戦国BASARAの佐助を、AOGの至高の一人として突っ込んでみた! 作:水城大地
ちょっとだけ、現時点よりも未来に交わされていただろう話を一つ。
【番外編~佐助に、対テロ組織について聞いてみた~】
ウルベルトとパンドラズ・アクターが、市場調査と言う名目で街に出掛け、残ったモモンガは一つだけ気になっていた事を佐助に聞いてみる事にした。
「あの……ずっと気になっていたんですけど、佐助さんのお仕事は警備会社で対テロチーム所属だと、前におっしゃってましたよね?
今更、【リアル】の事を聞くのはどうかとも思ったんですけど……やっぱり最終日にウルベルトさんを連れてきた時の【仕事先のお土産に山羊一頭、狩ってきましたー!!】と言う言葉が、とても気になりまして。
佐助さんの仕事を考えると、あれって……」
どことなく、口ごもりながら問うモモンガに対して、佐助は小さく苦笑した。
確かに、あの場はあの雰囲気で押し通してしまったけれど、冷静に考えればモモンガの頭なら気が付く筈だ。
多分、本当はもっと早くに話を聞きたかったのだろう。
それでも、下手に藪を突いてウルベルトと佐助の間に険悪な空気を作り出したくなくて、佐助だけに話を振れる状況になるまで我慢していたのが、佐助にもすぐに判った。
「あー……うん、そうだよね。
モモンガの大将が、その点に気付かない筈がないから、ある意味当然の質問だと思うよ?
むしろ、こうしてウルベルトの旦那がいない所で聞いてくれて、ある意味良かったと俺様は思ってるかな。
モモンガの大将のお察しの通り、ウルベルトの旦那は俺様が警備している会社に対するテロ行為をしようとして、俺様と対峙したんだよ。
んで、その姿を確認した俺様がブチ切れた結果、さっくりテロリストを全員倒した後、ウルベルトの旦那だけ痕跡消して【闇婆沙羅】で隠して俺様の自宅に持ち帰った訳さ。
ここで勘違いしないで欲しいんだけど、ウルベルトの旦那も最初からユグドラシル最終日にテロ活動に参加するつもりはなかったみたいだよ。
本人曰く、【予定を一日間違えたんだ】とか。
これは、俺様が勝者の権限でウルベルトの旦那をお持ち帰りして【モモンガの大将に詫びを入れる意味でもユグドラシルに強制ログイン】させる際に、直接聞いた話だから。
実際、旦那の【ユグドラシル】のゲームデータは既にアップデートも済んでいて、すぐにログイン可能な状態だったからね。
これは推測でしかないけど、ウルベルトの旦那は最後にモモンガの大将にあった後、翌日のテロで死ぬつもりだったんじゃないかな。
どう考えても、俺様の配属されている警備場所へのテロは、実行しても失敗がほぼ確定しているって有名だったからね。」
気を使ったのか、【無限の水差し】を取り出して水をコップに注ぎ、モモンガの前に一つ差し出しながらそう口にすると、佐助は軽く首を竦めた。
彼自身、その警備の層の厚さに貢献していた身として、警備関連の様々な知識を持つからこそ、ウルベルトの行動をそう推測したのだろう。
モモンガは、佐助の身の上をそこまで詳しく知っている訳じゃないが、彼が【ユグドラシル】で見せていた無双振りを考えれば、【リアル】でも相当に強い警備員として知られていたのだろう事は推測が付く。
そう考えた所で、ふともう一つ気になる事を思い付いて、そのまま口に出して質問する事にした。
「そう言えば、佐助さんって俺たちと同じ小卒ですよね?
対テロ専門の警備員になる場合、小学校を卒業していなくてもなる事は可能なんでしょうか。
いえ、その……結構、貧困層の中でも小学校にも行けない人たちっているでしょう?
そう言う人たちの受け皿として、汚れ仕事として対テロ集団みたいな組織が彼らの事を雇っているのかなぁと思いまして。」
差し向かいに座った状態で、佐助が自分の前に置いたコップを手に取りながらモモンガが言葉を重ねれば、思わずと言った感じで佐助の眉が寄る。
キュッと眉間に皺が入るのを見て、【質問したのは間違いだったのだろうか?】とモモンガは慌てたのだが、今更言葉を取り消す事なんて出来なかった。
佐助自身、自分の分として水を注いだグラスを両手で持ちつつ、少し思案するような素振りを見せた後、ゆっくりと口を開く。
「正直言って、就学していない人間は対テロ組織の人間としては使えないかな。
モモンガの大将も考えてみてよ、就学していないって事は基礎知識が絶対的に足りていないって事なんだぜ。
もし、自分が対テロチームの隊長として指揮すると考えた時、命令の意味をまともに理解出来ない人間が居て欲しいと思うかい?
俺様だったら、絶対にごめんだね。
テロ相手に戦うって言うのに、自分の命を預ける相手だと考えたら、そんな奴なんてお粗末すぎるだろ。
そんな、自分で最低限の事を考える頭がない奴が使えるのは、戦争の末端兵士位さね。
テロを相手にするなら、せめて自分である程度の対処は出来るだけの知識は必要さ。
それこそ、テロの種類なんて幾らあると思ってる?
爆弾テロ、自爆テロ、重要拠点の占拠、要人誘拐に電波ジャック……それこそ、暇が付かない程に種類は多様化しているんだ。
それに対応する為には、ただただ突っ込んで戦闘すればいいってもんじゃないんだよ。」
そこで言葉を切ると、手にしていたコップを口に運んで喉を湿らせる。
別に、水を飲まなくても話し続けるのはそれ程苦痛じゃないが、こうして間を置く事でモモンガにも状況をきちんと理解できる間合いを取っているのが伺えた。
こういう話は、割と相手に理解させるように説明するのが難しいのだろう。
「そうさね……例えるなら、文字が読めなくて言葉を正確に理解しているかどうかわからない相手に対して、命令を出したとする。
【敵テロリストが、重要拠点ジャックの為に潜入したと言う情報が入った。
敵の数は全部で三チーム、十三人。
八時の方向にある地下水路から四人、十二字の方向にある地下鉄の連絡路から三人、六時の方向にある商業施設の地下整備通路から六人。
敵は、爆弾を所持している可能性があり、どの方向からくる相手が所持しているか、現時点では不明。
ただし、敵の数が途中で増える可能性もあり、爆弾は既に別に仕掛けられている可能性がある。
それら全てを無力化して制圧、爆弾および起爆装置を回収せよ。
その際、情報を持っているテロリストのリーダー格を捕らえる必要がある。
各班、接敵まで可能な限りの情報収集を遵守せよ。
各チームに分かれて散開する際、各小隊長は取得した情報の報告を怠るな。
以上、作戦行動開始は今から五分後とする。
では各自、時計を標準時間に合わせ、行動を順守せよ!】
と、まぁ……こんな感じだけど、これを全部基礎知識がない人間に時間が押し迫っている状況の中、早口による口頭での命令だけで理解出来ると思うかい?
先に言っておくけど、これらの言葉を理解させるための学習時間なんて、貧困層出身者には与えられないよ?
それこそ、俺様の様に最初の段階で特に身体能力が高いとか、使い捨てにするよりも教育した方が得だと思わせる特別な能力でもなきゃ、あの【リアル】で貧困層に金を掛ける富裕層なんていやしないさね。」
つらつらと挙げられた言葉に、モモンガは思わず目を白黒させた。
一応、ゲームである程度ボスレイドを経験しているお陰で、ざっくりとした指示の内容だけは理解出来たものの、それだって確かに小学校時代の知識がかなり必要だったのだ。
これで、何も知らない未就学の人間に理解出来るかと問われれば、まず難しいだろう。
「そもそも……俺様の前世が生きていた戦国時代は、農民の識字率は低かったんだ。
余程、運が良くて文字を習う機会があってそこそこ裕福でもなければ、農民は農民以外になれない状態だったね。
こう言うとなんだけど、今の【リアル】で貧困層がどうやっても貧困層から成り上がれないのと一緒だよ。
彼らに出来たのは、一揆を起こすくらいだったかな。
と言っても、そいつらは全部武士によって制圧されるんだけど。
逆に、俺様のような忍びの場合幼少の頃からあらゆる知識や戦闘術を叩き込まれていたし、敵地に忍び込んで情報を得るためにも文字の習得は必要だったし、忍びだけで通用する忍文字を使って連絡を取っていたからね。
そう考えると、人でない者と扱われていた忍びの方が、余程農民よりも知識は持っていたんじゃないかな。
だからね、未就学の貧困層の人間になれるのなんて、それこそ最初から使い捨ての兵士か、それとも自分たちの死を恐れないテロリスト位で、俺様の様に対テロ組織の人間にはまず無理だね。」
「まず、俺様だったら部下には絶対欲しくない」と、佐助は笑う。
多分、本当にそう思っている事が、モモンガにも言葉尻に滲んでいるのがすぐに判った。
自分で聞いておいてなんだが、これはあまり触れるべき話題ではなかったのだろう。
そう反省しつつ、モモンガが別の話題を振ろうとした時だった。
佐助が、何かを思い付いたように口を開いたのは。
「あー……でも、未就学の貧困層の人間を対テロ組織に所属させるなら、一つだけ使い道はなくはないか。
それこそ、最初から解体処理が難しい爆弾の解体作業に当たらせる為の、爆死前提の作業員ならなれるかもね。
もし、運が良ければ死なずに身体の一部が吹き飛ぶだけで済むかもしれないけど、その場合は直に治療費が底をつくだろうから、やっぱり最後には死ぬしかなくなるんだろうけど。
そんな未来しかないと判っていて、自分から志願してくる奴は……まぁ、普通に半年以内に使い潰されて死んでるだろうね、うん。」
ポンと、軽く手を打ちながらそううっそりと笑う佐助に、思わずモモンガの腰が引けていた。
佐助は油断すると、それこそさらりと恐ろしい事を平気で口にする。
今回もそのケースだと、漸く悟ったモモンガが顔に手を当てていると、佐助の背後から軽くチョップが入った。
「……ったく、何モモンガさんを苛めてるんだよ。」
その言葉に、モモンガと佐助が声の下方に視線を向けると、かなり憮然とした表情のウルベルトが立っていた。
その後ろには、オロオロとどうすれば良いのか困っているパンドラズ・アクターが居たので、丁度買い物から帰ってきた所で今の話を聞き付けたのだろう。
ウルベルトの言葉に、佐助は不満そうに口を尖らせると、何かを思い立った様に口の端を上げた。
「もう、嫌だなぁウルベルトの旦那。
モモンガの大将から、【未就学の貧困層の人間が、対テロ組織の人間になれるか】って聞かれたから、それに答えてただけだよ、俺様。
ウルベルトの旦那だったら、【未就学の貧困層の人間が、対テロ組織の人間になれる】って思うかい?」
ニッと口の端を上げて問えば、それこそ本気で嫌そうな顔をしたウルベルトは首を振った。
「そんなもん、まずあり得ないだろ。
富裕層にとって、貧困層の人間を自分の身を護る盾にするにも最低条件があるだろうさ。
それこそ、うっかりアーコロジーの重要な部分を抑えられたら困る訳だし、そう言う意味でも確実にテロリストを倒せるだけの装備を使いこなす為に、必要な知識を持つ程度の条件は付けるだろうね。
自分達の歯車として、最低限の知識すら持たず使えない様な【未就学の貧困層の人間】なんて、それこそ俺達にさせるよりもより危険で劣悪な環境での作業に従事させた方が、よっぽど無駄なく使い潰せるだろ。
【ヘドロの中の土を掘り下げる】とか、【汚染水の中を潜らせる】とかの単純作業なら、別に文字とか知らなくても作業可能だしな。」
そんな無駄をする筈がないと、自分も富裕層に牙を剥いた側でありながら否定するウルベルトの言葉に、佐助も苦笑しながら頷いて同意する。
二人の様子に、こんな内容を話していたら喧嘩するんじゃないかと心配していたモモンガはホッと安堵の息を吐いた。
だが、富裕層からの貧困層の人間に対する扱いは確かに彼らの言う通りだと、モモンガ自身も同意する部分が多い事に気付く。
「……そうですね、確かにウルベルトさんの言う方が余程あり得ますね。
この件は、これまでにしましょう。
それよりも、ウルベルトさんとパンドラがこの街で仕入れてきた物の方に、俺は興味がありますし。」
いつまでも話しているような内容じゃないと、サクッと話題を変えるとモモンガはパンドラズ・アクターに視線を向けた。
その視線に合わせ、今まで口を挟まずに控えていたパンドラズ・アクターは、スッとモモンガ達の座っている椅子に近寄ると、テーブルの上に購入して来たアイテムやら食糧やらを並べていく。
モモンガの興味が、すっかりそちらに移ったのを察した佐助とウルベルトは、それ以上先程までの件に関して口を閉ざしたのだった
えーと、ですね。
実は、この話はもっと後に別の話と混ぜてアップする予定でした。
ですが、最近うちの佐助によく似たような立場の【リアル設定】を付けたオリ主が出てくる話を読みまして。
そこは別にいいんです。
話の展開として、原作に沿った状況でウルベルトさんを出すなら、似たような設定になるだろうと言う事は想像が付きますし。
ただ、どうしてもあの世界観ではあり得ない【三歳から浮浪児】と言う設定に、ちょっとだけモノ申したくなりました。
なので、予定を繰り上げて実際にその条件で【あの世界で未就学の人間が対テロ組織に所属できるか?】をモモンガさんに対して解説して貰いました。