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皆が明久に違和感を感じ始めたのは、2年に進級して少し経ったくらいのことだった。
いつも通り明久は雄二達とふざけていたが、瑞希と美波が理不尽な理由で攻撃してきた。
最初はいつものように誰も明久を助けなかったが、しばらくして雄二が明久の異変に気づいた。
「おい、明久? お前、様子が――」
そう言って明久の肩に手を置こうとした瞬間だった。
「――――あははっ、ちょっと黙らない?」
明久は笑顔でそう言って雄二の手を振り払い、間接技をきめていた美波に足払いをした。
最初はそのことにクラス全員が呆然としていたが、我に戻った美波は立ち上がって明久を睨みつけた。
「ちょっとアキ! 女子にこんなことするなんてどういうことなの!? さっさと身体をウチに委ねて殺られなさい!」
「殺られ……あははははっ♪ いいよ? できるなら殺ってみてよ? なんか面白そうだしね♪」
「なっ……」
明久の言葉に周りは、明久にそう言った美波ですら絶句した。
それを見た明久は目を何度か瞬きさせて、いつものようなバカ面でへにゃりと笑った。
「やだなぁ、冗談に決まってるじゃん! そんな理由で死のうなんて思わないよ!」
「っ……あ、当たり前だ、このバカ!」
「あははっ、ごめんごめん! それじゃあ僕、用事あるから!」
そう言って明久は教室から去っていった。
しばらくの静寂。時間はほんの数秒しか経っていないが、雄二達には何時間にも感じられた。
「な……何なのよ、もうっ! いきなりそんなこと言われたらびっくりするじゃない!」
「ほ、本当じゃのう! さすがのワシも、明久があんなこと言うなんて思っていなかったのじゃ!」
「…………笑えない」
「ほっ、本当にそうですね! 明久君は演技が苦手かと思っていたので……」
「まぁ、明久は思っていることが顔にでるからのぅ。仕方ないのじゃ」
4人がそう話している中、雄二は1人思案顔をしといた。
(いや、明久は冗談であんなことを言ったりしねぇ。まさか本当に、殺られてもいいと思っていたのか? だったら何で……)
と、そこまでは考えた。だけどそれ以上がわからなくて、雄二は考えることを放棄してしまった。
もしかしたらこの時にもっと深く考えていれば明久が壊れることはなかったかもしれないのに――――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
~雄二SIDE~
俺は1人、屋上で明久のことを考えていた。
明久はバカだ。頭は悪いしお人好しだしバカ面だし考えていることはすぐわかるし……。
今までだってそうだった。というか、あんなところしか見たことがない。
だから自分でも気づかないうちに、それが吉井明久という人物なのだと勝手に認識してたのかもしれない。
(だけどもし、俺達の認識してた明久が、あのバカな明久が演技だったとしたら?)
性格が一気に豹変したのだ。演技だったということも考えられなくもない。
でもそう考えると他の例えがいくつも出てきてきりがない。
考えすぎて疲れた俺は、その場に勢いよく寝転がった。そのせいで地面に頭をぶつけてしまう。
「~~~~~っ!」
痛みを堪えていると、明久の泣き顔が脳裏に流れた。
(……そう、だ。明久はこれよりも、死ぬくらい痛かったはずなんだ。なのに、俺は……)
今更明久の痛みがわかった俺は、悔しくてたまらなくて顔を歪めた。
俺は目を閉じて、明久のことを思い出した。
――――雄二! いきなり何するのさっ!?
――――霧島さんとデートとか、羨ましすぎる!
――――乗り越えてくれるんだろ? 相棒!
「は……っ、バカはどっちだってんだ……」
明久は俺と喧嘩しつつも、やる時はきちんと相棒として見てくれてたじゃねーかよ……。
明久の言った通り、壊したのは紛れもない俺達だ。だから――
「――だから、前の明久を絶対に取り戻す…!」
前の明久を取り戻せればそれでいい。また前みたいに騒ごうなんて思ってない。
だけどその代わり、きちんとケリをつけなくちゃいけない。
だって俺達はもう、戻れないところまで来てしまっているんだから。