中学二年の頃うちの父親が僕に向かいそう告げた
「お前みたいな奴には一度こういう経験をさせた方がいい!」
そして高校入学目前の頃、僕は父親の友人のいる木組みの家と石畳の街にほうり出された
自分の名前は狭山 真樹
自分は今木組みの家と石畳の街に向かう列車に乗っている
本当だったら自分の直ぐ近くにある
高校に行くはずだった……
こんな事になったのは父のせいである、
うちの父(名は安佐武《あさむ》)は昔軍にいて輸送などの任務についていた、しかしある時
中東だかの戦いで襲撃を受け
足を負傷しまともに歩けなくなってしまった、今はプラモ屋を経営しておりその影響で自分もプラモに夢中で、今思えばあまり外で遊ばない子供だった
そして中2のある時父からこう告げられた
「真樹よ、お前は世間の事に疎い
高校になったら俺の知り合いが
やっている喫茶店に働きにいかせるからな」
「ちょっと待ってくれ! じゃあ
高校の件はどうなるんだい?!」
「お前はその知り合いのいる街の高校へ行け、お前の頭でも頑張れば行ける」
「なんてこったい……」
「それとあいつの店には小学生の一人娘がいるから同じ屋根の下に住まわせるわけにはいかん、同じ街の俺の知り合いの家に置いてもらうよう
頼んだからな」
(ぼかぁ置物かよ!)
◆◇◆◇◆◇◆
という訳で進路を勝手に決められた自分はその街の高校に向けて猛勉強する羽目になった、
とても辛かったがその甲斐あって無事合格し
今、こうやってその街に向かう電車に乗っているのである
「次は終点、◯◯ ◯◯
お荷物のお忘れにお気をつけください」
どうやら木組みの家と石畳の街というのは金沢の小京都とか伊賀の忍者の里の様な感じで呼ばれているらしく、本来の地名もあるらしい
電車に乗っていたほとんどの人が荷物を持ってぞろぞろ出て来る
自分も荷物と父がくれた餞別代わりのスケールモデルやザブ◯グル、ガ◯プラを
持ってホームへ降り立った
どうやらその住まわせてくれるらしい人、名前は天々座さんの使用人さんが車でお迎えに来てくれているそうだが……
駐車場でウロウロしていると向こうから坊主のグラサン男がやって来た
怖いなぁと極力目を合わせないでいると
「すみません……あなたは挟山 真樹様ですか?」
「あ?! え!! はい! そうですが!」
ヤの人だと思ったら彼らが天々座さんの使用人かよ! おっかねぇよ!
「貴方が狭山 真樹様ですかい」
「ですかい ですかい」
「ではこちらの車に、荷物は私がトランクに入れますので」
そう言われて案内された車が
まさに本職が乗ってそうな
重厚な黒塗りのクラウンである
ここまで来ると本職が勘違いして撃ってこないか割と本気で心配していた
◆◇◆◇◆◇
道中本職が鉛玉をぶち込んで来る事も、力士がデンモクで殴って来る事もなく無事天々座家へ着くことができた、しかし周りに比べ一際目立つデカイ家だな
「ようこそいらっしゃいました」
メイドさんや厳つい格好の使用人さんに挨拶されながら
挨拶するためこの家の主人である天々座さんの部屋へ向かう
◇◆◇◆◇◆
天々座さんはそこそこのロン毛で
ヒゲをちょうどいい感じに生やし、
眼帯をつけているカッコいい方だが、知らない人が見るとほぼマフィアのボスだ
「貴様が狭山の息子か、
これから三年間ここを我が家だと思え、緊張する必要は無いからな」
「はっ! わかりました!」
「……大丈夫か? 俺は別にとって食ったりはしないぞ?」
「はっ! わかりました!」
「……まぁ慣れて行けばいいさ
私の娘も紹介しないとな、来なさい」
そう呼ばれて、隣の部屋から
一人の女の子が出て来た
「私の名前はリゼだ、君は真樹というんだな、これから三年間よろしくな」
「はっ! よろしくお願いします! ……はっ!?」
リゼが困った顔して天々座さんが
苦笑いしていた
「……緊張のあまり何してんのか
分からなかった……申し訳ないです……」
「まぁ誰だって緊張してやらかしてしまうことはあるさ」
「すまねぇリゼさん」
「それじゃあリゼ、真樹君を部屋に案内してくれないか?」
「解った、それじゃ行くぞこっちだ」
そう言われてリゼさんに案内される
荷物は既に部屋に運ばれたらしい
「むぅ、流石だな、この広さは自分の家の茶の間より広いぞ」
「しかし、これ全部真樹のものか
凄いな」
リゼさんは真樹が持って来たプラモの山を眺めていた
「これはお父さんの餞別だよ、プラモ屋をやっててね」
「へぇ〜! これはファイアーフライか! キングタイガーもあるな!」
「まぁ自分はガンプ◯派なんだけどね、何だったら好きなのやるよ」
「い、いやぁ私は見るのは好きだが
作るのはあまり……! お前! モデルガンも持って来たのか?! 見せてくれ!」
「あ?! それはモデルガンじゃないぞ!」
リゼは銃床を見るなりそれを取るが
実はそれは銃床を模した持ち手の傘であった
「プラモはやるがそれは譲れん
大事なものだからね」
「そうか、しかし面白いものだな
真樹とは仲良く慣れそうだ……
っと、もうすぐ出かけなければ」
(そういえば自分も父の友人の店、たしかラビットハウスという店に行って話をしなければならないんだった)
「自分も行くところがあったんだった、リゼさんはどこへ?」
「ラビットハウスっていう喫茶店でバイトをしているんだ、もし時間があれば真樹も来るといい」
「なんだ奇遇! 自分もラビットハウスに用があるんだ」
「そうなのか、じゃあ一緒に行こうか」
◆◇◆◇◆◇ラビットハウス
「……こんちは」
「リゼさん……?
後ろにいる方は?」
(父の話によると彼女がここの店の
一人娘のチノという子だった筈だ)
「自分は今日からここで働くこととなった狭山真樹というものです!」
「狭山……、あ 父からきいています…… 制服は用意してありますので早速着替えて働いて欲しいのですが、今はリゼさんが着替え途中ですのでそこに座ってください」
「はぁい、せっかくなんで何か注文していいかい?」
(これからすぐ働くっていうのに……)
「まぁいいでしょう、何にするんですか?」
とは言ったもののメニューはほとんどコーヒーだ、自分はコーヒーは飲めなくはないが滅多に飲まない
どれにしようか悩んでいると一つの
名前が飛び込んで来た
"ウインナーコーヒー"
ウインナー?!
ウインナー?
ウインナー!
あの焼くとパリッと美味いウインナー?!
アレをコーヒーにブッ込んだのか!! これはとんだ奇をてらったメニューだ、
……これにしよう
「ウインナーコーヒー1つお願いします」
「……わかりました」
(見せてもらおうか! ラビットハウスのウインナーコーヒーの実力とやらを!!)
そうして待っている間に
一人の女の子が入って来た
「うっさぎ〜うっさぎ〜♪」
「いらっしゃいませ、そしてお待たせしました、ウインナーコーヒーです」
「やっほう、ウインナー! ウインナー!」
……ん?! ウインナーが無い!!
コーヒーカップの中にあったのは
ウインナーなどではなくホイップクリームが盛られていた
同時に入って来た女の子も店内をキョロキョロして
「ウサギがいない!?」
「ウインナーが無い!!」
二人は同時に叫んだ
その様子をチノちゃんが見て
(なんだ……この二人)
と怪しんだとさ