もう、2度とお前らは見たくない   作:水面ノ鏡

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第7話

その時の俺は余りにも幼かった。

原因はたった1つ。今まで信頼していた顧問の先生に裏切られた。もしかすると、裏切られたというのは適切な表現ではないのかもしれない。向こうからしたら、裏切ったという自覚はない可能性がある。

ただそれでも、ずっと信じて付いて行った道標が嘘でなくとも、道を示さなくなり、新たに立てられた道標はか細くいつ折れるかも分からない。そんな中で俺たち3年が出した結論は、俺たちが卒業するまでは1年の道標になってやろうということだった。

それは至極当然なことなのだ。

そこに個人の思考による指導方法のズレが起きてしまうことも至極当然のことであり、それが分裂に力を発揮することもある。

 

「なあ泉、昨日何を教えたん?」

 

泉に聞くのは墨田である。

最近、墨田は府の強化選手に選ばれたからか、外部での稽古が多くなってきている。

それに対し、泉は教えたことを淡々と墨田に伝える。

 

「まあほとんどいつもやってることと同じやで」

 

「え?まだそれまでしかやってないん?うちらが卒業したあと1年何にも出来ひんのんちゃうん?」

 

「いやそんなん言ったって段階ってもんがあるやん。それら一気にすっ飛ばしてやったら動きめちゃくちゃになるで」

 

「でもうちらで教えられへんかったら、もしかしたら1年ら教えてもらわれへんのかもしれんねんやで!」

 

徐々に口論はヒートアップしていく。

主な争点は俺たちがやっているような、ある程度の技術を身につけて出来る技をまだ熟練度もまだまだの1年に教えるべきかどうかである。

この口論が激化する引き鉄は泉が引いた。

 

「お前は外部でキツい稽古を受けてきてんもんなぁ!どんなもんか分からんけども、他の人との差なんかはそこまで変わらんか上しかおらん。下がいないところで稽古やってきてんや、そりゃあ基礎がしっかりと出来ていない奴のことなんざ分からんやろ!」

 

泉が言いたいことも分かる。

技術が伴わない者に技術を必要とするものを教えたところで、何も意味がない。だから、段階を踏まないといけない。

そんなことを何度も言った。それでも墨田は分かってくれない。だからと言って、その言葉はいけない。これまでの部活動を通して、培った絆を全てぶち壊すことになる。

 

「そんなんしゃあないやん!」

 

「墨田だけちゃう!藤本も濱田も……。夏休みに一回も来んと。1番1年の面倒見てんのは俺ら男子や!」

 

部活の空気は酷く静かで、凍り付いていた。

この時が平日でなく、祝日であったことに感謝すべきだろう。平日であれば、いつも隣で活動している卓球にこの言葉を聞かれたことだろう。

泉は部室のドアを乱暴に開き、稽古を始めた。

 

この日を境に泉と墨田は言葉を交わすことが少なくなった。

男子は泉に賛同するように、女子は墨田に賛同するように、3年は完全に分裂した。

俺はこの時でさえ、中立でいた。

俺の聴覚には汚い言葉が通り抜ける。まだ、これに耐えなければいけない。

耐えれば俺は解放される。あと2ヶ月。

俺の名前が閏になるまで、あと2ヶ月。

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