放課後、FクラスはAクラスに呼び出された。
最初は「どうして呼び出されたんだ?」とか「Aクラス……女子……!」などと言っていたが、Aクラスの雰囲気を見た瞬間、それは一気に消え去った。
Aクラスの雰囲気はとてつもなく冷えきっていて、Fクラスの生徒を軽蔑した目で見てきたからだ。
人によっては青ざめたり気絶したりする中、代表して雄二が翔子に話しかけた。
「おい翔子、これは一体どういうことだ? 何で俺達をここに――」
「……空気が汚れるから話さないで、
「――っ、は? 翔子お前今、俺のこと苗字で……」
「それほど代表は怒っているということよ、坂本君」
「あっ、姉上……!」
「木下姉か……それは一体どういうことだ?」
雄二が翔子にそう問いかけようとした時、優子が翔子を庇うようにして前に出た。
優子を見た瞬間秀吉は怯えた声で名前を呼び、雄二は苛ついて優子を睨みつけた。
しかし優子は雄二が「どういうことだ」と聞いてきたことに呆れた、深いため息をついた。そして口を開く。
「いくら『元』神童だとしても、そんなことも検討がつかないのね……どうしてこんな男が代表の幼馴染みだったのかしら……?」
「さっきから聞いてりゃあ、テメェ……!」
「私達が今回呼び出したのは、あなた達がどう思っているのか聞きたかっただけよ」
「……? 誰の、ことだよ?」
「今の、壊れてしまっている吉井君のことよ」
「っ! まさかお前ら、知って……っ!」
明久の名前が出た瞬間、雄二達の目に動揺がはしった。
雄二はどうして明久の状態を知っているのか聞こうとしたが、秀吉が優子に全てを話したことを思い出して口を閉じた。
どう思っているか、そんなのただ1つだけだった。
だけどそれは、自分達がしてしまったことに非がある。だからこんなこと、言えるはずがなかった。
だけど自分は悪くない、全て明久が悪いと思っている女子――島田美波は、それを言ってしまった。
「っ……恐いに決まってるじゃない! あんなの、本物のアキじゃない! だってウチらがお仕置きしたのは全部、アキが悪いんだからっ!」
シャッ
瞬間、美波の横を何かが通りすぎた。
通りすぎたのはポケットタイプのカッターで、それは美波の頬をかすって壁に突き刺さった。
「ひっ……いゃぁあああああっ!!」
あと少しずれていたら? そう思った美波は、身体をカタカタ震わせて叫んだ。
しかし見栄をはろうとしたのか、立ち上がって周りを見渡しながら声を張り上げた。
「こんなことしたの誰よ! どうせまたアキでしょ!? アキがウチを脅すためにこんなことしたんでしょ!? わかったならさっさと出てきなさい! 今なら死にかけるくらいのお仕置きで許してあげるから!」
この言葉には、さすがのFクラスも呆れ返った。
美波以外のFクラス生徒は、自分達のせいで明久が壊れてしまったと理解している。
だからこそ、今でも「自分は悪くない」と主張する美波に呆れて何も言えなかったのだ。
すると突然、Aクラスの扉が開いた。
一斉にそちらを向くと、そこには顔を俯かせている明久がいた。
「ふ、ふんっ! 今日はやけに素直じゃないの! いいわ、ウチは心が広いから優しくしてあげるわよ! 感謝しなさいっ!」
美波はそう言って鬱憤払いのために明久に近づいて、いつものように攻撃しようと手を伸ばした。
当然Aクラス生徒とFクラス生徒はそれを止めようと慌てて動きだした。
――――しかし次の瞬間、美波は反対側の壁まで吹っ飛んだ。
「っ、え……? ガッ、ゴホッ! ゲホッ! カハ……ッ!」
一瞬美波は何が起こったのかわからなかった。
しかし突然の嘔吐感に襲われ、しゃがみこんで何度も咳き込んだ。
一方、それを見ていたAクラスとFクラスは、明久が美波を吹っ飛ばしたのかと思った。
しかし明久は身体を少しも動かしていなかった。なら、どうして?
そう思った時、美波の肩の部分が光に反射して光った。
それに気づいた雄二は美波に近づき、肩の部分を凝視した。
するとそこには、細長い紐が引っかかっていた。そしてその部分はすこし破けている。
「っ、もしかして……!」
雄二は何かの考えに至ったのか、顔を上げて壁を見た。
するとそこには、さっき美波に投げられたであろうカッターが突き刺さっていた。
「おいっ! さっきカッター投げたやつは名のり出ろ!」
雄二がそう叫ぶと、突然明久がクスクスと笑い始めた。
「ふふっ、クククッ……あはははははっ! あーっ、面白いっ! やっぱサイコーだよ雄二達は!」
「なっ……明久?」
雄二が呆然としながらそう呟くと、明久はニッコリと薄気味悪い笑みを浮かべながら言った。
「みっちゃんもういいよー。
「みっちゃん……? 壊れる、前……?」
その名前に、明久以外の人は首を傾げた。
しかしその後、Fクラスから再び笑いが聞こえてきた。
その人物は明久の隣に駆け寄って、皆を見ながら言った。
「うんそうだねっ! 僕もうあのキャラは疲れたよ~っ! どんなキャラだしホントにねっ☆」
「あははっ♪ でもあれがみっちゃんの前のキャラだよぉ?」
「やだなぁ、昔の話だよっ♪ 今は明久の仲間だしっ♪」
そう言いながら明久と楽しそうに笑顔で喋る姿を見て、全員が呆然とした。
そのうちの誰かが、ポツリとその人物の名前を呟いた。
『え………姫路、さん……?』
その人物――姫路瑞希は、明久と同じような薄気味悪い笑みを浮かべて言った。
「うんっ! 僕は正真正銘、姫路瑞希だよっ☆」
そして瑞希は明久の前に出て、両手を広げながら言った。
「壊れてしまった僕と明久、そしてクラス内やクラス同士での決別……AクラスとFクラスの崩壊はもう、誰にも止められないよっ!」
ほら、崩壊するまでもう少しだ。