はいふりっ! 今日の晴風クッキング!   作:プレリュード

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第8話 艦隊作戦参謀は新顔さん!

 こんにちは、伊良子美甘です!

 

 

 今日の夕食はカレー! ではなく指向を変えてハッシュドビーフです。金曜日じゃないっていう理由もありますし、それにハッシュドビーフのルゥは冷凍して取っておけるから便利なんですよ。

 

 

「へえー、これが晴風の厨房なんだ」

 

 

「ふぇっ? ……ええ!?」

 

 

「こんにちは。あなたが伊良子美甘ちゃん?」

 

 

「そ、そうですけど……って何で知名さんがいるんですか!」

 

 

「ほら、私は晴風の艦隊作戦参謀だから」

 

 

「そ、そうですけど……」

 

 

「今は私の出張らなくちゃいけない状況じゃないからね。こうやってぶらっとできるの」

 

 

 なる、ほど? なんだか納得できるようでできないような感じですけど実際、晴風は逼迫した状況に置かれてないので大丈夫なんでしょう。

 

 

「そうそう。私のことは『もか』って呼んで」

 

 

「で、でも知名さんは私の上司にあたりますし……」

 

 

「いいから」

 

 

「じゃあ……もかさん?」

 

 

「うーん……まあ、いいか」

 

 

 ちょっと納得しきれていない様子ですが、やっぱり艦長みたいなもかちゃん呼びはちょっとまだ私には難しそうです。

 

 

「ねえ、美甘ちゃん。今日の夕食がハヤシライスって本当?」

 

 

「うーん、ちょっと違いますね。今日の晩ご飯はハッシュドビーフです」

 

 

「え、そうなんだ……」

 

 

「あ、でもほとんど味はおんなじですよ。基本的に違いはほとんどありませんから」

 

 

 せいぜい違いがあるといってもベースにトマトを使うかどうかくらいです。使えばハヤシ。そうじゃないとハッシュドビーフ。でも諸説あるみたいでこれが絶対っていうわけじゃないんですけどね。

 

 

「味はほとんどおんなじなんだ。じゃあ……」

 

 

「ハヤシライスって言ってしまってもいいと思いますよ」

 

 

「ほんと?」

 

 

 あ、すっごくもかさんの目がキラキラしてます。これはきっとあのパターンですね。

 

 

「もしかしてハヤシライス、もかさんの好物でしたか?」

 

 

「うん、そうなんだ。昔から大好きで……金曜日のカレーが金曜日のハヤシにならないかなあって思ってたくらい」

 

 

「あはは。でもおいしいですよね、ハヤシライス」

 

 

 もかさんが喜んでくれるなら作り甲斐があるものです。さあ、そろそろ作らないと間に合わなくなってしまいます。

 

 

「ごめんなさい、そろそろ作らないと……」

 

 

「あ、それなら私もお手伝いさせてくれる?」

 

 

「え?」

 

 

「ほら、私の好物だからひとりで作れるようになりたいの。だから教えてくれない?」

 

 

「そういうことなら大丈夫ですよ! じゃあ作っていきましょう!」

 

 

「はーいっ」

 

 

 そういうことなら急遽、予定変更です。あんまり使う具材は変わらないのでそんなに手間でもないですし、ハヤシライスにしちゃいましょう!

 

 

 

 

 

 

【デミグラスソース缶で本格ハッシュドビーフ】

材料(3人分)

・牛薄切り肉 200g

・しめじ 1パック

・マッシュルーム 1パック

・たまねぎ 1個

・にんじん 半分

・デミグラス缶 1缶(290g)

・赤ワイン 50cc

・トマトジュース 50cc

・水 50cc

・塩 少々

・胡椒 少々

・オリーブオイル 少々

・ローリエ 1枚

 

 

 

 

「材料はこれくらいかな」

 

 

「赤ワインなんて持ち込んで大丈夫なの?」

 

 

「り、料理酒! 料理酒ですから!」

 

 

「じゃあそういうことにしてあげるね」

 

 

 飲んだりなんかしませんよ! 私が赤ワインを晴風に持ち込んだのは本当にお料理のためだけですから。でも副長に気づかれるとお小言をもらっちゃうかもしれないからナイショですけど。

 

 

「じゃあ始めましょう! まずは玉ねぎは繊維の断つ方向に2cm間隔で、牛肉は大きすぎるものは一口サイズに、マッシュルームは5mm間隔の薄切りで切って、しめじは石づきを落としてからばらけさせてください」

 

 

「こんな感じ?」

 

 

「そうです、そうです! もかさん、本当にお料理するの初めてですか?」

 

 

「昔にすこしだけ、かな? 武蔵では給養員の娘たちに任せちゃってたし」

 

 

 それでも上手なのは変わりません。猫の手もちゃんとできてますし、包丁を握る手にも危うげな様子はありません。

 

 

「次はどうするの?」

 

 

「次はオリーブオイルを入れて鍋を温めたら、玉ねぎを入れて中火で炒めましょう」

 

 

「飴色まで炒めるってよく書いてあるけど、それくらい炒めればいいの?」

 

 

「あ、今回はそこまで炒めなくても大丈夫です。これは透明になるくらいまで炒めてください」

 

 

「でも透明になるまで炒めるのはホワイトソースって聞いたことあるけど……」

 

 

「そうですけど、これから牛肉を炒めていく時に火が入っていくから大丈夫なんですよ」

 

 

 だから最終的に玉ねぎは飴色に変わってくれます。どさっと牛肉を入れて全体的に火が入ったら、にんじんをいれましょう。

 

 

「やっぱり根菜は早めにいれるんだ」

 

 

「そうですね。硬いから火が入りにくいんです」

 

 

 順番は玉ねぎはじっくりと炒めると、甘みが出るので一番最初に。それからはお肉、根菜、きのこ、葉っぱものの順番で入れていくのが基本です。

 

 

 というわけでしめじとマッシュルームを投入していきましょう!

 

 

「全部いれけどこれでいいの?」

 

 

「えーっと……そしたら赤ワインとローリエを加えます。少し煮立ててアルコールを飛ばしちゃいましょう」

 

 

 お酒は入れてても、ちゃんとアルコールを飛ばしているから問題ありませんよ! 絶対に飲酒なんてしませんからね! お酒は20歳になってから、です!

 

 

「どれくらい煮立てるの?」

 

 

「だいたい1分くらいですね。煮立てたらトマトジュース、水を入れてからデミグラス缶を加えます。火を弱火に調整したら3分ほど煮込んで水分を飛ばします」

 

 

 そしたら最後に塩と胡椒で味を調えて一煮立ち。あつあつのご飯を浅くて広めの皿によそってルゥをかけたら完成です!

 

 

「わぁ……」

 

 

「せっかくだからお先にいただいちゃいましょう!」

 

 

「いいのかな……?」

 

 

「みんなのぶんもちゃんとありますから」

 

 

 ことん、ともかさんの前に皿を置きます。デミグラスのコクがある香りがふわりと漂い、鼻をくすぐります。

 

 

「じゃあ……いただきます」

 

 

「いただきますっ!」

 

 

 トマトベースで作るので、角が立たないまろやかな仕上がりに。きのこをたっぷり、そして玉ねぎの甘みが滲み出て、赤ワインを入れることによってコクのあるルゥが白米と絡み合い、舌の上でとろけていきます。

 

 

 このルゥはいろいろ使えるんですよ。オムレツにソースとしてかけるだけで本格的な洋食っぽくなりますし、ハンバーグにかけてもよし、少し手を加えてパスタのソースにしてもよし、です。

 

 

 もかさんがお米とルゥを一緒に掬ってスプーンを口に運びます。ぱくっと口に入れて咀嚼。もぐもぐと口を動かしていると、だんだんもかさんの頬が緩んでいきます。

 

 

「うん、おいしい!」

 

 

「本当ですか! それならよかったです!」

 

 

 晴風のみんなと違ってもかさんはまだ私のご飯をあんまり食べたことがないから、お口に合うかどうかちょっぴり不安だったんです。でも気に入ってくれたなら安心ですね。

 

 

「もかちゃーん、もかちゃーん」

 

 

「あ、ミケちゃん?」

 

 

「ここにいたんだ。あ、ハヤシライス!」

 

 

 ミケ艦長がたたた、と食堂にやってきました。ハヤシライスを見つけた瞬間、艦長の目がキラキラと輝き始めます。

 

 

「どうしたの、ミケちゃん?」

 

 

「そろそろ夕ご飯だから一緒に食べようと思って探してたんだけど……」

 

 

「じゃあ艦長も早めの夕ご飯にしちゃいましょう!」

 

 

「うーん……シロちゃんが……まあ、いっか! みかんちゃん、私もハヤシライスちょうだい!」

 

 

「わかりました! すぐ用意しちゃいますね!」

 

 

 ささっとお皿にハヤシライスを盛ってミケ艦長の目の前に差し出します。2人が楽しそうに話しながらハヤシライスを食べる姿はやっぱり昔からの仲良しさんなんだなあって思いました。

 




ツイッター上で「もかちゃんとハヤシライスが見たい!」という声を頂いたので書いてみました!本当にネタがない限り更新しない気まぐれ作品ですみません。

ごめんね、りんちゃん!航海科でまだ書いてなくて!いづれはちゃんと書くから許して!

ちなみに後日、ハヤシライスのルゥをかけたオムライスが夕食になったのでこちらにも残しておきます。


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