光が消えて闇は笑う   作:ゆん

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今回は木下家での出来事です。



EP02 人間失格よ

〜優子SIDE〜

 

「何辛気くさい顔してるのよ、もう」

 

「姉上………すまないのじゃ。ちょっと、学校で色々あってのぅ……」

 

「学校で? またFクラスで何かあったの?」

 

私こと木下優子は、目の前にいる愚弟の秀吉に話しかけた。

 

学校から帰ってきてもいつものように演劇の練習をしないし、ポーカーフェイスも崩れてなにやら難しい顔で何かを考えてる。

 

そんな秀吉の雰囲気に嫌気がさした私は、親切に話を聞いてあげようと思ったのだ。

 

「私に話してみなさいよ。少しはアドバイスできるだろうし」

 

「いやいや、あの出来事に対して姉上がアドバイスなんてできるわけが」

 

「………………」

 

「あ、姉上っ! ちが……っ! その関節はそっちには曲がらな……っ!」

 

「アンタ、何人の親切を無にしてるのよ。そこは素直に『ありがとうございます、お姉様。これからは一生ついていきます』って言うところでしょ?」

 

「すまなかったのじゃ姉上! じゃからワシに自由を与えてほしいのじゃ!」

 

「………まぁいいわ。特別に与えてあげる」

 

「お、恩にきるのじゃ姉上……」

 

私がそう言って秀吉を解放すると、心底嬉しそうにしながらお礼を言ってきた。

 

それに感じた怒りを抑え、秀吉に話すよう促した。

 

 

秀吉の話を簡潔に述べるとこうだ。

 

吉井君は壊れてしまった次の日から、どんどん自分の身体を傷つけていったらしい。

 

最初はカッターで腕や足などを傷つけるだけだったが、それはどんどんエスカレートしていった。

 

最近はどこからか持ってきた蛍光灯を頭にぶつけて大量出血、中身が不明な注射器を腕に刺して意識不明の重態、最悪な時は屋上から飛び下りようとしたとか。

 

 

私はそれを聞いて、一瞬倒れそうになってしまった。

 

だって、あのバカで温厚で人のために一生懸命になる吉井君が、人を追い詰めるためにそんなことするなんて思っていなかったから。

 

私は吉井君と今すぐ話したい気持ちを堪え、秀吉に質問した。

 

「ねぇ秀吉、どうして吉井君はそんなことになってしまったの? 何かきっかけがないかぎり、そんなことするとは到底思えないんだけれど」

 

「きっかけ、かのぅ? 考えられるとしたら、理不尽な暴力かのぅ……」

 

「理不尽な、暴力? どういうこと?」

 

確かに『FFF団』ていう謎の集団のいい話は聞かない。でも、それだけで吉井君はあんなになってしまうの?

 

最初はそう考えたが、次の秀吉の言葉を聞いた瞬間、私は無意識に行動していた。

 

「いや、姫路と島田からも、理不尽な理由で攻撃されていたのじゃ。じゃからそれらが我慢できなくて――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パァンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――え……姉、上?」

 

 

気がつくと、私は秀吉の頬に平手打ちをしていた。

 

秀吉が目を丸めて私を見てくるが、そんなことどうでもよかった。

 

「姫路さんと島田さんが……? だったら何でアンタは吉井君のことを助けなかったのよ? 友達だったんでしょ? 傍に、近くにいたんでしょ? どうしてよ!」

 

「そ、れは……ワシらFクラスにとってそれは、いつものことじゃったから……」

 

「いつものことなら吉井君を助けなくていいの? 見捨てていいの? そんなの考えなくても駄目だってわかるじゃない!」

 

「っ……じゃ、じゃが!」

 

「言い訳なんてするんじゃない! だからアンタは私よりも女々しいのよ! だからいつも女に見られるのよ!」

 

「それでも、ワシは! 雄二達と一緒にいたかったのじゃ…!」

 

秀吉の最後の言葉を聞いて、私は無言でもう1度秀吉に関節技をきめた。

 

「あっ、姉上!? 何をいきなり…!」

 

「こんなの、いつものことでしょ? 秀吉、どう? 私が今やっているのはいつものことよ? 痛くないの? 助けてほしいって思わないの?」

 

「おっ、思うに決まっているのじゃ!」

 

「普通はそうよね。でもアンタは、アンタ達は、そんな吉井君を見捨てたのよ? アンタや坂本君なら、こういう時に助けてもらえない苦しさがわかるでしょ!?」

 

「っ!!」

 

そう言って私は秀吉を思いきり床に叩きつけた。

 

秀吉は痛さで顔をしかめるが、自分が吉井君にした態度を理解したのか顔を一気に青ざめた。

 

 

 

「秀吉……あんたはもう人間失格よ。どんなにやっても人の気持ちが理解できない無意味な演劇なんて、さっさと止めたら?」

 

 

 

私はそう言って秀吉を一瞥して、自分の部屋へ早足で戻った。

 

バタン! と勢いよく扉を閉めて、そのままベッドへとダイブした。

 

(最悪……まさか秀吉があんなにも愚弟だったなんて……。どんなにバカでも、人の気持ちは演劇を通して理解していると思ってたわ……)

 

そんな私もバカね、と嘲笑して明日のことを考えた。

 

(とりあえず、明日Aクラスで吉井君のことを全て話そう。その話を聞いてAクラスが味方になってくれるかはわからないけど……そんなの、関係ない。吉井君の敵は私の敵。それがたとえ代表だろうと、容赦はしないわ。壊れていない私が、吉井君を支えないと……)

 

そこまで考えて、私はゆっくりと目を閉じた。

 

 

でも、私は気づいていなかった。

 

 

この時点で、私は既に壊れかけているということに――――。

 

 

 

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