僕は平凡な日常が好きだ。学校も暮らしも街も、特に何も無くていい。ただ平和で穏やかな毎日が過ごせて、それが過ぎていってくれるならそれでいいと思ってる。
しかし、一つだけ似合わないものがある。それは街のはずれにある大きな古い洋館だ。遠くから見るとお城みたいで、まるでお姫様が暮らしているのではないかと想像させるぐらい、存在感を放っている。だが、近くで見ると人気はあまり無く、出入りしている人はたまにしか見ることがない。窓はカーテンで覆われ、中に何があるのかまったくわからない。本当に人が住んでいるのかわからないので、いつしかそこは幽霊屋敷と呼ばれるようになっていた。
僕こと小野原真は家から20分の高校に通う1年生だ。街は大きくなく、中学も一つしかなかったから、そのままこの高校に来る子も多かった。
「おはよーっ!!!」
「うん、おはようー」
中学からの友達の柿沢優が声をかけてきた。
「うぃーす!」
こちらは小学生の時から仲のいい須田孝太郎だ。
僕はだいたいこの2人と遊んだりしている。クラスは違えど、こうやって喋ることの多い2人は僕の中ではとても安心できる存在なのだ。
別にクラスで浮いているわけではない。女子が苦手というわけでもなく、みんなと分け隔てなく会話もしている。そういった日常が好きで、今の日々にはけっこう満足している。
その日の帰り道、孝太郎が言う。
「幽霊屋敷に行かないか!?」
「幽霊屋敷ってあの街はずれにある洋館のことか?」
優が聞き直す。
「そうそう!あそこ探検しに行こうぜ!」
「おいおい、あそこは人が住んでいるんじゃないのか?
勝手に入ったら怒られるだろ?」
「大丈夫だって!
あそこに人なんて住んでねーよ
窓はカーテン閉まってて、開いてるとこ見たことねーし、
出入りしてる人だって、管理人か何かだろ?
俺らが入った所で誰にも怒られやしねーよ。」
孝太郎は冒険や新しい発見をすることが好きだ。ずっと行きたくて仕方なかったのだろう。
「まぁ、別に構わないが……」
優がそう答えた。優はメガネキャラで真面目そうなのだが、こういった孝太郎の無茶な行動にも付き合ってくれるところが、優の良いところなのだろう。
僕も、うん、行こうよと返事をして夜に近くの公園に集合することになった。
僕は少し早めに夕食を食べ、いないと思うが念のために幽霊が本当に出た時に備えてカバンに懐中電灯やテニスボール、そして小腹が空いたときに食べるお菓子を詰めて、集合場所である公園へと向かったのだった。