雪ノ下雪乃は素直になりたい。   作:コウT

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似合わないからこそ得るものがある

「比企谷・・・・・・」

「そんな目で見るのはやめろ」

「いやその驚いてね。まさかこんなに上手いとはな」

「うるせえよ。で、これで終わりか?」

「ああ、あとは・・・・・・」

「わかってるよ」

 

 文化祭一日目。これにて終了。

 にしても・・・・・・明日これで本当に大丈夫だろうか。

 

 

× × ×

 

 

 翌日、文化祭二日目。今日は土曜日なので昨日よりも一般来場者はかなり来ると予想される。今年は去年みたいに制限はない。二日間連続で一般来場者を招いているが昨日は平日なのでそんなには人は多くはなかった。

 そしてその予想は見事に的中。例年よりも人数が多いのは何でも宣伝として、動画サイトに文化祭の案内をアップしたらしいがそこに出ている生徒会長が可愛いと噂が広まったことで人がわさわさと集まっている。つか男が多いんだよ。

 

「・・・・・・おはよう」

「うす」

 

 実行委員の準備室に行くと長机の椅子に座っている雪ノ下がいた。手元には書類が何枚かあり、朝から仕事中のようだ。

 

「今年も報告と違うところをやっているところがいくつかあってね」

「まあ文化祭ってのは気分が浮かれるってやつだろ。こういう一般客が多くて、誰が見てるかわからないところこそ大人しくするべきなのに。つかもう文化祭辞めろよ」

「あなたは家から出たくないだけでしょう」

 

 雪ノ下が笑みを浮かべた。顔を見るとなんだかやつれている様子なのがわかる。

 

「お前寝てないのか?」

「寝たわよ」

「何時間?」

「・・・・・・二時間」

「ほとんど寝てねえじゃねえか・・・・・・行くぞ」

 

 雪ノ下の手を掴んで、無理矢理連れて行く。行き先は学校で唯一ベットがある場所だ。

 

「ほれ」

 

 肩に手を置いて、ベットの上に雪ノ下を座らせる。

 雪ノ下は呆然としていたがやがて口を開く。

 

「・・・・・・仕事が」

「俺がやっとくから。ついでに一色にも手伝わせる」

 

 日頃の恩を返してもらう時だ。約一年分の手伝いの礼としてこれくらい頼んでも文句は言わないだろう。

 

 

「それにしてもあなたもずいぶん大胆になったのね」

「は?」

「みんな見てたわよ」

「あーもういいだろ。どうせ今更だろ」

 

 

 夏休み明けからは雪ノ下と一緒に登校する事が多かったり、花火大会の時も見られていたらしく、二学期早々噂になった。しかしそれに意を唱えようとするのはいなかったがこの文化祭期間で雪ノ下雪乃はあいつに好かれている。だから俺と一緒にいるところを見ると怪訝そうな目で見てくる。火種役はもちろん―あいつだ。

 

 

「んじゃ俺は戻るから、ちゃんと寝てろよ」

「・・・・・・比企谷君」

「あ?」

「私は誰の告白を受けても、あなた以外の人に好意を寄せるなんてことはないから安心しなさい」

「・・・・・・ぼっちになるぞ」

「元々一人だったから心配ないわ。それに由比ヶ浜さんに一色さん、あなただっているじゃない」

「そういやそうだな」

 

 顔を見合わせて、俺達は笑い合った。多分俺は安心してたんだと思う。

 雪ノ下の口から俺以外好きにならない。その言葉だけで体が軽くなった気がする。

 

「じゃあな」

 

 そう言って、保健室を後にする。扉を閉める時、こちらに向けて、先程よりも落ち着いた笑みを浮かべている雪ノ下が見えた。

 予定では後夜祭は午後六時。キャンプファイヤーと有志バンドの演奏とそして告白タイムだ。

 高杉を止める方法は依然として思いつかない。いやアイディア自体はあるけどいちかばちか。それにあとでお咎めは間違いないだろうし。

 しかし比企谷八幡という人間が今までまともなやり方を選んだためしがない。誰かを助けるために自分すら犠牲にする男だ。友人や先生に多大な心配をかけ、時には傷つけたこともあった。

 だからこそ学んだ。間違えたからこそ。どうせやり方に正解はない。人生がそうであるようにきっと俺も正解じゃない。俺だけじゃない。雪ノ下も由比ヶ浜も一色だって間違えた経験はあるはずだ。だからこれでいいんだと思う。それは違うって言う人も出てくるかもしれないけど自分がそう認めているならいいのだと思う。

 

 

「さて行くか」

 

 

 そう言って、俺は準備室へと戻ろうとしたがそれは突然のことだった。視界がぶれ、ぐらぐらとして、やがて横に見える視界に何だと思った時はもう遅い。もしかしたら前から見張られていたのかもしれないけどでもそう思った時には俺の意識は遠のいていた。

 

 

× × ×

 

 

「一体どうしたんだ?」

「あ、平塚先生・・・・・・」

 

 

 時刻は十一時。文化祭が始まって、二時間経過していた。

 生徒会は実行委員と共に対応に追われていたがまさか早くも大きな問題が転がり込んでくるとは思わなかった。私と結衣先輩にとっては。

 

「実は先輩と連絡がとれなくて」

「比企谷と?まだ学校に来ていないとかではないのか?」

「小町ちゃんに連絡したんですけど朝早くに家を出て行ったって」

「そうか・・・・・・何もないといいんだが」

 

 何もない。そんな訳がない。先輩がいなくなって、安心する人間がいるじゃないか。

 私の目の前。実行委員に指示を出して、仕事できますアピールを振りかざしている男。

 

「一色さん?ぼーっとしてないで、来賓の対応手伝ってくれない?」

「はい」

 

 こいつに話しかけられるとどうにも嫌な気持ちになる。というより私と奉仕部の二人に対する態度が他の人と違う。他人行儀っていうならまだいい。ただとりあえず仕事を押し付けて、煙たがっている態度にしか見えない。まあ私の被害妄想かもしれないけど。

 

 

「いろはちゃん」

「あ、結衣先輩。どうでした?」

「駄目。隼人君とか彩ちゃんにも頼んで、トイレとか男子更衣室とかも見てもらったんだけど見当たらないって」

 

 先輩と連絡つかないと教えてくれたのは結衣さんだ。朝のクラスの点呼で先輩の名前に反応がなかったことで来ていないことに気付いて、学校中を探し回っている。

 結衣先輩は高杉の方をじっと睨んでいる。

 

「やっぱりあいつの仕業?」

「だとしても証拠がないですよ。というよりそこまでしますかね?」

「でもヒッキーがいなかったら、このまま告白するだろうし」

「・・・・・・そしたら私が止めますよ」

 

 私の発言に結衣さんが「え?」と驚いた表情をして、声を出してる。

 

 

「きっと全校生徒から批判浴びるでしょうねー。せっかくの文化祭、皆が期待している実行委員長の告白を邪魔したってことで。まあ元々私もぼっちに近いものだからいいんですけどね」

「・・・・・・なら私も止めるよ」

「結衣先輩は友達が沢山いますから」

「ううん。関係ないよ」

 

 きっと結衣先輩はそう言うんだろうなと思っていた。だからきっと私もそう言ったんだと思う。この人ならきっと私と同じように行動してくれると。

 結局こないだ言ってたことは冗談だったんだな。

 

「それに心配ないよ。私の友達にそんなことで、友達辞める人はいないから」

「・・・・・・さすがトップカースト」

「いろはちゃんだって、男子達を手玉に取ってるくせに」

 

 

 あーあ。私の高校生活ってどんなのを想像してたんだっけ。

 友達がそこそこいて、好きな先輩がいて、でも同じクラスの男子が実は私に惚れてるから、ちょっかい出してきたりして。私もその子の事が少しだけ気になってるから、お互いに素直になれなくて。

 夏休みに先輩とその子から同時に告白されて、どっちを選べばいいか迷ってて、でもきっと・・・・・・きっと―。

 

 

「さてどうやって邪魔しますか」

「うーんとね、こういうのはどう?」

 

 

× × ×

 

 

 午後三時になった。文化祭ももう佳境。去年みたいに屋上でヒールキャラを演じているわけではない。周囲に見えるものは積まれたダンボール、ダンボール、ダンボール。

 で、自分の状況はというと体育のマットにぐるぐると簀巻きにされているというどこかで見覚えがある様だった。

 

「ここまでするかよ・・・・・・」

 

 まだ首元がずきずきする。大方スタンガンで気絶させられたのだろう。あれって本当に気絶するんだな、また一つかしこくなった。

 で、状況を整理してみよう。雪ノ下と保健室で別れた、OK。準備室に戻ろうとしたところを襲われた、OK。

 では一体誰が襲ったのか・・・・・・わからない。

 わからないけど心当たりはある。だがいくらなんでもこれは犯罪だ。いやまじでなんなんだよ。ふざけんなよ、かなり痛いんだが。これは訴えることも辞さない。

 で、どう考えるのはいいんだが身動き一つ取れないということは何もできない。恐らく後夜祭終了まで俺をここに拘束して、全てが終わった後に解放。

 いやまじで解放してくれるよな?さすがにこのまま放置とかしないよな?これで俺が死んだら、告白どころじゃないぞ、おい。

 場所はどこかの教室だと思うがさっきから物音一つしない。文化祭期間でどこの教室も賑わっているから、こんなに静かな場所はただ一つ。特別棟だ。

 特別棟ともなると来る人間はほとんど限られてくるが合唱部や吹奏楽部は体育館での演奏なのでこちらに来る人はあまりいない。窓から見える光景から中庭に植えてある木々が見えるところを見ると恐らく一階。

 記憶通りなら一階はほとんど準備室で誰も来ない。つまり助けを呼ぶのはほぼ絶望的だ。

 

「あーくそ!」

 

 誰にも聞こえないので声を出す。

 こうしている間にも雪ノ下の事が心配だ。時間だけが過ぎていく。

 由比ヶ浜や一色も何か理不尽な事に巻き込まれていないだろうか。高杉が俺の次に懸念しているといえば奉仕部と生徒会だ。邪魔されないように阻止するに違いない。

 ・・・・・・本当に無事だろうか。

 

 

 

 

 

 

 そういえばあの二人との事もきちんと解決したわけではない。

 由比ヶ浜も一色も俺が振ったことで、変な溝が生まれている。今回も俺達が奉仕部だということでもう一度集まり、関わることになった。

 でも根本的なことはなにも終わっていない。だから文化祭が終わったら、きっとまたあの二人とは疎遠になってしまうかもしれない。もう二度と話してくれないかもしれない。

 そうまでしてでも比企谷八幡は雪ノ下雪乃の事を好きでいるべきなのか。由比ヶ浜結衣か一色いろはを選ぶべきだったのだろうか。

 

 

 

 ・・・・・・いやどんな理由でも俺は選んだはずだ、雪ノ下雪乃を。

 一体何回間違えれば俺は覚えるのだろうか。もう呆れて何も言えない。

 だから何回も思い出す。あの約束を。

 素直になりたい彼女と信用してほしい俺を。いやきっとどちらかじゃない。

 雪ノ下雪乃は俺の事を信じて、常に素直で。

 比企谷八幡は彼女の事を信じて、常に素直で。

 

 そういう関係が欲しい。それが俺の求めていたものだから。

 

 

 

「あー!とりあえず誰かこい!今すぐこい!なりたけぐらいなら奢ってやるから!」

 

 焼肉ぐらいおごってやれよと思ったがあいにく財布がピンチなのだ。

 でもその想いは、

 

 

「ハッハッハッハッ!我を呼んだか!親友よ!( とも)

 

 

 届いたようだった。この学校で俺の数少ない―

 

 

「ちなみに助けてほしくば、次のイベントの手伝いにこい!あいにく買い出し班の人数が足らんのでな」

 

 ・・・・・・いやただの中二病だった。

 時刻は午後五時四十分。エンディングセレモニーが終わる時間で、後夜祭が始まろうとしている時間だった。

 

 

 

 

 × × ×

 

 

「材木座。外にいるのか?」

「うむ。先程生徒会長からお前も探せと命じられたのでな。クラスの出し物は片づけだけ参加すればいいから、暇を持て余していたが親友の一大事ともあれば拙者はどこへいようと」

「わかったから、早くあけて助けてくれ」

「・・・・・・すまんがそれはできん」

 

 は?こいつ何を言ってるんだ。

 

「さすがにこの状況でそんな冗談は笑えねえぞ」

「冗談ではない。何故ならこの教室の鍵を我は持っていないからな」

「だったら、職員室へ行って、早くもらってこい!」

「り、了解!」

「・・・・・・それともう一つ頼みがある」

 

 

 それから二十分して、ようやく俺は簀巻き状態から解放された。

 時刻は六時十分。もう後夜祭は始まっており、バンドの演奏がここまで聞こえてくる。告白タイムは有志バンドの演奏が全て終わってから。参加バンドの演奏時間は四~五分になり、参加バンドは六組。早くて、あと三十分後になるので後夜祭会場である校庭に向かう。

 だがこういうクライマックスな展開は邪魔する悪役というのは定番の流れというものである。

 

 

「比企谷さん。あなたを向かわせるわけにはいきません」

 

 

 実行委員の連中が教室棟へと向かう渡り廊下のところに立ちふさがるように奴らは立っていた。

 もちろんこちらはヒョロヒョロの俺とデブの材木座で、向こうはなんか筋肉もそこそこついていそうで、力だったら間違いなく向こうの方が上だ。

 

「高杉の命令か?」

「命令じゃない。ただ友達の恋路を応援してあげたいんだよね」

「それは構わねえ。でもそれが何で俺が後夜祭に行ってはいけない理由なんだ?」

「言わなくてもわかるだろう。お前はあいつの邪魔をするに決まってるだろ」

 

 この状況は傍から見れば、俺と材木座が敵で向こうが正義のヒーローといったところか。

 相変わらずこざかしい雑魚役が似合うな、俺は。

 

「ああ。そうか、それじゃあ仕方ねえ。奉仕部の部室にでも戻るとするか」

 

 諦めの言葉を口にすると向こうもそうだろうなみたいな顔をして、こちらをみてくる。

 そりゃあ常識的に考えればそうだろうな。ただこの総武高校に通う生徒なら知っていることだが比企谷八幡がどんなに姑息な奴か知っているはずだ。

 俺は一階の出入口へ行くと予想通り実行委員の連中が通らないように見張っている。これでもうあいつらは俺がここから抜け出せないと思っている。

 が、全然出入口はたくさんある。そこらの教室中に。

 

「じゃあ材木座。後は頼んだぞ」

「うむ」

 

 と、窓を開けて、下を見押すと懐中電灯を持った戸塚がこちらを照らしてくる。

 

「八幡、急いで!」

「ああ、悪い」

 

 下ろしたロープにつかまって、壁沿いにそのまま降りていく。

 でも俺の人生に計画通りと言う言葉はない。

 

「おい!何をしてるんだ!」

「げふぅ!?何故バレた!?」

 

 もちろんこの可能性も考えていなかったわけじゃない。きっと俺の様子を監視するために奉仕部の部室まで見に来ることを予想はしていた。

 

「あーもうこの距離なら大丈夫だろ!」

 

 そう言って、地面から一、二メートルくらいの距離から飛び降りた。

 怖さはあったが痛みは全然・・・・・・

 

「いってえええ!」

 

 あった。かなり痛い。これ骨折してるだろ。そうでなくても、ヒビくらいは入っているはずだ。

 しかし痛みを抑えている時間はない。きっとすでに一階の連中にも話が伝わっているはずだから、早く急がないといけない。

 

「戸塚、今何時だ?」

「えーと六時三十分」

 

 手元の時計を見て、戸塚は答えた。もう時間が無い。

 校庭へと急ぐが後ろからこちらを追っかけている声が聞こえてくる。

 

「はぁ・・・・・・あんたって本当に敵ばっかだね」

 

 そう言って、ため息をつきながら答え、俺の目の前に現れたのは実行委員の連中―ではなく、頼れるクラスメイトであり、うちの兄妹に負けないくらいのブラコン。

 

「どうしてここに川崎がいるんだ」

「手伝えって頼まれたんだよ。私は早く帰りたかったんだけどさ」

「そうか・・・・・・って悪い。時間がねえんだ」

「知ってる。あれは私に任せて、早く行きな」

 

 

 何この展開。アニメなの?本当にこれアニメなんじゃないの?

 仲間が一気に集結して、助けてくれる王道展開とか盛り上がるよな。王道だからこそ高揚感を抑えきれない。

 川崎に任せて、あとはいく。何やら怒鳴る声が後ろから聞こえてくる。あいつに怒鳴られたら、さすがに威圧感が増して、その場から動けないだろう。いやいつも怖いとか言うわけじゃないよ?

 しかし材木座、戸塚、川崎とこんなにも助けてくれる人がいる。あとは最後の作戦のみ。

 

「比企谷!」

「悪い、野暮用で遅れた」

「・・・・・・遅いぞ」

 

 舞台裏に着くと葉山が相変わらずのイラっとくる笑みを浮かべていた。

 今回の葉山バンドは少々メンバーが去年と変わっていた。戸部、大岡、大和、葉山、三浦から戸部、葉山、戸塚、三浦、海老名さんと女子の比率が少し上がったメンバーに変わったようだった。

 しかし現在スタンバっているのは葉山だけのようで、残り三人の姿が見えない。

 

「他の連中は?」

「ああ。みんな君を助けるために頑張ってるよ」

「頑張ってる?」

 

 そういえばここに移動するまでにも結構な時間があったのにまだ葉山の演奏が始まっていないのは変だ。

どうしてと思うとちょうど演奏が終わり、観客の熱狂となった声が響く。そうして舞台裏から見たステージには見覚えがある顔が五つ。

 三浦、海老名さん、戸部・・・・・・そして一色いろは、由比ヶ浜結衣。

 あいつらが有志バンドに参加するなんて聞いていない。なのにどうしてステージに立っているのだろうか。

 

「ふー。あ、ヒキオ遅すぎ」

「ヒキタニ君待たせすぎでしょー。まさか本当に急遽やると思わなかったし!」

「あーこれから後一曲とかいけるかな。ヒキタニ君と隼人君のダブルボーカルが見れるなら・・・・・・」

 

 一人不気味な笑みを浮かべているメンバーとやりきったことに笑顔を見せる二人。

 そして―

 

「本当にどこにいたんですか?探したんですよ」

「ほんと、ほんと。まさかまた歌うことになるとは思わなかったし」

 

 不満を口にしながらも、こちらも清々しい笑顔だった。

 

「よし。じゃあ準備するから、もう一度みんなきてくれ」

 

 葉山の方に戸部達が集まり、俺の周りにいるのは由比ヶ浜と一色だけ。

 

 

「ねえヒッキー」

「何だ」

「私はヒッキーが大好きだよ」

「・・・・・・そうか」

「でもね、それくらいゆきのんの事も好きなんだ。フラれてからもどうにかしてヒッキーと付き合えないかなあってずっと思ってたんだ。でもさ、どんなに考えても、私とヒッキーよりもヒッキーとゆきのんの方が似合うって思っちゃうんだ」

 

 この気持ちはなんと呼べばいいんだろうか。それは誰にもわからないかもしれない。でもわかっている。それが人間だ。

 目の前で目を潤わせながら、それでも必死に笑顔を維持し続ける彼女もまた人間なんだ。

 

「だからさ、絶対ゆきのんを守ってよね」

「・・・・・・まあやってみるわ」

「本当ですよ。というか私がみんなの前で歌うなんて超貴重だったんですからね」

 

 もう一人の女の子は自信満々に笑っていた。

 

「せっかくなら見たかったな」

「残念ながら一回きりですよ。まあでも私の彼氏になったら、考えてあげなくもないですよ」

「・・・・・・先輩ってことで負けてくれないか?」

「仕方ないですねえ。まあ先輩の歌声がそこそこ良ければ、考えてあげますよ」

 

 

 どうやら楽しみがもう一つできた。

 後ろを見ると四人はスタンバっている。さてそれじゃあ始めようか。

 去年とは全く違ったステージだ。観客は俺にしてみれば、異常な人数の全校生徒千人以上。そんなたくさんの人の前でこんなことをするなんてぼっちにとってあるまじき行動だ。

 

 

 ところで肝心なことを疑問に思うかもしれないが比企谷八幡は歌がうまいのかどうか。

 それに関しては安心してほしい。こうみえてカラオケでの得点は高得点。

 キャラソンの持ち歌はかなりある。これ以上は野暮なので控えることにするか。

 

 

「ま、やってみますか」

 

 

 

 

 

 

 




次回で終わりです。

最後までお付き合い頂ければ幸いです。

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