、伸びてますよ……」

 

統夜の微妙な変化を見逃さなかった梓は、ジト目で統夜を睨みつける。

 

「ちっ、違うっての!」

 

「嘘言わないで下さい!統夜先輩は鈍感なくせに、可愛い女の子に弱いとこがあるんだもん……!」

 

梓は、統夜が花陽を見てデレていると思ったからか、焼きもちを焼いて頬を膨らませていた。

 

「だから違うって!俺はな、花陽の衣装を見て、梓と一緒に撮った写真のことを思い出したんだよ」

 

「!?そ、そうなんですか……?////そういうことだったら……。ゴニョゴニョ……////」

 

統夜の言葉を聞いた梓は、顔を真っ赤にして恥ずかしがっており、その様子はまさしく恋する乙女そのものだった。

 

「あー、はいはい。イチャイチャするなら他所でやってよねぇ」

 

そんな統夜と梓を見かねたのか、にこがジト目で統夜と梓を睨みつける。

 

「あっ、ご、ごめんね!」

 

ここでようやく我を取り戻した梓は、にこに謝罪をする。

 

「花陽ちゃん、大体はピッタリなんだけど、部分的に合ってないところがあるから、そこを修正するからね」

 

「あっ、はい……」

 

我に返った梓は、衣装の細かい直しを始め、絵里と希がそれを手伝っていた。

 

そんな中、凛は部室を出て練習に向かおうとしたのだが……。

 

「……」

 

凛は、花陽の着る花嫁風の衣装をジッと眺めていた。

 

本当はその衣装を着てみたいと心で物語っているかのように……。

 

花陽はそんな凛が見ていることに気付いて目が合うのだが、凛は苦笑いをしながら、部室を後にした。

 

「凛ちゃん……」

 

「……」

 

花陽はこの瞬間、凛の本音を理解しており、真姫もまた、先ほどの凛を見て、思うところがあった。

 

(やれやれ……。思ったより、凛の抱えている闇は深そうだな……)

 

《統夜。今日は街の見回りを重点的にやっておけよ。なんか嫌な予感がするからな……》

 

(わかってるって)

 

イルバは、先ほどの凛を見て、今夜は何かが起きそうな予感を感じていた。

 

それは統夜も同じ気持ちであるからこそ、それに同意したのだ。

 

この日は、花陽の衣装合わせを行い、その後6人でのフォーメーションを合わせ、練習は終了となった。

 

練習後、統夜は番犬所へと立ち寄ってから、街の見回りを行う。

 

梓も統夜の見回りに同行しており、現在は2人で行動していた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

統夜が街の見回りを行っている頃、凛は気晴らしに家の近くを歩いていた。

 

その少し前に、自分が着たいと思っていたワンピースを着ようとするも、やはり似合わないと自己嫌悪してしまい、そんな気持ちを紛らわすために歩いていた。

 

しかし、それでも気持ちは晴れることはなく……。

 

(……やっぱり……。凛には女の子らしい服は似合わないよ……)

 

凛は、小学生の頃に、女の子らしくないとからかわれたのがトラウマになってしまい、女の子らしい服を着ることに抵抗を感じるようになった。

 

そして、今回出場するイベントで着る予定だったウェディングドレス風の衣装も、本音を言えば着てみたいと思っていたのだ。

 

ウェディングドレスは、女の子の憧れでもあるため、凛がそのような気持ちになるのも至極当然なことである。

 

しかし、自分には似合わない。

 

この言葉が邪魔をしてしまい、どうしても一歩引いてしまったのだ。

 

そんなことを考えながら道を歩いていたその時、凛は1人の女性とぶつかってしまった。

 

「あっ、ごめんなさい……」

 

凛は謝りながらその女性を見るのだが……。

 

「……」

 

その女性は、只ならぬ気配を出しながら凛のことを睨みつけていた。

 

「あ、あの……」

 

そんな女性の気配に気圧され、凛は少し怯えていた。

 

すると……。

 

「……どうして……」

 

「え……?」

 

「どうしてあなたはそこまで女の子らしいのよ……!控えめで、しおらしくて、私の持ってないものを持っている……!」

 

この女性は、どうやら凛が女の子らしいということを一瞬で見抜いたのだ。

 

しかし……。

 

「そ、そんな!凛なんて全然女の子らしくないです!」

 

「嘘よ!その謙虚な姿勢も女の子らしいじゃない……」

 

女性は、凛に対して妬みの感情を持っているのか、凛のことを悪鬼のような表情で睨みつけていた。

 

「許せない……。許せない!許せない!許せない!!」

 

女性の狂気に満ちた言動に、身の危険を感じた凛はその場から逃げようとした。

 

しかし……。

 

「!?」

 

「逃がさないわよ!あなたみたいない女の子らしい子は許せない!私の餌にしてやるわ!」

 

「!?あ、あなた……!!」

 

凛はこの女性に捕まってしまうのだが、この瞬間、凛は気付いてしまったのだ。

 

この女性がホラーだということに。

 

凛は慌てて逃げようとするものの、ホラーである女性を振り切ることは出来なかった。

 

(凛……。女の子らしくないから、ホラーに狙われちゃったのかな……?)

 

ホラーが凛に対して抱いている印象とは違う印象を、凛は自分で感じてしまい、自己嫌悪に近い感情になっていた。

 

凛はネガティブな感情に支配されそうになっていたその時である……!!

 

「……凛!!しっかりしろ!!」

 

「!!?」

 

どこからか自分を叱責する声が飛び交い、凛はハッと我に返る。

 

「!?だ、誰なの!?」

 

ホラーである女性も、謎の声に戸惑うのだが、それが大きな隙を作ってしまい、凛は女性の手を振りほどいて女性から離れるのであった。

 

それを確認するかのように現れたのは……。

 

「……!とーやさん!梓さんも!」

 

凛たちの前に現れたのは、街の見回りを行っていた統夜と梓であった。

 

偶然近くを歩いていた統夜たちは、イルバが感じた邪気を辿り、この場所へとたどり着いたのだ。

 

「……凛ちゃん!こっち!」

 

梓はすぐに凛を誘導すると、凛は即座に2人のもとへ駆け寄る。

 

「イルバ、こいつがホラーだな?」

 

『ああ。あれだけの邪気を出してたら、ホラーだとバレバレだぜ。魔導火を使うまでもなかったな』

 

女性の抱える陰我はそれだけ根深いのか、凛に対して妬みの感情を出していた時にかなりの邪気を出しており、そのおかげでイルバは早々に気配を探知出来たのだ。

 

「おのれ……!魔戒騎士!私の狩りの邪魔をするな!私は、誰よりも女の子らしい存在が憎くて仕方ないのよ!!」

 

イルバにあっさりとホラーと見抜かれた女性の顔は、血色が悪いなり、悪鬼のような表情で統夜を睨みつけるのが、不気味さをより引き立たせていた。

 

「やれやれ……。ホラーに言われるのは癪かもしれんが、あのホラー、わかってるじゃないか……」

 

ホラーの狙いを理解した統夜は、苦笑いをしながらも魔戒剣を引き抜く。

 

「……梓、凛を頼んだぞ!」

 

「はい!」

 

凛を梓に託した統夜は、魔戒剣を構え、ホラーである女性へと向かっていく。

 

女性は先手必勝と言わんばかりに攻撃を仕掛けようとするが、あっさりと統夜に攻撃をかわされてしまい、反撃である魔戒剣の一太刀を受けてしまう。

 

「……凛!これだけは覚えておけ!」

 

統夜はホラーである女性と交戦しつつも、凛にメッセージを送ろうとしていた。

 

「このホラーが認めているからという訳じゃないけどな……。お前は誰よりも女の子らしいぞ!自分に自信を持て!」

 

「!!!」

 

統夜からの言葉が思いがけないものだったからか、凛は驚きを隠せない。

 

しかし、そんな気持ちを否定するかのようにすぐ俯いてしまい、首をブンブン横に振っていた。

 

「違うにゃ!凛は……凛は!女の子らしくなんてないにゃ!」

 

「だったら、なんであの時あの衣装を羨ましそうに見てたんだ?」

 

「そ、それは……」

 

「花嫁衣装に憧れるのは、当然のことなんだ。それに、お前はスクールアイドルとして、堂々としたパフォーマンスをしてるじゃないか!」

 

統夜は凛と話をしながらも、その太刀筋を曇らせることはなく、統夜の圧倒的な力に、女性は苦戦する。

 

「だって……。ステージではみんながいるし……」

 

「そうだ。お前は1人じゃないし、今のお前は、かつて男の子っぽいってからかわれてたお前じゃない!!」

 

「!!」

 

凛はμ'sのメンバーとして活動することで、多くの仲間を得て、様々な困難を乗り越えてきた。

 

そんな凛が成長していることは統夜はわかっているためこのような言葉を送っていたのだが、その言葉に凛はハッとする。

 

「お前にはμ'sのみんながいる。奏夜と剣斗。それに、ララもな」

 

「統夜先輩と私たちだっているよ!だから凛ちゃん、自分の憧れに遠慮することなんてないよ!だって、私たちは女の子なんだもん!可愛い服を着たいのは当然だよ!」

 

「とーやさん……梓さん……」

 

「やれやれ……。最後は梓にいいところを持ってかれちまったな……」

 

統夜は最後まで言い切って、凛を説得しよとしたが、最後のいいところは梓が持っていってしまい、苦笑いをする。

 

しかし、この言葉は同性から送られるからこそ、効果はあったのだと予想される。

 

そんな中……。

 

「おのれ……!いつまでもごちゃごちゃと!!私を馬鹿にするのもいい加減にしろ!!」

 

統夜の舐めプともいえる戦い方に激昂した女性は、人間の姿から、この世のものとは思えないおぞましい怪物……ホラーへと姿を変えた。

 

『統夜。こいつはホラー、エンヴル。憑依した人間の妬みを増幅させ、妬んだものを食らうタチの悪いホラーだ』

 

「なるほど、妬みね」

 

イルバのホラー解説を聞いた統夜は納得したからか、苦笑いをしていた。

 

そんな中、エンヴルは統夜に接近すると、その爪で統夜を切り裂こうとするのだが……。

 

「……悪いな。俺はそう簡単にやられる訳にはいかないんだよ。大切な恋人と大切な後輩が見てるんでね!」

 

統夜は魔戒剣でエンヴルの爪を抑えると、大胆な言葉を言い放つ。

 

そんな統夜の言葉に、梓と凛は頬を赤らめる。

 

「?2人とも、何で顔が赤くなってるんだ?」

 

『やれやれ……。お前さんの鈍感は相変わらずってところだな……』

 

統夜は梓という恋人が出来ても鈍感な様子に変わりはなく、そんな相棒に、イルバは呆れているのである。

 

「悪いけど、一気にケリをつけさせてもらう!」

 

頬を赤らめる梓と凛を見ながらも、統夜は魔戒剣を奮ってエンヴルを弾き飛ばし、蹴りを放ってエンヴルを吹き飛ばした。

 

「……貴様の陰我、俺が断ち切る!!」

 

統夜は魔戒剣をエンヴルに突き付けてこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げる。

 

そのまま円を描くのだが、その部分のみ空間が変化し、そこから放たれる光に統夜の体は包まれるのであった。

 

すると、空間が変化した場所から白銀の鎧が舞い降り、統夜はその鎧を身に纏う。

 

その鎧は、まるで闇を照らすような輝きを放つ白銀の鎧であり、様々な試練を乗り越えてきたからか、その輝きはより増していたのだ。

 

この鎧は、白銀騎士奏狼(ソロ)。

 

統夜が受け継いだ、統夜の魔戒騎士としての名前である。

 

そして、統夜は、20歳という若さではあるが、最強と言われた黄金騎士牙狼と互角の力を持っていると言われる騎士なのだ。

 

「!?その銀の鎧……!!貴様……!まさか……!」

 

白銀騎士奏狼の名前は、ホラーの間にも伝わっているのか、白銀に輝く鎧を見て、エンヴルはたじろぐ。

 

「俺と零さん、どっちを連想してるかはわからんが、まあ、そこはいいだろう」

 

統夜は、自分と同じような白銀の鎧を身に纏う魔戒騎士である、涼邑零のことを思い出し、苦笑いをする。

 

「ええい!!鎧を召還したからなんだというのだ!貴様を殺し、妬ましいそこの女を喰うのだ!」

 

「悪いけど、そうはさせるか!」

 

統夜は魔戒剣が変化した皇輝剣を構え、迫り来るエンヴルに備えていた。

 

エンヴルは爪による攻撃でソロの鎧を切り裂こうとするのだが、爪による攻撃では、ソウルメタルで出来たソロの鎧に傷を付けることは出来なかった。

 

「!?なんだと!?」

 

「悪いな。その程度の攻撃で、ソロの鎧が貫けると思うな!」

 

エンヴルの攻撃をあえて受けた統夜は、そのままエンヴルを殴り飛ばすと、すかさず追撃を与えるべく接近する。

 

統夜は皇輝剣を一閃すると、その刃は、エンヴルの体を真っ二つに切り裂く。

 

「つ、強すぎる……!その力も……!妬ましい……!!」

 

エンヴルは、統夜の圧倒的な力に妬みの感情を抱きながら消滅するのであった。

 

「あんたもまた、女らしい人だったんだろうな……。だけど、あんたのその妬みが、陰我となって、ホラーを引きつけちまったんだ……」

 

統夜は鎧を解除し、魔戒剣を青い鞘に納めるのだが、その表情は女性の心情を察してなのか、悲痛そうであった。

 

「統夜先輩……」

 

そんな統夜を心配そうに見つめる梓であったが、統夜は梓と凛のもとへと歩み寄る。

 

「……悪い。けど、心配はいらない。事情はどうあれ、ホラーは斬る。それだけなんだから……」

 

「はい、そこは私もわかってますから」

 

自分は何の力もないため、統夜と共に戦えないが、統夜を支えることは出来る。

 

梓は、そのような考え方で統夜を支えていこうと考えており、それを今も実行している。

 

そして……。

 

「あ、あの……。とーやさん……」

 

偶然にもホラーに襲われてしまった凛が、恐る恐る統夜に声をかける。

 

「……凛。何の心配もいらないさ。お前がまだ迷いを振り切れてないとしても、お前にはたくさんの仲間がいる。それだけは覚えておいてくれ」

 

「……はい!」

 

凛はこのように返すのだが、迷いは完全には晴れていない様子であった。

 

しかし、悩んでいた頃と比べたら、その表情は明らかに晴れやかになっていたのである。

 

「……とりあえず、今日は帰ろう。俺たちで送るからさ」

 

「……はい。そうさせてもらうにゃ!」

 

こうして、ホラーエンヴルを倒し、凛を救った統夜は、梓と共に凛を家まで送り届ける。

 

その後、2人が宿泊しているホテルへと向かっていたのだが……。

 

「……統夜先輩」

 

「ん?どうした?」

 

「凛ちゃんなんですけど、大丈夫ですかね……?」

 

梓は、自分に自信を持てない凛のことを心配しており、不安気に統夜に尋ねたのである。

 

そんな中、統夜の答えは……。

 

「……心配はいらないさ。まだ完全には吹っ切れてないみたいだが、もうひと押しあれば、なんとかなるさ」

 

「そんなもんですかね……?」

 

「ああ!」

 

統夜は凛の問題は解決出来ると自信満々だったからか、穏やかな表情で笑みを浮かべる。

 

そんな統夜の顔を見たら、梓は統夜のことを信じることが出来た。

 

統夜は、かつて軽音部のために色々と動いていたこともあり、今回はその矛先がμ'sに向いていた。

 

そんな統夜の手腕を理解している梓だからこそ、統夜のことを信じられるのだ。

 

2人の話が終わり、ホテルへと向かっていたその時だった。

 

「……お?花陽からか……」

 

統夜の携帯が反応したのだが、電話をかけてきたのはなんと花陽であった。

 

「……どうしたんだ?花陽」

 

統夜はすぐに電話に出て、このように花陽から用事を聞き出そうとしている。

 

『統夜さん、すいません……。こんな遅い時間に……』

 

「気にすんなって。それで、どうしたんだ?」

 

『はい。実は、今度のイベントのことなんですが……』

 

花陽は、イベントでのパフォーマンスについて、思うところがあるようであり、それを統夜に報告していた。

 

すると……。

 

「……奇遇だな。俺もまったく同じことを提案しようと思ってたんだ」

 

花陽の話を聞いた統夜は、驚きながらも、自分がやりたいと思ってたことと同じだったため、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「?統夜先輩?」

 

そんな統夜を見ていた梓は、首を傾げるのであった。

 

統夜は電話にて花陽と打ち合わせを行い、細かい話し合いは明日行うと話したところで電話は終了し、電話を切る。

 

「統夜先輩、もしかして……」

 

「ま、そういうことだ。凛の件だが、なんとかなりそうだぞ」

 

統夜は梓にこう宣言すると、「ふんす!」と強気な笑みを浮かべる。

 

ファッションショーでのパフォーマンスまでもうすぐなのだが、統夜と花陽はいったい何を企んでいるのか?

 

それは、これから明らかになっていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『いよいよこの日がやってきたか。統夜と花陽が何を企んでるかはわからんが、信用するしかあるまい。次回、「変身 後編」。輝く花よ!凛として咲け!』

 




今回は、統夜の戦闘シーンを書きたかったが故に前後編になってしまったのですww

本当であれば、今回とあるキャラを登場させる予定でしたが、次回にずれ込んでしまいました(滝汗)

ですが、成長した統夜の強さが顕著に出ていたのかな?と思っております。

そして、梓という恋人がいながらも、統夜は相変わらずな朴念仁となっているのですww

さて、次回はいよいよ二期第5話の大きな山場の話になっております。

それと同時に、とあるキャラを登場させようと思っております。

それがいったいどのようなキャラなのか?

それは、次回をぜひ楽しみにしていてください!

それでは、次回をお楽しみに!

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