王子の弟という頭の痛いお仕事   作:ドラオ

2 / 6
アレンの一人称が変わっています。ご注意下さい。


本日は晴天なり

俺の名はアレン。今はラインハットで王子としてのんびり平和に、もう遊んで暮らそうかなしている最中だ。爽やかな風が通り抜け、桜の花びらを散らしていく。俺がこうして優雅に紅茶を飲んでいるというのに、目の前の兄、ヘンリーがうるさい。

 

「おいアレン、なにやってんだ!その水、飲んじまったら今日の分はもうなくなるぞ」

 

え。

 

「うわぁぁーー!!」

 

兄の言葉に俺は青ざめ、叫びながら頭を抱えた。

やっちまった……

これからキツい労働が待っているというのに、水が無かったら脱水症状で死んでしまう!今世紀最大のミスだ……

 

「ったく……しょうがねえな。俺のを分けてやるよ」

 

「どうせまた、現実逃避でもしていたんだろ?これで何回目なんだよ……」

 

呆れながらも俺に水を分けてくれる兄さんとアベル。ごめん、ありがとう……

 

 

6歳の時にここへ連れ去られて以来、肉体労働を強いられる毎日だ。ここはセントベレス山という標高のとても高い所で、光の教団が神殿を作ろうとしている。まあ、作るのは俺達奴隷の仕事なわけだが、いつこの仕事が終わるのか、神殿完成がいつなのかはわからない。

 

 

ここに至るまで何があったのか経緯を話そう。

 

 

 

 

「よし、逃げよう!」

 

10年前に誘拐された時、俺達は鉄格子を苦労の末折り曲げることに成功し、遺跡から脱出をしようと勢い良く飛び出したのだが……

 

「オレは……もどるつもりはない」

 

「え?」

 

「お前はどうか知らないけど、オレはいないほうがいいんだ。王位を継ぐのはデールでいい」

 

俺はその言葉を聞いた時、手が勝手に動いていた。

 

パァン!

 

「兄ちゃんは、お父さんの気持ちを考えたことがあるのか!……もう知らない! え、親父にも殴られたことはない? あっそ!」

 

「え…」

 

俺はそう言うと走り出し、この遺跡から逃げようとした。

 

 

しかし、それを察知したかの様に魔物が現れた。深緑のローブを纏った老婆、魔法使いが3体、こちらへ敵意剥き出しで近づいてきた。俺は冷や汗を拭い、懐からナイフを取り出して構える。焦るときこそ冷静さを失わない、武器は常備しておく、どちらも指輪から教わったことだ。

 

「くっ……いくぞっ!」

 

1体ずつ焦らず……そう頭で唱えながら必死にナイフを振るった。幸い、やつらは杖でしか攻撃をしてこなかったため、1体目をすぐに倒すことが出来た。

 

俺の心に余裕ができたため、まだ牢屋の中で立ち竦んでいる兄に注意を払うことができた。

 

「兄ちゃん! 今の内に逃げて!」

 

だがこのとき、俺は片方の魔法使いに背後を取られたことに気づいていなかった。

 

「お前、後ろ!」

 

振り向くと、そいつの杖からメラが今にも放たれようとしていた。

 

(当たる……! 焼き鳥にされちゃう!)

 

俺は咄嗟に目を閉じ、焼き豚にされることを覚悟した。

 

ザシュ

 

突如、斬撃の音が魔法使いがいるはずの場所から聞こえてきた。目を開けると、アベルが魔法使いに止めを刺していた。

 

「アレン、大丈夫?」

 

その顔を見た瞬間、今までの緊張の糸が切れて一気に疲れが押し寄せてきた。

 

「あっ」

 

倒れかかった俺をアベルは支えてくれた。その間に、残りの魔法使いをパパスさんとプックルが倒してしまった。

 

「ありがとう、ごめん。もう大丈夫だから」

 

「さあ、追っ手が来ない内にここを出よう」

 

さあ、今度はぼくが焼く番だ!覚悟してろよ魔物ども!とかこの時考えてたと思う。

俺達はパパスさんの後に続き、出口へ向かった。

 

 

出口が見えてきた時、

 

「ほっほっほっ。ここから逃げだそうとはいけない子供たt……子供たちですね。この私がおしおきをしてあげましょう。さあ、いらっしゃい!」

 

「そうはさせるか!」

 

突然現れた気色悪い肌色で紫ローブ姿の野郎が俺達に襲いかかってきた。威圧感が凄まじく、立っているのがやっとだった。パパスさんは奴の攻撃を避けつつ、器用に攻撃していった。

 

(パパスさん、やっぱり強い……でもあいつ、いつまでも不気味な笑みを浮かべて余裕そうだ)

 

「小賢しいですね。ここはひとつ……いでよ、ジャミ!ゴンズ!」

 

その掛け声とともに醜き馬面野郎と、頑丈そうな鎧と盾を装備した図体のでかい獣人が姿を現した。

 

「さあ、そこの生意気な男をやっつけておしまいなさい」

 

一番先に動いたのは、アベルとプックルだった。アベルは剣、プックルは爪でゴンズに攻撃する。俺も勇気を振り絞り、それに続いてナイフを振って応戦した。魔物を焼いてやろうと考えていた少年は何処へやら。切れ味の良くない刃物を振り回していた。

 

しかし、ダメージが入っているようには見えず、奴の重い一撃を食らって俺とアベルは痛手を追ってしまった。プックルも馬面野郎に首を掴まれ、物凄い勢いで投げ飛ばされ、そのまま伸びてしまった。馬刺しにしてやりたい。

 

「アベルっ!王子っ!」

 

パパスさんは俺達がやられそうになっているのを見て、ジャミとゴンズを突き飛ばし、ホイミをかけてくれた。だが、その隙に起き上がったジャミの蹴りを食らってしまった。

 

「ぐぬぬ……この子たちにはこれ以上ちかづかせん!」

 

パパスさんはゆっくりと立ち上がると、仁王立ちの構えをとった。

 

ジャミが俺に攻撃しようとした、が、パパスさんはそれを弾き、兄さんに攻撃しようとしていたゴンズを斬った。

 

「見事な戦いぶりですね。でも、こうするとどうでしょう……」

 

ところが奴は……アベルをいつの間にか抱えていて、その喉元に鎌を当てたんだ!

 

息子を人質に取られたパパスさんはジッと我慢することしかせず、ジャミたちの攻撃をただ受けていた。

 

 

 

奴らの容赦無い攻撃を受け続け、やがて満身創痍となったパパスさんは……最後の力を振り絞って言葉を残してくれた。

 

「アベル! 気がついているか!? 実は、お前の母さんはまだ生きているはず……わしに代わって母さんを探してくれ!」

 

……

 

その後は、あまり言いたくない。

 

「ゲマ様。このキラーパンサーの子はどういたしましょう」

 

「放っておいてもやがて野生を取り戻すでしょう。捨てておきなさい」

 

ゲマ……その名前、絶対に忘れないぞ。そう誓った。

 

そして俺達はここに連れてこられ、奴隷としてこき使われている。その時からプックルとははぐれてしまい、指輪も失くしてしまった。

 

ピシャ!

 

突然、鞭の音が聞こえた。鞭で人を叩いたときの、あの嫌な音だ。

 

「オレの足の上に石を落とすとはふてえ女だ! その根性叩き直してやる!」

 

「ど……どうかおゆるしください……」

 

「いーや、だめだ。たしかおめえは奴隷になったばかりだったなあ。この際だから自分が奴隷だってことを身にしみてわからせてやる!」

 

鞭を持った男に、女性が叩かれている!

慌てて俺は助けに行こうとしたが…

 

「もう我慢できないぞ!」

 

真っ先に飛び出していたのは、兄だった。その後からアベルも戦いに加わる。

 

俺も助けに……あっ、そうだ!いいこと思いついたぞ!

 

俺は鞭野郎に気づかれないよう、後ろへ回り込んだ。そして…

 

「えいっ! やあっ!」

 

首に手刀をかましてやった。

 

 

ムチおとこたちを やっつけた!

アレンは 115ポイントの けいけんちを かくとく!

 

 

「え……それはさすがに……」

 

「正々堂々戦えよ……」

 

アベルたちに冷たい目で見られた。

 

そして騒ぎを聞きつけ、兵士がやって来た。

 

「なんだっ! この騒ぎは!?」

 

鞭野郎はふらつきながらも起き上がって答える。

 

「はっ! この3人が突然歯向かってきて……」

 

「この女は?」

 

「あっ、はい。この奴隷女も反抗的だったので……」

 

「……まあよい。おい、この女の手当てをしてやれ! それから、この3人は牢屋にぶち込んでおけっ!」

 

別の兵士に牢屋へ連れていかれた。

 

 

_____________

 

 

 

そして俺だけ違う牢なんだな……

向かいには兄さんとアベルがいるけれど。

 

「さて、どうしようか」

 

アベルは胡座を構きながら考えているが、兄さんは事態を大して重く受け取っていないようだ。

 

「どうしようもないな。折角だから、のんびりすることにしようぜ」

 

「まあ、鞭で打たれるよりはマシだな」

 

「でもさ、アレン。これじゃここから抜け出す方法がわからないよ」

 

「やっぱり、アベルはパパスさんの最期の言葉を信じて母親を探したいんだな」

 

「ああ。だから僕は早く外へ抜け出して……」

 

「しっ!誰か来たみたいだぞ!」

 

兵士が歩いてきて、兄さんたちの牢屋の鍵を開けた。

 

「私の名はヨシュアだ。先程は妹のマリアを助けてくれたそうで、本当に感謝している」

 

ヨシュアさんの後ろには先程の女の子が立っていた。

 

「ありがとうごさいました……」

 

「いえ、当たり前のことをしただけですよ」

 

「大したことじゃねえよ」

 

「前々から思っていたのだが、お前たちはどうも他の奴隷と違う、生きた目をしている!」

 

いやでも兄さんは死んでないけど生きてもないっしょ

 

「実はまだ噂だが、この神殿が完成すれば秘密を守るため奴隷達を皆殺しにするかも知れないのだ」

 

「えっ!うそだろ!?」

 

「ちょ、兄さん。声でかい」

 

「そう、だからお願いだ! 妹のマリアを連れて逃げてくれ! この水牢は奴隷の死体を流すためのものだが、樽に入っていればたぶん生きたまま出られるだろう。さあ、誰か来ない内に早く樽の中へ!」

 

たぶんて…

 

「あの…」

 

「どうした?」

 

「樽に入るのはいいんですが、俺はいつ牢屋から出してもらえるんですか?」

 

「っ! すまん、お前もだったのか……」

 

すっかり忘れられてました。

 

 

「ここにお前たちの荷物を用意した。一緒に入れておくぞ。」

 

兄さん、アベル、そしてマリアさんが樽に入った。

よし、俺も入るぞ…

 

「む……入りきらないな。すまないが、お前は別の樽に入ってくれ」

 

また一人か……

 

 

俺達はこうして樽に乗って新天地をめざすこととなった。

 

俺の初船旅はそれは楽しいものになりそうだ。

 

うっ、酔ってきた……




セリフカットという名のメラゾーマ
パパス「ぬわーーーーーっ」


キャラの区別をするために、ヘンリーの口調を若干口悪くしてます。



誤字訂正等ありましたら、報告していただけるとありがたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告