牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第78話になります!

最近は時間を見つけてちょいちょい執筆が出来ているからか、2週間くらいで更新が出来ているため、この調子でなるべく短い期間で更新出来たらなと思っております。

さて、今回はジンガが何故ニーズヘッグを復活させようとしているのか?

その謎が明らかになります。

ジンガはどのような過去を持っているのか?

それでは、第78話をどうぞ!




第78話 「憤怒」

ジンガの姑息な策略により、奏夜たちは大事な仲間である剣斗を失うことになってしまった。

 

奏夜たちが、そんな剣斗を追悼しようと動いていた頃、アキトは1人、元老院の近くにある魔導図書館を訪れていた。

 

ここは、元老院付きの魔戒騎士や魔戒法師のみが入ることの許されている場所であり、魔戒騎士や魔戒法師の系譜やホラーの情報など、だいたいの情報はここに集まっている。

 

かつてアキトは、魔戒騎士狩りを行っていた元魔戒法師アスハの真意を確かめるためにここを訪れ、過去の研究の失敗を機に魔戒騎士を恨むようになった経緯を知ることが出来た。

 

今回アキトは、その当時の実績を活かし、ジンガの過去に何があり、何故ニーズヘッグを蘇らせようとしているのか。

 

その動機の手がかりを得るために魔導図書館を訪れていたのだ。

 

(ごめんな、剣斗……。俺もお前の弔いをしたかったぜ。だけど、俺は俺にしか出来ない戦いをするさ。それがお前への弔いになるだろうしな)

 

アキトは心の中でこのような誓いを立てながら、ジンガに関する資料を探していた。

 

以前魔戒法師アスハの過去を調べた時のように、魔戒騎士や魔戒法師のデータベースがある場所へ向かい、ジンガについての情報をしらみ潰しに探し始める。

 

何冊かの本を選んだアキトは、その本を読み始めた。

 

「…流石は魔導図書館だな……。あの時の事件のことが最早ここまで正確に記録されてるなんてな…」

 

アキトは、最近起こった事象について書かれた本を読んでいたのだが、最近のことが書かれた項目には、数年前に魔戒法師アスハが起こした魔戒騎士狩りのことが記録されていた。

 

その事件は、奏夜が魔戒騎士になったばかりの頃に起きた事件であり、魔戒騎士に強い恨みを持つようになった元魔戒法師のアスハが、とある兵器を用いて多くの魔戒騎士の命を奪ったのだ。

 

その事件は、白銀騎士奏狼(ソロ)の称号を持つ月影統夜が、魔導人機と呼ばれたアスハの開発した魔導具と共に討伐され、解決されたと記述されている。

 

その裏では、統夜の恋人でもある梓の活躍があったのだが、その辺りは記録には書かれていなかった。

 

(ま、元魔戒法師の起こした事件の解決に一般人が関与したなんて記録は書けるわけがないからな。この記録は妥当なところだろ)

 

アキトは当時のことを思い出しながら、ウンウンと頷きつつ記録を眺めていた。

 

その事件についての記録を読み終えたアキトは、本来の目的であるジンガについての情報を探し始める。

 

(そういえば、あのアミリって女は自分の里がホラーに滅ぼされて蒼哭の里に助けを求めたものの、門前払いをくらったという話をしてたとララが言ってたな…。その記録を見つけられれば、ジンガについて何か足取りを掴めるんじゃないか?)

 

アキトは、ララから聞いた話を参考にしつつ、過去にホラーによって滅ぼされた里について調べ始めた。

 

記録を読み始めておよそ20分後には、大きな手がかりを見付けることが出来た。

 

(……!もしかして、これのことか?)

 

アキトが見付けた記録には、蒼哭の里の近くに、「桜花の里」と呼ばれる魔戒法師の里があったのだが、ホラーの襲撃を受けて壊滅。

 

里の住人は全滅したと記録されていた。

 

(なるほどな。蒼哭の里自体が人里からかなり離れたところにある場所なんだ。そこから近い里なんてここくらいなんだろうな。それを考えたら、1人生き残ったアミリが蒼哭の里に門前払いをくらい、ジンガに拾われて消息を絶ったとなれば説明はつく)

 

アキトは、今見ているこの記録の事件こそが、アミリとジンガが出会った事件だろうと確信する。

 

(それなら、もう少し過去を遡れば何か手がかりがあるはず…!)

 

もう少しでジンガについての何かしらの情報が得られるハズ。

 

そう感じたアキトは、さらに記録を読み、情報わや集める。

 

しかし、思ったような情報は得られず、何冊かの本を読んでも手がかりは得られなかった。

 

(……ダメだ。それっぽい事件が全然見つからねぇ……。だったら、こっちを調べてみるか)

 

アキトは、先程までは、魔戒騎士や魔戒法師が関与した事件などについて調べていたのだが、今度は魔戒騎士のデータベースを調べ、ジンガらしき魔戒騎士はいないか調べてみることにした。

 

その記録を読み始めると、統夜のことが既に記録されており、サバック準優勝した旨の記録も書かれていた。

 

その記録にアキトは興味を示すが、今はジンガのことを調べることに集中する。

 

調べ初めておよそ10分後……。

 

(……まさかと思うけど、こいつなのか?)

 

アキトが見付けたページに記録されていたのは、「御影神牙(みかげじんが)」と呼ばれる魔戒騎士についての記録であった。

 

御影神牙は、影煌騎士狼是(えいこうきしローゼ)の称号を持つ魔戒騎士であり、その卓越した剣の腕から、当時の魔戒騎士や魔戒法師たちからは「神の牙」と呼ばれる程の実力を持つ魔戒騎士であった。

 

(神の牙ねぇ……。それだけ実力のある魔戒騎士なら有名な魔戒騎士のハズなんだが、初めて聞く名前なんだよなぁ……)

 

その記録から見ても、ホラーになる前と思われるジンガは、魔戒騎士の時からかなりの実力者であることが伺えるのだが、その名を知る魔戒騎士はかなり少ないと思われた。

 

(俺だって今初めて知ったし、鋼牙さんや零さん。それに、師匠だって知ってるかどうか…)

 

御影神牙という名前の魔戒騎士の存在はアキトは知らなかったのだが、牙狼の称号を持つ冴島鋼牙や、牙狼に次ぐ実力の騎士である絶狼の称号を持つ涼邑零。

 

それに、アキトの師匠である布道レオでさえもこの御影神牙という名前の魔戒騎士については知らないのでは?と推察していた。

 

そんなことを考えながら、アキトは記録を読み続けていたのだが……。

 

(……!!なるほど、そういうことだったのか)

 

アキトは、最後まで記録を読んだことにより、決定的な情報を得ることに成功したのである。

 

そしてその後にハッとしたアキトは、先程まで読んでいた資料を読み返し、御影神牙の記録と、とある事件の記録を照らし合わせていた。

 

(……やっぱり……。こういうことなら、ジンガのやつがこの世界に強い怒りや憎しみを抱くのもわかるし、その感情の権化ともいえるニーズヘッグを蘇らせようとしてるのも合点がいく)

 

アキトは、魔導図書館にある記録を調べることにより、ジンガの過去と、何故ジンガがニーズヘッグを蘇らせようとしているのか。

 

その動機に繋がる情報を手に入れることに成功したのである。

 

アキトは、さらなる裏付けを得るために、さらに記録を読み始めるのであった。

 

ちょうどその頃、そのジンガがニーズヘッグを蘇らせるために、とある場所を拠点としていたのだが、ニーズヘッグ復活の儀式の準備をしながら思い出していた。

 

かつての自分のことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ジンガの過去~

 

ジンガこと御影神牙は、影煌騎士狼是の称号を持つ魔戒騎士であるのだが、どこか番犬所に所属している訳ではなく、様々な場所を転々としつつホラーを討伐していた。

 

魔戒騎士は基本的にどこかの番犬所に所属していることがほとんどなのだが、どこの番犬所にも属さない流れ者の魔戒騎士の数も決して少なくはなく、その魔戒騎士たちは、主に人里離れた場所に出没するホラーを討伐しつつ各所を転々とするのが主なのだ。

 

神牙もまた、ホラーを討伐しながら里から里へ転々としており、その類まれなる剣さばきから、神の牙という異名さえ付いていたのである。

 

そんな神牙は、ホラーを討伐後にとある里に立ち寄ったのだが、そこで莉渚(りお)と呼ばれる魔戒法師に出会い、共にホラー討伐を行うようになる。

 

そうしているうちに神牙と莉渚は互いに惹かれ合い、2人は夫婦になる。

 

やがて莉渚は子供を身篭るのだが、とある里にて休息を取った時に悲劇は起きたのだ。

 

神牙が立ち寄った里は、「炎安(えんあん)の里」と呼ばれる小さな村なのだが、ホラーに立ち向かえる魔戒騎士や魔戒法師は存在せず、日々ホラーの脅威に怯える毎日を送る里なのであった。

 

神牙は、この里がホラーに襲われていたところを偶然救ったことがきっかけで、莉渚が子供を出産するまでは休息を兼ねてこの里へ留まることを決意したのだ。

 

その決断が、全ての悲劇の始まりであることなど知る由もなく……。

 

神牙が炎安の里に留まるようになって1ヶ月が経過した頃、ホラーが里の近くに出現したため、神牙がその討伐へ赴く。

 

そのホラーを神牙が討滅し、炎安の里へ戻った時に事件は起こった。

 

里に戻ってすぐ、神牙の目に移ったのは、信じられない光景であった。

 

「…!?莉渚!!」

 

里の中心部の辺りにて、縛りあげられて柱に括り付けられている莉渚の姿を見付け、神牙は駆け寄る。

 

しかし、莉渚の身体にはあちこち武器のようなもので貫かれた跡がいくつもあり、お腹の中にいる子供共々既に亡くなっていた。

 

「…莉渚…っ!どうして……っ!」

 

何故自分の妻と子供が死ななければならないのか。

 

それが理解出来ず絶望していた神牙は、その場に崩れ落ちていた。

 

すると、この里の住民たちがゾロゾロと現れ始める。

 

「……旅の魔戒騎士よ。どうか、悪く思わないでおくれ」

 

「……悪く思うな……だと…?」

 

最初に口を開いたのはこの里の長老だったが、その言葉が信じられないものであったため、神牙は怒りの目を長老に向けていた。

 

「貴公も知っての通り、この地に魔戒騎士や魔戒法師はいない。だが、日々ホラーの脅威に晒されている。貴公には申し訳ないとは思ったのだが、ホラー避けの儀式のため、彼女には犠牲になってもらったのだよ」

 

この里には、かつてこの地を拠点とする魔戒法師はいたのだが、ホラーを討滅することは出来ず、追い返すのが手一杯だった。

 

そんな中、ホラーの脅威からこの里を守るために、今まで里を守ってきた魔戒法師の命を奪い、柱に括り付けることによるホラー避けの儀式という決して許されざる行為が行われていた。

 

何人もの魔戒法師がこの儀式の犠牲になった結果、この里には魔戒騎士や魔戒法師は誰もいなくなったのである。

 

ホラー避けの儀式を行った後は不思議なことに里へのホラー襲撃はなかったのだが、ここ最近は儀式の効果も薄まり、里の壊滅も時間の問題であった。

 

そんな時に神牙と莉渚がこの里に現れたのである。

 

この里を守ってくれた神牙には申し訳ないと思いつつも、2人は休息を終えたらこの里を離れることになる。

 

そうなると、この里は近いうちにホラーの標的になるだろう。

 

このように危惧した長老は、莉渚をホラー避けの儀式の生贄にしたのであった。

 

「貴公に守りたい者があるように、私はこの里に住む者たちを守らなければならぬのだ!この村のしきたりということで、わかって欲しい」

 

長老は、村のしきたりという言葉を使い、莉渚の犠牲を正当化しようとしていたのだ。

 

「……ふざけるな……」

 

そんな長老の言葉に、ついに神牙の怒りは爆発してしまう。

 

「ふざけるな!そんなことのために莉渚は犠牲になったっていうのか!?俺は、この里を守るために戦ってきたというのに!」

 

神牙にしてみれば、ホラーの脅威から人を守るという魔戒騎士としては当然のことをしていただけなのに、その守るべき人によって愛する妻とお腹の子供を奪われてしまった。

 

これ以上に理不尽なことはないだろう。

 

「ホラーからこの里を守ってくれたことには感謝しているが、それはこちらから頼んだことじゃない」

 

続けて、この里に住む1人の若者から放たれた信じられない言葉は、さらに神牙の怒りを買うことになる。

 

「そうだそうだ!俺たちにはあんたらみたいにホラーと戦う力はないんだ!」

 

「だから、仕方ないだろ!?」

 

それだけではなく、里の人間たちは自分の都合のみを語り始めたのであった。

 

すると……。

 

「……ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

怒りの衝動を抑えられなくなった神牙は、魔戒剣を抜くと、近くにいた若者を斬り殺してしまった。

 

それと同時に、あちこちから悲鳴が轟くと、里の人間たちは神牙から逃れようと散り散りになっていった。

 

しかし、この小さな村から逃げ切れる訳もなく、神牙は次々と村の人間を惨殺していった。

 

魔戒騎士は人間を斬ってはならない。

 

そのことはジンガもよくわかっていた。

 

だが、自分の守った人間によって愛する者たちが奪われたその怒りと憎しみは抑えようのない程のものなのであった。

 

こうして、神牙はこの里に住む人間を一人残らず皆殺しにしてしまったのである。

 

年寄りや、女子供も躊躇うこともなく……。

 

気がつけば里のあちこちには神牙が惨殺した死体の山が転がっていた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

神牙の握る魔戒剣は多くの人間の血に染まってしまった。

 

「……俺は……。俺は!いったい何のために戦ってきたんだ!!」

 

魔戒騎士は人を守るもの。

 

そんなことは今の神牙でもわかっている。

 

しかし、その守るべき人に、家族を奪われたのである。

 

その事実に、神牙はこれまで通り使命を守って人間を守るべきなのか?と自問自答するのだが……。

 

「……いや……!この世界の人間どもに生きる資格などない……!滅ぼしてやる……!この俺が!」

 

莉渚の命を奪った里の人間は皆殺しにしたものの、そのことによって神牙の心は歪んでしまい、人間を滅ぼすという魔戒騎士としてはあるまじき邪心を抱いてしまった。

 

それは、当然陰我となるもので……。

 

─くくく……。魔戒騎士よ、いいザマだな!

 

ジンガの魔戒剣から、ホラーと思われる声が聞こえてきた。

 

少し前に討滅したホラーが魔戒剣に封印されているのもあるのだが、この里から最寄りの番犬所まではかなりの距離があるため、神牙は剣の浄化を行えていなかった。

 

そのため、魔戒剣にも邪気がたまっていたのである。

 

─それほどまで人間や世界を憎むのなら、我と共に滅ぼそうではないか!

 

ホラーは神牙に対してこのように囁く。

 

すると、神牙は……。

 

「……そうだな。今の俺には最早何も残ってない。全ての人間を滅ぼすために、あえてお前を受け入れるのもいいかもしれないな」

 

なんと神牙は、ホラーの力を受けいれ、今まさにホラーになろうとしていた。

 

─潔いな、魔戒騎士よ!ならば!!

 

すると、邪気のたまった魔戒剣がゲートになり、黒い帯のようなものが神牙の中に入っていった。

 

神牙は抵抗する様子もなく、それを受けいれる。

 

こうして、ホラーに取り憑かれたことにより、神牙はジンガとなってしまったのだ。

 

ジンガのホラー態は、かつて自分が身にまとっていた狼是の鎧がそのままホラー化したかのような姿になっている。

 

こうして、ジンガは炎安の里を滅ぼした後はどこかへと姿を消した。

 

その後は、様々な里を襲撃して人間を惨殺するだけではなく、同胞であるはずのホラーを喰らうことで力を蓄えていったのだ。

 

そんな中、当時魔戒騎士であった尊師がジンガの討伐に向かうものの、ジンガに敗北。

 

その力を買われたのかホラーとなり、それ以降、尊師はジンガの右腕となった。

 

それから間もなく、桜花の里は滅び、そこで生き残ったアミリをジンガは気まぐれで救い、それがきっかけでアミリはジンガに忠誠を誓うようになったのであった。

 

ジンガがニーズヘッグの存在を知ったのは、アミリを救った後のことであり、とある里を滅ぼした時にニーズヘッグと呼ばれるホラーが怒りの炎により、人界を灰燼に帰すホラーであるという情報を得る。

 

自分が抱える怒りのことを思い出したジンガは、ニーズヘッグを復活させ、その力で人間を滅ぼそうと画策するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜過去編終わり~

 

「……あれから、ずいぶん経ったもんだ」

 

ホラーになる前の記憶は残っているからか、それを振り返りつつジンガはぼそりと呟いた。

 

「…?ジンガ様、いかがなさいましたか?」

 

「いや?なんでもないさ。ただ、昔のことを思い出していただけだ。俺が人間共を根絶やしにしてやろうと決意したあの時のことをな」

 

ホラーに憑依されてしまったこのジンガには、かつての御影神牙の記憶や意識は残っていない。

 

しかし、ホラーは憑依した人間の記憶を引き継いでいるため、過去のことを思い出すこと自体は不自然なことではないのだ。

 

「……あの時のお話ですね?本当に人間というのは自分の保身しか考えない愚かな存在です」

 

「その通りだ。だからこそ、俺はニーズヘッグを復活させる。奴はかつて、人間に力を貸していたホラーの一体ではあるが、人間共の姑息な裏切りにより、大切な友を失ったと聞いている。その事が、かつての俺と重なるのさ」

 

ジンガがこのように語ったことは事実であり、ニーズヘッグは人間により裏切りや、友を失ったことにより怒りや憎しみの権化と化し、その怒りの業火で様々な場所を灰に変えてしまったのである。

 

そんなニーズヘッグもまた、勇敢な魔戒法師たちの手によって封印され、魔竜の牙と2つの魔竜の眼に分けられたのであった。

 

「もうすぐ、ニーズヘッグは復活する…!その怒りの業火で、まずはこの街を灰に変えてやるさ。最早誰にも止めることは出来ない!あの無能な魔戒騎士共にもな!」

 

ジンガは、自身が拠点にしていたこの街を、ニーズヘッグの最初の標的にしようと企んでいた。

 

もしそれが現実になってしまえば、その被害は甚大なものになり、多くの死傷者を出してしまうことだろう。

 

それだけではない。

 

穂乃果たちが目指していたラブライブも、とても開催出来る状況ではなくなってしまう。

 

「…私はさらに力を磨いておきます。今度こそ、如月奏夜を始末してみせます!」

 

「…くくく…!期待しているぜ、アミリ!」

 

「はっ!」

 

こうして、ジンガとアミリは現在の拠点にて、ニーズヘッグ復活の準備にとりかかるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔導図書館にて、ジンガの過去や、ニーズヘッグについての情報を仕入れたアキトは、そのまま翡翠の番犬所へ帰還し、ロデルだけではなく、待機していた統夜たちにも情報共有を行っていた。

 

「…なるほど…。ジンガにはそのような過去があったのですね…」

 

「それにしても、ホラー避けの儀式とは、ずいぶんやり方がエグいもんだぜ」

 

「ああ。あいつが怒るのも無理はないぜ。とは言っても、人を斬るという魔戒騎士の禁忌を犯したあいつは許される訳がないけどな」

 

ジンガの思いもよらぬ過去を知り、統夜たちは驚きを隠せずにいた。

 

「ですが、ジンガが何故ニーズヘッグを蘇らせようとしたのか、納得しました。自分の抱えた怒りを、かつてのニーズヘッグに重ね、その怒りの力によって人間を駆逐しようと考えてるのでしょう」

 

「そんなこと、絶対に許すわけにはいかないな」

 

「ええ!ニーズヘッグにこの街を絶対に焼かせたりはしません!」

 

ロデルの推測に、大輝や奏夜はその阻止を全力で決意しており、それに他のメンバーも頷く。

 

「私としても、全力でジンガの野望を阻止するわ。私には、魔竜の眼の封印を解いてしまった責任があるんですもの」

 

ララは、いくら穂乃果たちの夢を守るためとはいえ、魔竜の眼の封印を解いてしまったことにより、そのことに責任を感じていた。

 

これは奏夜たちには話していないが、この命をかけてもジンガの野望を阻止する。

 

このように決意している程である。

 

「……ジンガが今どこに拠点を置いているのか、その場所の目処もたちました。今夜にでもその拠点へ突撃。ジンガの野望を阻止します」

 

ロデルは、番犬所の使者を使ってジンガがどこにいるのかを探しあてており、作戦を練ったうえでジンガの拠点へ突入する計画を立てていた。

 

現在は剣斗の弔いを終えた翌日の早朝であり、計画が遂行されるのがこの日の夜なのである。

 

「……作戦については俺とアキトで立てる。だから、大輝さんとリンドウは、夜までにエレメントの浄化をお願いしたい」

 

「おう、任せろ!」

 

「ああ、こちらとしては、体を動かす仕事の方がありがたい」

 

統夜は、大輝とリンドウに魔戒騎士の仕事であるエレメントの浄化を頼み、2人はそれを了承する。

 

「統夜さん、俺もジンガの拠点へ攻め込む作戦を一緒に考えます!」

 

奏夜はこのように申し出をするのだが……。

 

「いや、お前は作戦が始まるまで、μ'sのみんなの傍にいてやれ」

 

「それがいいな。その方が、お前もいざって時に力が発揮出来んだろ」

 

統夜はこのような提案をし、アキトがそれを支持する。

 

「いや、でも……」

 

奏夜が2人の提案を素直に聞けないと思ったのは、今が非常時であり、ジンガとの決戦が迫ってるからこそである。

 

自分としても、穂乃果たちとの時間が欲しい気持ちはあるが、今は魔戒騎士としての使命が最優先だと考えているからなのだ。

 

「お前の心配はわかっている。だけどな?決戦が近いからこそ、日常ってのは大切なんだよ。それが間違いなくお前の力になるはずだぜ」

 

統夜もかつて、暗黒騎士ゼクスことディオスとの決戦の時は、作戦決行の時まで軽音部の部室にてのんびり過ごしていた。

 

そのことが、統夜にとって大きな力になったことがあったため、統夜はその時のことを思い出しながら奏夜に語りかける。

 

「なるほど…」

 

「ララ、お前も奏夜と一緒にμ'sのみんなの傍にいてやれ。お前だってお手伝いとはいえ、μ'sの一員みたいなもんだろ?」

 

「…っ!でも!」

 

「言っておくが、魔竜の眼の封印を解いてしまったことの不始末は自分だけでケリを付けようだなんて考えるなよ?」

 

「!?」

 

アキトに自分の気持ちを見透かされてしまったからか、ララは驚きを隠せずに目を大きく見開いている。

 

「あの状況はどうしようもなかったさ。だからこそ、1人でケリをつけるのではなく、みんなでケリを付けるんだ。俺たちは、仲間だろ?」

 

「仲間…」

 

「ララ。お前は俺にとってだけじゃない。μ'sのみんなにとっても大事な仲間なんだ。だからこそ、戦いの前に少し気持ちを落ち着かせる時間が必要だと思うんだよ」

 

「……」

 

統夜だけではなく、奏夜からも説得を受けたことにより、ララは無言でコクリと頷き、奏夜と共に穂乃果たちに会いに行くことにしたのである。

 

「作戦決行の時には、指令書を使い魔の鳩に持たせて渡します。2人はそれを受け取った後に、直接現地へ向かって下さい」

 

「「わかりました!」」

 

「みんな。この戦い、絶対に勝とう。いや、勝てるさ。俺たちならな…!」

 

統夜がここにいる全員を焚き付けるためにこのように言葉を送ると、ここにいる全員は力強く頷いていた。

 

こうして、ジンガはニーズヘッグを復活させようとしている中、それを阻止しようとする動きも始まったのであった。

 

…決戦の時は刻一刻と迫っているのである…!

 

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

──次回予告──

 

『マズイな…。ニーズヘッグ復活の時が近付いてきているぞ。奏夜、それは絶対に阻止するぞ!次回、「征戦」。盟友の思いと共に進むぞ、奏夜!』

 

 




ジンガの壮絶な過去が明らかになりました。

牙狼 GOLD STOME翔では、ジンガの妻はご存知アミリで、息子を失った悲しみと怒りがホラー化の引き金となったのですが、今作のジンガこと神牙は、妻とお腹の中にいる赤ん坊諸共失うという、さらに凄惨な結果になってしまいました。

ちなみに、今作の神牙の妻である莉渚のモデルですが、莉杏になっております。

そして、ニーズヘッグもまた、人間の裏切りから大切なものを失うという怒りを抱えるホラーであることも判明しました。

次回からは、現在の章のクライマックスに突入していきます。

奏夜たちは、ジンガの野望を食い止めることは出来るのか?

それでは、次回をお楽しみに!

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