牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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大変長らくお待たせしました!第72話になります!

前回の話を投稿してから約4ヶ月……(滝汗)

まさかここまで時間がかかるとは思わなかった(^_^;)

もうすぐ、FF14の新しい拡張版の「漆黒のヴィランズ」が始まるから、余計に執筆する時間ががががが(>_<)

それでも、どんだけ時間がかかっても、完結はさせるのでよろしくお願いします!

そして今回は、沖縄へ行っている奏夜たちのお話になっております。

果たして、奏夜たちはどのような修学旅行を送っていたのか?

それでは、第72話をどうぞ!




第72話 「沖縄」

奏夜、剣斗、ララの3人は、修学旅行の前に、とある指令を受ける。

 

その指令を月影統夜や天宮アキトの協力を得てどうにかこなした直後に、魔竜ホラー、ニーズヘッグの眷属であるダークスケイルというホラーと遭遇した。

 

そのホラーは、ニーズヘッグの眷属と呼ぶに相応しい力の持ち主であったが、どうにか迎撃に成功する。

 

その後、とあるファッションショーにて、パフォーマンスを行って欲しいとμ'sに依頼が来る。

 

奏夜たち2年生組が修学旅行に行くが、そのショーの前に戻るため、その話を引き受け、奏夜が修学旅行に行っている間、奏夜の先輩騎士である統夜がμ'sのマネージャーを引き受けることとなった。

 

そして、奏夜たち2年生組は、修学旅行先である沖縄へと飛び立っていったのだ。

 

「……海だ!海だ!!海だあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

現在の沖縄は快晴であり、奏夜、穂乃果、海未、ことり、ララは海に遊びに来ているのだ。

 

海に遊びに来ているため、全員水着を着ている。

 

「もう!人の名前を何度も呼ばないで下さい!」

 

穂乃果の嬉々とした声を聞き、海未は勘違いをしたのか、このように反論する。

 

「おいおい。この場合はお前じゃなくて、この海のことだろうが……」

 

海未の勘違いに、奏夜は苦笑いを浮かべながらツッコミを入れていた。

 

「それにしても、綺麗だね!」

 

「うんうん!これが南国の海……!私、海を見ること自体初めてだから、ワックワクだよ♪」

 

ララは、人里離れた里の出身であるからか、海を見た事はなく、海を見るのを楽しみにしていたのだ。

 

飛行機の窓から海は見えていたものの、しっかりと見ていたわけではないし、目の前に広がる大海原が、ララの心を高揚させている。

 

「確かにな……。沖縄の海なんて、テレビでしか見た事ないし……」

 

それは奏夜も同じ気持ちであり、魔戒騎士として殺伐とした毎日を過ごす奏夜にとっては、目の前に広がる大海原は、癒しを与えるものであった。

 

「ま、色々と気になることはあるけどさ、せっかくの修学旅行なんだ。思い切り楽しもうぜ!」

 

「「「うん!!」」」

 

「ええ!!」

 

こうして、奏夜たちは沖縄の海を堪能するのであった。

 

そのため、奏夜たちの修学旅行は順風満帆に進むのかと思われたのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って!!何で雨なの!?」

 

修学旅行初日の日中は天候に恵まれていたものの、台風接近の影響もあってか、天気は徐々に荒れていき、現在は外の天候は大荒れであった。

 

穂乃果は、この悪天候を涙目で嘆いている。

 

「台風、直撃かもだって……」

 

ことりは、スマホで沖縄の天気の情報を見ていたのだが、台風が接近しており、台風が直撃する可能性が高いとの予報であった。

 

「えぇ!?それじゃあ、海は!?真夏の太陽は!?」

 

「諦めるしかないですね……」

 

「嫌だよ!!だって修学旅行だよ!?一生に一度なんだよ!?」

 

穂乃果は諦めきれないのか、涙目になりながら、どうにもならないこの状況に異議を唱えている。

 

すると、穂乃果は何を思ったのか……。

 

「……逸れろ〜!逸れろ〜!」

 

と、まるで祈祷を行うかのように、窓に映る景色に念を送ろうとしていた。

 

「それじゃあ、無理ですよ……」

 

「あ、そっか!」

 

海未は呆れながら穂乃果をなだめ、穂乃果は納得したのかと思ったのだが……。

 

「……逸れろぉ〜!!」

 

穂乃果は、ことりのスマホに映る台風レーダーに向かって、先ほどのような念を送ろうとしている。

 

「何やってるんですか……」

 

そんな穂乃果に海未が呆れていたその時、穂乃果の携帯が反応したため、穂乃果はすぐにスマホをチェックする。

 

「……あ!絵里ちゃんからだ!」

 

どうやら絵里から電話が来たみたいなので、穂乃果はすぐに電話に出るのであった。

 

「……もしもし、絵里ちゃん、どうしたの?」

 

『どう?穂乃果?そっちは楽しんでる?』

 

「それって嫌味?」

 

『?何のこと?』

 

穂乃果から返ってきた言葉が予想外だったからか、絵里はキョトンとしていた。

 

「もういいよ。で、どうしたの?」

 

『今週末のイベントの件で話があってね。希とも話してたんだけど、代理でリーダーを決めたらどうかなって思ってたの』

 

「へぇ、いいと思う!それで、誰にするかは考えてあるの?」

 

『これも希と話してたんだけどね……。凛にお願いしたいなって思うの』

 

「へぇ、凛ちゃんに?」

 

『私や希は生徒会の方で忙しいし、これからのことを考えて、1年生にお願いしたいなと思っていたのよ』

 

絵里や希は、これからのμ'sのことも考えて、1年生である凛にリーダーをお願いしたいと考えたみたいだ。

 

「それはいいと思うよ!そーくんたちにそのこと伝えておく?」

 

『大丈夫よ。私が電話する前に、希が奏夜に電話しててね。奏夜や小津先生にララもこの話は了承してくれてるわ』

 

「アハハ……。さすが希ちゃん……。抜け目ないね……」

 

希の行動の早さに驚いているのか、穂乃果は苦笑いを浮かべる。

 

『そういう訳だから、穂乃果たちが戻るまでは凛がリーダーってことで話を進めておくわね』

 

「ありがとう、絵里ちゃん!それから、そーくんの代わりにマネージャーの仕事をしてくれてる統夜さんにも、よろしく伝えておいてね!」

 

『ええ、わかったわ!それじゃあ、修学旅行楽しんでね!』

 

そう話を終わらせた絵里は電話を切り、穂乃果は携帯をテーブルの上に置く。

 

その後は、やることがないため、穂乃果たちは部屋でのんびりと過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

絵里が穂乃果へ連絡を取る少し前、奏夜たちは……。

 

「……ねぇ!!何で雨なのさぁ!!」

 

穂乃果たちとは別の部屋で、ララが穂乃果と同じように、涙目で嘆いていた。

 

「……仕方ないだろ、台風が近付いてんだから」

 

「うむ、この天気は遺憾ではあるが、この天気ではホラーも迂闊には動けまい。のんびりと体を休められるのではないか?」

 

今、ララがいる部屋は、奏夜と剣斗の部屋であり、剣斗が教師としての権利を使って奏夜と相部屋にしてもらい、そこにララが転がり込んできたという訳である。

 

奏夜以外にも男子生徒はいるが、この3人が一緒のほうが、ホラーが万が一現れた時に動きやすいという剣斗の判断もあってのことであった。

 

ララが悪天候に嘆く中、奏夜と剣斗は何故か将棋を指しており、2人がララに答える度に、パチッ!と駒を置く音が響き渡っている。

 

「ねぇねぇ!海は!?真夏の太陽は!?私、綺麗な海で海水浴をするの楽しみにしてたんだから!」

 

「流石に諦めるしかないだろ。俺だってせっかくの沖縄なのに残念だと思ってるのにさ」

 

奏夜は淡々と答えながら、再びパチッと音を立てて駒を動かしている。

 

「嫌だよ!!だって、私たち魔戒騎士や魔戒法師には滅多に行けない南国バカンスなのに!!」

 

奏夜が淡々と答えるのが気に入らなかったのか、ララはこのように涙目で奏夜に訴えかけていた。

 

「そうは言っても仕方あるまい。この状況は嘆かわしいが、1分でも早く、この天気が治まることを祈ろうではないか!」

 

奏夜と違い、剣斗はララに対してフォローの言葉を入れながら、自分の駒を動かしていた。

 

ここで、ララがずっと疑問に思っていたことをぶつけていく。

 

「ねぇ、あんたたち、なんで将棋指してるのよ!魔戒騎士なら魔戒騎士らしく、バルチャスでもやりなさいよ!」

 

奏夜と剣斗がなぜか将棋を指していることが気になり、このように指摘をしていた。

 

ちなみに、バルチャスというのは、魔界に伝わる遊戯である。

 

しかし、魔戒騎士としての技量も問われるものであり、バルチャスを制するものは、最強の魔戒騎士になる素質があると言われている。

 

『バルチャスの盤や駒など、このようなホテルに置いている訳がないだろう?』

 

ここは普通のホテルであるため、ここにバルチャスに必要なものが置いている訳はないので、キルバはこのように指摘をする。

 

「それに、仮にバルチャスの道具を持ってきてたとしても、バルチャスはかなり力を使うからな。バルチャスをしてる様子を誰かに見られる訳にもいかないだろう?」

 

「それはそうだけどさ……」

 

奏夜と剣斗が、将棋ではなくバルチャスを選ばなかった理由に納得はしたものの、腑に落ちない感じは残っていた。

 

ここで話は終わり、奏夜と剣斗は再び対局に集中するのだが……。

 

「……ん?電話か?」

 

奏夜が駒を進めた瞬間に携帯が反応したため、すぐさま携帯をチェックする。

 

「……お、希からか」

 

どうやら希からの電話みたいだったため、奏夜はすぐに電話に出た。

 

「……おう、希。どうしたんだ?」

 

『奏夜くん、どうや?そっちは?沖縄、楽しんどるん?』

 

「もちろん!と言いたいところだけど、外はあいにくの雨でな。みんなげんなりしてるよ」

 

奏夜は「げんなり」という言葉を自然と強調しており、奏夜自身もこの状況に落胆していることは察することが出来た。

 

この雨は初日の夕方あたりからひどくなっており、奏夜は統夜に近況報告を兼ねつつ、この現状を嘆いていたりもしたのであった。

 

『アハハ……。それは災難やね』

 

希もそこは理解しており、苦笑いを浮かべる。

 

「ところで、どうしたんだ?修学旅行の進捗を聞きに来たわけじゃないだろう?」

 

『さすがは、奏夜くん!鋭いなぁ♪ウチが電話したのはな、今度のイベントのことや』

 

「もしかして、今後に向けて何かの相談なのか?」

 

『その通りや。奏夜くんたちは沖縄やろ?それで、奏夜くんたちが帰ってくるまで、臨時のリーダーを決めたらどうかなと思ったんや』

 

「まぁ、確かに。その方が練習も捗るとは思うな……」

 

奏夜は「う〜ん……」と考える仕草をしながらも、希の意見を全面的に支持していた。

 

「だけど、肝心のリーダーは誰にするつもりなんだ?希か絵里あたりがやる感じなのか?」

 

『そうしたいのは山々やけど、ウチとエリチは生徒会の仕事をやらんといかんからなぁ』

 

「俺たちがいない間、生徒会の仕事をしてくれて、本当に助かってるよ」

 

現在の生徒会メンバーは、奏夜たち2年生組であるため、修学旅行中は生徒会の仕事を行える者がいない。

 

そのため、前生徒会メンバーである絵里と希が、奏夜たちの代わりに生徒会の仕事を受け持っていたのだ。

 

『それに、今後のμ'sのことを考えたら、1年生の誰かにリーダーを任せたいと思ってるんよ』

 

「なるほど、それは一理あるな」

 

希が提案したのは、μ'sの今後を考えてのこともあったからか、奏夜はそれに同意しており、感心したかのように頷く。

 

「だけど、3人のうち、誰にリーダーをお願いするべきか……」

 

『それなんやけどな、ウチは凛ちゃんが適任なんやかないかな?って思ってるんよ。奏夜くんが了承してくれるなら、エリチにも話して、穂乃果ちゃんたちにも相談しようかなと思って』

 

「凛か……。確かに凛ならやってくれそうな気はするな。どのみち帰ってくるまでは練習はみんなでやってもらうんだから、そこら辺は希や絵里に一任するよ」

 

『了解や♪また何かあったら連絡するね♪』

 

こうして、臨時リーダーの件は希に任せることになり、奏夜は電話を切り、携帯を自分の足元に置く。

 

「奏夜、希から電話だったのだろう?いったい何だったのだ?」

 

「ああ、俺たちがいない間に臨時のリーダーを決めたらどうかって話をしてたんだよ」

 

「おお!それはイイ!今後のμ'sのことを鑑みれば、その体験は決して無駄なものにはならないだろう!」

 

「私もそう思うな。それが自身に繋がればいいんだけどね」

 

奏夜は希からの話を簡潔に伝えると、剣斗もララも、その話には大いに賛成していたのだ。

 

「ところで、誰が臨時リーダーをやることになったの?」

 

「ああ、希は凛を推薦してたよ。俺も特に反対する理由はないし、そこは希や絵里の判断に任せることにしたんだ」

 

「凛がリーダーかぁ。あの子、元気いっぱいだし、リーダーに向いてるんじゃないかな?」

 

「うむ!凛はその持ち前の明るさとひたむきさがあれば、μ'sをイイ方向へ導いてくれるだろう!」

 

ララと剣斗は、凛がリーダーということに大いに賛成しており、期待もしているのであった。

 

凛本人が、リーダーには向いていないと思い悩んでいくことなど、知る由もなく……。

 

剣斗は、凛がリーダーであることに賛同する言葉と共に、駒を進めるのだが、その一手を見た奏夜は、ニヤリとほくそ笑むのであった。

 

「剣斗……本当にそこでいいのか?」

 

「?……あっ!」

 

奏夜の言葉の意味がわからず、剣斗は首を傾げていたのだが、奏夜の言葉を理解した瞬間、その表情がみるみるうちに青くなる。

 

剣斗の放った一手は、明らかな失着であり、そのポカによって、勝敗が決してしまう可能性がある程のものであった。

 

「そ、奏夜!友としての情けだ!ここはひとつ穏便に話を進めようではないか!」

 

剣斗はしどろもどろになりながら、どうにか待ったをかけるべく、奏夜を説得している。

 

「待った」という言葉は使っていないものの、剣斗の狼狽えぶりから、そんな言葉などなくても、剣斗が待ったを所望していることは理解出来るのだ。

 

しかし……。

 

「……問答無用♪……王手♪」

 

奏夜はニヤニヤと笑みを浮かべながら、剣斗の王を詰もうと、王手を放つのであった。

 

剣斗は、自分の王将が逃げる道を探すのだが、どこへ逃げようとも、王将に逃げ道はなく、完全に詰んでしまった。

 

勝敗が決し、剣斗はガクッと肩を落とすのである。

 

こうして、奏夜たちは外が雨の中、このように過ごしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も雨は一向に良くならなかった。

 

そのため、奏夜は飛行機が欠航になり、東京に戻れないのでは?という危惧を統夜に伝えるのだが、そのことが現実になってしまった。

 

台風も直撃しており、雨もいっこうに治まる気配がないのだ。

 

そうなることは理解していたものの、奏夜は頭を抱えていた。

 

しかし、この状況をなんとかすることは不可能であるため、東京に残っている6人にパフォーマンスを行うイベントを託すしかなかった。

 

こうして、雨はなかなか治まらず、奏夜たちはホテルでの待機を余儀なくされたまま、時間だけが過ぎていく。

 

そんな中、奏夜には1つだけ気がかりなことがあった。

 

それは、凛のことである。

 

凛は、自分がリーダーには向いていないと、自分に自身のない様子があると統夜から話を聞き、奏夜は驚きを隠せなかった。

 

奏夜の目から見た凛は元気いっぱいで、心に闇を抱えているようには見えなかったからである。

 

凛が臨時のリーダーのままファッションショーのパフォーマンスの準備は進んでいくのだが、奏夜たちが戻れなくなり、凛がセンターとして専用の衣装を着ることになった途端、凛はその役割を激しく拒否する。

 

そのため、花陽が凛の代理を引き受けることになったのだ。

 

その話を統夜から聞き、奏夜はさらに驚きを隠せなかったのだが、統夜が凛の側についているのならば、きっとなんとかなる。

 

そんな確信があったため、奏夜は改めて自分の代わりを統夜に託したのだった。

 

統夜からその話を聞いた日の夜、奏夜はホテルの屋上にいた。

 

この日の夜あたりから台風が去っていっているからか雨は治まっており、奏夜は外の空気を吸うために屋上へ来たのである。

 

「……」

 

奏夜はぼぉっと空を見上げるのだが、まだ完全に天気は回復してないからか、空は曇り空であり、綺麗な星は一切見ることは出来なかった。

 

『……おい、奏夜。どうしたんだ?そんな辛気臭い顔をして』

 

奏夜の様子がおかしいことを感じ取ったキルバは、奏夜に声をかける。

 

「わかるか?」

 

『当たり前だろう?俺はお前の相棒なんだ。戦いから離れて、腑抜けるんじゃないのか?』

 

「ったく……。相変わらず手厳しいな」

キルバの容赦ない言葉に、奏夜は苦笑いを浮かべる。

 

『それで?どうしたんだ?』

 

「ああ……」

 

奏夜は一息ついたところで、ゆっくりと語り始める。

 

「なんか、情けねぇなぁって思ってな」

 

『?どういうことだ?東京に戻れないのは、台風の影響もあるのだから、仕方あるまい?』

 

「それもあるんだけど、俺が気にしてるのはそのことじゃないんだよ」

 

『そのことじゃない?もしかして、凛のことか?』

 

キルバの問いかけに、奏夜は無言で頷く。

 

「俺さ、μ'sのマネージャーなのに、凛が自分に自信がないだなんて理解出来てなかった。それが情けなくてな。今まで、凛の何を見ていたんだろうな」

 

統夜であれば、凛を導くことが出来る。そのために先輩騎士である統夜に凛のことを託す。

 

それは奏夜の本音で間違いないのだが、凛の抱えている悩みやコンプレックスを理解出来なかった自分が許せないのだ。

 

『お前はμ'sのマネージャーとしてよくやっている。だが、どれだけ親しい者だろうと、そいつの心の奥底に隠したものなどわかるわけないだろう』

 

「それは、分かってる!分かってるけど……!」

 

キルバの言葉はもっともな事であることは奏夜も十分に理解していた。

 

だが、凛のコンプレックスを理解出来なかったというのもまた事実であり、そのことが、奏夜の気持ちをモヤモヤさせ、どのような正論でも納得がいかないのだ。

 

奏夜の表情は一段と暗くなり、心が晴れないまま、再び曇った夜空を見ようとしていたのだが……。

 

「そーくんは情けなくなんかないよ!」

 

「!?穂乃果……」

 

いきなり穂乃果が姿を現したことに、奏夜は驚いていた。

 

「そーくんは私たちのために、いつも一生懸命じゃん!ただでさえ魔戒騎士のお仕事で忙しいのに、しっかりマネージャーとしての仕事もしてくれてるし!」

 

「そりゃ、そうだよ。だって、俺はお前たちを支えるって決めてやってることなんだから」

 

「それに、凛ちゃんのことだって、私も気付かなかったよ。それをそーくんが気にするのも解る。だけどね」

 

「?」

 

穂乃果もまた、凛が自分に自信がないことを知らないため、μ'sのために一生懸命やってきた奏夜だからこそ、そのことが許せないことも理解していた。

 

そのうえでとあるコトを話そうとしていたのだが、皆目検討のつかない奏夜は首を傾げている。

 

「凛ちゃんには、親友の花陽ちゃんがついてるんだもん!それに、そーくんの代わりを頑張ってくれてる統夜さんだって!」

 

「……」

 

「実はさっきね、花陽ちゃんから電話があったんだ。凛ちゃんの代わりにセンターを引き受けたことを、気にしてたみたいなんだ」

 

「そうか、花陽のやつも思うところはあるよな……」

 

「それでね、花陽ちゃんは花陽ちゃんで考えてることがあるみたいなの。それは多分、統夜さんも考えてるんじゃないかな?」

 

「それは解ったけど、お前は何が言いたいんだ?」

 

凛が自分に自信が持てないことについて、統夜が何か動こうとしていたのは知っていたし、花陽は凛とは小さい頃からの付き合いであるため、なんとかしてあげたい気持ちは理解出来た。

 

だが、穂乃果乃言葉の真意が理解出来ず、奏夜は首を傾げる。

 

「ここは、統夜さんや花陽ちゃんに任せようよ。 そーくんは何でも自分で抱え込み過ぎるんだもん!みんなのコンプレックスさえも何とかしたいそーくんの気持ちはわかるよ?でも、自分の力だけで解決しようとしないで、誰かに任せてみてもいいんじゃないかな?」

 

「!!」

 

奏夜は、穂乃果の言葉に、思い当たる節があるからか、ハッとしながら穂乃果の顔をジッと見つめていた。

 

(そうだよ……。確かに俺は、μ'sのためにがむしゃらに頑張ってきた。だからこそ、俺の力でなんとかすることにこだわり過ぎてたのかもしれないな……)

 

《やれやれ、やっと気付いたのか?μ'sのマネージャーに限った話ではなく、お前は自分の力だけでなんとかしようとし過ぎなんだよ。それで色々と余計なことでクヨクヨしちまうんだ》

 

穂乃果の言っていたことは、予てからキルバが思っていたことでもあったため、穂乃果の言葉を補足するかのように、テレパシーで伝えていた。

 

「穂乃果、ありがとな。俺、色々と考え過ぎてたみたいだよ」

 

「うん♪天気は最悪だけど、せっかくの修学旅行なんだもん!楽しまないと損だよ♪」

 

「そうだな……。ファッションショーのことは残ってるみんなに任せるとして、残りの修学旅行も楽しもうな♪」

 

「うん!」

 

穂乃果の言葉で吹っ切ることが出来た奏夜は、しばらくこの場に留まっており、穂乃果もそれに付き合う形で、2人で屋上にいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ファッションショー当日、台風が離れていった影響もあるからか、外は快晴であった。

 

台風によって修学旅行のプランは大幅に変更されてしまい、本日は班によって分けられた自由行動の日になっており、翌日東京に帰る予定となっている。

 

奏夜の班には、穂乃果、海未、ことり、ララも一緒であり、5人で沖縄の町を回ることになった。

 

剣斗も奏夜たちについていきたい気持ちはあったが、剣斗は教師であるため、生徒たちに何かあった時にすぐ対応出来るよう、ホテルへ待機することを余儀なくされている。

 

剣斗としては遺憾なのだが、奏夜たちだけに時間を割くわけにいかないので、すぐに納得したのだ。

 

午前中、奏夜たちは沖縄の海にて、海水浴を行っていた。

 

初日の日中に少しだけ海を堪能出来たとはいえ、台風の影響で海を楽しめなかったので、もう一度海で遊ぼうという話になったからだ。

 

それを現すかのように、バナナボートに乗ったりなどして、楽しんでいたのであった。

 

午前中いっぱい海水浴を楽しんだ後は、奏夜たちは昼食を済ませ、近くの水族館を訪れていた。

 

「ねぇねぇ、そーくん!見てみて!綺麗だねぇ♪」

 

「ああ、そうだな」

 

水槽の中を悠々と泳ぐ魚たちを、穂乃果と奏夜は楽しげに眺めており、ことり、海未、ララの3人も近くで水槽の魚を眺めていた。

 

「それにしても、水族館って綺麗なところだね♪私、初めて来たけれど」

 

「そうなんだ!!」

 

ララは初めての水族館に胸を躍らせており、それを聞いたことりは驚きの声をあげる。

 

「私、翡翠の番犬所を頼って本当に良かった♪里にいたら絶対に体験出来ない高校生活を堪能出来てるし、こうして旅行を楽しめたり出来たんだから♪」

 

「……そうだな。ララがそこまでワクワクさせるその気持ち、俺にも理解出来るよ」

 

奏夜もまた、魔戒騎士となり、穂乃果たちと出会うまではこのような当たり前の生活は体験したことはなかった。

 

そのため、ララが心から楽しめていることも理解しているのだ。

 

「あっ、もちろん、魔竜の目を守るって使命は忘れてないよ。ニーズヘッグが復活したら、私の故郷の蒼哭の里だけじゃない。この世界が怒りの業火に包まれるんだもん……」

 

ララは、高校生活を楽しむ中でも、自らに課せられた使命を忘れることはなかった。

 

「だが、それは絶対にさせない。ジンガの目論見はわからないけど、ニーズヘッグは復活させないし、復活したとしても、必ず俺が倒す」

 

使命を忘れていないのは奏夜も同じ気持ちであるため、先ほどまで穏やかだった表情は一気に険しくなる。

 

「そーくん……」

 

そんな奏夜を、穂乃果は不安そうに見つめるのだが、その視線に気付いてすぐに表情は戻る。

 

「おっと、悪い悪い。今は修学旅行中なんだ。天気も戻ったんだから、思い切り楽しまないとな」

 

「うん!」

 

奏夜の表情が戻ったとわかり、穂乃果は満面の笑みを浮かべ、海未やことり、ララの表情も穏やかになる。

 

こうして、奏夜たちは水族館の見学を再開するのであった。

 

水族館を後にした奏夜たちは、各地を回りながらお土産を買うため、色々な店に寄るのであった。

 

「……ね、ねぇ、海未ちゃん……。少し休もうよ……」

 

何軒目かの店を後にした後、穂乃果は疲れを見せながら海未に訴えかける。

 

色々な店でお土産を買ったからか、穂乃果たちの手には、いくつかの紙袋があった。

 

「何を言ってるんです?時間も限られてますし、まだまだ行かなきゃいけないところがあるんですよ♪」

 

「えぇ……」

 

海未は疲れを一切見せず、ノリノリであり、そんな海未を見て、穂乃果はげんなりとしていた。

 

そんな中、奏夜は……。

 

(……そろそろファッションショーは終わる頃だよな?ライブの方は上手くいってるのだろうか……)

 

東京で行われているファッションショーのことが気になっており、考え込む表情を浮かべている。

 

「?そーくん、どうしたの?」

 

そんな奏夜を見て、ことりが首を傾げながら問いかける。

 

「いや、そろそろファッションショーも終わる時間だろ?だから、気になっちまってな」

 

「そういえば、もうそんな時間なんだね!」

 

「奏夜、心配しなくとも、みんななら大丈夫ですよ」

 

「そうだよ!だって……」

 

穂乃果がなにかを言おうとしたその時だった。

 

穂乃果の携帯が反応したのである。

 

「……!凛ちゃんからだ!」

 

どうやら、凛からメッセージが送られてきたようであり、穂乃果はすぐ確認をした。

 

「!みんな、見てみて!!」

 

穂乃果は、凛から送られてきたメッセージを奏夜たちに見せる。

 

それを見た奏夜たちは、穏やかな笑みを浮かべるのであった。

 

そのメッセージには、写真と共にこのような言葉が送られていた。

 

 

 

 

 

【大成功にゃ!】

 

 

 

 

このメッセージと共に送られてきた写真は、μ'sの6人とファッションショーに出演していたモデルたちとの集合写真であり、そこに映っている凛は、まるで迷いを振り切ったかのような満面の笑みを浮かべている。

 

「凛のやつ……似合うじゃねぇか……」

 

この時の凛は、先方から指定された花嫁風の衣装を着ており、凛が迷いを振り切れたことを奏夜は悟る。

 

そのため、嬉しさがこみ上げており、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「ほらね?心配しなくても、みんななら大丈夫だよ!」

 

奏夜の心配が杞憂に終わったとわかった穂乃果は、不敵な笑みを浮かべている。

 

「……そうだよな……」

 

奏夜は苦笑いをしながらも、穂乃果の携帯の画面に映る写真を眺めていた。

 

すると……。

 

「……お、統夜さんからだ」

 

今度は奏夜の携帯が反応したのだが、それを確認すると、統夜からメッセージが送られていた。

 

【奏夜、ファッションショーは上手くいったぞ。凛も迷いを振り切れたみたいだし、もう大丈夫だ!】

 

「統夜さん……」

 

統夜から改めてファッションショー成功の報告を受け、奏夜は嬉しさを隠しきれないまま、メッセージを返信する。

 

【統夜さん、本当にありがとうございます!俺、凛がここまで思いつめてるとは知らなかったですが、迷いを振り切れたのなら、それは統夜さんのおかげです!】

 

奏夜は感謝の言葉を送り、すぐに統夜から返事がくる。

 

【俺は大したことはしちゃいないさ。凛が迷いを振り切れたのは、あいつ自身の決意だし、何より花陽や真姫があいつの背中を押してくれたからさ】

 

凛が迷いを振り切れたのは、確かに花陽や真姫が背中を押してのことなのだが、統夜のさらなるひと声があったからこそなのである。

 

しかし、統夜は大したことはしてないと謙遜してるからか、そこは話さなかったのだ。

 

【それでも、本当にありがとうございました!】

 

【いいんだよ。それに、まだ修学旅行は続くんだろ?楽しんでこいよ!】

 

【はい!ありがとうございます!】

 

ここで、統夜とのメッセージのやり取りは終わり、奏夜は携帯をズボンのポケットにしまう。

 

「……さて!これで心配事がひとつなくなった訳だし、思い切り修学旅行を楽しもうぜ!」

 

奏夜は先ほど以上に朗らかな表情になっており、それを見た穂乃果たちは、クスクスと笑いながら頷く。

 

凛からのメッセージを見たのが良い休憩になったからか、奏夜たちは再び動き始めるのであった。

 

……こうして、奏夜たちの修学旅行は無事に幕を降ろすのである。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

奏夜たちが東京に戻ってすぐは、少しばかり忙しかった。

 

奏夜は番犬所へ戻りの報告をした上で、そのまま魔戒騎士の仕事を再開し、登校日には、絵里や希が行ってくれた生徒会の仕事の報告を受ける。

 

生徒会の仕事がけっこう残っていたことに、絵里はジト目で文句を言っていたのだが、奏夜は沖縄でのお土産を渡しながら詫びを入れていた。

 

そんな中、希はお土産でもらった置物を大事そうに抱えて笑みを浮かべている。

 

その日の放課後、奏夜たちは練習に合流し、久しぶりに全員揃っての練習となったのだ。

 

その時、凛にとある変化があった。

 

普段は練習着もズボンだったのだが、凛は普段履くことのなかったスカートを着ていたのだ。

 

凛は、ファッションショーでの成功で自分に自信が持てるようになったからか、外出の時にも、お気に入りのワンピースを着て、出かけたりもしていた。

 

些細な変化ではあるものの、凛の変化は大きいものであり、穂乃果たちは、それを見て満面の笑みを浮かべる。

 

特に、花陽と真姫の2人は、親友の変化に満足しているからか、満ち足りた表情をみせていたのだ。

 

「……おお!凛ちゃん!似合ってるね♪」

 

「うむ!話は聞いていたぞ!迷いを断ち切って自信を取り戻してのことだったな!イイ!!とてもイイぞ!!」

 

「エヘヘ……。ありがとなのにゃ!」

 

ララは普通に凛のことを褒めていたのだが、剣斗はやや大げさに褒めていたため、凛は少しだけ照れ臭そうにしていた。

 

(凛……良かったな……。これで、お前はまたひとつ大きくなれた。間違いなく、今までのお前じゃない。その変化が、μ'sのみんなにもいい変化をもたらしてくれるはずだ)

 

奏夜もまた、凛が自分に自信が持てないことを気付けず、そのことに苦悩するが、自信に満ちた凛を見て、満足気にもしていたのだ。

 

「そーや君、ど、どう?似合う……かなぁ?」

 

「ああ、もちろん似合ってるぞ!」

 

「!エヘヘ……良かったのにゃ……!」

 

奏夜からの言葉が欲しかったからか、凛は奏夜からの素直な感想を聞き、満足気に笑みを浮かべる。

 

凛はそうしながらも、自分に自信を持てたことへの満足感を持っており、穏やかな表情で空を眺める。

 

そして満面の笑みを笑みを浮かべながら、凛の放つ言葉が、屋上へ響き渡るのであった。

 

 

 

 

「……さあ!今日も練習!行っくにゃあ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ、世間はハロウィンとやらで賑わっているみたいだな。そんな中、また一波乱がありそうな予感がするぞ。次回、「変化 前編」。μ'sの変化か、果たしてどうなることやら……』

 

 

 




皆さん期待してたであろうトランプの件はカットしてしまいました(滝汗)

メインを奏夜サイドにしたかったので、泣く泣くカットしたのです(>_<)

そんな中、普通に将棋を指している奏夜と剣斗(笑)

奏夜は魔戒騎士の中でもかなりの頭脳派なので、将棋やチェスはめっちゃ強いです!

そして、バルチャスの方もなかなかの実力があると思われます。

統夜サイドでは、平然としてた奏夜も、実は色々思い詰めていたりと、ここじゃないとわからない心情も入れてみました。

今回の件で、奏夜も含めてμ'sメンバーはさらに成長したと思います。

さて、次はようやく二期の6話の話になります。

6話はメンバーのコスプレ回。

色々と変えようとは思っているのでご期待ください。

次回更新も遅くなるとは思いますが、なるべく早く投稿出来るように頑張りたいと思います!

それでは、次回をお楽しみに!

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