牙狼ライブ! 〜9人の女神と光の騎士〜   作:ナック・G

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お待たせしました!第85話になります!

早めに新章の投稿しようと思ったら、年が明けてしまいました。

今年もよろしくお願いします!

今年中にこの作品完結させられたらいいのですが…。

新章は「栄光への旅路編」となっております。

このタイトル通り、μ'sは栄光へと辿り着くことは出来るのか?

そして、今回の話は二期の7話の話も混ぜつつもオリジナルの話となっております。

ジンガやニーズヘッグの事件を解決させた奏夜たちを待ち受けるものとは?

それでは、第85話をどうぞ!!




第85話 「自尊」

……ここは、元老院の某所にあるとある牢獄。

 

ここでは、罪を犯した魔戒騎士や魔戒法師が投獄されている。

 

その罪状としては、魔戒騎士や魔戒法師でありながら守るべき人間に危害を加えたり、欲にまみれ罪を犯した者。さらには闇に堕ちそうな傾向のある者など、様々な者がいた。

 

そんな牢獄に、1人の魔戒騎士が投獄されていたのだが……。

 

「…はぁ…はぁ…はぁ…」

 

その魔戒騎士は、看守を殺害し、牢獄に貼られている結界をも突破して元老院から脱獄をしたのである。

 

「ふざけるなよ…!この俺が、サバックであんな小僧に負けただけじゃなくてあんなところに閉じ込められるなんて……!!」

 

その魔戒騎士…タクトはベテランの魔戒騎士であり、そのプライドの高さもあって、他の魔戒騎士を見下す傾向のあった魔戒騎士であった。

 

そんな彼が牢獄へ入れてられてしまったのは、今から2年前に行われたサバックがきっかけなのである。

 

タクトはサバックの2回線にて統夜と対決するのだが、自分より年下で経験の浅い統夜に圧倒され、ただ負けるだけならと魔導筆を用いた法術を使ってしまう。

 

その時のサバックより、魔導筆を用いた法術は禁止されていると明言されているのにである。

 

そのままタクトは反則負けになるところだったが、統夜がそれに異議を唱える。

 

それに、サバックを統括する朱雀という元老院の議長が容認し、試合は続行。

 

魔導筆を使ってもなお統夜には勝てず、タクトは神聖なるサバックでの戦いを汚した魔戒騎士として、牢獄に入れられていたのである。

 

それから2年経った今も牢獄にいたため、それだけ罪深いことをタクトはしていたのだ。

 

「…今の元老院は何もわかっちゃいない…!そんな元老院なんか、俺がぶっ潰してやるよ…!」

 

タクトは自らの罪を悔い改めるどころか、自分をこのようなところに閉じ込めた元老院に対して逆恨みという名の激しい憎悪を抱いていた。

 

「その前に、あの小僧だ…!奴のせいで俺の栄光はめちゃくちゃになったんだからな…!!」

 

それだけではなく、タクトはサバックの試合で敗れた統夜に対しても逆恨みの感情を抱いていたのだ。

 

ここまで憎悪が深ければ、それは強い陰我に繋がるのは必然であり……。

 

──そうだ、力ある魔戒騎士よ…。お前、全てを壊す程の力は欲しいと思わないか?

 

「……ホラーか。今の俺には何もない。お前らを受け入れ、俺を認めなかった愚か者共を叩き潰すのも悪くはないかもな……」

 

──よく言ったぞ!魔戒騎士よ!では、その身体を頂くぞ!!

 

タクトの脳裏にホラーの声が響き渡っていたのだが、彼の手にしていたハルバードのような形の魔戒剣がゲートとなってしまい、そこから現れた黒い帯状のものがタクトの中へと入っていく。

 

これが何かを理解していたタクトは声を発することもなく、ホラーを受け入れる。

 

こうして、元魔戒騎士のタクトは、ホラーに憑依されてしまったのだ。

 

「…くくく…まずは……」

 

タクトはこう呟くと、何処かへと姿を消すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

奏夜たちの活躍により、ニーズヘッグが倒され、世界の破壊を目論んでいた元魔戒騎士のホラーであるジンガの野望を阻止してから、1週間程が経過していた。

 

この頃になると、秋が深まっており、冬の到来も近付いていた。

 

現在は放課後なのだが、奏夜、穂乃果、花陽の3人が街中をジョギングしていた。

 

何故この3人だけでジョギングなのか?

 

それは、ジンガとの決戦が終わり、ララと別れてまもなくまで時間は遡る。

 

穂乃果の妹である雪穂が偶然にも以前行われた身体測定の結果が書かれた紙を発見したのだ。

 

そこには、前回の身体測定よりも体重が増加している事実が書かれており、雪穂はそれを由々しき事態だと母親に報告。

 

まもなくしてμ's全員にまでこの行き渡ってしまったのだ。

 

最初は穂乃果だけによるダイエット計画が始まるのだが、それからまもなくして、花陽もまた同様に体重が増加している事が発覚。2人でダイエット計画が行われることになった。

 

そして現在に話が戻るが、そのダイエット計画のプランの一つとして、ジョギングが組み込まれており、今まさにそれが行われているのである。

 

「…ほら、もっとしっかり体を動かせ!じゃないとジョギングの意味がないぞ!」

 

穂乃果と花陽を先導している奏夜が、2人を叱咤激励する。

 

「…はぁ…はぁ…そんなこと……言ったって……」

 

花陽は既に体力を使い切っているのか、息を切らせながらも奏夜に反論した。

 

「それに…。なんで2人でジョギングしてたのに、そーくんも一緒なのさ!」

 

本来ジョギングは穂乃果と花陽の2人だけで行われていたが、今は奏夜も一緒にジョギングに参加していたのだ。

 

「そりゃ、仕方ないだろ?あんなことしてたのがバレたんだからさ」

 

『むしろ、今よりきついメニューにされないだけ奏夜に感謝したらどうだ?』

 

「「うぐっ…!それは…!」」

 

奏夜とキルバの指摘が的を得ているのか、2人はすぐに口ごもる。

 

奏夜のいうあんなことだが、最初は2人でジョギングを行っていた穂乃果と花陽だったのだが、その道中にご飯屋さんを偶然見つけてしまう。

 

穂乃果はその誘惑に負けて花陽も道連れにしようとするも、花陽は最初はその誘惑と戦っていた。

 

しかし、どうしても誘惑には勝てず、しばらくの間はジョギングの途中にこの店へ寄るようになった。

 

それが海未にバレてしまい、こってりと絞られてしまう。

 

本来ならメニューの強化をすべきところを、奏夜が見張りとして付くという条件でその話はなかったこととなったのだ。

 

「…それに、俺としてもダイエットではないが、体は鍛えたいからな」

 

奏夜の体を鍛えたいというのは、日夜ホラーと戦う魔戒騎士としては当然のことのように思えるが、別の理由がある。

 

それは、突如現れた異世界の男と戦うことになった奏夜は全力で戦うも敗れてしまう。

 

そのことでトドメを刺されそうになったが、統夜とリンドウの救援があったのと、男の仲間が迎えに来たことによって戦いは中断。

 

男は元の世界へと戻っていったからだ。

 

一時的に敗北のショックにより自分を見失いそうになるがすぐに立ち直る。

 

だが、さらなる鍛錬が必要だと思った奏夜は、穂乃果や花陽の見張りついでに自分も鍛えようと考えていたのだ。

 

「えぇ!?そーくんは十分に強いと思うけど…」

 

「そんなことはないさ。確かに、大きな試練は乗り越えたかもしれないけど、魔戒騎士としてはまだまだ未熟だ。多くの人を守るために鍛錬は欠かせないんだよ」

 

『ま、そういうことだ。奏夜が現状に満足していい程の力を付けているとは思えんからな』

 

「アハハ…キルバは相変わらず奏夜君に厳しいね…」

 

キルバは奏夜が力を付けていることは認めているものの、魔戒騎士としてはまだ発展途上であると思っての発言であった。

 

それが厳しいと感じた花陽は苦笑いを浮かべる。

 

「ほら、俺のことよりも、まずはお前らのダイエットを頑張らないとな!」

 

「えぇ…!休憩したいし、ご飯が食べたいよぉ〜」

 

「私も…!」

 

奏夜は話を切り上げ、再び穂乃果と花陽にジョギングを頑張ってもらうべく発破をかける。

 

しかし、穂乃果と花陽は既にヘトヘトであったが、奏夜は途中で休憩させることはなく、ジョギングのノルマを終わらせた。

 

ゴールは神田明神であり、3人はそこに到着するのだが、それは穂乃果と花陽がジョギングをしている間に他のメンバーは体力作りのトレーニングをしようという海未の提案からだったのだ。

 

2人のジョギング終了後は学校へ戻ってダンスの練習を行う予定となっている。

 

2人の休憩が終わって奏夜たちはそのまま音ノ木坂学院へと向かおうとするのだが……。

 

『…奏夜。番犬所から緊急の呼び出しだ。至急来るようにとのことだ』

 

「!ジンガの件が終わり、ホラーの動きも活発ではないと思ったんだけどな……」

 

ジンガとの決戦が終わってからまだ日が経っていないにと関わらず緊急の呼び出しがかかったことに、奏夜は驚きを隠せずにいた。

 

「…悪い、そういうことだから、俺はここで失礼するよ」

 

「それなら仕方ないわね。後のことは私や海未に任せて、奏夜は魔戒騎士の使命に集中して?」

 

奏夜が急に呼び出されたのだが、絵里はこのように毅然と奏夜を送り出そうとする。

 

そんな絵里の様子に他のメンバーは少し驚きながらも、絵里の言葉に無言で頷いて了承していた。

 

「みんな、ありがとな!それじゃあ、行ってくる!」

 

こうして奏夜は穂乃果たちと別れて、そのまま番犬所へと向かった。

 

「……お、奏夜。来ましたね」

 

「はい、ロデル様。遅くなって申し訳ありません」

 

奏夜が番犬所を訪れると、既に大輝とリンドウが来ており、遅れてこちらへ訪れたことをロデルに謝罪する。

 

「気にしないで下さい。奏夜はμ'sのマネージャーでもありますからね。今も、練習を行っていたところなのでしょう?」

 

「はい、そうなのです」

 

ロデルは奏夜の事情を把握していたからか、少し遅れたからといっても特に気にする様子はなかった。

 

それは、大輝やリンドウも同様の様子である。

 

『それで、全員呼び出しとはどうしたんだ?ジンガやニーズヘッグの件はもう片付いただろう?』

 

「いえ、今回はその件は関係ありません。ですが、可及的速やかに解決せねばいけない問題が起きたのです」

 

キルバが呼びたしの理由を問うのだが、ロデルはこのように話を切り出す。

 

「皆さんは前回のサバックの時に、魔戒騎士らしからぬ振る舞いにてサバックの試合を汚して牢へ入れられたタクトという魔戒騎士をご存知ですか?」

 

「知ってるも何も、俺と奏夜はその時の試合を見ているからな」

 

「そうですね。統夜さんに勝てなかっただけではなく、禁止されている魔導筆による術を使ってましたもんね」

 

大輝と奏夜はその時のサバックに参加していたため、ロデルの話していたタクトの試合は目の当たりにしていた。

 

その時の印象は強かったからか、2人共忘れることなく記憶に残っていたのだ。

 

「俺はちょうど別任務があってサバックには参加出来なかったなぁ。だが、その辺の話は他の魔戒騎士やアキトから聞いていたぜ」

 

リンドウもその当時は魔戒騎士として活動していたのだが、指令があったため、サバックに参加は出来なかった。

 

しかし、サバックという魔戒騎士しては至高の舞台を汚したタクトの悪名はサバックに参加していない魔戒騎士たちにも知れ渡る程だったのだ。

 

「そのタクトですが、昨日元老院から脱獄したと報告が入りました」

 

「…っ!」

 

ロデルから聞かされたタクトの脱獄という事実に、奏夜は驚きを隠せずにいた。

 

「やれやれ…。なんで脱獄なんて馬鹿な真似をしたのかねぇ。そんなことをしたら、魔戒騎士としての資格を剥奪される可能性もあるだろうに」

 

リンドウもその事実に驚くも、それよりも脱獄という愚行行ったことに対して呆れている。

 

「まったくだ…。だが、奴の目的はなんとなく察しがつくがな」

 

リンドウの言葉に大輝は賛同するのと同時に、タクトが何故脱獄をしたのか、その目的がなんとなくわかっていた。

 

「…というと?」

 

「あの男はプライドだけは相当高いからな。奴が自分より年下の魔戒騎士に負けるなど相当に奴のプライドに傷がついただろう。奴は恐らくだが、統夜に対して相当な逆恨みをしているだろうな」

 

『やれやれ…。プライドが高いだけではなく逆恨みとは、つくづく救えないやつだぜ……』

 

『まったくです。ですが、そうなると、タクトの目的は統夜でしょうね』

 

大輝の推測にキルバとレンは賛同しており、それと同時にタクトの狙いも理解出来たのだ。

 

「そう考えるのが妥当でしょうね。統夜の所属していた紅の番犬所の管轄でも相当に警戒はしているでしょう。ですが、統夜は先日、こちらへ訪れていますし、今は元老院所属の魔戒騎士です」

 

「…そうか…!タクトがもしその情報を持っていたとしたら、紅の番犬所のある桜ヶ丘じゃなくて、こちらへやってくる可能性は十分にありますね…」

 

ロデルの話す通り、統夜は今となっては元老院に所属する魔戒騎士ではあるが、こちらを訪れたという事実があるために、この管轄内も警戒を強める必要があることを奏夜は推測していた。

 

「ええ。ですので、街の巡視を強化しつつ、タクトを発見したら、捕縛して下さい。ただし、脱獄した彼が闇に堕ちてしまった可能性も考えられます。その際は討伐ということになるであろうことを頭に入れておいて下さい」

 

「…っ!わ、わかりました!」

 

タクトが統夜に対して逆恨みの感情があるということは、その感情が陰我に繋がりかねないため、ホラーに憑依される危険もあれば、闇に堕ちてしまう可能性も否定は出来ない。

 

ロデルの言葉はそこをふまえてのものであった。

 

こうして、ロデルから指令を受けた奏夜たちは、そのまま解散し、手分けして街の巡視を行い、タクトの捜索を行っていた。

 

特に異常はみられず、気付けば夜になっていた。

 

「…それらしい人物はいないな…」

 

『そうだな。奴が現れたという報告は受けていないし、他の管轄でも現れたという報告は受けていない』

 

「そうか……」

 

キルバからの報告を受けた奏夜は、不安げな表情を浮かべていた。

 

『…奏夜。どうしたんだ?』

 

「タクトの狙いは統夜さんだろ?そのために、梓さんたちを人質にとる可能性もあるんじゃないかってふと思ってしまってな……」

 

『…なるほど。その可能性も有り得なくはないだろう。まぁ、それは月影統夜自身もわかっているハズだろうし、対策をしている可能性もあるんじゃないか?』

 

「…そうだよな…。もし狙われてるのが俺だったとしたら、大切な人たちを狙わせないように策を立てるだろうからな」

 

タクトが統夜のことを逆恨みしているため、統夜を仕留めるためになりふり構わない行動に出ることを奏夜は心配する。

 

しかし、キルバのいう通り、統夜が何かしらの対策を立てている可能性は高かったため、奏夜の心配は杞憂に終わっていた。

 

そんな時だった。

 

『…!奏夜!ホラーの気配だ!!こっから近いぞ!』

 

「!?こんな時に…!」

 

タクト捜索の途中ではあったが、キルバはホラーを探知したため、その事に対して奏夜は舌打ちをする。

 

「だが、ホラーと聞いては捨ておけないな。キルバ、行こう!」

 

『ああ!』

 

こうして奏夜はキルバのナビゲーションのもと、ホラーがいると思われる場所へと急行したのであった。

 

そして、現場に到着した奏夜の目に映っていたのは、ハルバードを手に佇む、妙な男の姿であった。

 

この日本では理由なく刃物や銃を所持しているだけで法律に反するため、警察に逮捕されてしまう。

 

そんな中でハルバードという殺傷能力の高い武器を所持しているのだ。

 

目の前の人物が一般人ではないのは明らかであった。

 

しかし、奏夜はその人物の顔を見た瞬間驚きを隠せなかったのだ。

 

何故ならば……。

 

「…あんたまさか…!元老院から脱獄したタクト…なのか?」

 

「…あ?ガキ、お前も魔戒騎士か。貴様のようなガキに呼び捨てにされる筋合いはない」

 

その男こそ、元老院から脱獄したタクトだったからである。

 

しかし、奏夜からタクトと呼び捨てにされたのが気に入らなかったのか、眉間に皺を寄せて奏夜を睨み付ける。

 

『…奏夜!気を付けろ!!そいつから…』

 

キルバはタクトの現状を伝えようとするが、奏夜は察しがついていたからか、魔導ライターを取り出し、魔導火を放ってタクトの瞳を照らす。

 

すると、タクトの瞳から不気味な文字のようなものが浮かび上がってきたのだ。

 

それこそ、タクトが魔戒騎士でありながらもホラーに憑依されてしまったということへの証明へなってしまった。

 

その事実を知り、奏夜は悲痛の表情を浮かべる。

 

「…どうして…!!」

 

ジンガもそうだったが、タクトもまた、人を守る魔戒騎士でありながらホラーに憑依されてしまう。

 

その事実に胸を痛めており、タクトの胸の内を問おうとする。

 

「…どうしてだ?そんなもん決まっている。俺は、俺のことをコケにしてくれた奴を皆殺しにしてやるんだよ。特に、サバックで俺の華々しい経歴に傷を付けやがったあのガキ…月影統夜だけは絶対にこの手で殺してやる……!!」

 

キルバが推測した通り、タクトはサバックでの敗北によって統夜に対して逆恨みの感情を抱いて憎悪していた。

 

その気持ちから産まれた陰我はかなりのものであったため、ホラーに憑依されてしまったのだ。

 

「…月影統夜がここを訪れたと聞いたが、どうやらこの街にはいないらしい。だったら、ここでお前を殺して月影統夜をおびき出すために奴の大切なものでも襲うとするさ」

 

そして、奏夜が先ほどまさに危惧していたことを、タクトは行おうとしていたのである。

 

「…あんた…。人を守る魔戒騎士だろ!?統夜さんを狙ってるなら、直接狙えよ!あんたに魔戒騎士としてのプライドはないのか!?」

 

タクトの身勝手な発言に奏夜は怒りの感情を抱き、その気持ちをタクトにぶつける。

 

しかし……。

 

「うるせえ!!黙れ!!」

 

そんな奏夜の言葉を癪に感じたのか、タクトはハルバードを振るう。

 

奏夜は咄嗟に魔戒剣を抜いてタクトの攻撃を防ぐのだが、その力はかなりのものであり、後退ってしまった。

 

「くっ……!!」

 

「魔戒騎士としてのプライドだぁ!?そんなもん、牢屋に入れられたあの時からとうに無くしてるに決まってんだろ!?なんせ、俺の崇高な経歴をあのガキが潰してくれやがったんだからな!」

 

ホラーに憑依されているせいもあるのだろうか、タクトは魔戒騎士としてのプライドなど微塵も持っておらず、その頭にあったのは統夜への復讐というあまりに身勝手なものであったのだ。

 

「あんたは…!もう魔戒騎士としてのあんたは死んだということだな……。だとしたら、容赦はしない!!」

 

目の前にいる男は魔戒騎士ではない。ホラーである。

 

改めてその事実を認識した奏夜は、魔戒剣を構えてタクトを睨み付ける。

 

「ホラーを狩るのは魔戒騎士の使命とはいえ、俺とやろうっていうのか。お前は確か、あの月影統夜の舎弟みたいなもんだろ?お前みたいなガキに俺が倒せると思うのか…?」

 

「ああ…!倒せるさ!!それに、あんたが本気で統夜さんを倒そうと思ってるなら、俺如き軽く蹴散らせないとな…!」

 

奏夜は魔戒騎士としてはベテランだったタクトが相手だとしても、勝つことの出来る自信があった。

 

それだけではなく、タクトにこのような挑発を投げる程の余裕はあったのだ。

 

「このガキが…!!調子に乗るな!!」

 

奏夜の簡単な挑発に乗ってしまったタクトは、奏夜へと向かっていった。

 

『やれやれ……。プライドが高いだけあって、簡単な挑発に引っかかってくれてるじゃないか……』

 

奏夜の挑発に激昂しているタクトを見て、キルバは呆れていた。

 

タクトは素早い動きで奏夜に接近すると、ハルバードを思い切り振り下ろす。

 

その威力によって奏夜を蹂躙しようとしていたが、奏夜はその攻撃を軽く回避した。

 

「悪いけど…!そんな短調な動きで俺を捉えられると思うな!!」

 

「このガキ…!今のはほんの小手調べだ!」

 

タクトは再びハルバードを振るうが、奏夜はそれも難なく回避する。

 

そして、その勢いのまま、タクトに接近する。

 

ハルバードによる攻撃は範囲が広いのはいいが、どうしても大きく体を動かして振るう必要があったため、接近することでハルバードを思うように振るえなくする。

 

奏夜はそこまで計算してタクトへ接近したのだ。

 

「甘いんだよ!!」

 

タクトは右手でハルバードを持っていたが、空いていた左手を奏夜に当てると、そのまま法術を放った。

 

タクトは法術の心得があるからか、魔導筆による法術を使えたが、ホラーに憑依されたことにより、魔導筆を使わずとも法術を使えるようになったのだ。

 

「ぐぅ…っ!!」

 

タクトの法術をモロに受けてしまった奏夜は後方へ吹き飛ばされてしまうが、すぐに体勢を立て直す。

 

「…そうだった…。こいつ、法術を使えるんだもんな…」

 

『だが、ホラーの力も混ざっている。魔導筆を使わずとも術を使えていたみたいだからな』

 

「そこの魔導輪の言う通りだ…!!俺は、ホラーの力を得たことにより、さらに力を付けた!!月影統夜如きに遅れをとっていたあの時の俺ではないぞ!!」

 

奏夜に一撃を与えたことにより気を良くしたのか、タクトは不敵な笑みを浮かべる。

 

「確かにあんたは元魔戒騎士のホラーなのかもしれない……。だけどな、俺はお前なんかよりずっとずっと強い奴がいることを知っている。お前なんかに負けはしないんだよ!!」

 

毅然にこう言い放つ奏夜の脳裏に浮かんでいたのは、かつて手も足も出ないほどに敗北したことがあるものの弱さを受け入れたことによって撃破した尊師と、怒りの権化と言われたニーズヘッグ以上の怒りを抱えていたジンガであった。

 

この2人と渡り合った自分なら負けるハズはない。

 

これは決して不遜な感情ではなく、試練を乗り越えたことによる自信であったのだ。

 

「ガキが、調子に乗りやがって…!お前如き、俺が軽くひねり潰してやるよ!!」

 

奏夜の毅然な態度に苛立っていたタクトは、その体を元の人間の体から、ホラーの姿へと変化させたのであった。

 

その身体は2倍ほどの大きさへと変化し、顔は人間の顔から牛のような異形へと変貌する。

 

『…奏夜!こいつはミノタウロス!!奴のパワーは相当なものだぞ!油断するな!』

 

元魔戒騎士であるタクトは、ミノタウロスという名のホラーへ憑依され、その力を得たのであった。

 

「ミノタウロスって、ギリシャ神話とかにも出てくるよな?まさか、同名のホラーがいたなんて…」

 

『その神話に出てくる奴がホラーだったという過去の記録が確かあったハズだが…』

 

奏夜はミノタウロスという名前に聞き覚えがあったのだが、キルバはそんな奏夜の認識は間違っていないことを伝える。

 

「なるほど…」

 

キルバの解説に奏夜は納得しながらも魔戒剣を構えていた。

 

「そんなくだらない話をしてんじゃねぇ!!」

 

奏夜とキルバの話に苛立ちを募らせたミノタウロスことタクトは、力強くハルバードを振るっていた。

 

奏夜はそんなタクトの動きを見切っていたからか、無駄のない動きでその攻撃を回避する。

 

「こいつ…!これならどうだ!!」

 

攻撃を回避されたことで奏夜と距離を取られてしまったため、タクトは再びハルバードを力強く振るい、衝撃波を放った。

 

奏夜はそれを回避しようとする様子はなく、ギリギリまで攻撃を引き付けていた。

 

そして……。

 

「…!!」

 

奏夜は魔法衣の裏地から素早く剣斗から託された盾を取り出すと、それを前方に突き出して、衝撃波を防ぐ。

 

「このガキ…!盾なんか隠し持ってやがったか!!しかもその盾…力もないくせに偉そうなだけな小津の人間の盾じゃねぇか!!」

 

衝撃波を防がれたことにタクトは苛立ちを露わにするのと同時に、元魔戒騎士なだけはあったのか、奏夜の手にしていた盾がどんな盾なのかは理解していた。

 

「……」

 

そんなタクトの言葉に、奏夜は言葉を発してはいないものの、その瞳からは怒りの感情が露わになっていたのだ。

 

奏夜は素早い動きでタクトに接近すると、何度も魔戒剣を振るってタクトの身体を切り裂く。

 

とはいえ、ホラー態であるタクトに決定打を与える程ではないが、動きを止める攻撃としては充分だった。

 

そして、追い打ちをかけるかの如く、奏夜は盾を前方に突き出してタクトへ突進。

 

自分の倍以上の体格のタクトを軽々と吹き飛ばした。

 

「…ぐっ!このガキ…!どっからそんな力が……」

 

そんな奏夜の怒涛の攻撃にタクトは驚きを隠せない。

 

「…この盾にはな、俺を友と認めてくれた剣斗の熱い想いが…魂が込められているんだ!何も知らないアンタに貶されていいものなんかじゃない!!」

 

奏夜は鋭い目付きでタクトを睨みつけながらこう言い放つ。

 

剣斗の父親からこの盾を託されたあの時から、奏夜は剣斗の魂と共に戦っているようなものだった。

 

そのため、軽い言葉で小津の名を貶したタクトが許せなかったのだ。

 

「魔戒騎士になったばかりのガキが偉そうに……!!」

 

そんな奏夜の毅然とした態度や言葉がタクトは気に入らなかったのか、苛立ちを込めた目で奏夜を睨みつける。

 

「…あんたのそのくだらないプライドが陰我となってホラーを引き寄せたんだ。いくら元魔戒騎士といえど、相手がホラーならば容赦はしない!」

 

奏夜は魔戒剣を構え、そのまま鎧を召還しようと考えた。

 

「そんな貴様の傲慢に満ちた陰我。俺が──」

 

俺が断ち切る。

 

そう断言しようとしたその時だった。

 

赤いコートを着た青年が、奏夜とタクトの間に入るかのように現れたのだ。

 

「…!?と、統夜さん…!?」

 

その青年こそ、タクトが恨みを持っていた月影統夜本人であった。

 

「…奏夜、悪いな。今のお前ならこんな奴は敵じゃないとは思うが、奴の狙いは俺だからな。俺がケリをつけようと思ったんだよ」

 

統夜がここへ現れたのは、元老院から脱走したタクトと直接対峙するためだったのだが…。

 

「統夜さんは桜ヶ丘の方で奴を迎え撃つのかと思ってましたよ」

 

「向こうの管轄は戒人と幸人に託してきた。そして、ここへ戻ってきた矢先にイルバがホラーの気配を探知してくれたんだよ」

 

「そうだったんですね…」

 

統夜がここへ現れた経緯を知り、奏夜はそれに納得していた。

 

そして……。

 

「まさか、貴様から現れてくれるとはな……。月影統夜ぁ!!」

 

タクトは忌むべき敵である統夜に対して怨嗟の込められた言葉と共に統夜を睨みつける。

 

「あんたが脱獄したことは聞いている。まさか、俺への逆恨みが度を越してホラーに憑依されるなんて思いもしなかったけどな」

 

『まったくだぜ。奴のプライドの高さは知っていたが、統夜に負けたことに対して逆恨みとは、つくづく救えない奴だぜ』

 

統夜はタクトがホラーに憑依されていることに驚いており、イルバはそんなタクトに呆れていた。

 

「黙れ!!貴様に何がわかるんだ!!」

 

そんなイルバの言葉に激昂したタクトはハルバードを振り下ろして統夜を叩き潰そうとしたが、統夜は魔戒剣1本でタクトの攻撃を受け止める。

 

「なっ…!?」

 

「そんな力任せの攻撃、防げるに決まってるだろ?むしろ、サバックで戦った時の方が、あんたの刃は冴えていたぜ」

 

統夜は魔戒剣を振るってタクトを弾き飛ばすと、すかさず何度も魔戒剣による斬撃を繰り出し、手にしていたハルバードをバラバラに切り裂くのであった。

 

「!?また俺の武器をバラバラにしやがっただと……!?」

 

サバックの時同様に自分の武器を破壊され、タクトは驚きを隠せなかった。

 

「…奏夜。奴を倒す気満々なところ悪いが、こいつは俺に譲ってくれないか?こいつがホラーになったのは俺への恨み故ならば、俺がその陰我を断ち切りたいんだよ」

 

統夜は魔戒剣を構えながら、タクト討伐を自分に任せて欲しいと宣言。

 

サバックの試合も見学しており、その背景を良く知っていた奏夜は…。

 

「もちろんです。統夜さんが今来なかったら、俺が決着を付けようと思いましたが、統夜さんがそう言うのならば、あなたに託します」

 

奏夜としては断る理由などないため、魔戒剣を鞘に納めると、後ろに下がり、タクト討伐を統夜へ委ねることにした。

 

「ありがとな、奏夜。お礼に今度何か奢るぜ」

 

統夜は笑みを浮かべながら奏夜へ感謝の言葉を送ると、再びタクトの方を見る。

 

「…お前の傲慢に満ちたその陰我……。俺が断ち切る!!」

 

統夜は力強くこう宣言すると、魔戒剣を上空へ高く突き上げると、そのまま円を描く。

 

その部分のみ空間が変化すると、そこから光が放たれ、統夜はその光に包まれる。

 

その変化した空間は真魔界へと繋がっており、そこから白銀の鎧が出現。

 

その鎧は統夜の身体へ装着された。

 

こうして統夜は、白銀騎士奏狼(ソロ)の鎧を身にまとったのであった。

 

「よ、鎧を召還したって関係ねぇ!!俺にはこの力があるんだ!」

 

タクトは両手を前方に突きつけると、そこから光の玉のようなものを統夜目がけて放った。

 

本来魔導筆で放っていた術を直接繰り出しているのだ。

 

統夜はゆっくりとタクトへ向かっていきながら、タクトの攻撃全てを受ける。

 

その攻撃で統夜の動きは止まることはないだけではなく、白銀の鎧に傷ひとつ付いていないのだ。

 

「なっ…!?効いてないだと……!?」

 

タクトは自分の攻撃が統夜に効いていないことに驚きを隠せなかった。

 

統夜はタクトへの接近に成功すると、魔戒剣から変化した皇輝剣を一閃。

 

タクトの両手を瞬時に切り落とした。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

両手を切り落とされた痛みで、タクトは断末魔をあげる。

 

「…これで終わりだ!!」

 

しかし、ここで統夜の攻撃は終わらない。

 

皇輝剣を再び横に振るうと、今度はタクトの身体を上下に真っ二つに切り裂いた。

 

「があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

さらに身体を切り裂かれたタクトは再び断末魔をあげる。

 

「…こ、こいつここまで強く……。俺じゃ……勝てねえ……」

 

タクトは最期になってようやく統夜との実力の差を痛感したようであり、ミノタウロスに憑依されたタクトの身体は、その陰我と共に消滅したのであった。

 

統夜はタクトが消滅したのを確認すると、鎧の召還を解除し、鎧はそのまま真魔界へと還っていった。

 

その後統夜は、元に戻った魔戒剣を青の鞘に納めて、魔戒剣を魔法衣の裏地の中にしまう。

 

「……あんたも、そんなプライドを捨てて、人を守るために切磋琢磨出来ていれば、俺や奏夜だって尊敬出来る魔戒騎士になっただろうにな…」

 

ホラーに憑依されてしまったとはいえ、魔戒騎士だったタクトに対して統夜は哀悼の意を表する。

 

「そうですね……」

 

そんな統夜の言葉に奏夜も賛同しており、同様に哀悼の意を表していた。

 

「……さて、目的も達成されたことだし、一緒に番犬所へ報告しに行こうぜ。その後に俺は元老院に報告するからさ」

 

「はい!わかりました!」

 

こうして、指令を終えた奏夜と統夜は、共に翡翠の番犬所へ向かい、ミノタウロスに憑依されたタクトを討伐した旨を報告するのであった。

 

奏夜は尊師やジンガに引き続き元魔戒騎士であるタクトの討伐に関わることとなってしまい、複雑な心境を抱えることとなってしまった。

 

しかし、奏夜は歩みを止めない。

 

誰であろうとホラーは斬る。

 

それこそが人間を守るということに繋がるのだから。

 

それだけではない。

 

もうすぐラブライブの最終予選も始まろうとしている。

 

μ'sの夢を支えながら、その大きな夢を守るために戦う。

 

これもまた、奏夜の戦う動力源となっているのだから……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

──次回予告──

 

『穂乃果たちの人気はだいぶ出てきてるみたいで何よりだな。それに、生徒会の仕事も頑張ってるみたいだしな。次回、「人気」。大変だが、それも乗り越えていかなければな』

 




今回登場したのは、前作の「白銀の刃」にて、統夜とサバックで試合をし、反則したにも関わらず統夜に敗れたタクトでした。

実は、タクトが統夜へ逆恨みしてホラーに憑依される話は考えていたのですが、ジンガやニーズヘッグとの戦いが終わるまでは暖めておこうと思っていました。

今回こうして暖めていた話を投稿出来たのです。

ただ、タクトをそのまま奏夜に倒させ、成長した奏夜の実力を見せつけようと考えましたが、タクトが恨んでいるのは統夜なので、統夜に決着を付けさせました。

新章はラブライブ本編の話がメインとなりますが、奏夜の魔戒騎士としての活躍回もどこかに入れたいと考えております。

ニーズヘッグ撃破以来、奏夜の活躍の場がない気がするので…。

そして、今回の話以降は統夜の出番は少なくなるかな?と思っています。

このままだと主人公の座を奪いそうな勢いなので(滝汗)

この作品の主人公はあくまでも奏夜ですからね。

そして、次回は7話の話を入れつつ、今のμ'sがどれだけ人気なのかがわかる回にする予定です。

展開はオリジナルが入るのかな?とは思いますが、いったいどうなるのか?

それでは、次回をお楽しみに!!

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