もう、2度とお前らは見たくない   作:水面ノ鏡

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第10話

前回の話からしばらく時は飛んで、9月中旬。

引退試合まであと2週間を切った。不和は一時休戦だと言わんばかりに、1週間前ぐらいから鳴りを潜めていた。

このままの状態であれば、何事もなく最後になるであろう大会も終えることができるだろう。

しかし、一番良いのは、今回の大会でベスト8に入り、府大会に進むことなのだ。

顧問の先生が変わってからは、どこかの中学と一緒に稽古をしたり近くの道場の人たちに稽古をつけてもらうという機会は殆ど無くなっていた。それでも、同じ地域にある中学とは繋がりがあり、そことはたまに合同稽古や練習試合を行なっていた。

腹立たしいことに、なんだかんだ言って小山は剣道部の強さの根底を担っていたことを実感してしまう。

 

「あと2週間ないんやし、最後まできっちり詰めてくぞ!」

 

泉の声が格技室内に響く。それに呼応するかのごとく、1年たちの返事がこだまする。もちろん、俺たち3年たちも泉の声に対して反応する。

そのとき、俺はなんとなく安心感があった。

みんなが一丸となって、一つの目標に向かっていくというものは俺が思い描いていた部活動の理想だった。

1年の時には15人ほどいた同じ学年の部員も、最終は7人までに減っていた。他の部員たちは退部していった者たちとはもう繋がりを絶ったようであったが、俺はまだ繋がっている。彼らは普通に良い友人だ。

 

「野口、副将としての仕事頼んだで」

 

この剣道部における、俺の副将の仕事というのは簡単である。先鋒と中堅が勝ってくるからその勝利を確実なものにすることだ。ここにおける勝利を確実にするというのは、勝負にとってはあるまじき行為かもしれないが、引き分けで繋ぐだけのこと。次鋒には数合わせのための1年が入る。残念なことにその1年に勝ちを期待していない。

2勝1敗で俺の番になった際、1分けが入るだけで勝利は確定する。もちろん勝ちに行く姿勢は大切だ。それが故に負けてしまえば、元も子もない。

その勝ちが確定した状態で大将に渡し、身体を温めてもらうというのが俺らの勝ち方だった。

 

「分かってるっての、牧野も先鋒での流れ作り頼んだわ。お前が負けたら俺らの負けみたいなもんやし」

 

スピードのある牧野は流れを作るのに適している。剣道部内で泉と1、2を争うほどの実力があるのだ。

牧野と中堅に控える増岡が勝てなければ俺たちは負けなのだ。

 

「お前に言われんくても分かってるわ。せや、今日の地稽古、泉とのんが終わったらやろうや」

「全然ええぞ。あー……、でも俺も泉とやるんを終わってからでええやろ?」

「ええよ、泉優先やしな」

 

この時には軋む音は聞こえず、ひたすらにそれぞれの不器用な音を奏でたことによる不揃いの協和音が聞こえていた。




あと2話で完結予定です。
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