『彼』には、ある夢があった。

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三人称視点で何か書きたいと思った結果、謎のモノが出来てしまいました。

……なんでこんなものが出来てしまったんでしょう?作者も、書いている時は無心だったのに、今になって正気を取り戻して謎にしか思えません。

ですが、書いた以上このままにしておくのもあれですので、一応投稿しておきます。
あんまりにもアレだったら、削除しておきます。


手が届きそうで、届いてしまったモノ

 その『男』には、ある夢があった。

 

 

 それは『彼』が幼い子供のころ、しかし精神も知識も子供とは思えないほど賢く、神童と呼ばれた頃、『彼』はとある書物と出会ってしまった。その書物は、あまり知られていない、むしろ好事家の間でしか知られていない特殊な小説であった。それは父が面白い題名だと思いかったのだが、その中身を読むや否やすぐに放り出してしまうほどの物であった。

 

 そんなものをリビングに置き忘れて早一週間、ふと『彼』の目に留まってしまったのだった。父も、自分の妻には触らぬように言っておいたし、『彼』が読むとは思わず放置していたもの。しかし、賢き『彼』は、小学校低学年にも関わらず、中学生や高校生並みに漢字を読むことは可能だった。

 

 

 

 そして、『彼』はソレに触れてしまった。

 

 

 

 以来、『彼』はその夢を見続けた。

 

 いつか、こうなりたいのだ、と。

 

 しかし現実は残酷だった。『彼』がその夢に目指し、調べ学んだが、その夢はこの社会にとって忌避されるものであったからだ。昔よりかは幾分ましではあるものの、それでも嫌悪されることの多い物であった。

 

 それでも、『彼』は諦めなかった。理解していた。

 

 

 幼い身ではこの夢は無理なのだ。しかし将来、努力し続ければ、いつかきっと、叶う筈なのだと!

 

 やがて『彼』は小学校を卒業し、中学校を終えた。その間にも、夢へのための努力を惜しまず注いだ。友達との時間も、可能な限り削り、夜遅くまで学んだ。

 

 しかし、『彼』が高校生になり、誕生日を迎えしばらくした頃、

 

 

 

『彼』はあっけなく死んだ。

 

 

 

 この世界、いや、この国ではありふれている、飲酒運転によって暴走した車両に轢かれての死であった。

 

『彼』の願いは、夢は、儚く散ったように思えた。

 

 

 

 

 

 ―――――――― 

 

 

 

 

 

 ふと気が付くと、謎の空間に『彼』はいることに気が付いた。この空間には、己と同じように困惑した表情で佇む同世代の青少年と、青髪の麗しき女性、その三人がいた。

 

 その青髪の女性曰く、ここは若くして死んだ者を、迎える場だ、と。次の生を決める場なのだと。

 

 女性の言葉に『彼』は思い出す。激しい轟音と、眼が見るのを拒んだのかと思うほど近づいてくる車を。その時に、『彼』の夢がゆっくりと脳内で駆け巡ったことを。

 

 困惑した青少年の死因をひとしきり弄り終えた、自称女神のアクアは『彼』ともう一人の青少年、カズマに問いかけた。

 

 

 記憶を無くし、別の生を歩むか。それとも、何もない天国(地獄)で暮らすか。

 

 

 実に返答に困る選択だろう。同じ場にいたカズマも、記憶を消すのも嫌だと言い、かと言って娯楽すらない天国も拒んでいた。それは『彼』も同じであった。しいて言うならば、次の生を選択した場合、その夢を叶えられるかもしれないな、と思うぐらいであった。

 

 そんな彼らを見て、怪しさ満点な笑みを浮かべ、ある提案を持ち掛けた。

 それは、異世界に転移して冒険してくれないか、というものであった。

 

 

 その異世界では、魔王は存在し、魔王の配下や魔物たちによって人類は危機に瀕しているらしい。そのうえ、その世界で死んだ住人たちは、魔王たちを恐怖に思いその世界への転生を拒否。その結果、異世界の人類は数を減らしつつあるのだ、と。

 

 それならば、別の世界から人間を引っ張ってこよう。そのついでに、強力な武具や能力を携えて魔王を討ってもらおうという計画であった。

 

 

 実に胡散臭い。今時そんな詐欺がまかり通ると思えはしないが、仮にも死んだはずの身がここに存在してしまっているのが、『彼』たちへの不思議な説得力となっていた。

 

 カズマはゲームや漫画にて異世界への期待で溢れかえっていた。が、『彼』は一つ疑問に思えることがあった。その武具や能力は、一体どんなものならば可能なのか。

 

 そう尋ねると、待ってました、と云わんばかりにドヤ顔で、アクアはカタログらしきを差し出した。このカタログらしきものにそういったものが載ってあるのだろう。

 

『彼』とカズマは仲良くページをめくっていった。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 残念ながら、『彼』が渇望していたものはなさそうであった。似ているものこそあるものの、制限などの条件のため、彼は肩を竦ませた。これが、もう少しましなのであればよかったのに、と何度目になるか分からない溜息も吐いた。

 

「あ、言い忘れていたけどその中にない物でも、私に伝えてくれればできるか探してあげるわよ?」

 

 女神の声に勢い良く振り向いた『彼』は、どういうことかと、すぐに問い掛け直した。

 

「なかには強欲な人とかいるしねー。ま、そんな人たちのも叶えてあげるのが女神の仕事だしねー?」

 

 それならば、『彼』はすぐさま自分の夢を簡潔に説明し、可能かどうかを尋ねた。

 

「……いや、それくらいは普通にできるわよ?ただ、細かく注文を付けるのならそれが武器とか能力とかのチート的なのを捨てなきゃいけなくなっちゃうけど、いいの?」

 

 無論である。彼の十年の夢がその程度で叶うのならば、そんなものいらない。むしろ、それが叶えてくれるのならば、神童と呼ばれたプライドなんかを投げ捨てて、今すぐ女神のことを讃えてもいいと思うほどであった。それくらい、『彼』にとっての夢は大切な物であった。

 

「あら、それなら今ここで、このアクア様に崇拝の言葉を述べなさい。それで気にいったら叶えてあげるわ」

 

 おお、いと慈悲深く麗しき水の女神、アクア様。この卑しくも矮小な、この願望をかなえてください!叶えていただいた暁には、己の全てを差し出そう!

 

『彼』はすぐに土下座し、アクアへの言葉を差し出した。一方のカズマは、そんな『彼』の気候に引きつつも、カタログをめくり説明を眺め悩んでいた。

 

「んー……まあ、及第点ね。あっちの世界に行った時には、高級なお酒でも頂戴ね。あと、その夢はあっちに着いたらそうなれるように手配しておいたから安心してね!」

 

 おお、女神様!あの国では碌に神を信じていなかったが、ここでは本当の神がいるのだ。己の信仰心の全てを捧げようと『彼』は決意したのだった。

 

 その後、カズマが特典を選ぶことに焦れた女神は急かし、それで彼女自体が特典になるという結果になったのは、どこぞの物語の収束力ゆえなのだろうか。

 

 そんな変な始まり方で、彼らは異世界に旅立ったのであった。

 

 

 

 

 

 ―――――――――― 

 

 

 

 

 

 

 さて、『』の目には、近代ヨーロッパ建築と思わしき家々が見えるところに着いた。それと隣にカズマとアクアが取っ組み合いをしているが、気にする余裕も『』にはない。

 

 まず視界に見える黒い線。優しく引っ張ると頭頂から引っ張られているような感覚が伝わってきていただろう。次に喉を触り、男特有であった突起物がないことを確認する。そして、待ちに待った体である。胸部は男の時と比べ大きく肥大化し、黒い革靴が見えないほどであった。そのせいか、先ほどから制服に押しつぶされて息苦しい。腹部も、それなりに弾きしまっていた腹筋はなくなり、柔らかな脂肪がついていた。最後にいつの間にかスカートになっていたところに手を突っ込み、何もないか探る。……見事、何もない。あのぶら下がっていた物たちは失せ、代わりに穴と皮らしきものが触知できたのだ。

 

 その余りの感動に、『』は静かに座り込み涙を流した。もう、死んでもいいと思えるほどの歓喜が彼を包んだ。

 

 

 そう、もう『彼』ではなく、『彼女』になっていたのだ。『彼』の夢こそ、『彼女』への転換であったからだ。

 

 そんな彼を眺めていたカズマはアクアに揺さぶられつつ、こんな『彼女』たちとどうやってこの異世界を生き延びればいいのかをぼんやりと考えていた。

 

 

 




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