戦国BASARAの佐助を、AOGの至高の一人として突っ込んでみた!   作:水城大地

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終了数時間前~佐助の独白~

 

 

俺様の名は、上月幸吉(かみつきゆきよし)。

前世で呼ばれていた名は、猿飛佐助。

所謂、前世の記憶持ちって奴だ。

しかも、俺様は単なる前世の記憶持ちなんてレベルじゃない。

なんでかって?

それは、実に簡単な話さ。

なんて言っても、俺様は前世で持っていた能力を使えるからね。

それが、どんな能力かって言うと……前世では【婆沙羅】って呼ばれた、炎、風、雷、氷、光、闇の六種類の力を操るもの。

その中でも特に特殊な【闇婆沙羅】が俺様って訳さ。

さて、そんな俺様が現在暮らしているのは、文字通り終焉間近でぎりぎり生き延びてるような、そんな腐った世界だ。

水も空気も大地も腐っていて、どう考えてもまともじゃあない。

この世界に、もし片倉の旦那が転生していたら、絶対に発狂していると思うね、俺様。

あの、畑と野菜を愛するお人には、ここはとても暮らせる世界じゃありゃしないって。

俺様も、あのお人が作る野菜の味を思い出したら、凄くこっちの世界の食事がむなしくなっちまった位だからね。

 

そんな世界に転生して、早二十五年。

 

この世界じゃ、前世の俺様達が生きていた頃より少しまし程度しか物を学ぶ事が出来ない。

理由は、世界を支配する企業群のお偉方、所謂富裕層が絶対的な支配者として君臨し、それ以外の者が簡単に成り上がれないような仕組みを維持するためだ。

下層の人間が知恵を付けて、下手に成り上がられたら自分たちが困るからね。

だから、今の世界は完全に生まれで立場が決まっちまう。

え、俺様?

もちろん、最下層の生まれに決まってるでしょ。

前世で、忍びで猿だった俺様が、人間様に生まれたからって最下層から抜け出せる訳がないでしょっての。

ただ、この身体は前世から受け継いでいる【闇婆沙羅】のお陰なのか、それとも前世が忍だったお陰なのか、普通よりちょっとばかりすばしっこくて身体能力が高いんだよ。

それもあって、小学校を何とか卒業した後に勤めている先は、警備会社で特に対テロチームなんて危険なお仕事さ。

この世の中じゃ、富裕層に不満を抱いているモンも多いからね。

俺様は、色々な意味で規格外扱いされてるから、他の連中よりも結構実入りが良いんだよね、このお仕事。

まぁ、俺様のお仕事に関してはこれ位にしておくとして、さ。

今、俺様がこんな面倒なお仕事をしているにも拘らず、ずっと続けている事が一つだけあるんだよ。

そいつはね、VRMMO【ユグドラシル】って言うゲームさ。

この世界に転生して、俺様なりに成長に合わせてこの世界の仕組みって奴を理解していった後に嵌ったのが、このゲームでなんだけど……仕事場でも見付けられなかった、俺様が新たに主って呼んでいいお人に会ったのもこのゲームの中なんだから、当然の話かもしれないね。

 

さて……俺様が、ゲームの中とは言え己の主と仰いでいるお人の名は、【アインズ・ウール・ゴウン】のギルドマスター、モモンガの大将だよ。

 

あのお人に、俺様が初めて会ったのは……【ユグドラシル】が始まってから二年目の冬、俺様が初めてゲームを始めてすぐの事だったかな。

何せ、興味があっても警備関係の仕事なんてもんをしていたら、中々お休みなんてものを貰える機会がないものさ。

特に、ゲームが配信スタートした頃はまだ勤め始めて一年過ぎたばかりの新人だからね。

お休みなんてもんは、殆どなかったものさ。

それでも、ゲームが始まって二年目の冬に、漸くそれなりにシフトを汲んで貰えるような立場になったから、速攻で初めてログインしてみたんだよ、俺様。

そこで、つい懐かしいもんを見付けちまった。

それこそ、俺様が現在進行形で使っているアバター、【天狐】の原型と言うべき【狐族】だった。

いやー、つい、あの種族を見付けた瞬間、武田の大将や真田の旦那に巻き込まれた【武田道場】を思い出しちまってさ。

気付いたら、それで【北斗】って名前のアバターを組んじまってたんだから、もう仕方がないって諦めた。

 

俺様の中で、前世の記憶って奴がいまだに根強いんだって事をね。

 

そう開き直ったら、あっさりとそのアバターも受け入れられたし、これ以外のアバターを組む気にはなれなくなってたんだよ。

そんな俺様が、あのゲームでは人間種以外は迫害されているってことを知ったのは、ゲームをスタートして二日目の事だった。

まだまだ序盤ってレベルも良い所で、のんびりじっくりと自分のキャラを育てようって考えていた俺様は、無理に背伸びをしたりせずに初心者向けのフィールドで戦闘を繰り返していた所だったんだよ。

 

そこに、俺様のような異形種を選択した初心者を専門に狙う、PKが現れたのは。

 

まぁ、初心者を狙うPKって輩は、それなりに高レベルの連中が割と多くてね。

普通なら、初めて二日目の初心者はあっさりとPKされちまうもんなんだけど……ほら、このゲームの場合は、戦士系を選択すると格闘技とかの肉体能力も反映されるからさ。

俺様、ほら……仕事柄、ぶっちゃけて言うと警察や軍人よりもある意味、対人戦闘は強いでしょ?

昔取った杵柄ってのもあるし、現役でもあるからさ。

刀とか、色々と使いこなせている訳だし。

 

ははははは……本来、レベル差三十以上あったのに、一対三の戦闘で勝っちゃったんだよね、てへぺろ!

 

その結果、もう、そこから先はPK達に付け狙われる日々が続いちゃって……そろそろ限界って時だった。

彼らが……当時の【ナインズ・オウン・ゴール】の面々が、俺様の事を助けてくれたのは。

そん時の俺様は、色々と精神的に参っていたから、本当に救いの神のようなもんだったよ、うん。

そんな事もあって、俺様は彼らとの縁を繋ぐ事が出来たのさ。

だけど、それから暫くの間、俺様は彼らの組織に加わる事はなかったんだよね。

その理由?

あぁ、実はとっても簡単な話で、お仕事が忙しくなり過ぎちまったせいでまともにログイン出来なくなっちまったからさ。

しかも、基本的に社会人の彼らがログインするのは昼間だろう?

俺様は仕事柄休みが不定期で、寝ずの番とかもあったりする会社だったから、休みも日中だけとかって事も多くて、彼らと顔を合わせる時間が無かったんだよ。

ホント、その頃は割と寂しい思いもしたもんさ。

だけど……モモンガの大将は、俺様の事を忘れたりしてなかった。

それまでクランだった【ナインズ・オウン・ゴール】が、ギルド【アインズ・ウール・ゴウン】になった直後、俺様に改めてギルドに参加しないかって誘ってくれたんだ。

 

もう、そのメールを受け取った時は、本気で俺様泣いちまったね。

 

それで、俺様は改めてギルメンの顔合わせをした後、モモンガの大将とたっちの旦那、ウルベルトの旦那と茶釜のお嬢の推挙を受けて、正式にギルド【アインズ・ウール・ゴウン】に所属したって訳さ。

ギルドの面々は、みんな愉快なお人ばかりだったよ。

たっちの旦那とウルベルトの旦那は、いっつも喧嘩ばかりしているってのに、一度戦闘になれば息があったコンビネーションを見せるし、茶釜のお嬢とペロ(ペロロンチーノ)の旦那もおんなじ。

まぁ、茶釜のお嬢とペロの旦那は姉弟だから、息が合うのも判るけどさ。

あー……俺様と、いっつも忍者談義で揉める相手が、実は弐式の旦那だ。

このお人の理想は、隠密性に優れた忍だってのに、俺様は【忍ばない忍】って奴を前世でも現世でも体現しちまってるからね。

俺様の在り方を、笑って楽しんでいる他の旦那方や俺様自身に、時々食って掛かってきては、建御雷の旦那に宥められてたっけ。

 

そんな楽しい日々も、次第に少なくなったのはいつの頃だっただろうか?

 

もちろん、俺様とモモンガの大将以外のお人たちには、色んな事情があるって事位判っていたさ。

むしろ、モモンガの大将や俺様の様に廃れかけた【ユグドラシル】に残ってギルドを守ろうって言うのが、珍しい扱いだって事位理解している。

それでも……最後まで、ずっと頑張っているモモンガの大将を見ていたら、その中に【真田の大将】の姿が浮かんじまって……もう、あのお人を放っておくなんて選択肢は存在していなかったね。

 

誰も残らないなら、俺様がモモンガの大将を支えて最後まで駆け抜けてやるって、そう決めたのもこの時さ。

 

そこから、【ユグドラシル】が終了するまでの間、俺様はモモンガの大将の為に色々と出来る事を考えた。

先ずは、ギルドを維持するための維持費を稼ぎ出す事。

これに関しては、俺様自身も稼ぎに行ったし、課金も遠慮なく選択したもんさ。

もう、リアル世界での食生活事情に関して、諦めに似た感覚があったから、贅沢するなんて気は起きなかったし、その分課金に回しても構わないってあっさりと思えたんだよね。

もちろん、それを直接言うとモモンガの大将は気にするから、もっぱら課金してゲーム硬貨を溜めちゃ、換金アイテムを買い集めて、それをパンドラズ・アクターに換金させたもんさ。

俺様が換金するより、音改さんの姿になったパンドラズ・アクターに換金させた方が、効率が良かったからね。

もちろん、それだけで義理を果たしたとは思ってないよ。

俺様、モモンガの大将を一人きりにするつもりもなかったからね。

出来るだけ、シフト時間をモモンガの大将がログインする時間帯以外に変更してやった。

この頃には、俺様は警備会社の中でトップの実力者で、警備班を弐つほど率いる立場だったから、ちょっとばかり無理がきいたんだよね、うん。

その分、時間帯によっては深夜とか早朝とかも平気で勤務してたから、部下たちからは苦笑されても文句を言われたりしなかったよ。

時間も、かなり延長していた事も多かったからだろうね。

そんな風に、俺様がのめり込んだゲームも、後数時間で終了する。

ホント、終わりが来るっていうのは、どんなことでも寂しいもんさね。

 

まぁ……モモンガの大将とは、これで縁を切るつもりはないって随分前から言ってたこともあって、最近じゃリアルでもお互いの休みが合えば顔を合わせたりする間柄だ。

 

今日の事だって、「最終日だから絶対にログインするんで、絶対に待っていてくれよ、モモンガの大将」って昨日の夜に言ったら、「北斗さんは、約束を破る人じゃありませんから、安心して待ってますよ(⌒∇⌒)」って返されて、本気で【モモンガの大将、マジ天使!】って思ったっけ。

だから、絶対に今日はのんびりと最後をモモンガの大将と楽しむんだって、そう思っていたのに……誰だよ、俺様の職場である企業を襲撃しようって馬鹿は!

 

………ん?

あれ、あの顔……あっ!!

あの馬鹿!

ったく、モモンガの大将からの呼び出しを無視して、こんな所で阿呆な真似してるなんて、いい度胸じゃないか、ウルベルトの旦那……ふふふふふ……あんたのせいで、ここで足止めを食らった分の怒りも、きっちり受けて貰いましょうかね!

 





という訳で、戦国BASARAの佐助を転生させて、アインズ・ウール・ゴウンに突っ込んでみました。

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