牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第83話になります!

最近色々と忙しい日々だったため、なかなか更新が出来ませんでした。

前回、剣斗やテツの思いを受け取り、ニーズヘッグを討滅した奏夜。

そんな奏夜たちの前に再び暗雲がたちこめるが、その正体とは?

それでは、第83話をどうぞ!




第83話 「雌雄」

真魔界へ突入した奏夜と統夜は、そこでジンガの怒りを依り代として復活したニーズヘッグと対峙する。

 

2人はニーズヘッグに戦いを挑むが、その激しい怒りの業火に、奏夜は焼き尽くされそうになっていた。

 

そんな時、剣斗とテツの英霊が奏夜に力を貸したことにより、輝狼の鎧が変化。聖光剣身という奇跡の形態となる。

 

奏夜は、2人の英霊の力を使いこなし、見事にニーズヘッグを撃破する。

 

そしてそのまま真魔界から脱出したのだ。

 

奏夜たちが真魔界でニーズヘッグと戦っている頃、ララは法術を用いて今まさに閉じようとしている真魔界のゲートを開いた状態の維持に努めていた。

 

「くっ……。なんて力なの……!!」

 

ニーズヘッグ復活の時に開かれたこのゲートは今まさに閉じようとしていたのだが、その勢いはかなりのものであり、ララが法術にて抑えてなければあっという間に閉じていただろう。

 

そんなゲートを、ララは必死に抑えていたのだ。

 

「…こんなところで負ける訳にはいかないわ!奏夜と統夜は、私なんかよりも遥かに厳しい戦いを今まさにしてるんだもの!!」

 

真魔界へ突入するということは、脱出の策がなければ人界へ帰ってこられる保証はない。

 

そんな状態でも奏夜と統夜は自分を信じて真魔界へ突入したのだ。

 

この命をかけてでもこのゲートを抑える。

 

そんな気持ちが今のララを突き動かしていたのである。

 

しかし、ララを突き動かしているのはそれだけではない。

 

「…私は、仲間の夢を守る名目で、眼の封印を解いてニーズヘッグ復活のきっかけを作ってしまった…。ここで死んでもこのゲートを守りきるのは、私の贖罪でもあるの!」

 

今この場にはララしかいないのだが、ララは自らを奮い立たせるために、あえて今の思いを言葉にしていたのだ。

 

「くっ…!くうぅ…!」

 

現在、ララの体にはかなりの負荷がかかっているのだが、ララは強い思いによって自らを奮い立たせることにより、どうにか耐えることが出来ていた。

 

しかし、そんな状態のララに危機が迫る。

 

「キシャアァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

どこからか現れた一体の素体ホラーが雄叫びをあげながらララの方へ向かってきたのだ。

 

「…っ!?」

 

ララは迎撃したくても、今それを行えばこのゲートはあっという間に閉じてしまう。

 

かと言ってこのまま素体ホラーの攻撃を受けてしまったらそれでもゲートは閉じてしまう。

 

絶体絶命の危機に、ララは息を飲む。

 

素体ホラーの爪がララに迫ろうとしていたその時である。

 

その爪が振り下ろされそうになった直後にどこからか銃弾が飛んでくると、それは素体ホラーの手を貫く。

 

痛みに断末魔をあげながら素体ホラーはその方向を向くと、そこに立っていたのは…!

 

「…ララ!よく持ちこたえたな!」

 

「!アキト!それに、リンドウと大輝さんも!」

 

入り口で大量の素体ホラーを相手取っていたアキト、リンドウ、大輝がここへ現れたのである。

 

素体ホラーはララを狙っていたが、爪を貫かれた怒りをぶつけるかのように3人の方へ向かっていった。

 

「へっ、させるかよ!」

 

リンドウは前方に八の字を描くと、その円から現れた鎧を身に纏うことによって、漆黒の竜のような鎧である、神食騎士狼武(しんしょくきしロウム)の鎧を召還した。

 

そして、魔戒剣が変化したまるでノコギリのような切っ先をしている機神剣(きじんけん)を一閃する。

 

その一撃によって素体ホラーは真っ二つに切り裂かれ、消滅した。

 

素体ホラーの消滅を確認したリンドウは、鎧を解除する。

 

「ララ、こっから先は俺も手伝うぜ!状況から察するに、奏夜と統夜はそこを通ってニーズヘッグと戦ってるんだろ?」

 

アキトは既にニーズヘッグは復活しており、奏夜と統夜が戦っていることを察してララに助け舟を出そうとする。

 

魔導筆を構え、法術を放とうとするのだが…。

 

「…ダメ!これは私の戦いだもの!誰の手も借りる訳にはいかないわ!!」

 

ララはアキトの手助けを拒否し、自分の力のみでなんとかしようとした。

 

「ララ!そんなこと言ってる場合か!?お前が失敗してしまったら、奏夜と統夜が二度と帰って来られないのだろう!?」

 

ララが抑えているこのゲートが真魔界に繋がっていることを大輝は知らないものの、状況は察せられたため、アキトの手助けを拒否したララを説得しようとする。

 

しかし……。

 

「…なるほど、それがお前の覚悟って訳だな!」

 

アキトはララの思いを汲み取り、ララの手助けは行わないことにした。

 

「ああ、それが良さそうだな。その覚悟を見届けるのも仲間のすべきことだしな」

 

リンドウはそれに賛同しており、ウンウンと頷きながらタバコを取り出し、それに火を付けてタバコを吸い始めていた。

 

『リンドウ!まだ戦いは終わった訳じゃないんですから!気を引き締めてください!』

 

「わぁってるって!だが、ホラーの大群が思ったより多かったせいでまともにタバコも吸わせてくれなかったしな。一服くらいさせてくれよ…」

 

自らの魔導輪であるレンからの小言にうんざりしながらも、リンドウはタバコを吸っていた。

 

「…アキト、いよいよの時はお前も力を貸せよ」

 

「わかってるって!大輝のおっさん!」

 

「お前は…。おっさんはやめろと何度言えば…」

 

アキトは大輝のことを度々おっさんと呼んでおり、大輝はそのことにうんざりしていた。

 

そのため、今回も頭を抱えながら呆れている。

 

「だからよ、ララ。お前はお前の覚悟を見せてやれ!」

 

「ええ!」

 

仲間たちからの励ましによってさらに自らを奮い立たせたララは、ゲートを抑えこみ、奏夜たちの帰りを待っていた。

 

それからしばらくすると…。

 

「…!?統夜!奏夜!!」

 

ゲートから無事に統夜と奏夜が帰還したのである。

 

「ララ!今だ!!」

 

「うん!!」

 

2人の脱出を確認したララは、アキトの声かけに呼応し、ゲートを拘束していた術を解除する。

 

それと同時にゲートはあっという間に閉じてしまい、そのまま消滅したのであった。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ララもまた、力を使い果たしたからか、その場に座り込んでしまった。

 

そんなララを見た統夜は、奏夜と共にララの元へ向かう。

 

「…ララ、俺たちの帰る場所を死守してくれてありがとな」

 

統夜は穏やかな表情でララに感謝の言葉を送った。

 

「私はたいしたことはしてないよ。ニーズヘッグと戦った2人に比べたら」

 

ララはゆっくりと立ち上がり、統夜と奏夜の顔を交互に見る。

 

「…お前ら、無事にニーズヘッグを倒したみたいだな」

 

アキト、リンドウ、大輝もまた側へと駆け寄り、アキトが声をかける。

 

「俺はたいしたことはしてないさ。奏夜の誰よりも強い思いの力が、ニーズヘッグに打ち勝ったんだよ」

 

「そんな…。俺はそんなに…っ!」

 

統夜の肩を借りてここまで脱出した奏夜であったが、統夜からの言葉に反応して統夜から離れると、そのままその場に座り込んでしまった。

 

「っとと。奏夜、あまり無理すんなよ。お前は力を消耗してるんだからさ」

 

「はい、ありがとうございます…」

 

奏夜はニーズヘッグを倒した時よりは多少は体力は回復したものの、まだまともに体を動かせる状態ではなかったのだ。

 

「それにしても、奏夜があのニーズヘッグを倒すとはな」

 

「たいしたもんだ!流石は俺が見込んだ男だぜ!」

 

大輝とリンドウは、奏夜の全身全霊の力にてニーズヘッグを倒せたこの結果に対して高く評価をしていた。

 

「俺の力じゃないよ…。だって、あの時俺は…」

 

奏夜はニーズヘッグの怒りの炎を浴び、諦めかけていた時に剣斗とテツの英霊に救われた話をしようしたが…。

 

「ま、その辺の話は後でじっくり聞かせてくれよ!」

 

「そうだな、奏夜とララが消耗してるもんな」

 

「番犬所にも報告せねばいけないから、早くここから離れようか」

 

「そうですね。そうしましょうか」

 

こうして、戦いは終わり、統夜たちはその場を後にしようとした。

 

しかし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

«まだだ……!まだ、終わりじゃねぇぞ……!»

 

どこからか、くぐもった声が聞こえてきた。

 

『…!どうやら、戦いはまだ終わってはいないみたいだな』

 

『そうらしい。統夜、油断するな!!』

 

先ほど聞こえてきた声から邪気を感じ取ったのか、キルバとイルバが統夜たちに警告する。

 

すると、統夜たちの目の前に現れたのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らを核にして、ニーズヘッグと共に消滅したと思われていたジンガであった。

 

「!?ジンガ…!?う、嘘だろ……?」

 

奏夜は、ニーズヘッグと共にジンガは消滅したと信じていたからか、目の前に立ちはだかるジンガの存在が信じられず、戦慄していた。

 

「お前、ニーズヘッグと共に消滅したんじゃなかったのか?」

 

そんな中、統夜が鋭い視線でジンガを睨み付けながら、抱いていた疑問をぶつける。

 

「残念ながら俺はニーズヘッグの身体が消滅するギリギリのところで脱出出来たんだよ!」

 

『…!?そうか!あの時の奏夜の一撃でニーズヘッグの怒りも切り裂かれた。だから、それと同時に核となってたお前との融合も解かれていたという訳か!』

 

「くくく…!ご名答だぜ!!」

 

キルバの推測は正しかったようであり、ジンガは怪しげな笑みを浮かべる。

 

しかし、そんなジンガの表情もすぐに怒りの表情へと変化する。

 

「ニーズヘッグは如月奏夜の攻撃で怒りは消えたみたいだがな…。俺の抱いた怒りは、そんなもので消え去るほど浅いもんじゃねぇんだよ!!」

 

ジンガは、放浪の旅の中、立ち寄ったとある里にてその里の風習によって妻とそのお腹の中にいた子供を失ってしまった。

 

その時に抱いた莫大な怒りや恨みの感情が陰我となり、ホラーに憑依されてしまったのだ。

 

「ニーズヘッグはお前らに倒されるとは思わなかったぜ……。この戦いも俺の負けみたいだ」

 

「おいおい、そこまでわかってるなら、素直に負けを認めたらどうなんだ?」

 

ジンガは、ニーズヘッグが討たれた時点で敗北を感じていたものの、往生際の悪さにリンドウは呆れている。

 

「そうはいかないさ。このままじゃ死んでも死にきれないんだよ。…如月奏夜!お前にも俺の抱いた怒りがどれほどのもんが思い知らせてやるよ」

 

ジンガが奏夜たちの前に現れたのは、とあることをしようとしていたからであった。

 

それは……。

 

「……お前の大切な存在であるスクールアイドルのμ's…だったか?あいつらを皆殺しにしてやるよ」

 

「!!?」

 

穂乃果たちを殺し、奏夜に自分の抱いた怒りを身をもって思い知らせるためだったのだ。

 

「…そんなこと…!!させる…かよ!!」

 

ジンガの企みを阻止するために、奏夜はどうにか立ち上がろうとしていたが、ニーズヘッグとの戦いで力を使い果たしてしまったため、立ち上がることが出来なかった。

 

「そんなんで俺を止めるつもりか?そのまま黙って見てるんだな!お前の大切な物が失う瞬間をな!」

 

力を使い果たした今の奏夜であれば、ジンガは簡単に始末出来るものの、今のジンガの目的は奏夜の始末ではないため、とことん絶望を与えるつもりだったのだ。

 

「…くっ!」

 

奏夜は無理をしてでも立ち上がろうとしたその時だった。

 

「……奏夜。お前は無理をするな」

 

統夜が前に出て、ジンガと対峙したのである。

 

「!?統夜…さん!ジンガは、穂乃果たちを殺そうとしてるんです…!だから、俺が…!」

 

奏夜は穂乃果たちを守るために自分がジンガと戦おうとしていた。

 

しかし……。

 

「そんな状態のお前に何が出来る」

 

統夜は普段の穏やかな声ではなく、引くドスの効いた声で奏夜を睨み付ける。

 

「…!?そ、それは…」

 

「俺にとっても、μ'sのみんなは大切な仲間だ。だからこそ、ここは俺に任せてくれ」

 

統夜はすぐに穏やかな表情で奏夜を諭しながら、魔戒剣を構えた。

 

「…す、すいません、統夜さん…。あいつは…頼みます…!」

 

「ああ、任せておけ!」

 

こうして、力を使い果たした奏夜は、ジンガの相手を統夜に委ねることにした。

 

「…フン、どのみちお前らとも戦わないと目的は達成出来ないと思ってたからな。望むところだぜ…!」

 

奏夜とララが戦えない現状でも、それ以外のメンバーは戦える状態だったので、ここで統夜たちを倒すつもりではあったのだ。

 

「それに…。お前とも剣を交えたいと思っていたんだぜ!月影統夜!!」

 

「悪いが、お前との縁もここまでだ。ここでお前を斬るからな…!」

 

「ふっ、それはどうかな!!」

 

統夜の宣言を受けても一切動じていないジンガは剣を手にした状態で統夜に接近し、剣を振るう。

 

しかし、統夜はそれを魔戒剣で受け止めた。

 

統夜は力強く魔戒剣を振り下ろすと、そのままジンガを弾き飛ばし、すかさず魔戒剣を振るう。

 

しかし、ジンガは統夜の攻撃をかわし、避けきれない攻撃は剣で受け止めていた。

 

ジンガもまた負けじと統夜の攻撃を受け止めた後に剣を振るうが、統夜はジンガの剣を後ろに下がって回避する。

 

『こいつ…!ニーズヘッグと同化したからか、あの小僧と戦った時よりも邪気が増えてるし、強くなってやがる…!』

 

どうやらジンガは、奏夜が天月輝狼(キロ)の力で倒した時よりもニーズヘッグと同化した効果なのか強くなっていたのだ。

 

「それは当たり前だ!さっきも言ったが、俺の怒りや憎しみは、それだけ深いんだからな…!!」

 

ジンガは自分の怒りや憎しみの深さを思い知らせるかのように衝撃波を放った。

 

「くっ…!」

 

統夜はそれを魔戒剣で受け止めるが、多少のダメージはあったみたいで、その顔が苦悶に歪む。

 

「この世界は理不尽に満ちてるんだよ…。だからこそ俺は、そんな理不尽をぶち壊してやるよ!!」

 

ニーズヘッグは倒されたものの、ジンガはその怒りによって、人界を滅ぼす。

 

そう思わせる程にこの世界に対する怒りや憎しみは深いのだ。

 

「…確かに、この世界は理不尽に満ちてる。だけどな!人はどんな理不尽があろうとそれを乗り越えていける力があるんだ!!だからこそ俺は人を守る!」

 

「そんなものはただの綺麗事だ!!貴様如きに俺のこの怒りはわからないさ!」

 

「ああ、わからないね。だが、これだけはハッキリとわかる。……お前のその傲慢に満ちた陰我は今すぐに断ち切らなきゃならないってことがな!!」

 

統夜としても、ジンガの壮絶な過去には同情の余地はあった。

 

しかし、ジンガは怒りに我を忘れ、魔戒騎士としての禁忌を犯してしまったのだ。

 

そこは、同じ魔戒騎士として受け入れる訳にはいかない事実なのだ。

 

「そうかよ!俺をそこまで否定するなら、斬ってみな!!やれるものならな!!」

 

ジンガはこう強気な宣言をすると、ホラー態へと変わっていった。

 

しかし、その姿はニーズヘッグと同化した影響なのか変わっており、以前よりもその体はまるで闇が深まったかのように漆黒の体になっており、背中には漆黒の羽根が生えており、飛翔能力も向上していたのだ。

 

その出で立ちは、まるで、かつてジンガの身にまとっていた狼是(ローゼ)の鎧が暗黒騎士の鎧になったかのようであった。

 

『!?こいつは驚いたな…。まさか、陰我が深まることで見た目まで強化されるとはな…』

 

ジンガは戦闘能力が向上しただけではなく、ホラー態も以前とは異なっていたため、イルバは驚きを隠せなかった。

 

「俺はこの力でこの世界を破壊してやるよ…!お前ら如きに止められる訳がない!!」

 

「それは…どうかな?」

 

ジンガがホラーとして強化されているにも関わらず、統夜は驚くこともなく、至って冷静だった。

 

「余裕でいられるのも、それまでだ!!」

 

統夜の冷静な態度が気に入らなかったのか、ジンガは背中の羽根を使って飛翔し、勢いよく統夜に迫る。

 

しかし、統夜はジンガの動きを見極めて、ジンガの攻撃を受け止めるのであった。

 

「…なんだと!?」

 

自分の攻撃が簡単に受け止められるとは思っていなかったのか、ジンガは驚きを隠せなかった。

 

「お前がどれだけ力をつけようとも、お前は怒りに支配されている。そんなお前の剣は、簡単に見切れるさ」

 

統夜は、魔戒騎士として様々な修羅場を乗り越えてきた経験からか、ジンガの攻撃を既に見切っていたのであったのだ。

 

「減らず口を…!これならどうだ!!」

 

ジンガは一度後方に下がって統夜と距離を取ると、手にしていた剣を振るい、そこから漆黒の刃のようなものが統夜めがけて放たれる。

 

「……」

 

統夜は精神を集中させて魔戒剣を振るうと、ジンガの放った刃を真っ二つに切り裂いたのであった。

 

切り裂かれた刃はそのまま左右の壁に激突し、爆発する。

 

「なっ…!?」

 

「これでわかっただろ?今のお前じゃ俺には勝てない」

 

「てめぇ…!!」

 

統夜とジンガの力の差は歴然であり、ジンガは怒りの目を統夜に向けていた。

 

(流石は統夜さんだ…!かつてあの黄金騎士牙狼と互角の戦いを繰り広げただけはあるよ…。俺だったらあのジンガを相手に倒せるかどうか…?)

 

奏夜は、魔戒騎士として揺るぎない力を持つ統夜に驚きを隠せなかった。

 

「ジンガ!貴様の陰我…俺が断ち切る!!」

 

統夜はジンガにこう宣言すると、魔戒剣を高く上空へ突き上げ、円を描く。

 

その部分のみ空間が変化すると、統夜はそこから放たれた光に包まれた。

 

そこから白銀の鎧が現れるのだが、統夜はその鎧を身に纏う。

 

統夜が身に纏ったこの鎧は、白銀騎士奏狼(ソロ)。

 

その名の通り鎧からは白銀に輝いており、この鎧は薄暗いこの空間を照らす光となっていたのだ。

 

「なめるな!俺の持つ怒りと闇はかなり深い!貴様如きに負けはしない!!」

 

統夜に圧倒されてる現状ではあるものの、ジンガは統夜相手に負けるわけはないと信じていた。

 

ジンガは漆黒の翼で飛翔し、猛スピードで統夜に迫る。

 

そして、その勢いのまま剣を振り下ろそうとするのだが…。

 

「…無駄だ!!」

 

統夜はギリギリまでジンガを引き付けると、魔戒剣が変化した皇輝剣を一閃。

 

ジンガの刃は統夜に届くことはなく、ジンガは皇輝剣の刃を受けたのであった。

 

「ぐっ…!」

 

自分の攻撃が届かず、統夜の攻撃を受けるとは思っていなかったジンガは、驚きと共に苦悶の表情を浮かべる。

 

「統夜のやつ!飛んでる奴相手でただでさえ不利だっていうのに、それをものともしてないじゃねぇか!」

 

「おお!統夜の奴もやるじゃないか!」

 

「あいつ、さらに強くなってるみたいだな…」

 

統夜が飛んでいるジンガに難なく一撃を入れたことに対して、アキト、リンドウ、大輝が驚きと歓喜の声をあげる。

 

(これが、統夜さんの本当の力…。本当に凄い…)

 

ニーズヘッグと戦った時、奏夜の思いの力によって勝利したこともあり、統夜の力を最大限まで引き出されてはいなかった。

 

ジンガの側近であるアミリを難なく倒しただけではなく、ニーズヘッグの怒りの邪気を受けて強化されたジンガをも圧倒している。

 

奏夜はそんな統夜の力に驚きながらも、尊敬し目標としている先輩騎士という名の壁が更に厚くなるのを感じていた。

 

(いくらニーズヘッグを倒せたとはいえ…。俺の力なんて、統夜さんとは程遠いよな…)

 

«当たり前だ。お前は魔戒騎士としてはまだ未熟だからな。あの男と互角になりたいのならもっと精進することだ»

 

(ああ、わかってるよ)

 

奏夜は統夜との実力差は理解しているため、キルバの叱咤激励を受け止めていた。

 

「まさか、この俺がここまで押されるとは、お前の力は俺の思っていた以上のようだな…。月影統夜!!」

 

「当たり前だ。俺は今まで多くの試練を乗り越えてきたんだ。お前如きに遅れを取りはしない!」

 

ジンガの皮肉の込められた言葉を聞いた統夜は、動じることもなく毅然と言葉を返す。

 

「ふっ、すましやがって…。余裕でいられるのも今のうちだ!!」

 

ジンガは再び飛翔し、統夜と距離を取ると、精神を集中させて邪気を高めていた。

 

「俺の何よりも深い闇や、怒りは…。底が見えない程なんだ!それを、貴様に思い知らせてやるぜ!!」

 

ジンガの高められた邪気は、その手にしている剣の切っ先に集められ、ジンガの体もまた、漆黒の邪気に包まれる。

 

その姿はまさに、闇の烈火炎装とも言えるような様相であった。

 

「ジンガの奴、とんでもない邪気を出してやがる…!」

 

「ああ、嫌でも肌に感じるぜ!」

 

「だけど、統夜ならきっと大丈夫だよね?」

 

ジンガのこの様相を見た大輝とリンドウは驚いており、ララは不安そうに現状を眺めている。

 

「心配ないさ!あいつは今までだって、ジンガ以上に手強い奴と何度も戦ってるんだ。あんな攻撃、なんてことはないぜ!」

 

統夜の盟友として、度々共闘していたアキトは、統夜の力を信じているからか、いくらジンガが強大な力を見せようが、全く心配はしていなかった。

 

(そうだよ…。俺だって、統夜さんの揺るぎない力を信じている。いくらジンガが邪気や怒りを高めようと、統夜さんなら…)

 

奏夜もまた、自らが目標としている魔戒騎士がここで負ける訳はないと心の底から信じていた。

 

『おい、統夜!あれをまともに受けたらひとたまりもないぜ!』

 

そんな中、統夜の相棒の魔導輪であるイルバは、ジンガが放とうとしている攻撃に対して警戒を促す。

 

「みたいだな。だからこそ、俺も全力で迎え撃つさ!」

 

そこは統夜もわかっており、統夜は自らの身体に赤の魔導火を纏わせ、烈火炎装の状態となった。

 

「これこそが、深淵の闇に包まれた、俺の怒りの一撃だ!!」

 

ジンガは邪気を纏った状態のまま、統夜めがけて突撃する。

 

統夜もまた、それを迎え撃つべく接近し、皇輝剣を振るってジンガの攻撃を受け止める。

 

「くっ……!!」

 

ジンガの一撃は、統夜の想像を遥かに越えていたからか、ジンガに押されそうになっていた。

 

「どうだ!!お前も思い知っただろう!?俺の闇や、怒りがな!!」

 

「わかっているさ!だけどな、お前がどれだけ闇や怒りの力を蓄えようと、俺は負ける訳にはいかないんだよ!俺は今、死力を尽くして戦った後輩の意思を受け取って戦ってるからな!」

 

「…!統夜さん……」

 

統夜から放たれた言葉は思いがけないものだと感じていたからか、奏夜は嬉しさからか、胸の高鳴りを感じていた。

 

「それに、俺には守らなきゃいけない人が、場所があるんだ!!こんなところで…止まってられないんだよ!!」

 

こう言い放つ統夜の脳裏には、自分の恋人である梓や、大切な人たちである放課後ティータイムのみんなの顔が浮かび上がっている。

 

それが統夜に更なる力を与えたのか、赤の魔導火は更に燃え上がったのだ。

 

「…!?な、なんだと!?」

 

統夜の力が先ほどよりも跳ね上がっているのを感じたからか、ジンガは驚きを隠せずにいた。

 

「…ジンガ!!元魔戒騎士でありながら復讐心に支配され、世界を焼き払おうとする貴様の陰我…俺が断ち切る!!」

 

統夜の皇輝剣を握る力は更に強くなっており、渾身の力を込めて皇輝剣を振るった。

 

ジンガは統夜の攻撃を抑えきれず、自らか纏った邪気ごと切り裂かれてしまったのである。

 

その結果、ジンガはそのまま地面へと落下し、この統夜の一撃によってジンガの強化された姿は消滅し、通常のホラー態へと戻った。

 

「…闇に還れ!ジンガ!!」

 

統夜はその勢いのまま地面目掛けて降りており、そのまま皇輝剣を振り下ろす。

 

その一閃により、ジンガの身体は真っ二つに切り裂かれたのである。

 

ジンガは致命傷を受けたことにより膝をつき、そのままホラー態から人間態へと戻ったのだ。

 

「…まさか…この俺が遅れをとるとはな……」

 

ジンガは敗北するとは思っていなかったからか、驚きを隠せなかった。

 

「だが、俺の抱える闇や怒りはお前らに断ち切れるものじゃねぇんだよ…!!俺はまた、人間の陰我に引き寄せられて、再び地上に舞い戻るだろうよ……!」

 

『やれやれ、往生際の悪いやつだぜ』

 

『まったくだ。まぁ、ホラーは封印して魔界に戻したところで、その通りではあるがな』

 

ジンガの再び復活する宣言にイルバは呆れており、キルバはそれが実現可能であることを冷静に分析する。

 

魔戒騎士がホラーを倒すのはあくまでも剣にホラーを封印し、それを浄化することで短剣に変化させて魔界へ強制送還する。

 

しかし、人間の陰我がある限り、ホラーは再びどこかのゲートから現れ、違う依代へ憑依することで再び人界へ舞い戻るというのはよくある話なのであった。

 

「お前が何度復活しようが、俺が倒してやるさ…。いや、今度は奏夜がお前に引導を渡すだろうさ」

 

「…はい…!次こそは…俺が、お前を倒す!!」

 

奏夜はニーズヘッグとの戦いで力を使い果たしており、今回はジンガとの戦いを統夜に託す形になってしまったが、再び戦うことがあれば、自分が決着をつけるつもりでいた。

 

「…くくく…。いつになるかは、わからないが、その時を楽しみにしてるぜ…!」

 

ジンガは邪悪な笑みを浮かべ、再び復活すると宣言する。

 

「…またな、魔戒騎士共…!」

 

ジンガはゆっくりと立ち上がり、別れの挨拶を済ませると、その身体はゆっくりと消滅していった。

 

ジンガが消滅したのを確認した統夜は鎧を解除し、皇輝剣から戻った魔戒剣を青の鞘に納める。

 

「…流石だな、統夜。あのジンガを難なく倒すとは…」

 

「お前さんの力は、本当に底が見えないぜ…」

 

大輝はジンガを倒したことを労い、リンドウは統夜の魔戒騎士としての力に驚きながらもタバコを取り出して一服を始める。

 

「…俺はお前が負ける訳ないとわかってたけどな!」

 

アキトは統夜の勝利を確信してたこともあり、「ふんす!」と息巻きながらドヤ顔をしていた。

 

『おいおい、なんでお前さんがそこまで誇らしげなんだよ…』

 

アキトのドヤ顔はあたかもアキトがジンガを倒したような感じに見えてしまったからか、イルバは苦笑いを浮かべる。

 

「…これで、全て終わったのね……」

 

「……ああ、そうだな……」

 

この頃にはどうにか自分で立つことが出来るくらいには体力が回復したからか、奏夜はゆっくりと立ち上がり、ララの言葉に頷く。

 

魔竜の眼と魔竜の牙によって復活したニーズヘッグは倒され、それを目論んでいたジンガも倒された。

 

それは、この壮絶なる戦いが終結したということである。

 

「…とりあえず番犬所へ報告しないとな」

 

戦いに決着がついたため、大輝は番犬所へそのことを報告しようとしていた。

 

「…奏夜。お前さんはそのまま帰って体を休めるといいぜ。報告ならみんないなくても問題ないからな」

 

リンドウは、奏夜が力を使い果たしていることを考慮して、そのまま奏夜を帰らせようと提案する。

 

「ありがとう、リンドウ…。そうさせてもらうよ…」

 

奏夜としては、一秒でも早く体を休めたいと思っていたため、リンドウの申し出をありがたく受けることにした。

 

「私も番犬所へ報告をするわ。これからのことを相談したいと思ってたしね」

 

ララは、ジンガが狙っていた魔竜の眼を守るために蒼哭の里からここへやって来た。

 

結果的にニーズヘッグは復活してしまったものの、そのニーズヘッグは討滅されたことでララの使命は完了したのである。

 

このまま里に戻るにしても、これからどうするかをロデルと相談するつもりなのだ。

 

「…番犬所への報告は任せた。俺は元老院にこのことを報告しないといけないからな」

 

「統夜!それには俺もついて行くぜ!」

 

統夜は、ニーズヘッグ復活の阻止を元老院から指令を受けていたこともあったので、このまま元老院へ向かい、報告しようと考える。

 

それに元老院付きの魔戒法師であるアキトも同行しようと提案したのだ。

 

こうして、ニーズヘッグを巡る壮絶な戦いは幕を閉じた。

 

その結果の犠牲は決して小さいものではなかったが、それでも奏夜たちの魔戒騎士としての戦いは終わることはない。

 

人間の邪心がある限り、陰我は産まれ、ホラーは人界へと現れる。

 

それ故に、魔戒騎士の戦いには終わりがないのだ。

 

その陰我を断ち切り、多くの人を守るために…。

 

奏夜たちはそのことを噛み締めながら、解散したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──次回予告──

 

『戦いは決着がついたみたいだな。だが、俺たちは立ち止まっている暇はないんだぞ!次回、「再動」俺たちは再び歩き出す!』

 




ニーズヘッグは倒されたものの、再び現れるジンガ。

このしつこさこそ、ジンガらしいのかな?と思い、ここで登場させるのは前々から決めていました。

今回、そんなジンガと決着を付けたのは奏夜ではなく、統夜でした。

この辺の話を考えるにあたり、ここはギリギリまで迷いました。

前回の話で死力を尽くしてニーズヘッグを倒した後にジンガを奏夜が倒す展開も考えましたが、奏夜はまだまだ発展途上の魔戒騎士であるということと、ニーズヘッグとの決着の時はほぼ出番のなかった統夜の活躍を作りたいという気持ちから今回の展開になりました。

統夜は鋼牙に引けを取らないレベルに成長していることがわかった回になったと思います。

次回は、この章のエピローグ的な話になっております。

大きな戦いが終わり、奏夜たちはこれからどのように歩みを進めていくのか?

それでは、次回をお楽しみに!

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